Handler Archive   作:ゲオザーグ

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()アビドス再興計画始動

 チャティがシッテムの箱を介し、連邦生徒会のサーバーに『仕込み』をした翌日、アビドスの面々とウォルターは、事情の説明と闇銀行で入手した現金の配当の為招いたカーラと共に、シッテムの箱に届いたその成果を目の当たりにする。

 

「いや~やってくれたねぇ先生……」

 

 長らく自分達の生活を占め、更に廃校の口実足りえた数億もの借金を、わずか1晩で強引に抹消されたとあって、感情の整理が追い付かず、眼尻と口角を痙攣させながら引き攣った笑みを浮かべたホシノが所在なさげにウォルターへ声をかけるが、そのウォルターは、笑いをこらえるように喉を鳴らし、体を震わせるカーラに呆れた様な目を向けたまま黙っている。

 

「全くだよチャティ。当人がいないのをいいことに、連邦生徒会長名義で取り消し勧告なんて。そのまま成りすまして、連邦生徒会を乗っ取ることも容易じゃないかい?」

 

『可能かもしれないが、いずれボロが出るだろうからやめておくことを勧めておくぞ、ボス。だが連邦生徒会の目が光っている以上、カイザーもしばらく迂闊に強引な手はとれまい。その間にアビドスを自治区として立て直し、復興させるための手段が、これだ』

 

 カーラの案に真面目な返答をするチャティが、続けてシッテムの箱を占領され、隅で不満気に不貞腐れていたアロナが『ヴェ!』と呻き声をあげて押し出されるのを無視して表示したボードに記載されていたのは、借金帳消しを含む支援への対価として、連邦生徒会への奉仕を名目に課されたアビドス復興活動の内容。その1番上には、「ヴァルキューレの矯正局を始めとする各地の収容生徒、および無学籍の生徒を転入生として預かり、社会更生のために協力」と載っていた。

 

「何よこれ!?要は体のいい流刑地ってことじゃない!私達の学校を何だと思ってんのよ!」

 

「おぉ~、前から提案してたけど、遂に実行されるかぁ~♪やっぱりそうでもしないと、今のアビドスは人集まんないよねぇ……」

 

 当然セリカは納得いかず噛みつくが、逆にホシノはこの中でも1番長くアビドスの現況を眺めてきたとあって、むしろカタカタヘルメット団の襲撃があった頃から定例会で彼女達の様な無法者の受け入れを提案し続けていたものの、毎度アヤネやセリカに代案もないまま拒否され続けて相当鬱憤も溜まっていたのか、同じ認識に至ったチャティが連邦生徒会の指示を掲げて命じてきたことを喜ぶ。シロコも眉間にしわを寄せ、不満気な様子を隠さないが、如何せん自身が記憶喪失で流れ着いていたところを拾われたとあって、ある意味より酷い出自故、否定してしまえば自身も該当し得ることに気付いているらしく、「んぅ……」と呻くだけにとどめ、距離を置いている。

 

「悔しいですけど、マンパワーの乏しさは最大の難点(ネック)でしたからねぇ……ですが、協力してくれるでしょうか?」

 

『そこはお前達次第だな。小鳥遊ホシノに限らずこの地(キヴォトス)でも有数の実力者とみているが、反抗的な相手を黙らせ、従える分には問題ないと認識している』

 

「ブラックマーケットの方でも、できるならどこかに属して身を立て直したいって声は多く聞くね。そうした連中も『RaD(ウチ)』から声をかければ、食いついて乗ってくるかもしれないよ」

 

 何から何まで不足しているアビドスにおいて、やはり最優先で補うべきは人手なことは、1年過ごすうちに実感したとあって、たとえ相手がはみ出し者でも、アビドスに招かれること自体はノノミも受け入れることに反対こそしないものの、今まさにセリカが体現している様に、反発して暴動を起こさないか不安を漏らすが、チャティの返答は、「噛みついてきたら叩き潰せ」と少々突き放しながらも、これまでアビドスを守り抜いてきた彼女達への称賛込みの評価。カーラも『RaD』に迎い入れた退学者達を通じて見聞きしたブラックマーケットの内情から、アビドスが砂に呑まれ消えゆくだけの存在にあらずと知れ渡れば、身分を求めて門を叩くものも多かろうと、望んでくる者も少なからずいるだろうことを伝えれば、ホシノは廃校の目論見を潰され、半ば自棄になったのか「そう言われたら期待に応えないとねぇ~♪」と今までとは対照的にやる気を見せるのに対し、『我こそが故郷(アビドス)のために』と志高く門を叩いた矢先、『そもそもお呼びではない』とホシノに門前払いを食らい、その後も戦力外と言わんばかりにぞんざいに扱われてきたセリカやアヤネからすれば、外部から已む無くの体とは言え、縁もゆかりもない部外者を嬉々として受け入れんとする姿は気に食わない。

 

「何よ!私達が来たときは取り付く島もなかったくせに!そんな連中に頼らなくても」

 

