その日、ホシノは朝から機嫌がよかった。
「んふふ~♪」
「ホシノ先輩、今日は朝からご機嫌ですね……」
「そう言えば、アヤネちゃんは知りませんでしたね。今日はお客さんが来るんですよ☆」
見慣れない様子のホシノにアヤネが呆然としていると、ノノミが理由を説明する。
「お客さん、ですか……?」
アヤネが知る限り、アビドスを訪れるのは毎月借金の利子を回収に来る銀行員くらいしかいなかったはずだが、その時の「さっさと帰れ」とばかりの疎まし気な振る舞いとは真逆と言っていい程なホシノの様子を見るに、違うことは確かだろう。
「そう言えば、アヤネとセリカは会ったことなかったね。私もそんなに会ったことはなかったけど……」
―—自由登校日のためこの場にいないセリカはともかく―—そんなアヤネにシロコが説明しようとした矢先、校門から「ごめんくださ~い!」と若い女性の声が響く。
「あ、来た~♪」
その声を聴いた途端、ホシノは「うへへ~♪」と呆けながら教室を飛び出し、校門へと向かってしまったため、「ま、待ってくださーい!」と慌てるアヤネに続く形で、残る3人も後を追う様を見送ったウォルターは、リンが郵送してきた書類から顔を上げ、周囲に待機していたハウンズに、エナジーバーを差し出す。
「少し早いが、昼飯にしよう。アイツらの様子から、あの来訪者は友好的な存在のようだが、いつカタカタヘルメット団の後任が来るとも限らん。余裕のあるうちに済ませておくぞ」
そして自分も同じエナジーバーを開封して口にすると、早々に仕事を再開するが、そこにシッテムの箱が画面を明るくする。
『先生、ホシノさん達の後を追ってみませんか?セリカさんも後から来るかもしれませんし、お昼は皆さんで行っても……』
「生憎他人のプライベートを邪魔する趣味はない。それに
ここ数日、アロナは露骨なまでにウォルターをアビドスの面々と交流させようとしていた。流石に何らかの意図があるだろうことを察したはいいものの、相手は未知なる機器内のデータ。最悪チヌークの電子機器に侵入し、システムや出力に異常を起こして機器を破損させ、無理矢理アビドスに引き留めるなんて手を使ってくる可能性を危惧して、リンから送られた書類の多さをいいことに、多忙を口実として静観がてら放置していたが、ここまで執拗だと、言及せざるをえまい。
『うぅ……や、やだなぁ!そんな警戒しないで下さいよぉ!それより前にも言いましたけど、先生はもっとハウンズの皆さん以外の生徒さんと仲を深めた方がいいですよ!』
「それにも答えたが、俺は『好きにしろ』と残して姿を眩ませた連邦生徒会長の意に沿っているだけだ。
相変わらず取り付く島もないとばかりにぞんざいな扱いをされ、話が続かずに黙らざるを得ないアロナを無視したウォルターは、外から聞こえるホシノ達の閑談を聞き流しながら、書類を片付けていく。
「ユメせんぱ~い♪会いたかったです~♪」
「ホシノちゃ~ん!久しぶり~♪」
校門で待っていたのは、ホシノを受け止めるべく伸ばした両腕の如く、先端が大きく広がった青緑の髪を、膝まで伸ばした女性。「ユメ先輩」と呼び駆け寄るホシノを抱きとめると、そのまま勢いでクルクルと回っていたが、やがてバランスを崩して尻もちをついてしまい、「うへぇ」と呻くホシノと共に、「ひぃん」と情けない声をあげる。
「や、やっと追いついた……ホシノ先輩、その人は一体?」
そこに2人を起こすシロコとノノミに追い抜かれたアヤネが遅れて到着し、揃ってスカートに着いた砂を払う来客が何者かホシノに尋ねる。
「あそっか、アヤネちゃんは知らなかったか。ってことはセリカちゃんも知らないか……まぁセリカちゃんは後にするとして、この人は
「アハハ、相変わらずだねホシノちゃん。初めまして!梔子ユメだよ!今年も後輩が来てくれて嬉しいな~!」
来客——『梔子ユメ』がホシノよりも前の先輩と言われ、背筋を正して自己紹介しようとした矢先、続いた酷い言われ様に思わず「ホシノ先輩!」と声を荒げるアヤネ。しかしユメは
「いやぁ、最近会いにいけなくてごめんなさい。お互い近況報告に限らず積もる話もあるでしょうし、お話がてら『あそこ』行きましょうよ。多分もう1人もいますし」
