女の子が苦しんでいるのを肩代わりしてしまう少年の話 作:二本角
そして呪術廻戦0読み返したら、自分の記憶よりも遙かに夏油の人間嫌いがヤバくてドン引きしました・・・これ絶対柊史くんに悪影響あるだろ
「お、おはようございます・・・」
椎葉紬が恐る恐るというように、気持ち小声で挨拶しながら教室に入る。
「「「・・・・・」」」
一瞬、教室が静かになったが、すぐに元の喧噪を取り戻した。
朝の教室は半分ほど席が埋まっていたが、軽く会釈する程度に頷いた者が数名いた程度で、紬の挨拶に愛想良く返す声などない。
紬もそれをわかっていたように、ただでさえ小柄な身体を目立たないように少し屈んで縮めながら自分の席に向かう。
「う・・・」
その途中、通路の真ん中まで椅子を引っ張り出しておしゃべりに興じているグループがいた。
紬は、ぶつからないように注意しながら細くなった通路を歩き・・・
--ガタッ
「あっ・・・ご、ごめんなさい」
「・・・ちっ」
話をしているグループとは逆サイドの机に、紬の鞄がぶつかってしまった。
ガタッと音を立てて、机が動く。
今日の授業の予習か、昨日の宿題でもしていたのか、教科書とノートを広げていた女子生徒が顔を上げ、舌打ちしながら紬を睨む。
慌てて謝りながら机を元の位置に戻そうとしたが、その前に制止の声がかかる。
「いいよ。自分でやるから。邪魔しないでくんない?」
「う、うん・・・ごめん」
「・・・・・」
再度謝るが、今度はこっちを見る素振りすらない。
ここに留まっていては益々相手の機嫌を損ねるだけだと悟った紬は、もう一度頭を下げてから改めて自分の席へと歩いて行く。
そして、今度こそ無事に荷物を降ろし、席に着いた紬は、『ハァ』と小さくため息をついてから、一限の準備を始めた。
その間、彼女に声をかける者は誰1人いない。
これが椎葉紬にとって日常と化した光景であり、つまるところ・・・椎葉紬はそのクラスの『異物』であるのだった。
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「ふぅ・・・」
昼休み。
教室にいるとまた余計な揉め事を起こしかねないため、あまり人のいない中庭で弁当を食べながら、紬は今日何度目かのため息をついた。
「・・・自業自得なのはわかってるんだけどね」
小さく呟く。
その声には、諦念と、寂しさと、少しの悲しみが滲んでいた。
・・・椎葉紬は、クラスの異物のように扱われている。
イジメというレベルには至っていないが、ほとんどが腫れ物を触るような一歩引いた態度を取っているのである。
だが、その理由も仕方がないと言えば仕方がないと紬も納得していた。言い方を変えれば、諦めているとも言える。
なにせ、紬は女子でありながら男子の格好をしているのだから。
学校という共同生活の場において、1人だけ定められたルールにこれ見よがしに違反している。
『なにか複雑な事情があるのだろう』とスルーできる大人と違い、多感な時期にある高校生だらけの場所でそんな悪い意味で注目を浴びるようなことをして、良く思われるはずもない。
しかも、女物の服を着ると制服だろうと嘔吐してしまうというにわかには信じられない理由だ。
まさか『魔女になった代償です』などと頭がおかしくなったと思われかねないことを言うわけにも行かず、学校には心因性のストレスであると説明してあるが、それが尚更『関わり合いになったらヤバいことになりそう』という印象に拍車をかけていた。
さらに悪いことに、紬は今のクラスに上がってすぐ、ちょっとしたトラブルを起こしてしまっていた。
「あのときは、本当に悪いことしちゃったなぁ・・・」
当然と言えば当然であるが、男子の格好をしていても紬は女子として扱われている。
そのため、学校の施設も女子用の方を利用するのが当たり前なのだが、周りの女子からすれば男子が入ってくるはずのない場所に男子の格好をした人物が入ってくるという異常事態に巻き込まれることになる。
そして不幸にも、紬の存在に皆が慣れていないうちに、女子トイレでクラスメイトたちと出会い頭でぶつかりかけることがあった。
リラックスしていたところで、急に女子トイレに侵入してきた男子、のように見える人物と遭遇。
驚いた女子はその場で尻餅をついて叫んでしまい、紬以上にその場では悪目立ちをしてしまった。
その女子はいわばクラスカーストの上位層におり、取り巻きの前で恥をかかせてしまったのだ。
