Handler Archive   作:ゲオザーグ

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前回ラーメン注文してましたが、蛇足ながらついでに『ドルフィン1』の好みの傾向を
全体傾向として肉(特に塊系を噛り付いて食い千切ってく食べ方)好きで
マコ:どちらかと言えば赤身肉が好み
アギト:霜降りでも脂身でも脂はあればあるだけよく、ラードや牛脂はたんまり使う
シロナ:特にこだわりはないが、出されれば食うくらいには無頓着ながら律儀
タイガ:シロナとは別の意味で無頓着で、アリウス脱出前後のゴミ漁りで食い繋いでいた頃から状態が良くないものも平気で食べていた
ヨシキ:「バカ舌」を自称し、タイガと共によく変なものも口にしていたが、余裕ができてからはアギト同様脂っこいものが好みに
オセア:塩気が強い味付けを好み、ハムなど塩漬けにした肉も塩抜きせず涼しい顔で食する
オマケ
アトラ&トウニ:(オムレツなど混ぜる分にはいいが)卵の黄身は絶対生。固茹での卵を出す店には2度と行かないほど
ミナト:イメージモチーフのネコザメ同様貝類や甲殻類が好き。大手スーパーに並ぶ種類ならアサリどころかホタテくらいは殻を嚙み砕けるし、ガザミやズワイガニ、果てはロブスターや伊勢海老なら某天空の城の財宝を狙った女海賊よろしく殻ごと食らいついてそのまま飲み込める


()便利屋迎撃戦

 対策委員会の面々が帰路につき、、相手がそうとは知らず意気投合した結果、遅れて店を出てから部下達に明かされた予期せぬ遭遇に、便利屋68の社長ことリーダーの『陸八魔(りくはちま)アル』が「なななな、なっ、何ですってーーーーー!!!???」と絶叫を上げていた頃、『ドルフィン1』の面々は、引き続き悠長にラーメンを食べていた。

 

「にしても、予期せず獲物(ターゲット)と鉢合わせするとはな」

 

依頼人(クライアント)も暢気なものですね。この後対峙するとも知らずに、すっかり打ち解けて……」

 

 唯一残ったセリカが食器を片付け、柴大将と共に裏手に下がったのをいいことに、ブツブツ文句を言いながらも、勝手に追加されたラーメンのスープまで飲み干したシロナに対し、先程まで山盛りのラーメンに歓喜していた便利屋の4人を思い出したオセアは、そばにあった水差しを手に取ると、中身を注いだコップに口をつけ、食後の一杯を堪能する。

 

「それよりメンバーどうする?とりあえず他の小隊ぶつけるつもりだったけど、ちょっと荷が重くない?」

 

「人数同じだし残りはあっちに任せればいいとして、問題は小鳥遊ホシノだよなぁ。足止め程度ならまだしも、善戦できそうなのはドルフィン2くらいだけど、那須昂姉妹は迎えに行かせて意気投合したみたいで、どっちかったらとっ捕まったヘルメット団員の回収に行きたがってるから、やるんならこのメンバーから?」

 

 そこに味噌ラーメンのスープで炒飯を流し込み、最後の1つとなった唐揚げを飲み込んで完食したタイガが、実際目の当たりにしたアビドスの面々に対する感想を漏らすと、先程トッピングの煮卵を見て、「これ来店拒絶するタイプだな」と思い出していた那須昂姉妹からの志願を思い出したヨシキも口を挟むが、片手で丼を持ち上げ、煽る様に多少冷えて固まった脂が浮きだしたスープを喉に流し込んでいたアギトが、空になった丼を降ろして一息つくと共に答える。

 

「だな。おれ達が戦車で援護するとして、小鳥遊に関しちゃ、お前行けタイガ。(ツラ)見りゃ相手したくてたまらねぇって、バカでもわからぁ。で、おそらくいるだろう『S.C.H.A.L.E』のハウンズはシロナだ。一緒に見たろ?最悪受け流すだけの足止めでいい」

 

「ヒュ~♪さっすがアギトぉ、わかってるぅ♪」

 

「どっちかったら『見せられた』、だがな。面倒だが、そんくらいでよきゃ何とか」

 

