Handler Archive   作:ゲオザーグ

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何かミスって違う作品に投稿してた・・・


()第二次アビドス工房準備

 ホシノが語ったアビドスの過去と、そこから続く、これまで表面しか見えてなかった現状。一際早急性が高い借金問題にばかり捕らわれ、それが序の口どころではないほどに悲惨で深刻だった母校(アビドス)の有様に絶句する後輩達を横目に、説明を終えたホシノは一息つけるとばかりに席に戻り、机に伏す。

 

「これでわかったでしょ~?アビドスにもう先がないって。だから需要あるうちに引き渡して、サッサとこの砂漠からオサラバするのが賢い選択なんだよ。『S.H.A.R.K.S』だって、まぁゲヘナの生徒さんはご愁傷さまと言え、別に大人しく従う分にはヘイローを壊すような真似まではしてないんだし、お互い穏便に済ます方が楽なもんだよぉ?」

 

 そんな彼女が漏らした、「ヘイローを壊す」なる聞き慣れない言い回しに対し、思わず視線を向けてきたウォルターに気づいたホシノは、自身の後頭部を指さしながら、その説明に入る。

 

「あ~、ウォルター先生は外から来たから、詳しく知らないか。まぁ、生徒(私達)でも存在を知ってるくらいで、具体的にどんなものかまで説明できるのは少数っぽいけどね。ヘイローってのは、生徒(私達)の頭に浮かんでる神秘の根源?なんだって。これがあるおかげで、バカスカ撃ち合ってもせいぜい痛いくらいで済むらしいけど、神秘とやらの強弱や形状、そもそも見えるかどうかは個人差があるって聞いてるね」

 

「随分と他人事だな……お前自身は違うのか?」

 

「実はユメ先輩を入院させてから、『あなたの神秘を研究させてほしい』って声かけてきた人がいたんだけど、私もその人からの又聞きでしかないんだよねぇ。『暁のホルス』なんて呼ばれたんだけど、何でも私の神秘は人一倍どころじゃない強さらしくて、その人の興味を惹いたみたい。まぁその時はもうアビドス廃校の準備に忙しくて、丁重にお断りさせていただいたけどね」

 

 かつてルビコンで、己が興味関心のためなら見境ない行動を起こす「ろくでなし」達を目にしてきたウォルターとしては、1度の勧誘でアッサリ手を引いたと聞いて、やけに聞き分けがいい相手の対応に怪訝な表情を浮かべるが、少なくとも彼女達が借金以外特に苦も無く過ごせており、その借金にも先の話を聞く限り1枚噛んでいるような様子もないことから、相手が例の影を操る黒幕でもなければ、承諾させるために追い込むような真似をしてないのは事実らしい。

 

「意図はわからんが、それ以降接触はなかったようだな。どんな奴だ?」

 

「ん~、服装だけならよく見るような真っ黒いスーツだったから、特に名乗らなかったんで『黒服さん』なんて呼んだら気に入って名乗りだしてたけど、多分先生が想像してるより、ずっとヤバい相手だと思うよ?なんかよく分からないエネルギーが、服に合わせて人型をしてるみたいな様子だったから

 

 

 

 

 

 

 所変わってカイザーPMCの廊下では、『ドルフィン1』の面々が予期せぬ相手と遭遇していた。

 

「よぉ黒服のオッサン、久しぶりだな。理事のオッサンに用か?」

 

「おや、『深淵なる蒼』ではありませんか。お久しぶりですね」

 

 かつてホシノに接触するも、予想よりアビドスに執着がなく、むしろ疎ましんでさえいたとあって交渉が成立しなかった人物、『黒服』。彼はウォルターの予想通り大人しく手を退いた訳ではなく、カイザーの企みに便乗して、真綿で首を締めるかの如き緩やかな攻め立てで、アビドスが追いつめられるのを静観し、機を窺っていた。その過程で『S.H.A.R.K.S』とも接触していたが、『深淵なる蒼』は彼がマコに付けた呼称で、同様に他の面々にも独自の呼称を付けている。

 

「アンタのセンスにケチつける訳じゃねぇつもりだが、俺としちゃ『群鮫(ぐんこう)の統率者』って呼び名の方がシックリくる感じすんだよな。連邦生徒会の連中、ネーミングセンスだきゃあ優秀でよ」