以来、その女子からは目の敵にされており、さらにさらに周りとの溝を深めることとなった。
今朝も件の生徒の机に鞄をぶつけてしまったのだが、そのときの態度を見るに、軟化する様子は一切ない。
そのことを思い出してまたも陰鬱な気分になるも、そこでスマホが鳴った。
「あ!!」
スマホに浮かぶ名前を見た瞬間、紬の顔にパッと花がほころんだような笑顔が浮かぶ。
そのまま、紬はスマホのメッセージアプリにある『保科君』と書かれたリストをタップした。
「?どうしたんだろう、保科君」
嬉しそうにアプリでやりとりを続けていたが、相手、今の紬にとって最大の理解者でありビジネスパートナーとも言える保科柊史からのメッセージが途絶えた。
このところ、ほぼ毎日のように放課後にあの公園で会って紬とのWin-Winな契約を履行しているのだが、やはり代償の重さが気になって、比較的地味な服しか試せていない。
そのことでさらに先に進もうというのは、紬としても期待半分不安半分といったところだ。
そして、その件について柊史は何かを言おうとしていたようだが、少し待ってみても続きが来ない。
何か急用があってメッセージを打ち込めなくなったのだろうか?
とりあえず気になるので、紬は先を促すように返信する。
すると、ややあってから『ピロリン』とアプリが鳴った。
「っ!!も、もうっ!!保科君ってば!!」
送られてきた内容に、ついカァっと頬が熱くなり、声に出してしまった。
紬から見ると、柊史には『思ったことは割とすぐに口に出してしまう』という悪癖があり、それは文章でも同じらしい。
一応、返事が来るのに時間がかかったことや文面からするに柊史も恥ずかしいとは思っているようだが、それでも送ってしまう辺りが柊史らしいと言うべきか。
直接会って女の子らしい服に着替えたところを見せたときもストレートに『可愛い』を大真面目に連呼してくるし、そういう性分なのかもしれない。
なお、そのまっすぐで裏表のない褒め言葉が紬の自尊心や自己肯定感を大いに満たしているのだが、そのあたりはまだお互いに自覚がなかったりする。
その証拠というわけでもないが、紬はこのメッセージの内容はすべて柊史の本心であると、無自覚ではあるが一切嘘を疑わずに信じ切っていた。
話が逸れたが、こうして会話でなくはっきりと見返せる文章でそのように言われてしまうと、紬としてもどう返していいかわからなくなってしまう。
赤面しつつどうにかこうにか返事をしようとあたふたしているうちに、またアプリが音を立てた。
「ふふっ・・・」
スマホを眺める紬の顔には、つい先ほどまでの落ち込んだ様子が嘘のような笑顔が浮かんでいた。
まだ昼食の途中であり、スマホを消して食べた方がいいのだが、ついメッセージアプリを付けたまま、さっきのやりとりを読み返してしまう。
結局、昼休みが終わる少し前まで、紬はスマホを眺めていたのだった。
・・・柊史にとって紬が理想の契約者であるように、紬にとっても、柊史との関わりは心のオアシスとなっているようである。
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昼休みが終わる間際。
ついスマホを見るのに夢中になって時間が迫っているのに気付かなかった紬は、少々早足で廊下を歩いていた。
小柄ではあるものの、男子顔負けの運動能力を持つ彼女が急いだ甲斐あって、五分前には教室に着きそうだ。
安心した紬は、ペースを落して普段の歩調で歩くことにする。
そして、階段の踊り場に差し掛かったときだった。
「あれ?椎葉さんじゃん」
「・・・えっと」
唐突に追い抜いた男子生徒から声をかけられた。
顔に見覚えはあるのだが、名前が思い出せない。
クラスメイトの男子なのだが、教室で関わりがなさ過ぎて名字を呼ばれても愛想笑いを浮かべることしかできなかった。
しかし、そんな苦肉の策を知ってか知らずか、男子生徒は続けて話しかけてくる。
「朝は災難だったね」
「朝?・・・ああ、うん」
さっきまでの楽しい一時に冷水をかけられたような気分だった。
せっかく忘れていたのに、朝の憂鬱な出来事を思い出してしまう。
愛想笑いから苦笑いに変わったのに気付いているのかいないのか・・・いや、間違いなく気付いていない男子生徒は。
「その格好も何か事情があるんでしょ?俺でよければ何かあったら力になるから」
「う、うん・・・ありがとう」
--チラリ
笑顔で言いつつも、男子生徒の目線が一瞬、男子用のワイシャツを不自然に盛り上げる紬の膨らみに向く。
--バッ!!
