本読んで、ご飯食べて   作:恵の鷹

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寝れなさ過ぎて頭が沸騰しそうです。


第11話

 

 

「着いたわ、ここよ。」

 

 

 

 

あれから近くで待機していたメジロ家の車に乗せられた私は、その後誰かが救出してくれるなんて奇跡など起きるわけもなく、とうとうメジロ家のお屋敷まで連れられてしまった。

 

道中、ラモーヌさんはしきりに私に話しかけてきた。

 

趣味は油絵でいくつもの作品があるから屋敷に着いたら見てもらいたいということ。最近のレースは情熱のある子が少なくて退屈しているということ。妹のアルダンさんがかわいくてかわいくて仕方がないこと。ドーベルさんやパーマーさんなど他のメジロのウマ娘の子たちが自分に気後れしているみたいで全然話しかけてもらえず悩んでいること。あとはルドルフさんというトレセン学園の生徒会長さんのギャグがくそつまらないことなど。

 

語り方が上手で、思わず私も積極的に相槌を打っていたのが良かったのか、腕の拘束はカチコチからややかためくらいまで緩めてくれた。

 

一応私の趣味なども聞かれたが、読書としか語ることがなくて、あとは今まで読んできた本なんかを淡々と語っていった。それでも彼女は面白そうに聞いていて、メジロ家には先代の当主達が集めた数々の蔵書があるから案内してあげると・・・・・ちょっとわくわくしてしまった。

 

 

で、まあ着いたのはいいのだが、、、、、。

 

・・・でかい。

 

ひたすらにでかくて広い。

 

まあ事前に屋敷とは聞いていたから心の準備はできていたつもりだったが、、だけどこれは学校と言われても納得できてしまう程に大きい。

 

今は日も落ちているからたくさんの窓から漏れ出ているオレンジ色の淡い光が眼前の広大な庭を照らしていて、とても幻想的な風景になっている。

 

ラモーヌさん曰く、今見ている敷地の他にも、近くにメジロ家が所有する専用の練習施設や療養のための温泉施設などもあるらしい。また、ここ以外にもいくつもの別邸を所有しているとも。

 

メジロの皆さんて本物のお嬢様なんだな、、、。

 

というかこの屋敷に入ってしまって、本当に逃げられるのだろうか。とても不安になってきた。

 

 

「ふふ、何を呆けているのかしら?もうだいぶ日も落ちているわ、早くいきましょう。」

 

 

どのみち、ここまで来てしまった時点で無意味な問答か、、。

 

機会を待つ、そう決めたのだ。こんなところで臆するわけにはいかない。

 

意を決して屋敷へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「お帰りなさいませ、お嬢様。」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

・・・・・・やっぱり今すぐ帰りたい。

 

メジロ家の屋敷に入って早々、私たちを出迎えてくれたのは一糸乱れぬ完璧な礼をみせてくれたメジロ家のメイドと執事の方々だった。

 

メイドと執事と言っても多くが30代くらいから60代くらいまでの落ち着い雰囲気の方々が多くて、それにはちょっとだけ安心した。

 

どうやら私はこの世界に来てから若い女性に若干のトラウマを抱えてしまっているらしく、それが初対面ともなるといささか気後れしてしまう。ああ、今ならはじめてあった頃の驚愕君の気持ちが分かる気がする。

 

というかこの人選はラモーヌさんが配慮してくれたのかな。

 

 

「ええ、いらぬ虫がついては面倒だもの。・・・・それより、おばあ様がおられないみたいだけれど?」

 

 

「はい、大奥様は先ほど急ぎの予定が入ってしまわれ、現在はご不在となっております。」

 

 

答えたのはメイドさんの中でも一番のご年配に見える老執事さんだった。それでも背筋はピンと伸びていて、その佇まいはまったく衰えを感じさせない。

 

 

「そう、なら仕方がないわね。であればひとまずアナタはこの子を客間へ案内してあげて頂戴。くれぐれも丁重に(訳:絶対に逃がさないように、それと若い使用人も遠ざけて)、ね。」

 

 

「かしこまりました。」

 

 

・・・なんか今一瞬ものすごく背筋に寒気がきたんだが、気のせいだろうか。

 

ラモーヌさんはいろいろ支度があるとかで1人足早に立ち去っていってしまった。

 

