全能感にでも酔っていたのだろうか。渾身の一撃であるはずが、緑色の小人には大して効かなかった。その事実にショックを受けるも、戦闘は終わらない。こいつを野放しにすれば同じことを繰り返すだろう。ここで仕留めた方がいい。
緑色の小人は捻るように後退する素振りを見せた。おそらく痛みで仰け反っているのではないか? 相手が引くなら、その勢いで槍を抜くまでだ!
ブ・リョ
為す術なく後退る緑色の小人に再び引き戻した槍を繰り出す。次はみぞおちだ!
今度は一工夫することにした。重心を意識して重心から槍を繰り出すように突き出したのだ。思ったように進んでゆく、重さは変わらないが安定感が段違いだ。
相手の身長は120〜130cmなので位置は低い。
緑色の小人は無防備に胸を晒している。その中心へ吸い込まれてゆく穂先。無理なく体重が乗り両手で全力で押してもブレずに突き出すことができた。何かをつかみかけている、そんな手ごたえを感じる一撃はついに緑色の小人の胸へ達した!
感触通りだったのだが、みぞおちの上へめり込んでゆく。骨を削って行く感触が槍を通して伝わってくる。
筋肉が薄いせいもあるだろが、さっきよりも深く貫入してゆく。
緑色の小人は手を無意味にばたつかせて仰向けに倒れてゆく。その途中で槍を落とした。俺の槍が折れないように相手の動きに合わせて、上に乗りあげて槍を抜くべく、胸に足を乗せた。
仰向けに倒れた緑色の小人は、後ろにいた子供の上に覆いかぶさってしまった。俺はそれに気づいて、槍を抜いた後緑色の小人を左に転がした。まだ生きているようだ。一旦ステータス加速(ブースト)を切った。
そのとたん一気に周囲の速度が元に戻ってきたのだった。どうやら、疲労などの副作用は無いようだ。これなら、制限なしでいくらでも使えそうだ。
ただし、汗がどっと噴き出してきた。
なにせ、この炎天下全力で動いたのだ。暑い!
――直前に緑色の小人に襲われていた女性は、槍でめった刺しにされていたが、まだ意識があるようで、かなりマズイ状態に見える。
あの二人を呼んできたいところだ。俺はこういった場合どうしたらいいかわからないので、俺にできることは無いだろう。せいぜい、処置できる異世界人を呼ぶくらいなのではないだろうか。
「***……」
とりあえず、言葉が通じない以上どうしようもないので、苦手だが笑ってみた……。
「……」
まぁ、多分大丈夫だろう……。不気味に思われて無けりゃいいが……。
――現在周囲では、未だに争いの気配が止んでいない。俺は汗を拭きながら、緑色の小人に止めを刺すと次の戦いへ向かった―
―。
村落のあちこちに戦いが起こっていた。しかし、村人も結構戦えるらしく、形成は村人に傾いているようだ。
意外なのは老人も果敢に応戦し、数匹の緑色の小人を地べたに這わせていたことだ。おそらく昔からこういった荒事を繰り返してきたのだろう。そんな中老いるまで生き残って来た人が弱いはずが無いということだ。戦闘技術は未だ持って現役で緑色の小人如きには遅れは取らないということだろう。
炎天下で上着を脱ぎたいが、今はそんなことをしている暇はないだろう。
とりあえず、向こうで応戦している中年の女性に加勢することにした。
『ステータスオープン』
再びスローモーションになる世界。
タン
タン
タン
再び汗が噴き出す!
タン
タン
タン
……
緑色の小人はこちらに気づき振り返るが、目の前の中年女性が木の棒でけん制して巧みに邪魔する! ナイスおばさん! やはり、戦い慣れてるのだろうか。
タン
タン
タン
タン
スピアを構えた突撃は緑色の小人を穂先に捕らえたまま進んでゆく。汗で手が滑る感触がある。若干不安だ。戦闘中に槍が滑るのは致命的だ……。手元に注意しながら、なおも走る。
タン
タン
タン
緑色の小人は踵を返して逃げ始めるが、中年女性が腕をつかんで体勢を崩す! ホント何者なんだこの人!
タン
タン
いける! 衝突コースだ!
ザシュ!
首の付け根に穂先の半分がめり込んだ。
そのまま、緑色の小人の頭を棒で殴りつける中年女性。まじかー。
もはや、タコ殴りだ。……もしかして、加勢の必要無かった? とりあえず、ステータスウィンドウを閉じるか。
『閉じろ』
「***、****。***!」
ぐったり倒れ伏す緑色の小人。中年女性は向き直って俺にお礼を言っているようだ。とりあえず、スマイルだ。
「ゥゥ……」
! まだ。緑色の小人は生きていたのだ! 石斧を手に起き上がろうとする緑色の小人。俺はとっさにステータスウィンドウを開く!
『ステータスオープン』
再びスローモーションになる世界。
とっさのことで右手に持って穂先を下に向けていた槍を、右側面を後ろに引きつつ手元で回転して、穂先を緑色の小人に向けながら、重力で腰を落としていく。
中年女性の表情があっという間に驚きへと変わって行く。こうしてみると表情筋の反応速度は凄いなと実感できる。まぁ、脳に近いので自然なことなのだろう。焦点を緑色の小人に合わせようとするのだが、コレもインターバルを要求される行動で、すぐにはピントが合わずぼやけたままだ。
やがて槍は回転して緑色の小人に向きつつある、その穂先を突き出すべく前方へ力を込め始めた。いくら世界がスローモーションになって、自分だけ普通の速度で考えられたとしても、自分の筋肉の動きまで普通の速さになるわけではないようだ。
とっさの場合、動きにくいこともあるのだ。おそらく呼吸と関係していると思うのだが。とっさに動き始めたのが悪かったのだろう。右手の疲労感が半端ない。このまま無理を続けた場合
空気を吸い込むことを意識して肺を膨らませる。未だ楽にならないが、このモーションを中断するわけにはいかない! 槍の穂先を緑色の小人めがけて押し込む!
ズム
鎖骨の下に浅く刺さるにとどまった。なにせ、片腕で呼吸が追いつかなかったのもあるだろうし、途中で空気を吸い込んだら上手く力を加えられなかった。……だが、それで十分だった。
中年女性に再び、タコ殴りにされる緑色の小人。もう、十分だろう――。
『閉じろ』
ステータスウィンドウは閉じられ、通常の速度に瞬時に戻る。この違和感は慣れそうもない。
装備:スピア 2kg
装備:服 0.5kg
装備:上着 0.5kg
装備:ズボン 0.5kg
装備:インナー
装備:ボクサーブリーフ
装備:靴下
装備:靴 0.5kg
装備:伊達眼鏡 -
スマホ -
小銭 ¥361
タバコ 3本
¥100ライター
コンドーム
プラスチック袋{栄養剤 43錠}
ビニール袋{岩塩 -}
カギ