 便利屋面々の母校、ゲヘナのヒナを始め、トリニティの正義実現委員会委員長『剣先(けんざき)ツルギ』、ミレニアムのネルと、『S.H.A.R.K.S』が傭兵部隊として発ち上がっていたい以来、各地で最高戦力とされるメンバーと戦ってきたが、ホシノに関しても、カイザーに残っていた資料に載っていた実力が気になっていたことを見透かされ、願望を達する機会を見繕われたとあって、歓喜を露わにするタイガと、幸いそこまで負荷もないとあって、了承の返答と共に、最後に残った餃子に箸を突き刺し、頬張るシロナ。そこに少し遅れて柴大将が厨房に戻ってくると、それまで黙々とラーメンを食していたマコが、顔を上げる。

 

「大将、追加で白飯もらえるか?」

 

「ご飯かい?ちょっと待ちな」

 

 丼を見ると麺はすっかりなくなったが、まだスープが半分ほど残っている。そこに「ほれ」と柴大将に差し出されたお椀に盛られた白米を、「あんがとよ」と礼を言いながら箸で押さえ、ひっくり返して沈めると、そのまま掻き回して程よくスープに浸かったそれを、底に沈んでいたチャーシューやメンマ等の具材と共に蓮華でかき込んでいき、平らげる。

 

「ふぅ~、ご馳走さん。美味かったぜ。ちと急ぎなんで、お代ここ置いとくわ」

 

 そのままジャケットのポケットから無造作に取り出した紙幣を、乱雑に並べて席を立つと、続けて残りの面々も立ち上がり店を後にするが、片付けるため近寄ったセリカが、追加注文の分を考慮しても明らかに多いそれを見て声をかける。

 

「お、お待ちください!今、お釣りを出しますので……」

 

「あ~、だったら最初に出た通しと、分け合ってた4人の分に加えて、諸々ってことで。じゃね!」

 

 しかし適当に思いついたと分かる口実で断るヨシキを除いて振り返らず出てしまい、彼女もまたセリカが動く前に続いてしまったため、柴関ラーメンに沈黙が流れる。

 

「あ、行っちゃった……」

 

「仕方ねぇ。余所の生徒さんみたいだったが、次来た時にその分サービスしてやるか。じゃあ、後は片付けとくから、もうあがっていいぜ、セリカちゃん」

 

「はーい!お先失礼しまーす!」

 

 そして彼女達が去ったことで客がいなくなったため、柴大将はセリカから料金と食器を受け取ると、洗いながら彼女に帰っていいと告げ、セリカもそれに従い、店を去って行った。

 

 

 

 

 

 

「さぁて、アイツ等どこ行った?」

 

 店を出たマコは、早速先程吸い損ねた葉巻を取り出し咥えて着火すると、先に出ていた便利屋68の面々を探していたところ、同じくパイプを吹かしていたオセアの端末に着信が入る。

 

「はい、こちら『S.H.A.R.K.S』。あぁ、ちょうど合流しようとしていたところだったんですよ。ただ、先程下見をしたところ、事前の打ち合わせと編成の変更が発生しまして。あぁご安心を。こちらの都合ですので、追加料金は発生しません。生憎と、払い戻しも発生しませんが。尤も、その分の働きは約束いたしましょう。では、今からそちらに向かいますので」

 

 ちょうど腹を括ったアルからの招集連絡だったようで、メンバーの変更を伝えて、通話を切ったオセアを筆頭に歩いていた面々は、暫く離れた空き地に停められていたM1エイブラムス戦車、『タートル1』に乗り込んでいき、合流地点に指定された、砂に埋もれた廃屋の前に停める。

 

「待たせたな。っても、知ってか知らずかさっき以来だが……どした?」

 

 エイブラムスの構造上、アギトとシロナ、タイガにヨシキで定員オーバーとなり中に入れないため、オセアと共に砲塔に腰かけていたマコが地に降り、先に来ていたアルに話しかけるが、反応がないため様子を見ると、しばし『ドルフィン1』の面々を呆然と眺めていたのが一転、目を輝かせて仲間達を見る。

 

