本読んで、ご飯食べて   作:恵の鷹

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別れは笑顔で


normal end (√小暮町帰郷編) 前編

 

 

『当主さんからの誘いを受けますか?』

 

  はい

 

 ▷いいえ

 

 

 

「・・・・・・。」

 

午前9時、ここはいつもの場所。

 

相も変わらず早朝に目覚めて支度を終えた後、私はメジロ家の書斎に籠り本を読んでいる。

 

昨日に引き続き、今日も窓の外では雨が降り続いている。

 

・・・今日もずっと雨なのだろうか。

 

いつもの私なら気分が高揚するはずだ。耳に心地いい雨粒の音で、沢山の本に囲まれて・・・それでも今日は、なぜか本の内容がちっとも頭に入ってこない。

 

思い起こされるのは昨日、執務室にて当主さんから言われた言葉。

 

 

『世界中にある小説を集めてみせますが。』

 

 

・・・・・違う、そっちじゃなかった。

 

 

『このままメジロ家で暮らしませんか?』

 

 

そう、これだ。

 

この問いへの返答にずっと迷っている。

 

答えが出るまではとても楽しんで本を読める状態にはなれないな・・・。

 

当主さんは返答を急かしてはいなかったけれど、私は決断を先送りにするのは一番の悪手だと思う。

 

いや、本来悩む必要なんてないはずだ。

 

私の故郷は小暮町。

 

母や父、驚愕君・・・幼馴染の3人やサイドテールさん、小暮トレセン学園のみんな、そして鷹の目さん。

 

この世界で、私が一番長く過ごしてきた町。

 

私が、一番長く関わってきた大切な人達。

 

みんな私の帰郷を望んでいる。

 

アルダンさんとの抱擁が放送された日なんて本当に大変だった。

 

両親の説得には3時間、驚愕くんの説得には5時間、鷹の目さんには1時間。連絡先を教えていないはずの幼馴染達やサイドテールさんなんてもはや言葉というより地獄の底からの悲鳴のような音しか発していなかった。

 

私がどれだけきれいな身であるかを根気強く説得しても、疑いを完全に払拭することはできなかった。

 

小暮トレセン学園のみんなもそうだ。

 

私が学園に行かないということは、当然驚愕君もあれから家に籠る生活を続けている。

 

鷹の目さんから現状を聞いていみると、活気の戻りつつあった学園は、前よりもさらにお通夜のような雰囲気が蔓延しているらしい。

 

学園全体が暗闇に覆われ、休みがあれば食堂に集まって調理スペースの一角をじっと見つめているそうだ。

 

私を取り戻すために東京に行くべきだと声高に叫ぶ生徒も少なくない。

 

筆頭は当然幼馴染3人とサイドテールさん。

 

今は署名を集めている最中だが、呼びかけに応じた者はすでに200名を超えていると聞いた。

 

・・・鷹の目さんのあんなに弱々しい声は初めて聞いた。

 

流石の彼女でも今の学園の生徒を止めるのは厳しいらしい。というか今の今まで私が自由に東京に滞在できたのも、ひとえに鷹の目さんの尽力があったからだ。

 

連日理事長室に押し掛ける生徒達を説得するのに、一体どれほど胃を痛めたのだろうか・・・。察するに余りある。

 

この他にも、私が帰るべき理由なんていくらでもある。

 

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

・・・・なのに、なぜだろうか。

 

即答できない。

 

いや、理由はもう分かっているのかもしれない。

 

世界中の小説という誘い文句が私にとって効果抜群なのが一番大きい理由である事に変わりはない。レースの重鎮であるメジロ家、その当主である彼女が言ったのだ。私が首を縦に振ればすぐにでも叶うだろう。

 

・・・けれど。

 

 

「・・・・・。」

 

 

思い出す。東京に来てから今日に至るまでの日々を。

 

 

 

スイープさんにキタサン。

 

スイープさんのおばあさん、グランマさんを助けるために結成した「エリクシールキャンディの材料を集め隊」。

 

スイープさんと本屋で出会って、その場で強引に使い魔にさせられて・・・最終的に意味はなかったのだけれど、それでも・・・スイープさんのグランマさんを思う気持ちは強く、美しかった。

 

