本読んで、ご飯食べて   作:恵の鷹

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駄文。それだけ。


第1話

 

「本をたくさん読みたい」

 

それが、この世界に転生する際に私が神様に言った希望だった。

 

 

 

生前、人の少ない地方都市に生まれた私は幼い頃から本を読むことが大好きだった。

 

外で遊ぶことも嫌いではないが、本は自分がしたこともない体験を想起させ、またいくつもの人々の思いや葛藤、ありとあらゆる喜怒哀楽を私にもたらしてくれた。

時間を忘れて本に没頭することもしばしばあり、学校が終わった夕方から翌日の朝まで読んでいることも珍しくなかった。

 

小学校、中学校、高校と、相も変わらず本を読み続け、気づけば大学に入学し、空いている時間は全て本に費やし、無事に地元の地方公務員に内定をもらい、このまま穏やかに人生を送っていくのだと思っていた矢先・・・

 

私は死んだみたいだ。

 

原因は分からない。

 

気付いたら真っ白な空間にいて、いつの間にか対面で眠そうな顔をしながらせんべいをぼりぼり食べていた老人に自身が死んだと告げられた。

 

「どんまい」

 

と、無感情に言った老人は、それから自分が神である事、これから私をどこともわからない異世界に送ることをただただ事務的に告げた。

 

正直、自分が死んだ実感もないままに告げられた内容を飲み込むには多少の時間を必要としたが、それでも転生した世界に本があればまあいいかと、勝手に思うことにした(ずぶとい)。生前に未練がないわけではないが、転生した先の、その世界で作られる物語にはすごく興味がある。すごく。

 

そうしていつの間にか老人の説明も終わり、いよいよ異世界へ送るとなったところで老人は私に

 

「異世界に行く前に、希望があれば転生先でなにか特典を与えることができる」

 

と言った。

いきなりのことで困惑したが、これはあれだ。チートだ。絶対チートだ。進研ゼ〇で見たことある。

 

だが私は転生した先で好きなだけ本が読めるならそれでいい。

あまり外に出たくもないし、のんびりと暮らしていけるならそれが一番だ。

転生した先がどんな世界かは想像もつかないが、私の希望はただ一つ。

 

「本をたくさん読みたい」

 

それだけでいい。

 

神様は数秒の沈黙の後、私の顔に手をかざし、そこから眩い光が生まれ、視界が白に染まり、暖かい感覚が身体に触れ、そして・・・・

 

私は、異世界に転生した。

 

 

 

_______________________

 

 

 

 

転生した先での私の名前は「恵」。

 

恵はめぐみではなく、けいだ。よく間違えられる。

 

小説家の父親と、小さな料理屋を営む母親の下に生まれた。

 

この世界は私の想像していた異世界とは異なり、ドラゴンはいないし、ダンジョンはないし、魔法もなかった。

 

国名も日本であり、私の元いた世界と文明的な違いも少ないため、はじめは転生した実感がわかなかったが、この世界には明らかに元の世界と違うところがあった。

 

その最たるものはやはり母親だろう。

 

ケモ耳が生えていた。ケモ耳が生えていた。(大事なことなので、2回言った)

 

尻尾もあった。尻尾も生えていた。(大事なことなの、、、、)

 

ちなみに、父親は普通の人間のようで、外を出歩くようになってからは母親と同じような耳と尻尾を生やしている女性をたくさん見かけた(普通の女性もいた)。

 

どうやら女性のみにみられる特徴のようで、世間では彼女らを「ウマ娘」と呼んでいるらしい。

 

私の勘違いでなければ、それは前世の世界で流行っていた某アプリゲームに出てくるものだ。

(当時、私の2つ下の弟が私が本を読んでいる横でよくやっていたのをおぼろげながら覚えている。)

 

ニュースでも画面越しにレースをひた走るウマ娘はよく登場し、興奮しながら鼻血を出している母親の膝の上で一緒に見た(強制的に座らされた)。

 