「お、いいねぇ!それじゃ皆、行くよ~!」
「え?ちょ、ホシノ先輩!?」
そのまま2人だけの流れで話を進めると、ユメが乗ってきたサンドイエローのジープに乗り込み、シロコとノノミも、すっかり置き去りにされたアヤネを挟んで乗後席に座り、どこかへと出発していく。
「いらっしゃいませ、柴関ラーメンです! 何名様ですか? 空いているお席にどうぞ! 三番テーブル、替え玉追加お願いします!」
砂に呑まれ、寂れながらもまだ少なからず活気を保つアビドス市街区。そこに店を構える『柴関ラーメン』にて、セリカのはつらつとした声が響く。そこに店の扉を開け、新たな客が入る。
「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンで「あの~☆5人なんですけど~!」わわっ!」
入ってきたのは、校舎からジープで発ったユメ一行。ホシノが扉を開け、ノノミが声をかけたのだが、仕事先を訪ねられたことと、見慣れぬ相手を連れていたことに驚いたのか、セリカの歓迎が乱れる。
「おぉ~やっぱりここにいた。ユメ先輩、この子がもう1人の奇異な新入生、黒見セリカちゃんです。セリカちゃん、この人はアビドス最後の卒業生で、私が1年だった時の生徒会長だった梔子ユメ先輩。今はD.U.で事務のお仕事してるんだ」
「誰が奇異か!」
アヤネ同様、当人なりの地元愛を否定するかのようなホシノの紹介に噛みつくが、当のホシノは一切気にした様子もないどころか、すっかりユメに夢中で眼中にさえない様子。ユメもユメでそんなホシノを咎めず、店の奥にいた店主の『柴大将』に声をかけている。
「柴大将!お久しぶりです!」
「おぉ、ユメちゃん!元気してるようで何よりだな。ほれセリカちゃん、お喋りはそれくらいで、席案内と注文受けてくれな」
「あ、うぅ……はい、大将。それでは広い席にご案内します……こちらへどうぞ」
むしろ咎められてしまったセリカは、渋々といった様子で業務に戻り、コの字型の多人数用席に連れて行く。
「セリカちゃん。バイトのユニフォーム、とっても可愛いです☆」
「ユメ先輩、隣どうぞ。いやぁー、セリカちゃんってそっち系か。ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」
「ち、違うって! 関係ないし! ここは行きつけの御店だったし……」
「バイトはいつから始めたの?」
「い、一週間ぐらい前から……」
「そうだったんですね☆時々姿を消していたのはバイトだったという事ですか!」
「も、もう良いでしょう! ご注文は決まったの!?」
そこからもしつこく絡まれ、遂には「仕事の邪魔だ」とばかりに怒声を発したセリカに、率先してふざけたホシノも圧され、思わず「うへ~!」と叫ぶ様に、再度柴大将が口を挟む。
「セリカちゃん、「ご注文はお決まりですか」だろ?お客様には笑顔で親切にな?」
「あうう……ご、ご注文は、お決まりですか……」
「私豚骨ラーメン!」
「私は、チャーシュー麵をお願いします!」
「私は塩」
「えっと……私は味噌で……」
「こっちこそごめんねセリカちゃん。私はねー、特製味噌ラーメン、炙りチャーシュートッピングで」
擁護どころか更なるお咎めに、すっかり羞恥で弱々しくなってしまったセリカに、後輩の存在にすっかり気を良くしたユメを筆頭に次々注文を頼んでいくが、ホシノはさすがにユメと一緒で調子に乗り過ぎたと反省したようで、謝罪を挟む。
「そういえば、校庭にヘリが停まってたけど、ノノミちゃんが新しく買ったの?」
「あ、あれは最近話題の『S.C.H.A.L.E』の先生が乗ってきたヘリですね。訳あってお呼びしたんですが、お仕事の都合上特定の学校に肩入れしないようにするためか、あまり交流はありませんけれど、少なくとも悪い人ではないです☆」
「……ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢って貰うつもり?」