反射的に腕を上げてその視線を遮りつつ、紬は先を急ぐフリをすることにした。
「も、もうすぐ時間だから、ワタシ行くね?き、キミも急いだ方がいいよ?」
「あ、そうだね・・・トイレトイレっと」
紬の教室からは、下の階に行く方がトイレに近い。
あの男子生徒も用を足しに行くつもりだったようだ。
「はぁ・・・」
思わずため息が出てしまう。
そのまま、トボトボと教室まで歩き、席につく。
昼休み中のウキウキとした気分はすっかり朝と同じ低さにまで戻ってしまった。
・・・実を言うと、さっきのようなことはこれまでも何度かあったりする。
さっきの男子生徒ではないが、クラスから離れた場所を1人で歩いているときに男子と出くわすと、ああして気を遣ったようなことを言われることがあった。
「・・・・・」
さきほどのことを思い出し、つい胸の前に片腕を置いてガードしてしまう。
紬に話しかけてくる男子は、大抵その小柄な身体に不釣り合いな部分に目を向けてくるのだ。
もちろん、ガン見するようなことはしてこないが、紬だって視線に敏感な女子なのだし、そうした眼はどうしても気になってしまう。
・・・紬に自覚はあまりないが、椎葉紬という少女は間違いなく美少女と呼んでいいレベルにいる。
それに、背こそ低いがそのスタイルは相当のナイスバディだ。
男装という悪目立ちする要素があり、クラスでも引かれているが、だからこそ狙い目というか『俺が力になってあげなきゃ!!』と思う男子もそれなりにいるのである。
もっとも、そうしておかしな格好をしてるくせに男子に密かに人気があるということで女子の反感を買っており、クラスカースト上位の女子に疎まれているのもあって、そうした男子が教室で何かしてくれることなどありはしなかったが。
さすがにそこまでは気付いていなくとも、紬とて自分の体つきが男子の目を引いてしまうのはわかっている。
男子用の服というのは、そういった部分のガードが女子用に比べて薄く、さらに悪目立ちしてしまうことも。
まあ、仮に万が一それで妙な気を起こした男子がいたとしても、そういった男子の望むような展開になる前に紬のゲロによる洗礼を受けることになるだろうが。
(そういえば、保科君も・・・)
そこまで考えて、紬は思い出していた。
思えば、柊史も最初は紬の胸をこれまで会ったどの男子よりもガン見し、そしてなんだかんだあって紬のゲロを浴びることになっていたなと。
そんな最悪と言っていい出会いだったというのに、今では毎日会うのが楽しみな間柄になるなんて、あのときの紬には想像もできなかった。
「くすっ・・・」
クスリと、紬は思い出し笑いをしてしまった。
もう授業も始まるのでスマホは取り出せないが、もしも見れるならさっきの柊史が送ってくれた言葉をまた眺めていたことだろう。
(・・・保科君は、さっきの人とは全然違ったな)
ふと、そんなことを思った。
柊史だって男子だ。
最初に会ったときにそうだったように、時折自分の身体に目が行きそうになってるなと思うときがある。