夕陽を背に受け、そんなスイープさんの事を大好きだと語るキタサンも同じように。

 

グランマさんに強引に連れていかれたレース。

 

懸命に走るスイープさんを見て、思わず頑張れと叫んでしまった。

 

グランマさんと一緒に。2人して会場の歓声にかき消されるくらいの声量なのに。

 

あの声はちゃんと彼女に届いたのだろうか。

 

隣のグランマさんが言っていた『レースの魔法』、見つけることができたのだろうか。

 

そういえば、グランマさんからはあれからたまに連絡が来る。

 

小さい頃のスイープさんの写真をやたら送ってくる彼女は、きっとスイープさんのことが大好きなのだろう。

 

たまにスイープさんの事をどう思ってるかとか質問してくるときには、もちろん無視している。安心してほしい。

 

 

 

アヤベさん。

 

生まれてすぐに双子の妹と死別した彼女は、私と出会った当初はどこか儚げな印象を纏っていた。

 

・・・そんなことよりも驚いたのはその妹さんの事だな。

 

まさか幽霊を実際に見ることになるとは思わなかった。

 

まして会話をするなんて。

 

彼女からアヤベさんの事を聞いて、それから結成された「アヤベさんを救い隊」の活動。

 

足手纏いにしかならない彼女を本気でどうしようかと考えていたのだが、まあ結果アヤベさんを助けることができたので良しとしよう。

 

最後は満天の星空の下、静かに行われた姉妹のレースを見届けた。

 

妹さんはちゃんと伝えたいことは言えたのだろうか。

 

アヤベさんは元気にやっていると、また会えたら伝えてあげたい。

 

会った当初は生意気な印象の強い子だったけど、彼女はアヤベさんのことが本当に大好きな子だった。

 

生まれていたら、きっと仲のいい姉妹になっていたのだろう。

 

・・・アヤベさんと言えば、彼女はあれから度々私に意味の分からない連絡をしてくる。

 

曰く、同性の子に嫌われない距離感を知りたい。

 

曰く、急におしゃれなんてはじめて浮かれていると思われないだろうか。

 

曰く、手を繋ぐのはいつからが適切なのか。

 

全て無視しているのだが、彼女はお構いなしに連絡してくる。

 

1日に送られる量が20件を超えたらブロックしようと決めている。

 

 

 

ウララさんと桜さん。

 

トレーナーが見つからなくて困っていると私に相談してきたウララさん。

 

そんな彼女の事を心配して私を尋ねた桜さんと結成された「ハルウララさんのトレーナを見つけ隊」。

 

桜さんがなぜそこまでウララさんに執着するのかは分からなかったが、彼女とトレセン学園を訪れてウララさんのプレゼンをした。

 

最終的に桜さんが実は元トレーナーで、難病を患っていることを知り、その場で寛解させることに成功。

 

彼女と再び学園に訪れて観戦したウララさんの模擬レース。

 

ウララさんの1着はありえないと誰もが思っていたのに、それでもあの場の誰よりウララさんを応援していた桜さんのおかげか・・・なんとそこから大逆転。

 

桜さんは1着のウララさんを見届けた直後、その場に蹲り大号泣。

 

駆けつけてくれたウララさんが彼女を抱きしめて、それから時間はかかったが桜さんとウララさんは無事に契約を結ぶことができた。

 

桜さんは元気にトレーナ業に復帰している。

 

元々優秀なトレーナーだったのだ。ウララさんの活躍を楽しみに待っている。

 

それに、個人的に百合だと公言する彼女は私にとっても気軽に話せる数少ない人物だ。ウララさんの写真を送ってくる頻度さえ直してもらえれば、これからも仲良くしていきたい。

 

 

 

そして最後に、アルダンさん。

 

最近の出来事ということもあって、一番記憶に残っている。

 

生まれながらに病弱な彼女は、立派な姉に憧れて今まで弱音を吐かずに努力してきた。

 

それが正しい・・・とは思えない。

 

家族の人や友人は弱音を吐いて欲しかったはずだ。

 

沢山泣いて、沢山悲しんで・・・そんな彼女を慰めたかったはずなのだ。

 

迷惑なんて思わずに・・・それでアルダンさんを嫌うなんてありえないのだから。

 

