コントラクト・ガーディアン─Over the World─   作:tea4

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序章―対極の月―#2

 

 鎧は、“デノンの騎士”や貴族家の私兵などが身に着けるような───この大陸で広く使われているプレートアーマーよりも細かいパーツに分かれていて、頭から爪先まで全身を覆っていた。

 

 何の素材できているのかは一見では判断がつかないが、滑らかで光沢がある。そのフォルムは、“鎧”と表したものの────どちらかというと、“SF映画”に出てくるような“人型ロボット”とかに近い気がする。

 

 バイザーがついた兜は、“バイク”の───“フルフェイスタイプ”と言うんだったかな。その“ヘルメット”に似ていて、剥き出しになっている箇所はない。切れ込みなども見当たらず、視界や換気はどうなっているのか判らなかった。

 

 胸甲の上寄りの真ん中部分に、貴族章が埋め込まれていた。それに、パーツごとに私の装備と同じ銀色の縁取りがされ────胸甲には、縁に沿って私のものと同じ模様が“箔押し”のように付けられていた。

 

 大剣を背負っているらしく、右肩から柄が───左太腿の脇から剣先が覗いている。柄は私の【聖剣】と同じで白地に星銀(ステラ・シルバー)の装飾がなされているようだ。

 

「ディンド卿?」

「はい、何でしょうか」

 

 私が呼びかけると、ディンド卿は私の方へと顔の正面を向ける。切れ込みはなくとも、ちゃんと見えているらしい。

 

 それに、声が明瞭に聞こえたことを鑑みると、密閉されているわけでない?

 

「兜に切れ込みなどが見られないのですが────呼吸などは大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。視界も、つけていないときと変わらず、遮られることなく周囲を見渡せます」

 

 そう言った後、ディンド卿は、腕を上げたり一歩踏み出したりしてみる。

 

「これ、どうなっているのでしょうね。すごく動きやすいです。軽くて────まるで鎧などつけていないみたいだ」

 

 ちょっと興奮気味のディンド卿に、苦笑が漏れる。まあ、無理もない。

 

 それにしても────さすが古代魔術帝国の技術というべきか。その性能は、驚くべき代物のようだ。

 

「ディンドは鎧なのか…」

 

 レド様がぽつりと呟く。確かに、私もそれは思った。私の装備がドレスのような感じだったから、てっきり────

 

「まあ、ディンドには鎧の方が似合うよな…」

「ええ、そうですね…」

 

 ディンド卿は、“王子様”ってイメージではないかな…。

 

「ディンド卿の貴族章、やはり“(ふくろう)”だったみたいですね」

「ああ。俺のは────これは…、何だろうな?」

 

 レド様の貴族章は、漫画などで使われる光の“エフェクト”みたいな十字の細かい透かし模様が無数に入った円形のメダルで────私には、“紫陽花(あじさい)”とか“小手毬(こでまり)”といったような小花が集まった花に見えた。

 

 皇宮で保管されているメダルは残りが少ないらしく、その中からレド様とディンド卿に合いそうなものを選んでくれたそうだ。

 

 “月”に纏わるモチーフは、皇子に与えられる3つの個章とロウェルダ公爵家の貴族章の4つのみのようで────レド様には、なるべく“月”に似ているものを選んでくれたとのことだった。

 

「まあ、認定されれば判るか。────ノルン、頼む」

「はい、(マスター)ルガレド」

 

 ノルンの身体が、先程同様、淡い光を帯びる。

 

 

魂魄───魔力量───身体能力───技能───経験───オールクリア

聖騎士(グローリアス・ナイト)】として認定されました

認識章(コード・クレスト)皓月(ダズル・マーニ)】───

ルガレド=アン・レーヴァ名義に書き換えを開始します────完了

特殊能力【武装化(アーマメント)】を付与───

特殊能力【(シールド)】を付与───

特殊能力【防御(ガード)】を付与───

特殊能力【防御壁(バリケード)】を付与───

武装化(アーマメント)】を発動します───【潜在記憶(アニマ・レコード)】検索───【抽出(ピックアップ)】───【顕在化(セットアップ)】…

 