「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら限度額までまだ余裕ありますし」
「あ、だったら私が払うよ!ちょうど昨日お給料入ったんだけど、仕送り用も含めて皆に会いがてらちょっと多めに持ってきたんだ!」
「ユメ先輩、いつもありがとうございます。また
やがて客足が落ち着いてきた頃合いを見計らい、談話していた対策委員会の面々に懐事情を心配したセリカが話しかけるが、令嬢の身とあって金銭には困らないために、普段から率先して備品や菓子類の補充に潤沢な懐を使うノノミがそのノリで取り出した金色のカードをかざすと、ユメが率先して名乗りを挙げた直後、新たな客が訪れる。
「あ…あのぅ……」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「……こ、ここで一番安いメニューって、お、御幾らですか?」
「えっと、一番安いのは……580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「あ、ありがとうございます!」
「へ……?」
即座に切り替えたセリカが対応した、オドオドした気弱そうな紫髪の少女は、聞くだけ聞いて去ったと思いきや、予期せぬ振る舞いに呆然とするセリカが意識を取り戻す頃合いに合わせたかのごとく、新たな面々を連れて戻ってきた。
「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」
「ふふふ、ほら、何事にも解決策はあるのよ。全て想定内だわ」
「そ、そうでしたか、流石社長、何でもご存知ですね……」
「はぁ……」
最初に来た紫髪の少女に加え、「社長」と呼ばれるストロベリーブロンドの髪にワインレッドのコートを羽織った、自信満々な少女を中心に、大きなバッグを抱え、白髪をサイドテールにした少女と、バンドのエンブレムが入ったパーカーを羽織り、呆れた様なため息を吐く、前髪の中央と束ねた後髪が黒い少女の4人。セリカは予期せぬ追加メンバーに一瞬驚くも、すぐに案内する。
「4名様ですか?お席にご案内しますね」
「んーん、どうせ1杯しか頼まないし大丈夫」
「一杯だけ?でも……どうせならゆっくりお席へどうぞ。今は暇な時間なので、空いている席も多いですし」
「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃお言葉に甘えて。あ、わがままついでに、箸は4膳でよろしく。優しいバイトちゃん」
「えっ?よ、4膳ですか?ま、まさか1杯を4人で分け合うつもり?」
どうやら訳あって財に余裕のあるノノミに頼れない借金で、首が回らないアビドスの面々以上に懐の余裕がないらしい。思わず絶句するセリカに、紫髪の少女が騒ぎ立てる。
「ご、ご、ごめんなさいっ!貧乏ですみません!!お金がなくてすみません!」
「あ、い、いや……!その、別にそう謝らなくても……」
「いいえ! お金がないのは首が無いのも同じ!生きる資格何てないんです!虫けらにも劣る存在なのです!虫けら以下ですみません……」
「はぁ……ちょっと声でかいよハルカ、周りに迷惑」
最早自己否定にも等しい謝罪を繰り返す紫髪の少女を、白黒髪の少女が慣れた様子で宥めながら出ようとするが、そこに復帰したセリカが待ったをかける。
「そんな!お金が無いのは罪じゃないよ!胸を張ってッ!」
「へ?……はい!?」
「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!それでも小銭を搔き集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!もう少し待っていてね。直ぐに持ってくるから!」
そのまま柴大将のいる厨房に向かって行ったセリカを見送った4人は、流れで手近なテーブル席に着く。
「……何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」
