本読んで、ご飯食べて   作:恵の鷹

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R-18を書きそうになったら自戒する。


第9話

 

異変に気付いたのは上着を脱いで直ぐのことだった。

 

店内の熱気で火照った体を少しでも冷やしたいと、そう思っての行動だったのだ。

 

上着を脱ぐときに若干へそまで捲れあがってしまったが、まあへそくらいなら構わないか。

 

身体の内側が若干汗ばんでいたのか、半袖のTシャツが肌に張り付いていて気持ち悪い。

 

Tシャツの首元をつまんでぱたぱたと内側に空気を送り込んでいたのだが、、、やけに静かだなと気付いた。

 

それまでの喧騒が嘘のように止んでいる。

 

顔を上げ、真正面を見る。

 

 

「き、君は急に何をして、、。それになんだこの胸のうずうずは・・・。君を見ていると体の内側が暑くなっていく。なんなんだこれは、、風邪、、だろうか。だが、不思議と気分は悪くない。」

 

「何してるんですかっ?!

は、早く体を隠してください!え、エッチすぎます!あぁっ、ダメです!体がだんだんと火照ってきて、、、はぁ、はぁ、な、なにこれ、、頭が沸騰してるみたいです、、はぁ、わ、わたし、ハ・・。」

 

「だ、ダメだよ、、ライスたちはまだ学生さんなのに、、、。で、でも、君もライスと同じ気持ちだったんだね。うれしいな、、ライスが勝手に恋したら迷惑だって思ってたのに・・・。本当はお互いに思い合っていたんだね。あれ、おかしいな、涙が出てきちゃったよ、、。でも、、、だめだよね、君がここまでしてくれたんだもん。ライスも脱がないとだよね。初めては2人きりが良かったけど。でも、ライス頑張るね!」

 

 

オグリさん、スぺさん、ライスさんが血走った目でこちらを見つめている。

 

瞬間、私は自身の短慮を悟った。

 

流石に気を許しすぎたか、、。

 

目の前の3人の状態は明らかに普通じゃない。

 

というかライスさんはこんなところですべて脱がないで。

 

ダメだな、私自身今回のこれがこの世界においてどのくらいのやらかしなのか正しく把握できていない。

 

いや、だってたかが男の"へそ"がチラッと見えただけだぞ。ちゃんとTシャツだって着ていて別に裸になったわけでもない。

 

なぜだ、何が彼女たちをここまで、、。

 

いや、今はそんなことより目の前の3人の頭を冷やすべきか、、だれかあたりにまともな子は・・・。

 

 

「ふふ、いけないんですよ。こんなところで脱いだりして。まったく、、誘っているんですか?」

 

スズカさんはすでに手遅れか。瞬きをしていない。頬を赤く染めて目のハイライトが消えている。この子は割と常識人枠だと思っていたのに、自分の観察眼のなさが恨めしい。

 

 

ガンッガンッガンッガンッガンッ・・・・

 

「アカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカンアカン・・・・。」

 

タマさんもダメだ。自身の欲望を必死に抑え込もうとカウンターに頭突きを繰り返している。その姿勢は素晴らしいものだが、いかんせん自分のことに手いっぱいみたいでまともな助力は期待できない。

 

 

「ピピー・・・・身体の急激な発熱を感知。脳内の正常な思考回路が故障。直ちに深呼吸を繰り返し、オペレーション"頭を冷やす"を実行します。・・・・・・・・失敗しました。再度実行します。・・・・・・・・・失敗しました。再度実行します。・・・・・・・・失敗しました。再度・・・・・・。」

 

ブルボンさんも無理。どこか空中をぼんやりと見つめたままなにか意味不明な言葉を繰り返している。

 

 

それになによりヤバそうなのが、、、。

 

 

「あらあら~♪みんなのいる前でお洋服を脱いじゃうなんて悪い子ですね。ママがしっかりと教育してあげなくちゃ♪」

 

クリークさん。

 

彼女が一番やばいと直感で理解する。目のハイライトは当然消えており、その目は蛇のように細められ、私のわずかな動きも見逃してくれない。あれは捕食者の目だ。生態系の頂点。常に奪う側の立場にいた者のみができる目をしている。

 