 

 ノルンのアナウンスに従って、【武装化(アーマメント)】を実現すべくレド様の身体を眩い光が包む。

 

 皆が見守る中、光に覆われたレド様の影が徐々に変化していき────やがて、光が消え失せた。

 

「…っ」

 

 レド様の姿を目にして、私は思わず息を呑む。

 

 纏っているのは────ディンド卿と同じく、純白の鎧だ。細かいパーツに分かれているのも、銀色の縁取りや箔押しのような模様が入っているのも、貴族章が胸甲に埋め込まれているのも同じ。

 

 だけど、ディンド卿のように全身ではなく、要所にだけに充てられている。

 質感というか───輝きも、見るからに違う。

 

 それから、レド様には兜はなく、左眼から頬にかけて、純白の仮面の欠片のようなもので覆われていた。これにも銀の縁取りと箔押しのような模様で装飾がなされていたが────それだけでなく、所々に嵌め込まれた聖結晶(アダマンタイト)が煌きを放つ。

 

 そして────その背には、純白のマントと、ディンド卿の【聖剣】によく似た長剣を帯びている。

 

 ディンド卿のときに輪をかけて、仲間たちから感嘆の声が零れたが────レド様に見惚れていた私の耳には入らなかった。

 

「リゼ?」

 

 レド様に声をかけられて、反射的に返す。

 

「すごく格好いいです」

 

 レド様が嬉しそうな笑みを零し、私は今度こそ我に返る。何言ってんの、私…!

 

 ああ、久々にやってしまった。うぅ、皆の視線が生温かい…。いや、一部ニマニマ笑いしている人たちがいるけど…。

 

「っと、とにかく、性能を確かめてみますねっ」

「ああ。頼む」

「お願いします」

 

 【心眼(インサイト・アイズ)】を発動させて、まずはディンド卿に向ける。

 

 ディンド卿の鎧は、古代魔術帝国で造られた特殊な“合金”で出来ているようだ。

 

「では、ディンド卿から。その純白の鎧は魔導機構のようですね。思考能力を含めた身体能力を上げる効果と、周囲の魔素を取り込み魔力を底上げする効果があり────それから、竜種は無理でも、……【魔導巨兵(マギアギガス)】の一撃には耐えられるほどの耐久性があるらしく、汚れも付きにくいみたいです」

 

 【魔導巨兵(マギアギガス)】という一言に、レド様とディンド卿だけでなく、他の仲間たちも表情を強張らせる。

 

「……そうか。では、剣は?」

 

 ディンド卿が背負っていた大剣を抜き、私が見やすいように床に剣先をつける。

 

 聖銀(ミスリル)の剣身の中心に聖結晶(アダマンタイト)が嵌め込まれており、そこに幾つもの魔術式が折り重なるようにびっしり刻まれている。

 

「………私と同じ【聖剣】です」

 

 しかも、型式も同じ────【聖剣ver.9】。

 

「等級は【一級】で、【魂魄】まで斬れるとのことです。ただ…、魔力を通せば、刃毀れやある程度の傷なら回復するみたいですが────折れたりしたら、私の【聖剣】のように完全原状回復は不可能なようです」

「そうか。だが────【聖剣】が手に入れられたのは有難い」

「本当に」

 

 レド様とディンド卿が、安堵の溜息を()く。

 

「では、次は俺のを頼む」

 

 ディンド卿に倣って、レド様が長剣を抜いた。

 

「はい」

 

 私は頷き、レド様に向き直る。また見惚れてしまわないよう気を張って、レド様の全身に視線を走らせる。

 

「っ?!」

「リゼ?」

 