「まぁ、私達もいつもそんなに貧乏って訳じゃないんだけどね。強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし」
「『アルちゃん』じゃなくて社長でしょ?ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ」
「ん? だってもう仕事終わった後じゃん?ところで、社長の癖に社員にラーメン1杯奢れない何てどうなの?」
「うっ……」
「いくら評価がいいからって、あれは候補から外しとこうよ。今日の襲撃任務に投入する人員雇う為に、ほぼ全財産使っちゃったし……」
「ふふふ。でもこうして実際ラーメンは口にできるわけでしょう? これも想定内よ」
「たった1杯分じゃん。せめて4杯分のお金は確保しておこうよ……」
「ぶっちゃけ、忘れていたんでしょ? ねぇ、アルちゃん、夕食代取っておくの忘れていたんでしょ?」
「……ふふふ」
すっかり「社長」の威厳が失せ、言われるままなのを辛うじて笑ってごまかすしかない様子の「アル」に、笑顔でズケズケと言いたい放題な「ムツキ」。それを前に「ハルカ」がアワアワ動揺するばかりなところに、白黒髪の少女が尋ねる。
「はぁ。ま、リスクは減らせた方が良いし、今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコみたいに扱えないってことは同意する。でも全財産を叩いて人を雇わなきゃいけない程、アビドスは危険な連中なの?」
「それは……」
「多分、アルちゃんも良く分かってないと思うよ。だからビビッてとにかく強いの雇っているんだよ」
「誰がビビっているって!?全部私の想定内!失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して臨むわ。それが我が便利屋68のモットーよ!」
「初耳だね、そんなモットー」
「今思いついたに決まっているよ」
「うるさい!なら今回の依頼を成功させて報酬が手に入ったら、すき焼きよ!だから気合を入れなさい、皆!」
言われ放題に限界が来たのか、遂に激昂して、奇しくも居合わせた
「すっ……すき焼きとは!?それは一体?」
「大人の食べ物だね、すごく高価な……」
「う、うわぁ……私なんかが食べて良い物なのでしょうか?やっぱり、食べた後は腹切りですか?」
「ふふふ、うちみたいな凄い会社の社員なら、それ位贅沢はしないとね」
そうした
「はい、お待たせしました! お熱いのでお気をつけて!」
「ひぇ、何これ!?ラーメン超大盛じゃん!」
「ざっと、10人前はあるね……」
「こ、これはオーダーミスなのでは?こんなの食べるお金、ありませんよぅ……」
「いやいや、これで会っていますって。580円の柴関ラーメン並!ですよね、大将!」
あまりの量に呆然とする4人が恐る恐る確認するも、セリカは満面の笑みで注文の通りと答え、聞かれた柴大将も、その通りと爽やかな笑顔で親指を立てる。
「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ、気にしないでくれ」
「大将もああ云っているんだから、遠慮しないで! それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」
「う、うわぁ……」
明らかに「手元が狂って増えた量」ではないが、ここまで好意をお膳立てされては、むしろ断ることが失礼になると感じた4人は、言われるまま盛られたラーメンを小皿に取り分け、各々口に運ぶ。
「良く分からないけど、ラッキー!いっただきまーす!」
「……ふふふ、さすがにこれは想定外だったけれど、厚意に甘えて、有難く頂きましょう」
「食べよっ!」
「!!」
「お、おいしいっ!」
「なかなかイケるじゃん?こんな辺鄙な場所なのに、こんなクオリティなんて!」
予期せぬ幸運に歓喜する4人の元に、ノノミとホシノが声をかけに行こうと席を立ったところに、再度扉が開き、新たな客が来る。
「いらっしゃいませ!何名様です、か……」
「6人だ、カウンターいいか?」