断言できる。

 

彼女に捕まった時点でゲームオーバー。

 

私の尊厳や名誉、自尊心やプライドなんて彼女の前ではなんの意味もなさないだろう。

 

カウンター組は全滅か、、、。

 

ならばとテーブル席に目を向けてみるが、どうやら現実はそんなに甘くないらしい。

 

一番うるさかったターボさん、ビコーさん、ウィンディさん、マベさんはそれまでの態度が嘘のようになりを潜め、今はただ私に湿った目を向けている。いや、あれは違うか、、。私を見つめながら熱い息を漏らしているが、それがどんな感情なのか理解できていない感じだ。初めての感情に触れた時みたいに戸惑っている。

 

それよりもネイチャさん、ダイヤさんはグレーゾーン一歩手前な感じだな。カウンター席より距離は離れているとはいえ襲われるのも時間の問題だろう。

 

え、スイープさんとキタサン?

 

当然手遅れに決まっている。当たり前のことを聞かないでほしい。

 

メジロ組も当然全滅。うん、はじめから期待は薄い。というかアルダンさんを見ていると若干クリークさんと同様、背筋に寒気を感じるのだが。

 

 

アヤベさんは、、、、あれは、どうなんだ?じっとこちらを見ていることに変わりはないが、顔は至って冷静に見える。

 

私は一縷の望みをかけて彼女に呼び掛けるが・・・

 

 

「ええ。大丈夫よ。ちゃんとわかっているから。」

 

 

神はいた。

 

 

「私と二人きりがいいのよね。まったく、しょうがないんだから。あなたのわがままにはほとほと呆れるのだけれど。でも今回は許してあげる、アナタには大きな借りがあるもの。近くにホテルはないけれど、移動するなら早くいくわよ。」

 

 

神は死んだ。

 

 

だめだ、隣のトップロードさんは顔を真っ赤にしてすでにこと切れているし、オペラオーさんはそもそも私が脱ぐ以前に意識がなかった(ドトウさんがわさび寿司→熱湯のコンボで沈めていた)。ドトウさんはオペラオーさんの看病にかかりっきりだったみたいで、この場の雰囲気に一人だけわたわたしている。が、彼女を味方にするなんて愚策はとらない。彼女は絶対に無意識で背中を刺してくるタイプの味方だ。

 

 

現状は一向によくならない。

 

少しでも動けばカウンター組が即座に襲い掛かってくる。

 

もうだめか。

 

後悔が胸を襲う。一時の油断でこんなことになるなんて・・・。

 

私は、こんなところd、、

 

 

「諦めてはだめよっ、少年!」

 

 

あなたは、、桜さん!

 

 

「まったく、さっきから黙って見ていれば、、しっかりしなさいあなたたち!」

 

「そ、そうですよ!男の子を無理やり襲うなんてダメですっ!」

 

 

周りの説得を始めた桜さんに桐生院さんが加勢する。

 

ああ、やはり男女の友情は存在した。

 

私のしてきたことは決して無駄じゃなかったんだ。

 

信じる者は救われる。

 

 

「あなたたちはそれでもトレセン学園が誇る淑女ですかっ!そんなことで男の子を襲ってはあなたたちを生んだ母親が悲しみますよ!」

 

「初めてはゆっくりと行うべきなんです!だって初めては人生で1度きりなんですよっ!やり直しはきかないんですから!ロマンチックな雰囲気の中で、さ、最初は口づけからすべきです!」

 

 

・・・・ん?

 

 

「いい加減目を覚ましなさい!」

 

「あ、やだ、私今日の下着いつもの地味なやつだった、、あわわ、どうしよう・・・。」

 

 

いや、うん。桜さんはいい。桜さんは。

 

桐生院さん、、、なんだかおかしくないですか?

 

 

「そ、そうですよね、ごめんなさい。どうしても今日はお見せするにはみっともない下着で、、今すぐデパートによって来るので、待っててくださいっ!」

 

 

ああ、だめだ。桐生院さんの目からもだんだんと光が失われていく。

 

頼れるのは桜さんのみか、、、。

 

というより、さっきからウララさんとミークさんの声が聞こえないが、、。

 

 

「「ㇲピー・・・・・ㇲピー・・・・・」」

 

 

そっか、、眠たかったか。いい子だね(適当)。

 

でも、桜さんの説得で周りの意識が若干私から離れた、動くなら今だ!