しかし、そのたびに自制するように目線を外して紬の顔の方をガン見してくるのである。
(保科君には感情が読めるチカラがあるから、気付かれたらわかるんだろうけど、そういうの関係なく気をつけてるって気がするなぁ)
保科柊史には、他人の感情を察知する能力がある。
そのため、女性のそうした不快感もわかるからこその自衛行動なのだろうが、あまりにも必死すぎて笑いそうになってしまうこともあった。
(胸とかお尻に目線が行かないように、話すときは怖いくらい顔から視線を外さないんだもん・・・ちょっと可愛いかも)
女性に気を遣ってくれているのはわかるが、何もそこまでしなくても、という感じである。
というより・・・
(ま、まあ、保科君だって男の子なんだし、ワタシだってお世話になってるし・・・ちょ、ちょっとくらいなら、見られても・・・)
柊史だって健全な男子であり、男子高生がそうしたことに興味があるのは知識として知っている。
そして、まだ出会って2週間ほどしか経っていないが、柊史が信頼できる性格であることはよくよく身に染みている。
柊史にはお互い様の関係とはいえお世話になっているし、少しくらいなら不躾な視線を向けられても『しょうがないなぁ』と思えるくらいには信頼関係を築けていたのだ。
(・・・あれ?考えてみれば、保科君となら・・・)
そこまで考えて、紬はふと思いついてしまった。
いや、魔が差したというべきだろうか。
(保科君となら、もしかして・・・そ、『そういうこと』までできちゃう・・・?)
紬の代償は、『女の子らしいことをすると気持ちが悪くなる』というものだ。
これは、主に服装関連が引っかかるが、行動でも反応することがある。
例として挙げると、女の子モノの服を物色するだけでも少し吐き気を感じることがあったりする。
当然、ハグだとか、キスだとか・・・あるいは『もっと先』のことなど到底見逃されるはずもない。
しかし、柊史の『他者の身体的苦痛を肩代わりする』、『他人に感謝されるなど、プラスの感情を向けられれば苦痛を帳消しできる』という特性があればどうか?
そう、例えば・・・
(ただ肩代わりしてもらうだけだと保科君が苦しむだけだけど・・・ワタシが嬉しいとか、ありがとうって思ったりしながらなら・・・?それか・・・)
柊史に身体的に快楽を与えられながら・・・要は、柊史が紬を気持ちよくして、それに対して感謝した場合とか。
「~~~っ!?」
そこまで考えて、湯気が出るのではないかと思うくらいに顔が熱くなり、紬はつい机に突っ伏してしまった。
隣の席の生徒から奇異の視線を向けられるが、それすら気にならない。
(な、なに考えてるのワタシっ!!!!)
すぐに起き上がり、ブンブンとかぶりを振る。
周りからも訝しげな顔を向けられるが、やはり気にならなかった。
それどころではなかったのである。
(は、早く忘れなきゃ!!保科君はワタシがどういう気持ちでいるのかもわかるんだから、こんなこと考えてたら変態だって思われちゃう!!そんなのはイヤ!!)