そして当主さんからお願いされた彼女の治療。

 

私と美術館で指切りした彼女は覚醒した。

 

当主さんが言っていたウマ娘のもつ"可能性"。

 

あのレースで彼女が残した伝説的なレコードは、今でもニュースを賑わせている。これからもあの記録が破られることはないだろう。

 

そして彼女・・・アルダンさんは最近距離感がだいぶおかしくなっている。

 

あのレースから明けて・・・朝はおはようの挨拶メールから始まり、お昼は私の作ったごはんを食べに来て一緒に昼食、夜も当然のようにおやすみなさいをその日の出来事と共に欠かさず連絡してくる。

 

・・・なんというか、友人というよりも・・・いや、やめよう。

 

男が少ない世界で自分の恩人が年の近い男性だった。

 

うん、正直そうなるのもしょうがないとは思う。・・・と思うのだが、彼女はなんか怖いのだ。

 

それにこんな世界で結婚なんてしたら確実に修羅場が発生することなんて簡単に想像できる。

 

願わくばずっと独り身で本を読んで人生を過ごしたい。

 

彼女達とは中のいい友人のポジションを確立出来たら満点だと思う。

 

 

 

「・・・・。」

 

 

気付けば午前11時。

 

いつの間にか2時間も回想に浸っていた。

 

私が思っていたよりも、東京で過ごした時間は私の中に強く根付いていたらしい。

 

彼女たちの他にもここで知り合った人は沢山いる。

 

お寿司屋のおばあさん、桐生院さん、オグリさん、スぺさん、ライスさんに・・・・

 

 

・・・少し感傷的な気分になってしまったな。

 

 

「・・・・・・うん。」

 

 

けれど、おかげで答えは出せた。

 

小暮町の皆と東京で知り合った友人達。

 

優劣をつけることなんてできない、どちらも私の大切な人達。

 

こんなことを決めるのは、とても心苦しいのだけれど・・・。

 

 

「・・・帰ろうか。」

 

 

思いは言葉として、そして確信へと変わる。

 

うん。帰ろう、小暮町に。

 

皆が私を待っている。

 

そうと決まれば、帰郷は早い方がいいな。

 

ここにいればいるだけ、思い出は増えていく。・・・決意は鈍る。

 

まだまだここで読めていない本は沢山ある。

 

こんなに居心地のいい書斎は他にないだろう。

 

「・・・・・。」

 

けれど、少ない時間でも・・・こうした素晴らしい場所で読書が出来て幸福だったと自分を納得させる。

 

 

パタン・・・・

 

 

開いていた本を閉じる。

 

この時間なら当主さんはまだ執務室にいるはず。

 

 

「・・・・・。」

 

 

私は書斎を出るときに一度だけ振り返った後・・・やがて扉を閉めて執務室へと力強く足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日の一番早い便で出発しなさい。」

 

 

「・・・・。」

 

 

それからすぐ、執務室にて返答を告げた私の前で当主さんはそう言った。

 

 

「貴方のお顔を見れば、昨日の事について真剣に悩んでくれたことは分かります。・・・振られてしまったことは悲しく思いますが、それで貴方を恨むなんてこと、ましてみっともなく行かないでくれと懇願することなんて・・・私にはできません。・・・その資格もないです。」

 

 

「・・・・・。」

 

 

「出発するなら早い方がいい、という貴方の意見にも賛成します。・・・女性に忌避感のない、怯えずに接してくれる貴方の存在は私達にとって何者にも代えがたいものです。・・・全てを投げ出してもいいと考えてしまう程に・・・。」

 

 

彼女は続ける。

 

 

「・・・ですので、私は言わねばなりません。」

 

 

言葉が止まる。

 

 

当主さんはそのまま目を閉じて、帽子を深く被り直した。

 

 

目元は見えない。私も・・・彼女が流す涙には気づいていない。気づいちゃいけない。

 

 

・・・私の選択が彼女にそうさせたことを絶対に忘れない。

 

 

やがて落ち着いた当主さんは、再度、言葉を続ける。

 

 

「・・・貴方が故郷に戻る事、誰にも教えてはいけません。・・・貴方が戻ったらきっと、故郷にいる貴方の大切な人達は・・・再び貴方をここへは来させないでしょうから。」

 

