おまけに色々ミスって無駄に東西大移動させられて途中で疲れ果てましたわ・・・
結局アロナの細工でアビドスに赴く羽目になったウォルターは、リンに手配させた大型輸送ヘリコプター、CH-47チヌークにハウンズと支援物資を乗せ、一路アビドスへ出発した。
ルビコンで移動手段とガレージを兼ねていた『TH-E-012』に比べれば小さいが、それでもハウンズの4人が武装した状態で自由に動ける程度にはスペースがあり、なおかつスピードもサイズの割に十分で、今後長い付き合いになるだろうと予感した機体を1人で駆るウォルターの眼下には、いつしか広大な砂丘が広がっていた。
「ルビコンのボナ・デア砂丘を思い出すな。しかし、何故わざわざこんな土地に……」
アロナの話では、気候の変化で街が厳しい状況にあるとのことだが、少なくとも特に警告や妨害もなくすんなり自治区内に入れた以上、危険地帯と判断されたルビコンへの入出を厳しく取り締まっていた『惑星封鎖機構』の様な組織は存在しておらず、むしろアヤネからの救援依頼を知ったリンも、「てっきり住民達はとうの昔に引き払い、砂嵐に呑まれて自然消滅したかと思っていた」と話していたことから、おそらく広がりつつあると思われる眼下の砂漠地帯から、ミレニアム学区やD.U.地区の様な外部に居を移すことは容易なはず。だと言うのに、封鎖のキッカケたるアイビスの火以来、過酷に変化したルビコンの環境に、耐え忍び生きるしかなかった移植民達の末裔と違い、コーラルの様な外部と交易を築けるような物資もない、文字通り枯れたこの地で、自ら進んで暮らすその選択は、ウォルターとしても、疑問すら浮かぶまでに酔狂なものとしか表せなかった。
「間もなくアビドス高等学校か……ム?」
やがて見えてきた市街区を過ぎ、一際大きな建物――アビドス自治区の中枢たる校舎が見えたウォルターは思考を切り替え、グラウンドへ着陸の準備をしようとしたところ、正門付近で屯する複数の人影に気づく。
おそらく校舎を背にした少数の方が、アヤネ達アビドスの生徒なのだろうが、対する門の外側にいる、一様にフルフェイスヘルメットを被った『ヘルメット団』は、キヴォトス各地で活動する武装不良集団として知られており、ハウンズも何度か対峙したことがある。
どうやらアヤネが言っていた『アビドスを狙う暴力組織』も彼女達のようだが、実力に関して言えば、過去の交戦歴を思い出す限り、お世辞にも強いとは言えない、烏合の衆もいいところだろう。
「あれも同等だとすれば、それこそ追い詰められるまで立ち向かうより、さっさと明け渡して、それを口実にここを去ってもいいものを。まぁ、仕事であれば仕方ない……」
なおのことアヤネ達がそこまでして、この荒廃する未来しか見えないアビドスに固執するか分からなくなってきたものの、アロナの狭義心で無理矢理押し付けられた、骨折り損の草臥れ儲けにしても、仕事に変わりはないと強引に己を納得させたウォルターは、期待後方で待機していたハウンズに声をかける。
『ハウンズ、聞こえているか?少々急だが、ミッション開始だ。敵は眼下のヘルメット団。後部ハッチが開き次第、降下して殲滅しろ』
ウォルターの号令に応じて戦闘態勢に入ったハウンズ達は、すでに交戦状態とあって悠長に着陸する余裕がないと聞いても一切動じず、無言で順に飛び降りては散開し、それぞれ後方からヘルメット団を奇襲していく。
「ゴハアッ!?」
「な、増援だと!?アビドス生は前の奴等だけのはずじゃ……!グゲッ!」
「と、とにかくどっちでもいいから攻撃だ!このままじゃ挟み撃ちされるぞ!」
報酬は望み薄とあって、消耗を押さえるため肉弾戦を仕掛けるハウンズに対し、ヘルメット団は予期せぬ敵に多少動揺したものの、何とか数の差を活かした両面への対応をするも、如何せん埋まらぬ実力差を前に次々と各個撃破されていく。
「く、クソ……こんなことで……邪魔が入るなん……」
最後に残ったリーダー格も、アビドス側のガトリングガンを抱えた少女に撃ち抜かれ、地に伏せると、周囲の安全を確認したウォルターが、戦闘直後とあって警戒されると判断し、グラウンドから正門外側に着地地点を変更してチヌークを降ろす。
「ミッション完了だ、後は俺が片付ける。お前達は戻って休んでいろ」
「あ、アンタ誰よ。私たちの学校をどうする気!?」
言われるままに背を向け、チヌークへと去って行くハウンズを見送り、代わりに前へと出てきた未知なる大人――ウォルターに敵意をぶつける、黒髪のツインテールに、獣を思わせる耳を立たせた少女。しかしウォルターは彼女が放つそれを軽く受け流すと、淡々と用件を伝える。
「奥空アヤネの要請で訪れたウォルターだ、具体的な話を聞きたい。代表者は誰だ?」