ミレニアム校内の一角。廊下を進むのは、メイド服の一団、『Cleaning&Clearing』。続く3人に比べ一際小柄ながら、苛立たしげに先頭を大股でズカズカ進むのは、つい先日トウニに声をかけたはいいが、ホームランをかまされ、ミレニアムタワーに突き刺さる醜態を晒したネル。
「ダァ~~ッ!!あンのサメ女ふざけやがって!」
「リーダー今回も、見事に吹っ飛ばされてたよね~」
すぐ後ろを歩く、地面に届くほど髪を伸ばした『
「ですが以前と比べ、ここ最近は『
そう濁すのは、最後尾を歩く、参謀役の『
「それもこれも、あの『
実際現在のミレニアム学区では、元々警備、防衛用に自立機械兵器を配備していたことを含めても、人数の少ない『Cleaning&Clearing』に代わり、『S.H.A.R.K.S』が警備、実戦を担いつつあり、更に書類確認の様な事務補助までこなすとあってか、ユウカからの評価と信頼は極めて高い。部外者に自分達の領域を好き勝手されていることが面白くない彼女達は、その件に対する抗議のため、『セミナー』の元へと向かっていた。
「オイユウカ!テメェイイ加減にしろよ!いつまであたし等腐らせてるつもりだ!!」
激しい音と共に突き飛ばす様に扉を開けて部屋に入ってきたネルに対し、ユウカと共に冷めた目を向けるのは、卓上に積まれた書類――様々な部活からの申請書に目を通し、その正当性や有用性を確認していたミナト。室内には他にも、『セミナー』の書記を務める『
「腐らせるも何も、『Cleaning&Clearing』の活動でどれほどの被害が生じてるか、ご存じなんですか?ネル先輩」
「あぁ!?ンなもん知るか!解決できてんだからいいだろ!」
疎まし気なユウカの問いを払い除けるネルに対し、借りていたデスクから立ち上がったミナトが、既に選別を済ませていた書類を1枚手に取り、前に出る。
「アンタ達の活動とその被害報告確認してたけど、ぶっちゃけ単純な被害額の平均だけで計算しても、『
「テメッ!誰が貧乏神ダッ!?」
あろうことかエージェントたる自分達を「貧乏神」呼ばわりされ、思わず掴みかかろうとするネルだったが、その前に腹を撃ち抜かれ、大きく後方に飛ばされ、アカネに受け止められる。
「おぉ、
「あまりぞんざいに扱わないでよ?機嫌損ねると後で対処が大変なんだから……」
ミナトの背後から『ブルー・マグノリア』でネルを撃ち抜き、銃口から煙を漂わせるサドラの横から、軽薄な感心と共に覗き込んだトリアを、ユウカが窘めると共に、抗議に来ていた他の面々にも目を光らせる。
「それから、貴女隊の活動も被害報告が続出してるから、予算削減させてもらうわよ」
「いや、幾ら『セミナー』でも、この判断は横暴すぎるぞユウカ!」
「そうです!これでは碌に機材を補充できません!」
「スプレーが足りなくなってきたから買い足したかったのにぃ!!」
「妖怪MAX、もっと買いたい……」
ウタハに続き、『ヴェリタス』部員の『
「いやいや、『
実は数日前、『S.C.H.A.L.E』に侵入したコタマが盗聴器を仕掛けたことがバレ、『セミナー』に連絡が来ていた。
「それから『
「し、しかしビーム砲はロマンじゃないか!