初めてみる「ウマ娘」というものにはじめは興味を抱いたものの、家や近所、テレビといったメディアでもよく目にしていると、次第に気にならなくなり、今では毛とかの手入れが大変そうだなという印象しかない。

 

何より、この世界ではもう一つ、前世と違うところがあった。

 

『総務省の統計調査によりますと、現在日本の男女比は1:10まで進行しており、年々増加する男性への痴漢被害への対策など・・・・・』

 

そう、この世界は女性の数に比べ男性が圧倒的に少ないのである。

 

確かに小さい頃から町ではやたら女性の数が多いなとか、外出する時には母親がやたら防犯ブザーを持たせてくるなとか、主人公が女性の小説が多いなとか、よく周りの女性からじろじろ見られるなとか、小学生の時は学校に通わず自宅学習を勧められたりしたなとか、それっぽい違和感はあったがニュースを見るまでは全然気づかなかった(ただのバカ)。

 

なので社会での男女の在り方も前世とは違っていて、女性は一家の大黒柱として働きに、男性は家事、育児に専念するといった役割分担が一般的みたいだ。

 

また、長年続く男女比の影響か、この世界では人工授精の分野での発展が著しく、ひとり親家庭も少なくないらしい。

 

まあ私は基本的に家の中で本を読むか、たまに母親の店の手伝いを頼まれ働くくらいなのでこちらも徐々に気にならなくなった。何より一人で外に出るのは危ないからと両親が私の趣味の読書を推奨し、幼い頃から本を読めたのは幸いだった。

 

そんなこんなで特にこれといった出来事もないまま日々を過ごしていたのだが、、、

 

 

 

 

「是非、恵君に私が運営するトレセン学園の厨房で料理をしてもらいたい」

 

 

 

 

・・・・・・・なぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで一度、私がこの世界に転生するにあたり神様から与えられた特典について紹介したいと思う。

 

1つは「速読」。

 

これは文字通り本を早く読めるもので、300pくらいの小説なら30分くらいで読むことができる。周りから見れば地味だと思うかもしれないが、私にとってはとてもうれしい。狂喜乱舞するくらいうれしい。(実際にこの能力を自覚した時は父親が見てる前でうれしさのあまり発光した←何言ってるか分からない)

 

そして2つめは「料理」である。

 

これは小学校高学年の頃、はじめて母親の手伝いで料理を手伝ったときに自覚した。

 

目の前に置かれた食材を見たら、自然と料理の完成系を頭の中に思い浮かべることができ、その通りに調理するとなんかめっっちゃうまい料理が作れたのである(語彙力×)。

 

どのくらいうまい料理なのか、言葉にするのは難しいが、出来上がった肉じゃがを食べた父親が突然痙攣したかと思えば急に泣き出し、ひたすら「うまい、うまい、、、」と呟くbotになったり、同じように肉じゃがを食べて痙攣した母親が上着を脱いで町内を爆速10周したと言えば、ある程度伝わるのではないだろうか。

 

神様から与えられた特典は私の希望通り、「速読」だけなのかと思っていたのだから、これにはとても驚いた。

 

ただの神様の気紛れか、それとも与えた「速読」が地味すぎるからサービスしてつけてくれたのか分からないが、おいしい料理を食べられるのだから、めっちゃ感謝することにする。ありがとう神様。

 

というわけで、それまでは皿洗いや配膳などの簡単な手伝いをしていたのだが、本格的に厨房を任されることになってしまった(なんで?)。

 

私がなんかめっちゃ高速で、めっちゃうまい料理を作れることに母親自身は「流石、うちの息子ね!」というだけで、特に疑問を感じることもなく、おいしいものは正義と厨房を明け渡した。プライドはないらしい。また、父親も一時期は私を変な目で見ていたものの、出される料理を食べているうちに気にしなくなったみたいだ。

 