柊史に会う放課後までに考えていたことを忘れるために、必死で脳内で般若心経を唱える紬。
「お~い、椎葉?椎葉?体調悪いのか?」
「ふぇっ!?・・・あ、す、すみません、なんでもないです」
そして割とガチめに心配した教師が紬を当てるまで、紬はウンウンと唸っており、クラスメイトとの溝はさらに広がったのであった。
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「ど、どうかな保科君?」
「お、おお!!すごい!!すごい似合ってるよ椎葉さん!!」
放課後のいつもの公園。
今日もいつも通り姫松からやってきた柊史が先に待っており、『帳』を下ろして更衣室を造っていた。
昼間の間に何かあったのか、紬からこれまで感じたことのない焦燥感というか混乱というかよくわからない感情が少々漂ってきたのは気になった柊史だったが、いざ肩代わりを始める段階になると、紬の表情が一気に引き締まった。
今日は実験を新たな段階に進めるつもりであり、柊史も紬も少し緊張している。
『保科君に報いたい!!』という強く、熱い想いを滾らせている紬が帳の中に入っていくのを見送ってしばらくして、柊史の中に若干の吐き気を感じるのと同時に紬が出てきた。
「うん!!やっぱりスカート履いてると一気に女の子っぽさが上がるね!!眼福だよ!!」
「も、もう・・・大げさだよ。でも、ありがとう、保科君」
紬は、学校の女子用制服に身を包んでいた。
今の季節は初夏であり、もうしばらくで梅雨入り。
紬が着ているのも夏服で、上は小さな赤いリボンが首元にある白いブラウスで、下は柊史が言うように灰色と紺色のチェックのスカートだ。
髪型が普段の一つ結びと変わらないのは、柊史への負担を懸念したからか。
制服姿という、この辺りではありふれた格好であるが、紛れもない女子用の服であり、今の紬が教室にいても異物と思う人間は1人もいないに違いない。
紬としては、スカートは魔女に変身したときに自動的に着ているので久しぶりというわけではないのだが、なんとなく開放感があるような、スースーするのが気になるような不思議な心境だった。
「ところで、保科君は大丈夫そう?正直に言ってね?」
「・・・いや?全然大丈夫だけど・・・」
「・・・本当に?」
「う・・・」
今通っている学校の女子用制服という、普通なら特になんとも思わない服を感慨深く着ていた紬であったが、それもわずかなことで、すぐに心配そうに柊史に聞いてきた。
柊史としては言葉通り眼福であるし、男としてのちょっとした見栄とプライドも相まって、多少感じる吐き気を隠そうとする。
しかし、保科柊史という少年は隠し事が苦手だった。
後ろめたい気持ちもあるのか、若干目線が泳ぎ、応えるのにも間があく。
そして、それを目ざとく見逃さなかった紬はなおも追求し、柊史の方が根負けした。
「実を言うと・・・ほんの少し吐き気があったり・・・します」
「やっぱり!!なんかおかしいと思った!!なんで無茶するの、もう!!」
「い、いや~・・・可愛い椎葉さんを見ていたくて」
「っ!!・・・そ、そんなこと言っても誤魔化されないからね!!とりあえず、すぐ着替えてくるから!!」
「え、いやいや!!そんなに急がなくても!!確かにちょっと気持ち悪いけど、吐きそうってほどじゃないよ!!もうちょっとどこまで行けるか試してみたいし、まだ着替えなくてもいいんじゃない?」
「・・・本当に、そこまで大したことないんだね?」
「うんうん!!それは本当だって!!ほら!!」
着替えるために戻ろうとする紬を止める柊史。
紬はなおも疑わしげな眼差しを向けていたが、今度は本当だと信じたのか、足を止めて振り向く。
紬としてもせっかくの制服を着ていたい気持ちが少しはあるし、柊史の言うとおりどうせなら色々と試して置いた方がいいというのも一理あると思ったのだ。
「・・・う~ん、ちょっととはいえ吐き気を感じるってことは、このレベルの女の子らしい格好をすると反転術式で打ち消せる限界を超えるってことかな。ポイントで言うと、ブラウスでマイナス10点、スカートでマイナス30点、下着上下でマイナス50点ってところかな」
「そうなると、マイナス100点になったらダメって感じかな?」
「そうかも・・・あ、念のため言っておくけど、別に椎葉さんの感謝が足りていないとかいうわけじゃないからね?オレ的にはもう少し女の子らしい服を着てもらっても吐くまではいかないだろうし、代償が重すぎるってだけだから」
「そ、そうなの?それならよかったけど・・・ううん、でもやっぱり心配だよ。今日はもうこの辺にしない?もっと詳しく調べるのは、もう少し時間があるときにしようよ」
髪型を少しいじってみたり、小物を追加してみたりと実験を続けてしばらく。
大まかにであるが基準が見えてきたようだ。
『自分の感謝が足りていないのでは?』と実は心配していた紬も柊史の答えに安堵するが、ちょうどいい頃合いだと思い、いつまでも柊史に負荷をかけるわけにはいかないと、お開きにすることにした。