「見て!タバコ!それも葉巻よ!他にも煙管やパイプまで!なんてハードボイルドなの!?やっぱりできるアウトローな女は、大人の魅力を際立たせるタバコが似合うものね!」

 

 どうやらタイガを除く『ドルフィン1』各員の喫煙姿が琴線に触れた様で、歓喜の声を大音量で発する。しかし興奮する彼女に対し、仲間達の反応は冷たい。

 

「え~?私アルちゃんが煙たくなるのは何か嫌だなぁ~」

 

「そもそもさっきのラーメンにしろ、懐事情的にそれどころじゃないでしょ?武士は食わねど、なんて言うけど、社長は流石に見栄張り過ぎ……」

 

 小柄な白髪の『浅黄(あさぎ)ムツキ』が口を尖らせ、鋭い目つきの『鬼方(おにかた)カヨコ』も、呆れたようにため息を吐く。唯一最初に柴関ラーメンに顔を出した『伊草(いぐさ)ハルカ』だけは、「わ、私はどんなアル様も受け入れます!」と妄信気味に肯定していたが、自身の感性を受け入れられず、むしろ痛いところを突かれ、苦虫を噛んだような表情を浮かべたアルは、これ以上みっともない姿を晒すかとばかりに咳ばらいをし、向き直る。

 

ンフン!それより編成を変更するとのことだったけど、貴方達だけ?他に参加する戦力はいないの?」

 

「一応別働隊も存在するが、連中と直接対峙するのは、シロナとタイガ(この2人)だ。俺達はこの戦車で支援砲撃する」

 

 マコの返答に合わせ、気だるげに電子タバコを銜えたシロナと、先のやり取りを見て露骨に見下すかの如くにやついた笑みを見せつけるタイガが前に出る。

 

「なるほど、ヘルメット団と違って、量より質ってことね。貴女も美食研究会との衝突に加えて、カスミ率いる温泉開発部の本隊を壊滅させるだけに飽き足らず、(むご)い有様になるほど痛めつけたって話題になったけど、特にタイガ(そっち)、風紀委員の切り込み隊長たるイオリを配下ごと潰しただけじゃなく、ゲヘナじゃ誰もが姿を見ただけで逃げ出すヒナ相手に自ら突貫したばかりか、いい勝負してたって聞く辺り、実力は確かみたいだし」

 

「へぇ、名が広まってるのは結構なこって」

 

 高い金に反し、実質追加戦力がわずか2人と聞いて、内心不安なアルがボロを出す――あるいはタイガの振舞いに、「アル様を侮辱した」とハルカが暴走する前に、カヨコが『ドルフィン1』の武勇を挙げていくと、ゲヘナ生の認識としては無謀を通り越し、最早奇行も同然なタイガの凶行に、ムツキやハルカも揃って絶句する。

 それだけ彼女達(ゲヘナ生)にとってヒナは絶対的な存在であり、相対的に『S.H.A.R.K.S』の評も高くなるとあって、満足げに口角を吊り上げたマコは、一息吸い込み口内に満たした紫煙を吐き出す。その様に思わず見惚れ、頬を緩めるアルだったが、即座に我に返ると、号令を発する。

 

「細かいことは今は置いといて!さぁ、行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」

 

「出動〜!」

 

「はぁ…」

 

「アル様!わっ、私、頑張りますから!一人残らず、ぶっ潰しちゃいますっ!」

 

 そうして意気揚々と進む便利屋一同の後姿を眺めていた『ドルフィン1』も、ある程度距離が空いた頃合いを見計らい、先程と入れ替わる形でシロナとタイガを砲塔に乗せて進む。

 

「さぁて、どこまでやるかねぇ……」

 

「面白ぇ連中だが、何しでかすか分からんしな。振り回される前に動くぞ」

 

「どこまでやるか知らねぇが、この戦車だって安かねぇんだ。流れ弾1発だって当ててやるもんか……」

 

「アッハハハハ!待ってな小鳥遊ホシノォ!」

 

「せいぜい巻き添えになんなってねぇ便利屋さんよぉ~」

 

「間もなく作戦を開始します。ドルフィン2は送信した地図を参考に、タイミングを見計らい突入する準備を」

 