いきなり厨房を明け渡されたことに多少めんどくさいなーと感じたものの、それまでたくさんの本を買ってもらったことに対する恩がある。

 

中学校への進学を控える時期でもあったのだが、男は願書を出すだけで簡単に入学できるため読書をする以外暇だったのもある(前世の記憶もあるため学力自体そもそも問題ない)。

 

「速読」のおかげで日々の読書欲も満たせるため、私はちょっと気合を入れて料理をしてみることにした。

 

以下、私が厨房で料理を作るようになってからの1週間の記録である。

 

 

〇月×日 月曜日

 

元々、私がお手伝いをしていることでお客の入りも多く、お店を開ける8時にはすでに10人の列が並んでいた。

 

客の中には常連の白髪の眼光の鋭い「鷹の目」さん(名前を覚えるのが苦手な為、私はよく勝手にあだ名をつけている)、朝から目の下に濃い隈を残して今にも死にそうな顔をしている「限界OL」さん、婚期を逃しまくってもうすぐ三十路に差し掛かる金髪眼鏡ウマ娘の「喪女」さん、そしてうちの近くに住んでいる一見美少女にしか見えない幼馴染のおどおど系男の娘「驚愕」くんがいる。

 

朝からそうそうたる顔ぶれを目にして私は無表情のまま気合を入れた。

 

お店に入ってくる客達ははじめに母親の代わりに厨房に立つ私に驚いていたものの、母親から「飛ぶぞ」と言われ、おとなしく席に着いていた。

 

うちは以前から母親が一人で厨房を回していたためメニューは朝定食、昼定食、夜定食のみである。

 

今日の朝定食の内容は「ごはん」、「わかめと豆腐の味噌汁」、「卵焼き」、「鯖の味噌煮」、「冷ややっこ」である。

 

私は食材を前に黙々と調理を進める。頭にはすでに完成系が見えており、作業中はなぜか疲れを全く感じない。恐らく「料理」スキルのおかげだろう。

 

合計10人分の料理は3分で出来た。

 

この時点で正面のカウンター席でなんとなしに調理を見ていた驚愕くんは私の調理スピードに驚愕しずっと口ぽかーんして、鷹の目さんはただでさえ鋭い眼光をさらに細くしていた。

 

母親は気にせず配膳を済ませ、、、、

 

いよいよ実食の時である。

 

 

〇月×日 火曜日

 

昨日は大変だった。ほんとに大変だった。

 

私が作った朝定食を皆痙攣しながら食べていた時は良かったのだが(良くない)、驚愕くんは食べ終わった後ずっと口ぽかーん(( ゚д゚)←こんな顔)していて、鷹の目さんはなんかひたすらに私を見つめたまま微動だにせず、限界OLさんは「くあlがjrgぁjrgなjr!!!!!」とか叫びだすし、喪女さんは急に立ち上がったと思ったら外に飛び出し、汗だくになって帰ってきたかと思えば私に向かって突進してきて母親との突発ガチバトルが始まったし、他のお客さんもなんか輪になってマイムマイムを踊るしで現場はカオスを極めた。

 

私は1人冷静に「ああ、ここが地獄か」と呟いた後、お店の前に"本日営業休止"を張り付け、一度ぐるっと店内を改めて見回した後、、、

 

ゆっくりと、本を読みに家に帰った。

 

そんなわけで、あの後ぼろぼろになって帰ってきた母に私は数日間の休みを勧めたのだが、母はすでに何人かの友達に私の作る料理のことを自慢したらしく、今更後に引くなんてできないと、とりあえず夜のみの限定的な営業を決めた。母は強い。

 

私も母にそこまで言われたのならとうれしく思い、きっと昨日のことは何かの勘違いなんだ(←ばか)と改めて夜の営業に気合を入れた。

 

