「とりあえず、今日は武器の新調前にブラックマーケットの警備ルートを巡回してみようか」
アトラとトウニ率いる新入り達は、ブラックマーケットの一角にて彼女達が運転する73式大型トラックの荷台から降り、整列してから予定を聞いていた。何人かはヘルメット団時代からの武器を引き続き有していたが、先日の基地襲撃や救出の際に破損や紛失していた者もおり、そうした者達は間に合わせで
「よかったいた!アトラさん!トウニさん!援護お願いします!」
「あたし達が警備してた銀行が襲われて!通信も妨害されてたんで、伝えに来たんです!」
「え、襲撃!?ど、どうするよアトラ……?」
将来的に新入り達が担う機会もあり得るとあって、元々彼女達が警備する闇銀行にも後程顔を出す予定ではあったが、そちらから助力を求められる予期せぬ事態に、思わず部隊の長たる姉に判断を仰ぐトウニに対し、アトラは既に指示を出しているところで、早くもトラックの運転席に乗り込み、妹が助手席に乗るのを待つばかりだった。
「ごめん、急だけど予定変更!支援に向かうから、皆荷台に乗って!トウニも早く!」
「わ、分かった!って、先に言ってよ!」
「「「「「り、了解!」」」」」
幸い元々ヘルメット団として集団行動に慣れていたこともあって、アトラの指示に返答した新入り達は、即座に降りて間もないトラックの荷台へと乗り込んでいき、幌に案内するリーフとシルバが飛び乗ったと同時に出発するまで、30秒もかからなかった。
「煙幕!?クッソ!やられた!」
エントランスを包む煙幕と、離れていく音で『ジャンカーコヨーテス』が逃亡したことに気付いたサドラは、苛立ちをぶつける様に動きを止め残っていた温泉開発部の『MT-J-048』目掛け『ブルー・マグノリア』のレーザーを放ち、転倒させているうちに、メグが観念して動きを止めたらしき盗み出した犯人を捕まえんと、もう片方の
「さぁ、私達のMTを返して……って、いない!?どゆこと!?」
しかし
「ぐうぅっ……グルかと思いきや置き去りで逃げた辺り、体よく囮兼戦力に使っただけじゃなく、最後にとんだ置き土産を……」
幸いウォルターやカーラが破壊した個所からより屋内に逃げ込んでいた『S.H.A.R.K.S』と『便利屋68』は巻き込まれずに済んだが、サドラの『ブルー・マグノリア』同様拾われた、成形炸薬弾を発射するバトルライフル、『Au-C-B19』の『サンシャイン・ラグーン』で目元を覆うゼブラが恨めし気に漏らした通り、一面エントランスが消し飛び、吹き曝しとなった空間から、爆発を聞きつけ集まった野次馬達が覗き込む。
「何だ何だ?」
「うぉ、銀行が吹き飛んでやがる……!」
「あれってゲヘナの温泉開発部……?銀行壊そうとして自滅した?」
「……とりあえずこのまま晒し者は勘弁ね。
野次馬を追い払うより優先すべきことに移るため、サドラが裏に向かおうとしたところ、代わりに成し遂げるかの如くクラクションを鳴らしながら突撃してきた73式大型トラックが割り込んで塞ぐと共に、幌から飛び降りたリーフとシルバに続き、荷台から隊員達が降り、最後に運転席のアトラとトウニが出てきた。
「増援に来た……のはいいけど、完っ全に間に合わなかったみたいね……」
「人手が欲しかったんで、来てもらっただけでも助かったわ。とりあえず
「え、ちょ!?」
「わかったわ。ごめん皆!また今度奢るから、今日はここの片付けお願い!」
「了解しました!それじゃまずは倒れてるのから縛るか……」
隊員達が数人がかりで降ろし、差し出してきた『ファルジネス』を受け取って構えたはいいが、既に温泉開発部の部員達が倒れ伏し、駆け付けたことに感謝するサドラ達が戦闘態勢を説いていることから、既に戦う必要はないことを察し、苦笑と共に銃口を降ろすトウニに対し、サドラは新人隊員達に温泉開発部の束縛や瓦礫の撤去を任せ、事情を説明してもらうためアトラとトウニと共に連れ出され困惑するアル以下『便利屋68』ごと奥に向かい、倒れ伏したままの審査員を見つけると、楕円形の頭を『ブルー・マグノリア』でグイグイ押して揺らし、起こす。
「思ったより早く見つかったわね。ほら、起きなさいよ」
「うぅ……ハッ!?あぁよかった!生きている!」
「感動してるとこ悪いんだけど、上に説明しなきゃなんないから、このまま一緒に通信室行くよ~」
「え、あ……か、かしこまりました……」
目を覚まして早々絶望に叩き落す様なトリアの宣告に、歓喜から一転した審査員が、同僚達から同情と自分が矢面に立たなくてよかった安堵の視線を向けられながら、一行と共に通信室に向かうと、サドラの操作に合わせて複数ある眼前の
『定時報告はまだ先のはずだが、どうした、何かトラブルか?』
『アトラにトウニじゃねぇか。便利屋連中なんざ連れて、新人達ゃどうした?』
「そこについての報告を今からしたく。まずは――」
そのままサドラが『ジャンカーコヨーテス』の襲撃と、温泉開発部の乱入、隙を突かれ連れ去られた審査員の行動、リーフとシルバに呼ばれ、アトラとトウニ達が駆け付けたものの間に合わなかったことを伝えると、紫煙と共に吐き出されたマコのため息をきっかけに、緊迫した空気が多少緩む。
『ソイツぁ災難だったな。とりあえず被害は温泉狂い共の犯行に誤魔化すとして、後でゲヘナに抗議送っとくか』
『それが賢明だろうな、暫く営業は停止せざるを得んか。後程被害確認の部隊を送るが、到着次第お前達は帰っていいぞ。あぁそうだ。ソイツも大分動揺していたようだし、多少被害額が記憶と異なっていてもおかしくないだろうが、そこは仕方あるまい。ではな』
『……あー、とりあえず終わったら、柴関ってラーメン屋どうだ?昨日行ったんだが結構美味くてよ』
「いいけど、卵は?」
ひとまず『ジャンカーコヨーテス』の被害は温泉開発部に押し付けることでまとまり、「迎撃の報酬は過ぎない範囲で勝手に持って行け」と暗に伝えた理事が通信を切ると、マコも労いがてら柴関ラーメンを紹介すると、真っ先に反応したトウニの問いに、昨日自分達が注文したメニューを思い出す。
『どうだったかな……一応俺が頼んだ品には付いてなかったが、予約がてら融通きくかちと確認してみるわ』
「トウニ……まぁ、茹で卵は断固無理なんで、お願いしますね」
『任せな。んじゃ、後でアトラとサドラに住所送るから、現地集合だ。アバヨ』
そのままマコも通信を切り、画面が暗くなったのを確認したサドラは、何故か自分と同じ立場のはずなアルと一緒に圧されて及び腰な審査員に向き直る。
「それじゃ聞いてた通り許可は貰ったし、アンタへの追及も最低限になるようしとくから、後はわかってるでしょうね?」
「お、お手柔らかにお願いしますぅ……」