早速迎えたはいいが、軒並み自分より頭1つは差のある相手の身長に、先程とは違う意味で言葉を詰まらせるセリカは、青い髪とジャケットに黒いコートを羽織った先頭の1人――マコの意図せぬ圧に圧される形で、「か、かしこまりました……こ、こちらへどうぞ……」と希望通り厨房前のカウンター席に通す。
「いやぁよかったよかった。寂れた場所だが、ちゃんと飲食店もあったおかげで、拗ねた
「飯くらい出発前に済ませとけよ……俺まで付き合わすな……」
「まぁまぁ折角来たんだし食ってこうよ。腹が減っては~っても言うじゃん?」
「そうそう。次来た時には砂に埋もれて文字通りの意味でも潰れてるかもしれないんだからさ♪」
「ラーメンと言えば、
続いて紫髪に黒いジャケットとキャップ帽のアギト、一際大柄で、黒いライダースーツのシロナ、青い中折れ帽とシャツにグレーのカーディガンを羽織ったタイガ、伸ばした黒髪と同じ色のパーカーを着たヨシキ、緑のメッシュが入った黒髪を後ろに束ねたスーツのオセアが順で席に着くと、セリカが注文を聞きに戻ってきた。
「えっと……ご注文はお決まりですか……?」
「あぁ……んじゃ、チャーシュー麵の大盛り、チャーシュー倍追加で」
「おれは豚骨ラーメン。同じく大盛りをギットギトに濃い油で、チャーシューは3倍追加してくれ」
「……餃子「と炒飯で味噌ラーメンセット1つずつ!あ、炒飯の方はどっちも大盛りに、チャーシュー倍に唐揚げも追加で!」てめぇなぁ……」
「じゃ僕は柴関ラーメンの……特盛?あそこの席の子達がシェアして食べてるのの半分くらいでお願い」
「では私も大盛り、チャーシュー倍追加を前提に、塩ラーメンをお願いします」
「か、かしこまりました!では、少々お待ちを……」
1番高身長のシロナを除き、やはり体が大きいとあってか、皆躊躇なく大盛りを選んだため、麵が茹でるまでしばらくかかるとあって、セリカも手伝いに回ったものの、その間手持無沙汰となった面々は、雑誌でも読もうと席を立ったタイガを除き、それぞれ手にした煙草を銜え、火を着け――
「おいおい、アンタ等も生徒さんだろ?他にも生徒さんがいるんだし、
ようとしたところに柴大将が声をかけ、「あ?」と露骨に不機嫌を剥き出しに睨みつけたマコの前に、細長く切ったネギとチャーシューをあえた小皿を差し出す。
「コイツは……?」
「もうちょいできるまでかかりそうだから、腹ペコみたいだしこれでも摘まんで待っててくれ。ほれ、他のお客さん達も……」
「へっ、お通しって奴か。気が利くねぇ」
そう言って残りの5人の前にも小皿を並べていく柴大将。一転して不敵な笑みを浮かべたマコは、称賛するアギト共々早速箸を伸ばす。その後ろでは、先程席を立っていたノノミとホシノが4人組に声をかけ、席に残ったユメとアヤネも、口数が少ないシロコを交えて談話している。
「此処のラーメンは本当に最高なんです。遠くから態々来るお客さんもいるんですよ」
「えぇ、分かるわ。色々な場所で色なのを食べたけれど、このレベルのラーメンは中々お目に掛かれないもの!」
「それでホシノ先輩、私達が反対してるのに捕まえたカタカタヘルメット団員達を旧校舎に置いて、転入してもらおうと説得してるんですよ」
「う~ん、襲ってきたヘルメット団達が気に食わないアヤネちゃんやセリカちゃんの気持ちもわかるけど、ホシノちゃんがそうするのもわかるなぁ。対策委員会が生徒会として登録されてるから辛うじて認められてるわけで、所属生徒が総勢5人じゃ、そうやってでも増やさないと、実質学校として成り立たない限界集落状態だよ?自分が卒業してからも、アヤネちゃんやセリカちゃんみたいな入学希望者が来るか心配してるホシノちゃんなりの気遣いってことで受け入れてあげれない?」
「言われてしまうと、確かに来年も入学してくれる生徒は、1人でもいればまだマシって言えるかも。アヤネ達の中学も閉校したって聞いたし、今のアビドスに魅力や未来があるかって聞かれたら……」
「そこで自信無くさないで下さいよシロコ先輩!私達が頑張らなくてどうするんですか!」
「だから銀行強盗で一攫千金を……」
「それとこれとは話が別です!」