 

私は初めに手元のスマホを起動し、緊急連絡用アプリをタップする。これで外で周囲を警戒している黒服さんたちが来てくれるはず。

 

今回の遠征に同行してくれた黒服さんは3人。だが彼女たちは1人1人が何度も戦いを経験している百戦錬磨の猛者たちだ。これでもう一安心だろう。

 

一時はどうなるかと思ったが、今回も何とかなりそうだ。

 

勝ったな、がはは(フラグです)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、お寿司屋正面玄関から少し離れたとある家屋の屋根上にて・・・。

 

 

「緊急連絡用アプリから救援信号を受け取りました。これから直ちに現場へと突入。少年の身柄の安全を確保、並びに敵の殲滅を行います。」

 

「「了解」」

 

 

黒服たちは眼下の街並みを睥睨し、夜の海を駆け抜ける。

 

対象の店への最短ルートはすでに頭に入っている。というよりここから半径5km以内の地図ならすでに頭に入っている。油断はしない。

 

今回の警護には課の精鋭の中でもさらに上澄みの3人だ。言葉少なに最適な行動をとる。

 

 

「店の前方にたむろしている多数の学生は無視し、このまま突入します。先頭は私が。続きなさい。」

 

「「了解」」

 

 

所詮店内にいるものは大半が一介の学生。数多の修羅場を経験してきた私達にとっては何人集まろうが造作もない。

 

既に連絡から10秒が経過している。

 

これ以上のロスは看過できない。

 

強い意志をもって店舗の明かりを視界に収める。

 

「1分で終わらせる」

 

私達は、扉へと押し入r・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ヒュンッ

 

瞬間、空中に銀色の光が舞った。

 

 

「ふふ、いけませんよ"割り込み"なんて。私達だってお腹を空かせて待っているんですから。というより、今日は私たちの貸し切りのはずですが。」

 

店舗から漏れ出る淡い光が彼女をやわらかく映し出す。

 

その佇まいは気品を漂わせ、だが瞳には青い焔が灯っている。

 

 

《不死鳥》 グラスワンダー

 

 

「グラスの言う通りデース!どうしても入りたいっていうのならエルが相手になるデスよ!!!」

 

辺りの暗さなど何も感じさせない、太陽のような明るさで、彼女は堂々と大地を踏みしめる。

 

 

《怪鳥》  エルコンドルパサー

 

 

 

「あ、あわわッ」

 

「下がっていてください、チヨノオーさん。あの身のこなし、只者ではないようですね。

私の腕がどこまで通用するか分かりませんが、そうやすやすと通れると思われるのは心外です。」

 

 

《剛毅果断》  ヤエノムテキ

 

 

「・・・いちいち事情を説明している暇はないです、邪魔をするのなら多少手荒になってでも押し通ります。」

 

 

ボガンッ!!!

 

再び足を進める黒服たちの、足場が揺れる。

 

 

「はあぁぁぁぁあ!!!なんですのその言い方はっ!

姫たるものっ!そのような横暴には決して屈しませんわ!ここは、絶対に通しません!!!」

 

 

《おませな姫君》  カワカミプリンセス

 

 

「おうおうッ!俺のいる前で随分嘗めた真似してくれるじゃねぇか!」

 

「いいぞー、やってしまえポッケ君」

 

「いえ、普通にやめて下さい」

 

「うっせえぞっ!タキオンにカフェ!」

 

 

《密林の王者》  ジャングルポケット

 

 

流石の黒服たちも足を止める。ただの学生だと侮っていたが、なかなかどうして粒ぞろい。

 

小暮町のスタンピードの時とはいささか違う。

 

あの時は彼女たちの軒並み外れた瞬発力、耐久力、持久力、加速力、、、、とにかく身体的に不死身と錯覚してしまう程に手を焼いたが、所詮は素人。

 

目が慣れてしまえばあとは単調な動きで御しやすかった。まあ、大幅に時間を取られたが・・・。

 

目の前の相手の総力はそれよりも劣るが、"質"が高い。武道に心得のある者もいるのだろう。

 

