「こちら『ドルフィン17』グループ!警備中の銀行に襲撃発生!増援求む!クソッ全然つながらない!
「あの装甲、こっちの攻撃が通じない!ガハァッ!?」
《big》「この野郎!
「スロー、スロー、クイッククイックスロー、スロー、スロー、クイッククイックスロー!巧みなステップです、ご友人方!」
闇銀行のエントランスにて生じた銃撃戦の最中、『S.H.A.R.K.S』の一般隊員達が手にした銃器で襲撃してきた『オーネスト・ブルートゥ』率いる『ジャンカーコヨーテス』——実際はかつて面白半分とは言え拾った恩を踏みにじるかの如く、『RaD』の資金や物資を持ち逃げされた恨みを発散するかの様にその名を借りたカーラと、彼女に従うハウンズに応戦しつつ、他の部隊に救援を求めるが、先程ホシノ達が外部電源を破壊したタイミングに合わせ、チャティが設置した
「(この流れを見ると、ウォッチポイントへの襲撃を思い出すな。尤も今回は、破壊すれば片付いたあちらと違う分、色々と気を遣わねばならんが……)」
通信を絶ち、孤立させた施設への強襲する
「あのシールド、ミレニアムで新進気鋭と話題の機工開発室製か。どんな素材使ってるかまでは知らないけど、MTの攻撃に耐えるなんて、結構な強度だね」
『ボス、
『R2B SHCHIT』のガトリングや、『MT-E-104』のミサイルランチャーを浴びても耐えるタワーシールドを見て感心するカーラに対し、忘れぬようにと目的を伝えるチャティが、ハッキングした監視カメラを通して送った映像には、一般隊員達に指示を出しながら応戦する『ドルフィン17』と、どうすればいいかわからずオロオロするアルを庇って固まる『便利屋68』の後ろで、腰を抜かしたまま動けずにいた審査員の姿が映っている。突入して無闇に破壊しながら探し回るよりは、コイツを捕まえ案内させがてら、必要なものを持ち込ませた方が楽に済むと判断したようだが、そのためには両者の相手はもちろん、ゼブラが付近の器物を引き寄せて作り出した
「チィ、便利屋!ウロチョロしてないで加勢しろ!報酬は交渉する!無駄な見栄だけのこけおどしじゃないんなら、コイツ等追い返すくらいの戦果出してからデカい口叩け!」
「だ、誰がこけおどしよ!そこまで言ってくるならやってやろうじゃない!」
加えて間の悪いことに、サドラが『便利屋68』に発破をかけ、それを侮辱と捉えたのか、変なところで思い切りよく返したアルの買い言葉を同意と見做した『便利屋68』も参戦したとあって、今はまだ致命的とはいかないまでも、盾や装甲の破損は、このまま行くと無視できない。
「ふむ、これもこれで面白いし、機体の損傷もまだ『笑える』範疇だが、確かに悠長に行ける程の余裕はないか。チャティ、そろそろアレの準備をしておくれ」
『了解だ、ボス』
本命を思い出したように機体を向き直らせたカーラの指示を受け、チャティが姿を消す。合わせてかつて本人がCOM音声用に収録した肉声を元に、彼が調整、放送していたブルートゥも黙るが、それを「ふざけていた奴が本腰を入れた」と認識したのか、『S.H.A.R.K.S』の反撃も激しくなりると共に、『便利屋68』の協力を得たとあって、『ドルフィン17』も動く。
「このままじゃ埒が明かない……確か付近でアトラさんが新人連れて研修中のはずだったから、ちょっと伝えてくる!行くよシルバ!」
「オッケーリーフ!韋駄天コンビの脚力は伊逹じゃないっての!」
サドラの影から飛び出し、突き破られた入り口目掛けて駆けだしたのは、水色の髪で額にバイザーゴーグルを持ち上げ、紺のブラウスに灰色のワイドパンツの『
「逃がしたか……!すまないカーラ、逃亡を許した」
「バレないようにレーザーポインターを切ってたと言え、射線に気付いて逃げた向こうが上手だったんだ。そこは仕方ないさ。チャティに頼んだ『仕込み』が間に合えば、その隙に勝負を決めれるんだが……」
カーラ達が闇銀行を攻めている頃、ブラックマーケットの外れでは、白く塗装され、左胸部分に温泉マークがプリントされた2機の『MT-J-048』を従えた温泉開発部が、現地民を脅迫同然に払い除けようとしていた。
「開発の邪魔だ!とっとと失せろ!」
「ふ、ふざけるな!ここはウチの土地だぞ!」
マコに火達磨とされた部長のカスミは、未だ救急医学部のベッドで、ミイラよろしくほぼ全身包帯まみれとあって、温泉開発部は彼女のため火傷に効く温泉を探していたが、比較的地理に詳しかった彼女の指揮下でも無関係そうな区域を襲撃していたこともある通り、如何せん実際の有無を気にせず破壊活動に準じているような面々ばかりとあって、各地で破壊活動を起こしては、その迎撃、鎮圧に呼ばれた『S.H.A.R.K.S』に潰されるのを繰り返し、逆恨みも同然の怒りを抱えていた。
「どかないってんなら実力行使でもいいか!こっちは部長のために、早く火傷に効く温泉を掘り出さなきゃなんないんだからね!」
そうして現在指揮を執る副部長のメグが問答に痺れを切らせ、得物たる火炎放射器の『メグマパワー!』を担ぎ、炎を噴射して住民達に浴びせる様に振り回す。
「うわっつつ!くう、こっちに抵抗できる戦力がないからって……こうなったら『S.H.A.R.K.S』に任せるしか!」