「…………レド様のその鎧は、“鎧鱗(がいりん)”と呼ばれるドラゴンの外皮で造られているようです。────()()()()ガンドニエルムの」

 

 私が告げた言葉に、レド様だけでなく仲間たちの眼が見開かれる。

 

「“ガンドニエルム”が────古代魔術帝国の初代皇帝……?」

 

 一拍置いて、ディンド卿が呟く。

 

 “ガンドニエルム”とは、神竜ガルファルリエムと彼の“神子”との間に生まれた子供の名だったはずだ。そして、それは────レド様に宿る魂魄がこの世界に生まれ落ちたときの器でもある。

 

「……それについては、後で考えよう。────リゼ、続きを」

「解りました」

 

 レド様の仰る通り、ここであれこれ考え込むより、アルデルファルムに話を聴く方が早いだろう。

 

「“ガンドニエルムの子孫”であるレド様なら“鎧鱗”の性能を最大限に引き出すことができ、竜種の一撃にも耐えることが可能で────また、“鎧鱗”が呼吸することによって周囲の魔素を定期的に取り込み、魔力へと変換されるみたいです。滅多な攻撃では傷つくことはありませんが、万が一傷つくことがあっても、レド様の魔力を取り込んで修復するようです。

それから、その仮面ですが────月銀(マーニ・シルバー)でできた魔導機構で、“神眼”で得た視覚情報を分析してくれるとのことです。それと、戦闘の際には脳の働きを補佐してくれるらしく、つけていれば五感の処理能力と思考能力の速度が上がるようです」

「………相変わらず、突拍子もないな」

 

「剣の方は────私とディンド卿と同じ【聖剣】ですね。等級に関しては、私と同じ【超級】となっています」

「そうか。早速、習練したいところだが────今日は無理だな」

「そうですね」

 

 だけど────これで、レド様も【聖剣】を手に入れることができた。

 

 

 レド様はまだ【神剣】を扱うことができない。

 

 戦闘中鞘から抜けなかったことを白炎様に相談したところ、おそらく未だ神竜人に成りきっていないレド様では【神剣】を制御できないからだろうと仰っていた。

 

 レド様が神竜人に成るまでに、【魔導巨兵(マギアギガス)】が出現しないとも限らない。

 

「そういえば────レド様の貴族章は“月”みたいですね」

「ああ、そのようだな。皇子の個章に使われているものとは違って、これが“月”には見えなかったのだろうな」

 

 この透かし模様は、光のエフェクトで合っていたらしい。“輝く月”というわけだ。

 

「他の貴族章でも、間違った認識をされているものがありそうですね」

「確かにな」

 

 

◇◇◇

 

 

「すべての月が会するこの()き日に、よくぞ集まってくれた」

 

 皇王陛下が上座に据えられた玉座に着くなり口を開き、その確りとした御声が大ホールに響き渡る。

 

 辞令式に続いて皇王陛下御自ら開会の口上を始めたことに、参加者が微かにざわめいた。

 

「まずは────吉報を。第二皇子ルガレドが先の魔獣騒ぎで快挙を成し遂げた功により叙爵し、レーヴァ公爵家を起ち上げた」

 

 皇王陛下のお言葉を受け、階下に控えていたレド様が参加者たちに向かって一歩踏み出す。ただの顔見せのため、辞儀はしない。

 

「同じ功績で、ルガレドの親衛騎士であるファルリエム子爵の伯爵への陞爵───ルガレドの側近であるディンドが叙爵しファリエ男爵となったことも、併せてここに報告しておく」

 

 私たちの背後に控えていたディンド卿と共に、レド様に並び立ち、ディンド卿はボウアンドスクレープ、私はカーテシーの辞儀をとる。

 

「三人の皇子がすべて成人し────今年度は、今までとは違う一年となるだろう。この国にとって、より良い一年となることを願っている。

それでは、夜会を始めるとしよう。皆───楽しんでいってくれ」

 

 こうして────新年度を祝う夜会は始まった。

 