 

 脱獄間もなく『S.C.H.A.L.E』ビル周辺で騒動を起こすも、予期せず遭遇したハウンズに本格行動を起こす寸前で叩き潰され、そのまま収監され再度脱獄して以来指名手配されたワカモの『災厄の狐』を始め、一際活動が危険視される『七囚人』と称される脱獄生徒達。連邦生徒会は質、量問わぬ有する戦力と、特定の自治区に属さぬ自由性から、『S.H.A.R.K.S』も同等の脅威と判定し、同様に二つ名を付けて主要隊員を指名手配しているが、既に三大自治区を始め、多くの中小規模の自治区で、相応の対価と引き換えで連邦生徒会長の失踪を機に悪化した治安の回復、維持に貢献したと共にその戦力を誇示したとあって、どこも未だ渦中の連邦生徒会長を発見できず、いたずらに本業を放棄しているだけに等しい状態の連邦生徒会に見切りをつけ、指名手配通知を無視して『S.H.A.R.K.S』に手を貸す方針を暗黙の了解としていた。とは言え二つ名自体は各地で浸透しており、称賛として度々当人達の耳にも届いていた。

 

「それは失礼。しかし、神秘を汚すと忠告しましたが……相変わらず葉巻(それ)を吸ってられるのですね……」

 

 顔の角度を変えたことで、口を思わせる白い亀裂部分の両端が、気持ち下がった様に見える黒服。その目にも見える一際大きな丸い光沢は、マコが銜えた葉巻に向いたらしい。

 

「おぉ。ゲヘナでもケチつけられたが、すっかり俺達の象徴(トレードマーク)になってっからな。しばらく手放すつもりはねぇよ。それにアンタも、葉巻(コイツ)が好ましくねぇって観察結果が得られたんなら、それはそれで役立ったろ?」

 

「まあそれもそうですが……」

 

 実際マコの言う通り、彼女やヨシキの様に喫煙が多い隊員に比べ、補充を忘れがちなシロナや、『ドルフィン1』では唯一の非喫煙者なタイガの方が強い神秘を有していることが判明していると言え、黒服としては、戦力に使う分はまだしも、ただでさえ実験対象とするには粗悪な彼女達の価値を余計下げるような真似は控えてほしいところ。特に今回の様にアビドスの面々と接触する場合、そちらにも悪影響を及ぼしかねないとなれば、流石に勘弁願いたいところが本音でもある。

 

「とりあえず今後どうなるかは、あの便利屋連中次第ってとこだな。っても、流石にまたおれ達を雇うような余裕はなさそうだったが、他の小隊(ドルフィン)に声かけるくらいは見栄張ってきそうだな」

 

 そこに割り込んだのは、同じく銜えていた煙管を口から離したアギト。幸い便利屋68は、別働隊(『ドルフィン2』)の旧校舎破壊と、そのための揺動認識された対策委員会との戦闘が功績と認められ、報酬が渡されていたが、残念ながら仮にそれを全額投じたとしても、『ドルフィン1』を再度従えアビドスに侵攻するには、物足りないと言わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 一方件の便利屋68は、砂嵐で放棄されたアビドス市街地の一角にある、事務所を構えた雑居ビルで今後について悩んでいたところだった。

 

「どうするアルちゃん?依頼主(向こう)には期待されてるけど、これで『S.H.A.R.K.S』は厳しいんじゃない?」

 

 『ドルフィン1』に連れられ、カイザーPMC理事へ報告に向かったところ、見栄を張ったことに小言をもらったものの、依頼の続行宣告と共に無事もらった報酬で宣言通りD.U.のすき焼き店に行き、堪能した便利屋68。しかし一晩明け、残った手持ちを確認したところ、アギトの予想通り再度『ドルフィン1』を雇うには足りないとあって、アルは頭を抱えていた。実際対峙し、対策委員会の実力を目の当たりにしたからこそ、対策は万全にしたいと思うと共に、できることなら昨日は戦車に乗って参戦しなかった面々も借り出したいところだったが、今の手持ちでは何とか1人加えられれば御の字と言ったところ。そうして遂に腹を括ったアルは、頭上から降ろした手を机に叩き付け、その勢いに合わせて立ち上がりながら、次の行動を宣言する。

 

「融資を受けるわ!皆ついてきなさい!」

 

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