元々複数体の戦闘用オートマタや、戦車相手でもそこそこ腕に自信がある生徒ならたやすく蹴散らせる程度と、それ以外の住民の能力差は大きく、それをいいことにこうして彼女達が暴れると、成す術がない。そうして
『4脚型が2機か、思ったよりいい戦力があったな』
勢力問わずMTを販売している『RaD』だが、実は万一購入者に敵対された場合などを始め、機体内には色々と『仕込み』を入れていた。チャティがその1つを作動させるべく、メンテナンス用ハッチを開けてプラグを差し込むと、2機の『MT-J-048』は、
「ふん!アンタたち如きが呼べるもんなら呼んでみなさいよ!これでもまだ温情ある方だからね。後ろのデカいのに踏み潰されたくないでしょ?わかったらさっさと……んぇ?」
そしてメグが炎を切り、誇示する様に自慢げに振り返った先に『MT-J-048』の姿はなく、チャティの案内に従い、背を向けてどこかへと飛んでいくところだった。
「うぇええ!?な、なんで勝手に動いてるの!?」
「『RaD』の奴等何やってんだ!?こんな不具合起こすなんて、ぼったくりじゃないか!」
「とにかく取り返さなきゃ!折角『S.H.A.R.K.S』に対抗するために用意したんだから!」
事情は分からないながらも、まずは奪還せねばと追いかける温泉開発部を引き連れ、チャティは闇銀行に向かって行く。
闇銀行の攻防は、火力と装甲の差に任せた『RaD』と『S.C.H.A.L.E』が優勢を維持しつつも、同様に『S.H.A.R.K.S』も『便利屋68』の協力で持ち堪えていた。生憎ムツキはいつもの爆薬入りバッグを持っておらず、カヨコも発射音に反しMTの装甲に無力で「戦力」とは言えなかったが、隙を突くアルの『ワインレッド・アドマイアー』が放つ狙撃やムツキの『トリックオアトリック』の弾幕は、ハウンズの乗るMTや、持つ盾に弾痕を残す程度にはダメージを与えている。
『戻ったぞ、ボス。「仕込み」は間に合ったようだが、先程ログを確認して、脱出した隊員が最寄りの仲間に接触して戻るまでを計算したところ、後10分ほどしか余裕がない。』
「よくやったよチャティ!聞いたかい?ここが正念場だ、一気に攻めるよ!」
そこにチャティの通信と共に温泉開発部から盗み出した『MT-J-048』と、それを追ってきた温泉開発部が雪崩れ込む。
「えぇ!?お、温泉開発部!?」
「増援!?コイツ等グルだったか!って、アンタもいい加減さがってろ!」
予期せぬ乱入者に驚いて白目をむくアルを無視し、実際は早とちりと言え、更なる敵の迎撃に動いたサドラは、フルチャージ状態の『ブルー・マグノリア』を温泉開発部に打ち込みながら、未だ立ち上がれず座り込んだままの審査員に退出を促すが、その隙を突くようにカーラの『R2B SHCHIT』が急接近してくる。
「アル様危ない!」
「ハルカ!よくもうちの社員を!」
「よっし、捕まえた!618、一緒に来ておくれ!」
慌ててアルを庇うべく前に出たハルカをそのまま轢き、激昂したアルの一撃を盾で防ぎながら、後ろにいた審査員を盾で掬う様に持ち上げたカーラは、『MT-J-048』に乗った618を連れ、戦闘を残りのハウンズと温泉開発部に任せると、窓口を突き破り、内部へ突入していく。
「ひ、ひいぃ~~!お、お願いです!欲しいものは何でも差し上げます!現金、金塊でもいくらでも差し上げます!だから命だけはお助けを!」
「あぁ、不憫だ。その様に怯えないでください、新たなるご友人。それでは集金記録の明細と、幾らかの現金を、こちらのボストンバッグにいただけませんか?あぁ、金塊や希少品の様な現物はいりませんので、ご注意を。こちらとしても、必要以上の破壊行為は不本意な物でしたので」
「か、かしこまりましたぁ~~!少々お待ちを!」
実際のブルートゥもそうだったと言え、傍から見れば「どの口が」と思わずにいられない様な部分もあるが、幸いにも盾の裏から降ろされた審査員は恐慌状態で、こちらの要求に文句なく従い、618の『MT-J-048』が盾の裏から取り出した複数のボストンバッグを受け取ると、欲する物を保管している金庫目掛けて走り出し、詰め込めるだけ入れると、戻って差し出す。
「お、お待たせしました!こちらに詰めましたので、どうか命だけは!」
「ありがとうございます、新たなるご友人!それでは失礼します!」
618の『MT-J-048』が集金記録の明細書類と札束で一杯のボストンバッグを受け取り、念のためこっそり同伴し、後ろに回り込んでいたチャティがスタンガンを押し付け、「ゴンベッサ!」と奇声を上げて気絶した審査員が倒れ伏したのを確認したカーラは、せめてもの情けと、「命だけは」の約束に従い盾で通路の端に寄せてやり、撤収のため『R2B SHCHIT』を反転させる。
「目的のブツは貰った、後はこのままずらかるよ!」
「聞いたな、仕事は終わりだ。増援が来る前に帰投しろ」
幸い先程チャティが計算した時間は、まだ3分ほど残っており、余裕とはいかないが、逃走するには十分だろう。残る『MT-E-104』達の腰からポロポロと人の頭ほどの煙幕手榴弾が落ちると、そこから発した煙に紛れ、5機のMTは姿を晦ました。