 

 

 ディンド卿が一歩下がり、私は差し出されたレド様の手を取る。

 

 ゼアルム殿下が自身の親衛騎士であるゲルリオル伯爵令嬢の手を引き、上座から下りてきて、私たちの横に並んだ。

 

 少し遅れて、おそらくベイラリオ侯爵家門の女性を連れたジェスレム皇子が下り立つ。

 

 

 今夜は、年に一度の三つの月が同時に昇る日だ。それに因んで、ファーストダンスは“月”を冠された皇子が踊ることになっている。

 

 昨年度はゼアルム殿下のみだったようだが、今年度は三人の皇子が揃って踊る。

 

 大ホールの片隅に控えていた楽団員が各々の楽器を構えると、音色の違う様々な音が一つの滑らかな楽の音となって流れ始める。

 

 レド様に導かれるようにしてホールの中央に進み出た私は、楽の音に乗ってステップを踏む。

 

 

 今日の私は、レド様の親衛騎士でありながらパートナーとして参加している。そのため、それ相応の装いをしなければならなかった。

 

 軍国主義時代の女性騎士が舞踏会でしたというスカート丈の短いドレススタイルに倣い、靴元の見える仕様だ。いついかなる時でも戦えるようにとのことらしい。

 

 ただ、あの時代では大目に見られていた膝上丈は、さすがに夜会で着用するのは“はしたない”と見做されるので、踝が見える程度にしてある。

 

 身に纏っているのは、深青色のオフショルダーでプリンセスラインのシンプルなドレスだが────裾をたくし上げて固定し、その下に着けた漆黒の踝丈のスカートを覗かせている。

 

 足元は魔玄製のストラップパンプスだ。

 

 これは、以前特注で作ってもらったものとは別物で────ヒールが割と高く、ほっそりとした爪先のパンプスではあるものの、レースで縁取られた幅広のリボンでできたストラップで足首に固定されているため脱げる心配はないし、古代魔術帝国の支給品のブーツを分析した恩恵か、【最適化(オプティマイズ)】で安定した履き心地になっている。

 

 ドレスの下には、透け感のある黒く染めたシフォンで作られたノースリーブのブラウスを着ているので、ネックレスの類はつけていない。

 

 ブラウスは、後ろ身頃で開閉するようになっていて、全面に黒い糸で繊細な刺繍が施してある。首元にはパンプスのストラップに似せた幅広のリボンが立ち襟に重ねるように巻かれ、後ろで蝶結びにして背中に垂らしている。

 

 髪は編み込んで結い上げ、右側面に飾ったファルリエムの貴族章をメインに、連ねた極小粒の銀玉を緩く這わせて彩っている。

 

 連ねた銀玉には、ところどころに紫水晶(アメジスト)の粒が入っていて────今回はドレスではなく、これがレド様のお色を示す。

 

 両手に着けた二の腕まであるグローブは、ブラウスと揃いの仕様で────当然、武具を収めた魔導機構だ。

 

 

 前回の夜会での装いとは違い、足元が露になっているので、ステップを間違えたらごまかせない。

 

 私は慎重に────でも、慎重になり過ぎて楽の音から外れてしまわないよう心掛けながら、ステップを踏み続けた。

 

 レド様のリードもあって、滞ることなく、最後まで踊り終える。

 

 指揮者が空を掴むように掌を閉じた。それに合わせて音楽も、纏め上げられるようにして止まった。

 

 動きを止めた私たちに、参加者たちの拍手の音が降り注ぐ。

 

 私たちがその場から退くと、列をなす参加者たちの中から幾つかのペアが入れ替わるように進み出た。

 

 再び楽団員が手にした楽器を奏で始め────次のダンスが始まった。

 

 

「お疲れ様でした───ルガレド様、リゼラ様」

 

 ディンド卿に、私たちが踊っている間に用意しておいてくれたグラスを差し出される。レド様と私は有難く受け取って、口に含んだ。それは、淡い色合いの果実水で────仄かな甘さと酸味が沁みた。