 

 

 

 

 

 その頃アビドス校舎では、ユメがウォルターに自己紹介をしていた。

 

「梔子ユメです!ホシノちゃん達を助けていただき、ありがとうございます!」

 

「それが仕事だったからな。尤もそろそろ余所の分も溜まってきたから、近々去る予定だったが」

 

 相変わらず淡々としたウォルターに、ユメがどう返せばいいかわからず「ひぃん」と情けない声をあげていると、端末を見て何かに気づいたアヤネが声をあげる。

 

「校舎より南5km地点付近で、こちらに進攻する兵力を確認!」

 

「まさか、またヘルメット団が?」

 

「ち、違います!ヘルメット団ではありません!戦力は小規模のようですが……傭兵です!恐らく日雇いの傭兵!」

 

「へぇー、傭兵かぁ。結構高いはずだけど」

 

「どうしよう。セリカちゃんはバイトが終わってこっちに来る途中だったけど、間に合うかな……」

 

「私のジープで迎えに行って、そのまま相手しに行こう!」

 

 やり取りこそ悠長で普段通りだが、新たな敵勢力の接近に、緊迫する対策委員会。そこにユメが協力を申し出、合わせてウォルターも、背後に並ぶハウンズに向き直る。

 

「ハウンズ、新たな仕事だ。先に向かって足止めする。梔子が黒見を回収し駆け付けたら、そのまま対策委員会と共闘して、迎撃しろ。奥空は俺と共に、チヌークから支援だ」

 

「了解しました!」

 

 

 

 

 

 

「前方に傭兵を率いている集団を確認!あれは……先程柴関ラーメンで会った人達です!」

 

 ウォルターと共にチヌークで先行し、降下したハウンズが対峙する相手――便利屋68と『タートル1』に乗る『ドルフィン1』を目にしたアヤネ。対する面々のうち、滑り落ちる様に降り立ったシロナが前に進み、電子タバコを胸元にしまうと、両肩の補助アームを動かして大盾を砂地に叩き付けるがごとく振り下ろし、構える。

 

「ふぅ、対策委員会の連中はいねぇか。まぁコイツ等だけならオレ1人で十分だが……」

 

 サイバーサングラスを持ち上げて睨み付けながら、今回砲火を放つ予定はないと言え、一際大柄な彼女の身長を上回る得物のアンツィオ20mm対物ライフル、『カーブルック』を右腕1本で持ち上げるシロナ。あわせて駆け出し、各々引き金を引き攻撃するハウンズに対し、正確に大盾を向け跳ね返し、時に観音開きする盾から小型ミサイルを放ち、足止めする。

 

「防御を主体にしていると言え、ハウンズ4人の猛攻を相手に、たった1人で捌くだと……!?」

 

『気を付けてください先生!あの生徒さん、シッテムの箱の支援を対処しきってます!』

 

 先日のカタカタヘルメット団を始め、これまでの相手がキヴォトスでも下位にあたる存在——ルビコンで言えば、星外企業含む各勢力が現地調達していた土着企業、『BAWS(ボース)』製の量産MT(マッスルトレーサー)、『MT-E-104』のようだとは認識していたが、まさか初めて戦うランカーAC級の実力者が、ここまでやるとは思わず、予期せぬ苦戦を強いる羽目となってしまったハウンズの身を案ずるウォルター。そこにセリカを拾ったユメのジープが駆け付け、シロナを置いて進軍しようとした一段の前に立ち塞がる。

 

「誰かと思えば、アンタ達だったのね!?ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

 

「言ったよ?諸々って。一応少なからず、今回の賠償も込みのつもりだったけどねぇ。まぁ足りねぇか!」

 

うるさい!アンタ等もアンタ等で上客だと思って次回サービスしてやるつもりだったけど、なしよ!」

 

 まさか先程会って意気投合の末、サービスした相手が次なる刺客だったとは思わず、怒りをぶつけるセリカに対し、車内から顔を出すヨシキが便乗する様に煽ると、当然そちらにも噛みつく。しかし便利屋68も『ドルフィン1』も、その程度で退くつもりなど微塵もないとばかりに前に出る。