 しかしセリカの意気込みに反し、顔面に『Eye of Horus』を突き付け、躊躇なくスラッグ弾撃ち込んで黙らせたホシノの目は、「まるで学んでない」とばかりに昨日同様の冷たいものだった。

 

「昨日も言ったと思ったけど、一晩経って忘れちゃった?まぁ学習能力ないのは、痛い目見ても同じような被害に遭うの繰り返してたからとっくにわかってたけどねぇ。ユメ先輩も似た様なとこあったけど、それでもアビドスを2年もたせたあの人と違って、セリカちゃんの場合代替わりしたらやること成すこと悉く滑り散らした挙句1月足らずで潰す未来しか見えないや。アヤネちゃんも口ばっかいっちょ前だし、後方支援なんて言えば聞こえはいいけど、校舎に籠ってドローン飛ばすばっかで、前線はサッパリじゃん。ヘルメット団相手にどれだけ撃ち合える?こんな風に圧かけられたら満足に銃も向けれないんじゃ、お荷物と大差ないよ?」

 

 そして容赦なく続けて銃口と威圧を突き付けられたアヤネが、満足に抵抗どころか口も開けずにいるのを見かねたノノミが、背後から抱き上げたホシノの後頭部に昨日同様胸を押し当て、落ち着かせる。

 

「ハァ~イそこまでですよホシノ先輩?それよりカーラさんも来たことですし、昨日入手したお金の分配しましょうか、ウォルター先生☆」

 

「……それもそうだな。カーラ、始めていいか?」

 

「こちとらいつでも。取り分自体は昨日のうちに決めといたから、さっさと置き去りな2人に教えてあげな」

 

「あ、ノノミちゃんちょっと待って、流石にこの体勢は首が、首がぁ~~!?」

 

 強引に下を向かされたせいで喉元が圧迫され、更に上からの負荷で予期せぬダメージに一転して惨めに手足を振って必死の抵抗をするホシノを横目に、いい加減先程から停滞していた話を進めるべく切り出したウォルターに、カーラが昨日ブラックマーケットから戻る前にいくら得て誰にどれだけ配るかを取り決めておいた明細を差し出すと、受け取ったそれを読むのに合わせ、チャティが補足を記入したその複製をホログラムに投影する。

 

「昨日小鳥遊達と共に襲撃した闇銀行から収支明細のついでに撒き上げ、今は俺のヘリに積んである金だが、総額はおよそ5億8千7百万。取り分はまず、実行したハウンズ各員に5千万。それから機材(MT)を提供したカーラ、ひいては『RaD』にその代価として2億。そして支援にまわった小鳥遊、砂狼、十六夜に、それぞれ3千万。最後にアビドスへの復興支援に対する初期投資として、9千万。残りのおよそ7百万に関しては、アビドスから『S.C.H.A.L.E』に対する、今回の依頼の報酬として支払われたものとして扱うことにした。これで以上だ」

 

「何が『以上だ』よ!そもそも私達がそれまで必死こいて返してきたのが取り消されたってことなんだから、私達が全部もらうのが」

 

 しかし復活したセリカが当然の如く騒ぎ立て、再度ホシノに鎮圧(だまら)される。

 

「マジで学習能力ないねぇセリカちゃん。確かにその幾らかは元々私達が汗水流して稼いだお金だったかもしれないけど、別に取り返したわけでもないし、そもそもこっちに矛先向くのを防いで代わりに色々手を尽くしてくれたんだから、その分私達より取り分多いのは当然でしょ。むしろ9千万も出してくれたことに感謝はすれど、今回実質部外者だったセリカちゃんがもっと寄こせってのは、関わった私としても場違いすぎてどの口がって呆れたからね?アヤネちゃんもいい?ノノミちゃんとシロコちゃんも交えて取り決めたんだから、文句はなしだよ?」

 

 まだ首が痛いのか、空いた左手でそこを摩りながら『Eye of Horus』を構えたホシノは、「自分は違う」とばかりに彼女なりに圧とアヤネへの流れ弾を抑え、万が一ノノミに抑えられても大丈夫なようにと上半身を机に突っ伏してこそいるが、不真面目そうな姿勢に反し、その内容はこの場においては真っ当で建設的な部類だった。

 

「それじゃ、これでひとまずアビドスからの依頼は解決ってことで。いや~お疲れさんウォルター先生。これでやっと大手を振ってD.U.に帰れるね」

 

「そうだな。また何かあったら連絡しろ、それに応じるのが『S.C.H().A.L.E』()の仕事だからな」

 

「その際はまた、私達も一枚かませてもらうよ。アンタ達と絡むのも、なかなか面白かったからね」

 

 そうしてホシノの場を締める一声と共に、ウォルターのアビドスにおける依頼は、無事片付いたのだった。




これにて本作アビドス編完結となりますが、ぶっちゃけ1番悩んだのが締めの部分どう書くかだったり
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