 

 ふと視線を感じて、私たちは同時に振り向いた。側近と護衛に合流したジェスレム皇子が、私たちを見ている。

 

 ジェスレム皇子はニタニタと気色悪い笑いを湛え、パートナーである女性をその場に残して、こちらへとやって来る。

 

 そして────レド様に挨拶をすることもなく、いきなり私に向かって仰々しく右手を差し出した。

 

「次の一曲、お相手願えるかな?」

「………」

 

 断られることなど微塵も考えていないであろう自信に満ち満ちたジェスレム皇子に、私は思わず無言になった。

 

 女性騎士が足元を露にしたドレスを着用するのは“護衛として参加している”との表明で、ダンスに誘うのはマナー違反になると私は習ったのだけれど────案の定と言うべきか、ジェスレム皇子は知らないらしい。

 

「申し訳ございません。ファーストダンスでは主のパートナーを務めさせていただきましたが、今宵は親衛騎士としてこの場に参加しております。せっかくのお申し出ではございますが────主のお傍を離れることになりますので、ダンスのお相手はご遠慮させていただきたく存じます」

 

 ジェスレム皇子は、眉と唇を震わせ怒りの表情を浮かべたものの、すぐに取り繕って言葉を続ける。

 

「別に、少しくらい放っておいても大丈夫だよ。何なら、兄上には僕の護衛をつけてあげるからさ。────ねえ、いいだろう、兄上」

 

 レド様の方に振り返ったジェスレム皇子の顔に、嘲りの色が滲む。

 

「断る」

 

 レド様が、にべもなく突っぱねる。

 

 ジェスレム皇子は、レド様に断られるとは本気で思っていなかったみたいで────虚を衝かれて間抜けな表情を曝した後、屈辱と怒りで顔を歪ませた。

 

「……あのさ、僕は気を遣って“兄上”と呼んであげているだけで────あんたは臣下に下って、もう皇子じゃなくなったんだよ。たかが公爵のくせに皇子の僕に逆らうつもり?」

「お前は、リゼの言葉を聴いていなかったのか?リゼは言ったはずだ────今宵は“親衛騎士”として参加している、と。親衛騎士は、皇族以外につくことはない。皇族の籍から外れたのなら、親衛騎士の任も解かれる。俺は叙爵はしたが────皇族から外れたわけではない」

 

 レド様の反論に、ジェスレム皇子はたじろいだ。言われた内容よりも、今まで言い返すことのなかったレド様が反論したことに衝撃を受けたようだ。

 

「そ、そんなわけ…」

「お前が信じようが信じまいが、事実だ」

 

 レド様はそこで言葉を切って、私とディンド卿へと顔を向ける。

 

「ファーストダンスは終わった。皇王陛下にご挨拶申し上げて退席する」

「な、話はまだ────」

「失礼する」

 

 それだけ言い捨て、レド様はジェスレム皇子から視線を逸らした。近くにいた給仕役の侍従にグラスを渡して、再び私たちを振り返る。

 

「行くぞ───リゼ、ディンド」

「はい、レド様」

「は」

 

 侍従にグラスを差し出し、ディンド卿と共に形ばかりの挨拶をジェスレム皇子に残してから、私はレド様に手を引かれるまま歩き出す。ディンド卿と姿をくらませたジグとレナスが、私たちの後に続く。

 

「ちょ、待てよ…!」

 

 ジェスレム皇子が追いすがる気配がした。

 

≪ジグ≫

≪は≫

 

 後ろを振り向かずに、レド様が命じる。ジグが、周囲の魔素に働きかけて【結界】を張る。およそ2㎡の───それほど大きいものではなかったが、足止めには十分だ。

 

 先に進めず混乱しているジェスレム皇子たちを後目(しりめ)に、私たちは足早にその場を立ち去った。

 

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