 

「あははは、その件はありがと。でもそれはそれ、これはこれ。騙すみたいな形になったのは悪いけど、仕事なんだよ」

 

「残念だけれど、公私はハッキリ区別しないと。受けた依頼はきっちりこなす」

 

「……成程。その仕事っていうのが、便利屋だったんだ」

 

 飽くまで仕事との方針を掲げるムツキとカヨコに対し、呆れる様に理解を示すシロコだが、未だ鬱憤収まらないセリカの暴言は止まらない。

 

「もう!学生なら他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」

 

「ちょ、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!肩書だってあるんだから!私が社長!ムツキ(あっちの子)が室長で、カヨコ(こっちの彼女)が課長、ハルカ(奥にいる子)は一般社員よ!」

 

「はぁ……社長。ここでそういう風に言っちゃうと、余計薄っぺらさが際立つ……」

 

 アルなりにも意地(プライド)はあるようで、セリカのアルバイト扱いにムキになって返すが、その様を見てカヨコは額を押さえていると、その頭上を飛び越えたタイガが、ジープから降りて得物を構え始めていたホシノのバリスティックシールドに飛び込む様に蹴りを放つ。

 

「う、うへ~~!?」

 

「ほ、ホシノちゃ~~ん!」

 

「アハハハハハ!アンタみたいな強敵を前にすると、嬉しくてたまんないなぁ!」

 

 幸い『タートル1』と向かい合ったジープの横へと真っ先に出たため、後輩達を巻き込むことこそなく済んだが、大きく距離を開けられ、見開いた目に大きく吊り上がった口角から狂気を全開にして対峙するタイガをどうにかせねば、互いに救援は望めない状況。そして向こうも向こうで便利屋68との交戦が始まり、合間を縫うような『タートル1』の砲撃から逃れる様に少し離れた場所にジープを停めたユメも参戦して激しい銃撃戦となる。

 

「じゃーん!花火を始めよっかな?」

 

「させない。ドローン、作動開始」

 

「これで戦況が変わるはず!」

 

「きゃあ!んぁーっ、マジムカついてきたぁ!」

 

「お仕置きの時間ですよ~☆」

 

「死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください……『S.C.H.A.L.E』も!貴方達も!アル様の邪魔をする者は、皆死んでください!

 

「ハルカ無茶しないで!この一撃でぶちのめすわ!」

 

「危ないノノミちゃん!私が守るからね!」

 

「ふん、個々の武器に合わせたスタンドアローンが主かと思いきや、なかなか連携取れてるじゃねぇか……だからってオレの防御を破れると思うな……!」

 

 ムツキが爆弾入りのバッグを投げれば、シロコがドローンで撃墜し、更にカヨコが手にしたH&KP30L、『デモンズロア』を上空目掛けて撃つと、前進しようとするセリカの足を轟音で怯ませ阻む。ノノミの乱射からアルを守るため前に立ち塞がるハルカが前進すれば、隙を突いて放たれたアルの狙撃を、ユメがライオットシールドでノノミを守り、離れたところでは617と620の乱射をシロナが器用に左右それぞれの盾で防ぎつつ、619の放った榴弾(グレネード)をサマーソルトキックでマシンガンを構えた618へと蹴り飛ばし、無理矢理回避に徹させる先で、跳躍したタイガのバレットM82、『ガベージイーター』が名前の通り粉砕せんと放った一撃が、ホシノの持つバリスティックシールドのアビドスの校章がペイントされた1番上の1枚を半分ほど抉り、残りを後方へと吹き飛ばす。

 

「うへ~、長いこと使ってきたけど、ここまでこの盾が壊されたのは初めてだよぉ……」

 

「それは光栄!さぁもっとアタシを楽しませてよ!ア~ッハハハハハ!」

 

 予期せぬ装備の破損に、思わず覗き込んで隙を晒してしまうホシノに対し、タイガはあえてそれを狙わず、狂ったような笑い声をあげて待つ。しかしそれ等の戦闘は、突如アビドス校舎から流れたチャイムと、それに続いた爆発音で止められる。

 

「ば、爆発!?いったいどこから!?」

 