なんだか唯我独尊を体現しているような人だな。まあ少なくとも彼女は私を無理矢理襲うだとか、私が本当に嫌がるようなことはしない気がする。

 

まだ完全に気を許せているわけではないが、、、他のウマ娘の子たちに捕まるよりましだったと考えるべきか、、。

 

 

 

 

その後、老執事さんに案内されて私に用意された客間へと向かった。

 

まあ、予想していたとはいえ、私1人に用意された部屋としてはいささか広すぎないだろうか、、、。部屋には備え付けのトイレやお風呂もあって、テーブルやソファなどの家具は素人目で見ても分かるほどに品がある。

 

それから老執事さんはいったい何日滞在させるつもりだと思うほどの着替えや生活必需品などを置いて、行ってしまった。

 

部屋には私1人。

 

とりあえず汗が気持ち悪かったから簡単にシャワーを浴びてからベットに横になる。

 

 

・・・なんだか今日一日でとても大変なことになってしまったな。本来なら今頃はホテルのベッドで眠っていて、そして明けて早朝の便で小暮町へと帰るつもりだったのだが。

 

チラッと窓を見る。

 

ここは4階、下にクッションになりそうなものはない。アクション映画みたいに窓からの逃走はできないな。

 

扉の先、廊下には等間隔にメジロ家の使用人さん達が待機している(すでに確認済み)。

 

私がひとりでに客間を離れようとしても、当然のように背後に2人付いてくる。どうあっても逃がすつもりはないらしい。

 

まあ、簡単にはいかないことなんて分かっているとも。

 

それから10分くらい、少しうとうとしていたところで扉がトントンとノックされた。

 

 

「入るわよ。」

 

 

当然のように私の返事を聞かずに入ってきたラモーヌさん。

 

今日はもう遅いが、どうしても私にメジロ家の書斎をみせておきたいらしい。

 

 

「本が好きなアナタなら、きっと気に入るはずよ。」

 

 

そう言って妖艶に微笑むラモーヌさんについていく。

 

書斎は屋敷の3階の奥まったところにあった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、開けるわね。」

 

 

そう言って開かれた扉の先には―――

 

 

本、本、本、本、本、本、本・・・・・・縦に横に、所狭しとおさめられている圧巻の蔵書。

 

奥行きもかなりあって、これは数千冊とかもはやそういう規模ではない。東京にある都立図書館とまではいかないが、それでも1個人が持つ量としてはありえないくらいの蔵書だ。

 

ラモーヌさんに詳しく話を聞くと、どうやらここの蔵書は歴代のメジロ家当主が集めてきたものらしい。中でも先々代の当主の人はかなりの読書家だったらしく、世界中の数々の名作を手に入れ、その代で一気に蔵書の数を増やしたらしい。

 

中を少しだけ案内してもらうと、やはりというか、レースの名門というだけあって、レース関係の本だったり、医療本だったりが多いという感じだが、小説もかなりの数があった。

 

目にする小説すべて、私がこの世界に転生してから目にしたこともないものばかり。

 

 

「それで、メジロ家の書斎は気に入ってもらえたかしら?・・・って、ふふっ。そんなに目を輝かせて、聞くまでもなかったわね。・・・というか、心なしかアナタの身体全体が発光しているように見えるのだけれど、、、。」

 

 

ラモーヌさんが何か言っているが全く耳に入ってこない。

 

いや、それも仕方がないだろう。

 

これだけのものを見せられたのだ。もう私の頭の中には逃走なんて言葉はきれいさっぱり消えている。

 

ああ、ここにある小説を全て読むのにどれだけの時間を必要とするのだろう。

 

私の速読ありきでも到底予測できるものではない。

 

ひとまず、私の中でメジロ家での長期滞在が決定的になったのは確かだ。

 

身体の輝きを抑えて、ひとまず落ち着きを取り戻す。

 

故郷にいる両親や驚愕君のことを思い出す。数分前まではあれだけ帰りたいと思っていたのに、今はそんな気が微塵もおきない。

 

 

 

 

隣で私を不思議そうに見ていたラモーヌさんに向き直る。

 

多くの言葉はいらないな。

 

私の気持ちを素直に吐露するだけでいい。

 

 

「・・・どうしたのかしら?急にそんなに真剣な顔をして、、。」

 

 

自分でもこんなことになるなんて思わなかった。私の選択を周りの大人はこぞって非難することだろう。だが構わない。これだけの本を目にした後でおめおめと帰るくらいなら、私は死を選ぶ。

 

 

だから―――

 

 

小暮町のみんな、ごめんね。

 

 

 

私、メジロの子になります(本を読み終える間)!!!