手加減ありきでも・・・・・・30秒はかかる。

 

 

「しょうがないですね。あなたたちに恨みはないですg、、、、」

 

 

 

 

 

 

雷鳴が轟いた。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、テイオーに無理矢理引っ張られてきてみれば・・・穏やかではないね。」

 

 

《皇帝》  シンボリルドルフ

 

 

「どういう状況かは分からないが、、、私の学園の生徒に危害を加える者は、誰であろうと許さない。」

 

 

「前言撤回します。"手加減なし"でいきます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかしい、黒服さんたちが来ない。

 

いつもだったら15秒以内には来てくれるのに。

 

外がやけに騒がしい。黒服さんたちに何が、、、。

 

いや、それよりも目の前の事態がいよいよまずい。

 

あれから私の前に桜さんが立ちはだかって必死の説得を続けているが、ウマ娘たちにはいまいち響いていない。何かきっかけがあれば我先にと私に迫りくるだろう。

 

どうしたものか、、

 

「坊や、、坊や」

 

声を掛けられ振り返る。

 

あ、おばあさん。そういえば事態が騒がしくなってから姿が見えなかった。

 

「店の裏口までの道を開けておいた、行きな」

 

え、、、

 

「坊やがなんで急に上着を脱いだのかは分からないけどね、でも、少なくともここで襲われたくてそうしたわけじゃないんだろう?」

 

「・・・。」

 

暑かったから脱いだだけですとはとても言えない。

 

「あたしはね、うれしかったのさ。あんな終わり方で店を閉めることになるのは甚だ不本意だったんだが。坊やが私に希望を見せてくれた。」

 

おばあさん、、。

 

「坊やの悲しむ顔なんてあたしゃ死んでも見たくないよ。・・・ここはこのおいぼれに任せて坊やは逃げなさい。決して、振り返るんじゃないよ。」

 

決意の籠ったまなざしで私を見ている。

 

この人、ここで終わらせる気だ。

 

話しが聞こえていたのか桜さんが振り返る。

 

「少年、私からも一言。・・・私を救ってくれてありがとう。あなたに出会わなければ、私は一生誰にも抱きしめられることのないまま人生を終えるところだった。本当にありがとう。・・・・あと、ちょっとだけ、君のことを弟みたいに思ってた。、、、、なんてね。」

 

桜さん・・・。

 

そういえば桜さんはどうしてそんなに平気なんだろう。

 

「私は百合よ。」

 

桜さん・・・。台無しだよ。

 

 

でも、そうか。

 

まだ私には2人も味方がいる。

 

「ありがとうございます。・・・・・・・生きて、また会いましょう。」

 

言葉少なに店の奥へと駆け込む。

 

後ろは振り返らない。

 

それは彼女たちの覚悟に泥を塗る行為だ。

 

生きてまた会う。

 

それだけ伝えることができたなら十分だ。

 

裏口へとつながる細い道を突き進む。

 

出口までは一本道だ。迷いはしない。

 

おばあさんが切り開いてくれた道。桜さんの覚悟。

 

決して無駄になんてしない。

 

「はあッ、はあッ・・」

 

あともうちょっと、、、。

 

 

見えた!

 

裏口だ。よかった、無事たどり着いた。

 

2人の献身は、無駄じゃなかった。

 

私は振り返りたくなる気持ちを必死に抑えて扉を開ける。

 

早く、早く外へ。

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、そうよね。必ずここに来るって信じていたわ♡」

 

 

 

 

呆然と佇む私を前に、それでも彼女は妖艶にほほえんでいて。

 

 

 

 

「い、いつの間に、、店内にいたんじゃ・・・。」

 

 

 

 

「そんな当たり前のことを聞いてどうするのよ。・・・答えは単純、"愛"よ。」

 

 

 

 

そうか、愛か。なら、仕方ないのかな。目の前の状況に理解が追い付かず、投げやりな思考になった私に構わず彼女は・・・

 

 

 

 

誰かが言った。

 

 

 

 

ー嫉妬すら追いつかない。憧れすら届かないー

 

 

《魔性の麗人》  メジロラモーヌ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くそったれ。

 

 

 

 




流石に嘗めすぎた。
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