「奥空、今調べる。場所は、旧校舎……小鳥遊が捕まえたヘルメット団員達を、留置していたところか……」

 

「フゥー、やっと終わったか……」

 

 予期せぬ攻撃に混乱するアヤネを落ち着かせ、チヌークの通信システムで被害箇所を確認するウォルター。その下では、先程までの熱戦から一転して落ち着いたシロナが、目晦ましとばかりに盾からの小型ミサイルを無差別乱射して砂煙を起こし、『タートル1』に飛び乗ったのを確認したマコが、左手首のフックショットでタイガの腹を掴み、引き寄せて回収する。

 

「時間みてぇだな。おら、帰るぞ腹鰭(ボトム)

 

「ゲヒャヒャヒャヒャグォゴヘェッ!」

 

 そのまま反転して走り去っていく『タートル1』に、砂煙が晴れてから気づいたアルは困惑。すでにいもしない『ドルフィン1』を呼び戻すべく声をあげる。

 

「は、はぁ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!こらー!!ちょっ、どういうことよ!?ちょっと!帰っちゃダメ!」

 

「こりゃ、ヤバいね。まさかこの時間まで決着がつかないなんて。どうする……アルちゃん?逃げる?」

 

「あ……うう……。こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!て、撤退するわよ!」

 

 ムツキもこれ以上は分が悪いと察しながらも、一応アルの顔を立てるため確認を取ると、流石に状況を理解して撤収を呼びかけ、去って行く。

 

 

 

 

 

 

 少し時を遡り、アビドス旧校舎。対策委員会の面々が、普段過ごす本館の陰に隠れるような配置のそこには、先の基地襲撃前後で倒れ、捕縛されたカタカタヘルメット団員達が押し込まれていた。経年劣化で耐久性などが危険視されていたため、一応短期間宿泊する分には問題ない程度を目安とした簡単な補修が施され、朝夕に食事として弁当が配られていたおかげで、武器こそ没収されたが、そこまで劣悪とはいかない程度には生活を保障されていたとあって、ホシノの転入を促す説得に心を動かすものもいるとはいえ、襲われた逆恨みや、逃げた仲間への想い。何より、砂漠に呑まれ消滅しつつあるアビドスの不振極まりない先行きから、収容された皆が皆動いているわけではなかった。

 そこに便利屋68達を発見し、対策委員会が迎撃に向かった頃合いを見計らい、複数台のピックアップトラックが急接近する。元々本館や周辺施設の周囲を囲う塀の外に位置することに加え、幸運にも、普段なら校舎に残り指揮や通信を担当するウォルターとアヤネも出払ったとあって、彼女達を察知や妨害する存在はいない。

 

「ここが旧校舎、ね……まぁ、確かに隔離しとくなら、これくらいがちょうどいいか……」

 

 そのうち1台の荷台から飛び降りたのは、今回の作戦を志願し、その指揮をするアトラ。彼女を始めマコ達と共にアリウスを脱した面々に加え、SRT時代の加入人員を合わせれば、発足時点で6人1組の小隊『ドルフィン』を30は編成できるほどいたが、その後D.U.で征したスケバンの様なあぶれ者達を各地で集め、更に加入した隊員達は、編成が間に合わず、こうして既存の『ドルフィン』傘下に従う形で行動させている。

 

「隊長、予想通り脱走防止のために鍵がかかってます。今破壊を……」

 

「ちょっと待って。このくらいなら……はい」

 

 そうしたメンバーの1人でもある隊員が、正面の閉ざされた引き戸を確認しアトラに声をかけると、手にしたショットガンで破壊しようとしたところを止め、扉に手をかけ、軽く払うだけで。鍵などかかってなかったように開いてしまう。

 

「さ、これで出入りできるようになったわ」

 

「ありがとう!おーい!助けに来たぞ!」

 

 『ドルフィン1』の面々と違う優しげな人相に反し、涼しい顔で見せた身体能力の高さに呆然とする隊員を無視したアトラに声を掛けられ、同伴していたカタカタヘルメット団員達が、中にいた仲間達の元に駆け寄る。

 