 

「・・・・。」

 

 

それは当然私も承知している。・・・だからこんなに悩んだのだ。

 

東京だけじゃない、今回私が遠出をしたことで、その時の記憶が故郷の皆に強く刻まれてしまった。

 

ここまで来れたこと自体、私は本当に恵まれている。

 

もう十分に優しさを感じている。

 

・・・今度は私が返していく番だ。

 

私を大切に思ってくれる彼女達は、私を町の外へは行かせない。

 

私はそれを甘んじて受け入れる。

 

 

「・・・ラモーヌやアルダン、メジロ家の子達には恨まれてしまいますね。いえ、学園の生徒にも沢山・・・少なくとも、私がこんなお願いをしなければ・・・貴方はもう少しここにいてくれたのに・・・。」

 

 

「・・・・・。」

 

 

慰めの言葉なんて言わない。彼女はきっと、そんな優しい言葉を望んでいないから。

 

 

「・・・ごめんなさい、私自身・・・とても悲しいわ。・・・数年は引きずることになるでしょう。・・・けれど、私はメジロ家当主。受けた恩は必ず返します。」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

頭を下げる。・・・私がいなくなった後、負担を一身に引き受けるつもりの彼女に。

 

 

「・・・ふふ、本当に不思議な子。・・・さあ、もうお行きなさい。貴方の護衛の・・・黒服の皆様がいれば大丈夫でしょう。・・・こんなお別れの仕方になって本当に申し訳ないわ。今日は最後になるのだから、あの子達にはくれぐれも気づかれないように・・・でも、優しくしてあげて。」

 

 

当然だ、当たり前に頷く。

 

 

「・・・・。」

 

 

・・・戻ろうか。

 

 

彼女に背を向ける。そのままドアノブに手をかける。

 

 

彼女は何も言わない。

 

 

「・・・・本当に、お世話になりました。」

 

 

これでいいはずだ。

 

 

・・・当主さんは一見冷徹そうな印象だが、その実とてもお茶目な一面を持っていることを知っている。

 

一緒にスパイごっこでメジロ家の屋敷の屋根に登ったこと。ふらりと書斎に現れる彼女と2人、穏かに読んだ小説の感想を言い合ったこと。カップ麺を食べたことのない彼女と一緒に黒服さん達が買ってきてくれたカップヌードルを食べたこと。それが激辛のやつで、黒服さんと喧嘩になったこと。

 

 

少なくない時間を共に過ごした彼女との大切な思い出。

 

 

別れの言葉が多いほど、悲しさは増していく。

 

 

・・・そうして、今度こそ言葉を語ることなく嗚咽を漏らし続ける彼女を置いて・・・私は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今キッチンにいる。

 

今日のお昼ご飯はおにぎりとパンケーキ。

 

いつもなら食いしん坊たちが書斎にいる私の手を引っ張ってここまで連れてくるのだが・・・まあ今日くらいはいいだろう。

 

 

バタン・・・・

 

 

「っあああああああ!!!!居ましたー!!!!!!」

 

「みつけたー!!!!!」

 

「パンケーキ!!」

 

「・・・・・・モンブラン。」

 

「おなかがすきましたわっ!!!」

 

「ですわ!!!」

 

 

「あら、もう来ていましたのね。貴方が書斎にいないので驚きましたわ・・・。・・・まあっ!今日はホットケーキですか!!楽しみですわっ!貴方の作るホットケーキは本当に美味しいので!」

 

「・・・む、今日はおにぎりか。君と初めて会った時もおにぎりだったな。楽しみだ。」

 

「っあ!ホントですね!!!私もすごく楽しみです!」

 

「ら、ライスは君の作るおにぎりが一番好きだよ!!!」

 

 

私がメジロ家に来てから、変わらない日常。

 

いつも通り、食いしん坊たちが突撃してくる。

 

壊れたドアを付け替えるメイドさん達の動きも手慣れたもの。

 

 

「こんにちは、今日もお昼ご飯を頂きに参りました。貴方の作るお料理はどれも楽しみです♪」

 

「わ、わたしもですっ!!!」

 