「問答無用で『分解させろ』なんて言われて誰が手ぇ貸すかっての。アンタの仲間は『「今少し時間と予算をいただければ」なんて自分の能力不足に対する言い訳に過ぎない』とか抜かしてたんだし、遣り繰りぐらいしっかりしなさいな」
「ちょっ!?何してんのよ!」
「止めてください!ここで喫煙なんてしたら火災報知器が!」
なおも反論途中、自身に矛先を向けてきたウタハにも容赦なくレーザーを打ち込んで黙らせたサドラは、余程癪に障ったようで、そのまま銃身の熱で銜えた葉巻に着火し、一服始めた姿を見たユウカとノアは慌てるが、直後鳴り響いたサイレンはすぐ鳴り止む。
「ふぅ……咄嗟に割り込んでスプリンクラーが動く前に無理矢理止めさせてもらったけど、危うく書類が水浸しになるとこだったんだから、気を付けてよね?」
慌てて取り出したスマホで消火システムにハッキングをしかけ、停止させたチヒロが注意する裏では、偶々持っていた折り畳み傘を広げ、着ていたコートを被せた書類の上に掲げていたトリアが「あれ、要らんかった?」と困惑していたが、当のサドラは動じずに葉巻を銜えたまま、紫煙を吐いて壁にもたれかかったウタハの頭をブーツの爪先で小突く。
「文句ならこの空気を読まないバカに言って。アンタだって自分の銃器勝手に触られるのは嫌でしょ」
「そりゃそうだけどさぁ……」
「っていうか、そもそも何でキヴォトスでタバコなんて吸えてるのよ。一般市場じゃ販売なんてしてないでしょ……」
「私の記憶にも、ミレニアムに限らずキヴォトスでタバコを販売してる場所は存在してませんが、おそらく入手先はブラックマーケットでしょうね。見つかればまずヴァルキューレが黙ってませんし……」
「ヴァルキューレと言えば、この前
そのまま彼女が肩にかけていたMAC-11、『マイスター・ゼロ』の銃口へ、灰皿代わりとばかりに吸い殻を突き立てるサドラの姿に、機嫌を損ねたことこそ理解や納得はできても、喫煙に賛同まではできないチヒロが言葉を濁す姿を見ながら、そもそもキヴォトスで基本目にすることのないタバコの流通先にづいてユウカとノアと話していたところに、コートを羽織り直して折り畳み傘の代わりに取り出したパイプを銜えたトリアが割り込み、まさかの衝突をカミングアウトする。
「ヴァ、ヴァルキューレと衝突してたの……?SRT閉校に先んじて飛び出して、連邦生徒会が呼び戻し染みた指名手配してたっては聞いてたけど……」
「アタシ達が飛び出した理由でもあるけど、如何せん
ヴァルキューレの懐事情を明かし、実質「勝てる」と断言しつつ、喫煙を控えてほしい理由に、健康面よりも持ち込むリスク分が上乗せされた値段を挙げるミナトに、「あ、そっち……」と再度絶句するノアの姿を横目に、ユウカはまだ意識のある面々に向き直ると、咳払いをする。
「ンンッ!とにかく、『セミナー』だって無尽蔵に予算を用意できるわけじゃないんだから……なんなら賠償のせいでむしろ割とカツカツだし……そういう訳で、これ以上予算を削られたくなかったら、暫くは大人しくしてなさい!ホラ帰った帰った!」
「えぇっ!?さすがにちょっと切り上げすぎ、うわぁっ!」
そのまま抗議の声を挙げようとしたアスナに倒れたままのウタハを押し付けて部屋から追い出し、『ヴェリタス』の面々も、「ほら、私達も帰るよ」とチヒロに促され、不満を露わにしながらも去って行き、室内は静寂が戻る。
「ハァ……一斉に来たときはどうしようかと思ったけど、思ったより何とかなったわね……」
「『エンジニア部』がウタハ先輩だけだったのと、『Cleaning&Clearing』が後から来たおかげでしょうね。揃って1度に来られてたら、ミナトさん達と組んでも、鎮圧まで書類やデスクをいくつか壊されて、その補充にまたかかってたかもしれません……」
「そうね。そうした意味ではマニュアル化できるくらい相手してくれてた
「了解。まぁ『
「あたしはアイツら面白かったけどなぁ~。んじゃ、ゼブラ達に締めだし頼んどくわ」
そのまま彼女達が来る前に進めていた作業に入ると、幸い夕方に問題なく片付くまで追加の来訪はなく、無事作業を終えたミナト達は、「また今度」と別れを告げ、帰路について行った。
書いてる途中でカリン全然喋ってなかったのに気づいたけど、結局最後までセリフ用意してやれんかった・・・