「う~ん、オレはまだ続けても大丈夫だけど・・・椎葉さんがそこまで本気で言うのなら」
「女の子らしい服を着れるのは嬉しいけど、保科君を苦しめてでもなんて絶対に思わないからね?苦しいのなら、正直言ってくれないと嫌だよ?」
「わ、わかったよ・・・でも、勿体ないなぁ」
「?なにが?」
今度こそ着替えようと帳の方に向かう紬を見ながら、柊史は残念そうに呟いた。
「いや、さっきも言ったけど、本当に眼福だからさ。今日はいつもより見ていられる時間も短かったし、勿体ないなって」
「・・・遊び人」
「どのへんがっ!?」
「・・・ふふっ」
またもナチュラルに口説いているかのような褒め言葉を連発する柊史に、紬はジト眼を向ける。
だが、内心褒められて嬉しく思ってるのもバレているのだろうなと思うと、『怒らせてしまった!?』と慌てている柊史を横目に意地を張っているのも馬鹿馬鹿しくなって、ついクスリと笑ってしまった。
そして。
「そんなに勿体ないって思うのなら、写真撮ってくれてもいいかな?」
「・・・え?」
「ほら、ワタシだって保科君が張ってくれた、えっと、帳の中なら今の女の子らしいワタシを見れるけど、ここを出たらいつもの格好に戻っちゃうから。かと言って魔女のときは写真に映らないし」
「い、いいの?」
「もちろん!!・・・保科君が嘘を吐いていないなら、ワタシは、か、可愛いんだよね?だったら、その証拠をワタシも欲しいなって」
「わ、わかった・・・はい」
「?」
紬の申し出に『信じられない』という表情の柊史だったが、紬が嘘をついている様子がないことを確かめると、いそいそとポケットを漁り、財布を取り出した。
そこから紙幣を何枚か取り出そうとして少し迷い、意を決したように財布を丸ごと紬に差し出した。
紬からすれば意味不明の行動である。
「? なんでお財布を出すの?」
「いや、椎葉さん並に可愛い子の写真を撮るとか、こっちがお金払わないといけないレベルだし・・・」
「そんなに気を遣われたらむしろ気まずいよ!!本気でそう思ってくれてるのはわかるけど、お金はいらないって!!」
「ご、ごめん」
柊史のことだから本心なのだろうが、こんなことでお金のやり取りが発生するのは折角の良い感じの関係が穢れるような気がして嫌だった。
後、なんか犯罪臭がするので、大声でやめさせる。
そうして紆余曲折あったが、柊史は財布をしまい、代わりにスマホを取り出した。
夕暮れの公園の中、オレンジ色の光が差し込むベンチの前で、紬は自然体で立つ。
そんな紬を自分のスマホのレンズで捉えると、柊史はカウントダウンを始めた。
「それじゃあ、撮るよ?3,2,1・・・はい、撮った」
シャッターをタップすると、『カシャリ』という音ともに風景が切り取られる。
それを聞いて、紬が駆け寄ってきた。
「どれどれ?見せて?」
「ちょっと待って、今送るよ」
「・・・あ、届いた。これが、制服姿のワタシかぁ」
「我ながらうまく撮れたかな。うん、やっぱり可愛い」
「・・・も、もういちいち反応しないからね。でも、うん。保科君がそこまで言ってくれるだけはある、のかな?」
2人で並んで、お互いのスマホを見る。
そこには、制服に身を包んだ可愛らしい女の子が柔らかく微笑んでいるのだった。
ちょっと気を抜くとヒロインどうし嫌悪感MAXで殺し合いさせたくなる癖がでそうになります。
そんな作品を読みたい方は異能力バトルの応援もお願いいたします。
https://syosetu.org/novel/308682/
一応、柊史くんにはサノバウィッチの色んな問題を解決してもらうつもりでいますが、因幡さんまわりの問題は需要あるんでしょうかね。
私、3人以上のヒロインが登場するのは書いたことないし・・・
この作品をご存じでしょうか?①ダークギャザリング、②死印、③東方Project
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すべて知っている
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①と②を知ってる
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①と③を知ってる
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②と③を知ってる
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①だけ知ってる
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②だけ知ってる
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③だけ知ってる
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すべて知らない