「お、お前達、わざわざ助けに来てくれたのか!?」

 

「よかった!そっちも無事だったんだね!」

 

「あぁ、今は『S.H.A.R.K.S』の世話になってるんだ!他のヘルメット団出身者とも会って話聞いたけど、結構経歴問わずで待遇いいから、このまま世話になろう!」

 

「世話、かぁ……追い立てといてなんだけど、捕まってる間に面倒見てもらったとは言え、やっぱいつ消えてもおかしくないアビドス(ここ)じゃ、折角転入してもまた根無し草に逆戻りする印象しかなかったからなぁ……」

 

「あぁ、わかる……」

 

 久々の再会に歓喜し、周囲を無視して語り合うカタカタヘルメット団員達だが、そこにミナトが手を叩いて注目を集める。

 

「はぁい、盛り上がるのも分かるけど、離れる準備お願いね。とりあえず物色して、持ってけそうなものは積んどいたから、後はアンタ達が乗り込めばオサラバよ」

 

 そこまで広くない旧校舎だが、かつてサークルや部活の休憩スペースとして使われていたこともあり、彼女の指揮で隊員達が探索した各所には、当時の備品や、残された思い出の品々などが多々発見された。そのうちまだ使えそうなものはトラックに載せ、明らかに個人の私物と言えるものは、向かいに位置する図書館の裏手に並べた後、空となった内部のあちこちにC4爆弾を設置し終え、いつでも手にした起爆装置で吹き飛ばせる準備はできた。

 

「さ、撤収しましょ。引き付けてる(ヘッド)達と合流したら、入隊祝いにトリニティでスイーツビュッフェでも行こうか」

 

「と、トリニティ!?そんなとこ行って大丈夫なのか!?」

 

 トリニティと言えばお嬢様学校とあって、物価もそこそこする。そんなところへ自分達の様な流れ者同然の人間が行ってもいいのだろうかと、アトラの提案を聞いて気後れするカタカタヘルメット団員達に、持ち出した品々を片付けるため、一足先に隊員達を連れ引き上げたミナトに代わり、起爆装置を手にしたトウニが答える。

 

「大丈夫!この人数なら、貸し切りできるくらいには稼いでるし。そもそも出身とか経歴とか言い出したら、私達だって立ち入りできないくらい脛に傷ある身だから」

 

 未練や愛着どころか興味や関心すらなく、むしろとっくに過去の遺物として消えていたとさえ思っていた故郷(アリウス)では、内乱が集結し、彼女達が離れる寸前辺りから、虚無思想が広まりつつあった。しかし『ゴチャゴチャうるせぇ、どうでもいいから食い物探すぞ』と意に介さず、当時から文字通りハングリー精神全開だったマコの活力に当てられた仲間達は、それこそヘルメット団やスケバンも同然のはぐれ者の寄せ集めから、叩き上げでSRTに入学し、更に傭兵組織として独立まで成し遂げる波乱万丈を歩んできたとあって、「不要な破壊や戦闘で周囲に迷惑をかけない」程度の最低限な常識はあるものの、そうした学区間の確執には無頓着であちこちに顔を出せる胆力を備えている。むしろそれくらい肝が据わってなければ、傭兵としてやっていけないだろう。

 

「それじゃそろそろ時間だから、いい加減離れましょ。旧校舎(ここ)の破壊で、一応の成果作らなきゃだし」

 

 アトラが左手首に付けた、広く普及しているデジタル時計を見ると、間もなく『ドルフィン1』も撤収する頃合い。シロナとタイガが出たとあれば、対策委員会(相手)にも相応の痛手を負わせたろうが、それだけでは自分達を雇用し、彼女達と対立している理事も納得すまいとあって、何かしらわかりやすい被害(ダメージ)として、この旧校舎破壊を今回の目標と決めていた。

 故に残ったカタカタヘルメット団員改め、『S.H.A.R.K.S』の新入り達を乗せたピックアップトラックが離れ、チャイムが響くと共にトウニが起爆させたC4爆弾は、爆音と共にアビドス旧校舎を粉砕し、対策委員会の気を引くことで、『ドルフィン1』が撤収する隙を作る任を果たしたのだった。

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