そして夜も差し迫る18時、来店したのは母の学生時代からの友達である大和撫子風の母親「たれ目」さんとその娘の「つり目」ちゃん、なんかいつもきらきらしてる「きらら」さんとその娘の「金髪」ちゃん、最後になにとは言わないけど体の一部がめちゃでかい「巨乳」さんとその娘の「貧乳」ちゃんである(ちなみに全員ウマ娘)。

 

うちの母と3人の母親はなんでも昔父を巡って骨肉の争いをしたらしく、最終的には母に軍配が上がったがそれでも今に至るまで友達を続けているらしい。不思議だなー。

 

3人はシングルマザーでそれぞれの娘は今の私と同級生になる。小学校時代は全く学校に行かなかったためあまり実感はないがちょくちょく店には来ているため(特につり目ちゃん)久々でもない。

 

つり目ちゃん、金髪ちゃん、貧乳ちゃんはちらちらこっちを見てきているが気にしない。

 

まあ、そんなことは置いておいてそろそろ料理を始めよう。

 

今日の午前中に読んだ本がかなり面白かったため今の私は絶好調だ。

 

私は包丁を手に取った。

 

 

〇月×日 水曜日

 

私はもう家族以外に料理を作らないと決めた。

 

ウマ娘×くそうまい料理=カオス はっきりわかんだね。

 

料理を食べた直後に当たり前のようにたれ目さん、きららさん、巨乳さんは店を飛び出していった。なんか叫び声が聞こえるが気にしなくていいだろう。母さんは後を追っていった。

 

店に残されたつり目ちゃんは私を"キッ"とにらみつけたかと思うと「黙って私と結婚しなさい!」「じゃなきゃ場×××××っつ×××(放送禁止用語)!!!!!!」と叫びだし、金髪ちゃんはなんかずっと「ほわ~」っていって白目剥いてるし、貧乳ちゃんは黙ったまま壁に移動したかと思うと壁に向かってなんかぶつぶつ言いだした。

 

この時点ですでに私はもう家に帰りたいと思い、昨日と同じようにお店の扉に「本日営業休止」を貼ってから帰ろうとしたものの、いつの間にか復活した3人が急に静かになったと思ったらその場で乱闘を始めてしまった。

 

すきを見てなんとか帰宅し、家にいる父の手を無言のまま引いてそのままお店に届けた後、「後始末は頼みます」と言って店の扉を閉め、

 

そして私は改めて帰宅した。

 

 

〇月×日 木曜日

 

『本日営業休止』

 

母は昨日から家に帰ってこない。でも大丈夫、母は強いから。

 

父も夜11時頃に帰ってきたかと思うと、玄関先で白目を剥いて倒れてしまった。

私はそっとしておいた。

 

 

〇月×日 金曜日

 

『本日営業休止』

 

母はまだ帰ってこない。でもきっと大丈夫。私は母を信じてる。

 

父は目覚めてから自室の書斎に閉じこもり、それからずっと出てこない。なぜだろう。

 

 

〇月×日 土曜日

 

『本日営業休止』

 

母が帰ってきた。なんかあの後4人で富士山の山頂までひた走り眼前の風景を肴に一杯やってたらしい。

何を言ってるのか分からなかったが、きっと疲れているのだろうと思い、そっとしておいた。

 

父は私の特製お味噌汁を飲ませてあげたら復活した。号泣してた。

 

 

〇月×日 日曜日

 

『本日営業休止』

 

あれから店の前には毎日長蛇の列ができているが気にしない。私はもう料理は作らない。

 

今はゆっくり本を読んで過ごしたい。

 

と、思っていたのだが。

 

 

〇月×日 月曜日

 

家に鷹の目さんが来た。

 

家に来てもつくらない、そう言ったのだが鋭い眼光の婆さんは気にした風もない。

 

なんでもないように私に告げる。

 

 

 

「是非、恵君に私が運営するトレセン学園の厨房で料理をしてもらいたい」

 

 

 

 

・・・・・・・なぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駄文。ただそれだけ。
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