「・・・今日は私も来ました。・・・その、楽しみです。」

 

アルダンさん、チヨノオーさん、ヤエノさん。

 

 

「ちょっと、なんで書斎にいないのよ!!!使い魔が消えたと思っちゃったじゃない!!!・・・聞いてるのっ?!!!」

 

「・・・あぁ!!良かったです!!!!ちゃんといました!!!!!・・・・わぁ!!!おにぎりです!!!!」

 

「むむ、・・・今日はジンクスを感じませんね・・・。わさびはまた今度ですか。」

 

「ダイヤちゃん・・・懲りてなかったんだ・・・・。」

 

スイープさんにキタサン。そしてダイヤさん。

 

 

「・・・・来たわよ。」

 

「今日はおにぎりなんですね!!私楽しみです!!!・・・あ、アヤベさん!!!あっちの席に座りましょう!!!」

 

「て、ちょっと!分かったから引っ張らないでっ・・・・」

 

「ハーハッハッハッハッハッハッハ!!!・・・・ごふぉっつつつつつつつ!!!!!!」

 

「あああああぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!ごめんなさいオペラオーさあぁぁぁぁぁん!!!!!」

 

「決めた♪やっぱり"キミ"って呼ぶのか一番しっくりくるかも!」

 

アヤベさんにトップロードさん。オペラオーさんにドトウさんとカレンさん。

 

 

じ――――・・・・・。

 

そして私の事を至近距離で見つめているウララさん。・・・それを鼻血を出しながら撮っている桜さん。

 

基本的に私の昼食を食べる権利は学園の生徒の間でローテーションが組まれているらしい。

 

今日集まったのはこの子達。

 

でも食いしん坊組が毎回いるのはなんでだろう。

 

 

「ねぇねぇ、なにかかなしいことでもあったの?」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

私を見つめていたウララさんから出た言葉に少し驚く。

 

とりあえずなんでもないとは言ったのだが、なぜかウララさんは納得できてないみたいな表情だった。

 

 

「あのねっ!もしかなしくなったらわたしにいってね!!!トレーナーみたいにわたしがだきしめてあげるから!!!」

 

「・・・・・。」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!ウララさんがわ゛い゛いぃぃぃぃ!!!!!!」

 

「・・・気のせいかもしれないけど、そんな感じがしたんだ!!!」

 

 

「なによっ、使い魔のくせに悩み事でもあるの?まったくしょうがないわね・・・そういうことならこの天才魔法少女スイーピーが解決してあげるわよ!!!感謝しなさい!!」

 

「そういうことなら私の出番ですね!!!"お助け大将"の力が必要ならいつでも言ってください!」

 

 

「・・・・まぁ、話くらいは聞いてあげてもいいわよ。貴方には恩があるのだし。」

 

 

「そうですね・・・私が言えたことではないですが、辛いことがあったらいつでも仰ってください。・・・また、2人で美術館でも行きましょう。」

 

 

「・・・・・・・。」

 

 

私はそんなに顔に出やすいのだろうか・・・。

 

 

当主さんにあれだけ言われておいて、感づかれるのは情けない。

 

 

・・・・・けれど。

 

 

「・・・・・ありがとう。」

 

 

「「「「「「「っっっっ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

 

 

彼女達に私がご飯を作るのもこれが最後。

 

東京で出会った大切な友人達へ、笑顔で感謝を伝えるくらいは許されるはずだ。

 

・・・もう近くで応援することはできないけれど、それでも、これからの彼女たちの活躍を願っている。

 

人生生きていれば、これからも幾つもの別れや出会いを経験することになる。

 

そうした経験が君たちを成長させるのだ。

 

沢山悲しんで、でもその分沢山成長してほしい。

 

 

それが君たちに贈る最後の言葉。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は泣かない。

 

 

・・・いつの間にか、雨は止んでいた。

 

 

窓からは柔らかな光が差し込む。

 

 

明日も晴れるといいな。

 

 

大切な、お別れの日なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本を求めたことがきっかけでで始まった東京遠征。

 

 

たくさんの友人達との出会いを経験して・・・そして今日。

 

 

ようやく最終日を迎えた。

 

 

 

 

 

 




彼女達ならきっと大丈夫さ(震え声)
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