 

 

 

「あら、ふふ♡ええ、もちろん歓迎するわ。改めて、ようこそメジロ家へ。これから末永くよろしくね(永遠に)。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私の長期滞在が決定したことで嬉しさが爆発したのか、ラモーヌさんは客間に戻った私の下を再び訪れた。

 

その両腕には顔が見えなくなるほどのアルバムが積まれていて、聞けば妹のアルダンさんの写真が多数おさめられているらしい。

 

私が呆然としていることなどお構いなしに、ラモーヌさんはベッドの上でアルバムを広げ始め、妹のアルダンのかわいさを熱心にプレゼンし始めた。

 

 

以下、あまりにも長いので一部抜粋↓

 

 

 

「この時はね、おばあさまが持ってきてくれたホラー映画を2人でみたのだけれど、その夜に1人で眠れなくなったアルダンが私の下を訪ねてきてね、、、ふふっ、、、、「姉様、今夜は一緒に寝てくれませんかっ」なんて目の端に涙を溜めながらいうものだから、、もうかわいくてかわいくてね、私は思わず――」

 

「・・・・・・・。」

 

 

 

「これはアルダンが初めて手作りのチョコレートを作ってくれた時のもの。明言はしていなかったけれど、あれは確実に本命でしょうね。小さい手で一生懸命に作ってくれて、、、ああ、あのチョコレートは美味しかった。」

 

「・・・・・・。」

 

 

「これはアルダンが初めておねしょした時のものね。アルダン、どうにか誤魔化せないかとかなり焦ったみたいで、最終的にマックイーンがやったって言いだしてね、、そのせいでマックイーンは泣き出すし、つられてアルダンも泣いちゃって大変だったわ。」

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

・・・・あまりにも止まりそうになかったので一旦話を止めてもらった。

 

彼女は妹さんがかわいくて仕方がないのだろう。

 

その顔はまだ話したりないとうずうずしている。

 

だがそういうことなら私も黙っていられない。私の生前の弟も小さい頃からめちゃくちゃかわいくて、様々なエピソードがある。

 

今世ではもういないが、ラモーヌさんの話を聞いて私も話したくなってきた。

 

まあもしもの時は驚愕くんのことだということにしておけばいいか。

 

 

 

それから、私とラモーヌさんは時間を忘れてお互いの弟妹のことについて語り明かし、気づけば窓からは明るい光が差し込んでいた。

 

ラモーヌさんは普段こういった話をする機会が全くなかったみたいで、結局一睡もできていないというのに、部屋を出るときは全身から幸せオーラを醸し出していて、肌はめちゃくちゃツヤツヤしていた。

 

私はその時点でかなり限界が近く、その日は朝食のことなんて考える暇もなく気絶するように眠ってしまった。

 

 

ああ、そういえばラモーヌさんと語り合っていた最中にお寿司屋にいた他のメジロのウマ娘の子たちも屋敷に寄って来ていた。

 

部屋を訪ねてきたマックイーンさんは、わざわざお店にあった私のスマホを届けてくれて、めちゃくちゃ助かった。

 

その後、なぜかマックイーンさんはその場から立ち去ろうとせず、他の子たちも扉の前でジーっとこちらを見ていたが、ラモーヌさんのとてつもない眼力の前に、あえなく撤退していった。

 

彼女達からはあの後お店でどうなったかの詳細は聞けなかったが、なぜか皆ボロボロで憔悴していたことから、きっと頭が冷えるような何かがあったのだろう。

 

起きてからまた詳しい事情を聞こうと思う。

 

桜さんやおばあさんの安否も気になるしね。

 

あとは、両親にもまだしばらくここに滞在することを伝えなきゃな。それと当然黒服さん達にも。

 

まあ、とりあえず起きてから考えよう。

 

 

 

 

 

おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




逃げてっ!超逃げてっ!!!
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