Handler Archive   作:ゲオザーグ

39 / 40
なかなか話が進まんかったせいで舞台が向かなかったけど、やっと今回のキーパーソンと言えるケートスの面々を出せる・・・



()Ⅰnterlude:ケートス水産高等学校防衛線ー2

 捕鯨活動を主産業とするケートス水産高等学校と、それに抗議する反捕鯨団体(環境テロリスト)、『ジェリーフィッシュ』の抗争。両者から送られた依頼を比べたハウンズの選択を尊重し、前者の側に就くことを決めたウォルターは、彼女達が選んだケートスの元に向かうべく、先日のアビドスでの活動から、正式に『S.C.H.A.L.E』保有の備品として配備されていたチヌークに乗ろうとしていたところを、カーラに呼び止められる。

 

「ああウォルター。チャティからケートスに行くって聞いて、襲ってる『ジェリーフィッシュ』の奴等について、こっちでも少し調べといたよ。デモ活動を皮切りに、出港した捕鯨船にボートをぶつけて破壊しようだとか、結構過激な行動を繰り返しては、『S.H.A.R.K.S』に潰されてヴァルキューレに連行されているが、最近どこかで支援者(パトロン)を得たらしくて、『RaD(ウチ)』にもMTやその武装を発注してきたけど、断っといたよ。ただ、その後も監視を続けてたら、別のとこにも頼んで、私やあんたの乗った謎のMTや、その派生機(マイナーチェンジ)を揃えているようだ。『S.H.A.R.K.S』の面々やミレニアムの防衛兵器もあると言え、警戒しとくに越したことはないだろうね」

 

「情報提供、感謝する。お前のおかげで、アイツ等が持っていた武装を問題なく使えるようになった。そう易々とは負けないだろう」

 

 礼を述べたウォルターは、キヴォトスに来た際に若返ると共に、脚の不調も直ったはずだが、長年使い慣れたために未だ手放すことに不安が残る杖をつきながら乗り込むと、そのまま先に乗っていたハウンズと共に、ケートスへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 ケートスの校舎屋上。降下準備に入ったチヌークの誘導に動く生徒達とは別に、風を浴びながらその着陸を待つ者がいた。

 

「ケートス水産高等学校にようこそ、ウォルター先生。『トライトン』庶務の越織(こしおり)アドリよ。隣は治安維持担当の『ROV』メンバーで、黒髪の方が貴田利(きだり)テレオ、灰髪の方がその妹、ヒストね」

 

【挿絵表示】

 

 

「よろしくお願いするわ」

 

【挿絵表示】

 

 

「よろしくお願いねー」

 

【挿絵表示】

 

 

 車椅子から立ち上がり、両手を広げて歓迎の意を示すのは、赤い髪とパーカーの『越織アドリ』。両脇を白のワイシャツに茶色のズボンとロングブーツの『貴田利テレオ』と、そこに焦げ茶の背広を羽織った『貴田利ヒスト』で固めているが、特にこちらを試す様な仕草はなく、あくまで日常的な習慣の1つに過ぎないようだ。

 

「それにしても、こちらについてくれたことは感謝しているけど、わざわざ赴いてくるとは思わなかったわね。D.U.のオフィスから静観してくれてれば御の字だったし、カズにもそのつもりと伝えてもらっていたはずだから、来訪の返答が来た時は、嬉しい誤算で急遽どうもてなすか臨時会議を開いて盛り上がったものよ」

 

「依頼を受けた以上、こちらには報酬を受け取る権利と、仕事をこなす義務が生じる。お前達は最悪不干渉を希望して送ったようだが、『ジェリーフィッシュ』の方は戦力に加わることを前提としていた以上、俺達はそれに判断を合わせただけだ」

 

「なるほど。ま、何はともあれ、ケートスの歴史と、今回の経緯を説明がてら、会長の元に案内するわ」

 

 無音(ミュート)状態のシッテムの箱にて、『アビドスのことは見捨てようとしてたくせに……』と愚痴るアロナを無視するウォルターから特に反応がなかったことを気にする様子もないアドリは、「それじゃ、ちょっと失礼するわね」と車椅子に座るや、器用に両手で車輪を回して反転し、貴田利姉妹とウォルター一行を連れて備え付けられたエレベーターへと乗り込む。

 

「元々ケートスの校舎は、オデュッセイア海洋高等学校って船団を校舎にしてる別の学校が、老朽化した船舶を解体するために用意した施設だったんだけど、船上生活の影響で、信心ってか迷信深い思想が強くて、その影響で船舶への愛着も一入でね。忌避感からほぼ懲罰某扱いで、送られた連中は、解体業務ほっぽり出して逃げ出す始末。だもんで無人化したとこに、度々先生も相手してるようなはぐれ者達が居着いたのを見たオデュッセイアの生徒会が、学籍を対価に取り込んで押し付け、実直にこなした功を認める形で独立したのが成り立ちなの。ちなみにオデュッセイアとは、独立した現在も引き続き交流が続いてて、養殖業の情報交換や、帰港した船舶の点検なんかしてるわ」

 

 説明しながらエレベーターを降りてから、アドリが顔を向けた窓の先に広がる港湾部には、彼女が語る通り沖合に複数の養殖用筏が並んで浮かんでおり、その向こうには、いくつもの古びた船舶が寄せ集められていた。

 

「そうした活動の中で、まだ使えそうな船舶で沖に出て漁を始めてみたりもしたけど、中でも捕鯨業は割りがよくてね。校名や校章(エンブレム)にも鯨要素を取り込んで、すっかり主産業よ」

 

 その反対に目を向けると、大小問わず幾つもの鯨の骨格標本が展示されている。

 

「うちでは基本、余所への販売も含めた食肉が主用途で、骨格は学術的価値から、感謝と敬愛の意を込めて洗浄後、ああして展示してるんだけど、ちょうど間もなく捕鯨船が帰還するとこでね。よろしければ、もてなしに新鮮な鯨肉を調理して出しましょうか?」

 

「気持ちだけ受け取ろう。生憎ハウンズ達は、訳あって摂食を含めた日常的な活動に不便していてな。俺自身も、それを尻目に1人楽しむ趣味はない」

 

 理由が理由とあってか、提案を断られても、「あら残念」と言葉に反して軽い反応のアドリだが、話しているうちに目的の部屋に到着したようで、車椅子を正面に向き直すと、スライド式の扉をノックし、中からの返答に合わせて開く。

 

「アドリから聞いてるとは思うけど、改めてこちらへの肩入れに飽き足らず、参戦のため来訪に感謝するわ。『トライトン』会長、鷹芦(たかあし)ケイラよ」

 

【挿絵表示】

 

 

「同じく広報の琴兎耳カズアキです。私が依頼を送らせていただきましたが、対面では初ですね。どうぞお気軽に、カズとお呼びください」

 

【挿絵表示】

 

 

 室内にいたのは、アドリと似た赤いパーカーの上に青い背広を羽織り、髪と同じ赤い野球帽の『鷹芦ケイラ』と、連絡を送ってきた今回の依頼主(クライアント)であり、青いスーツに身を包み、膝まで伸びた紫髪の頭頂に名前の通り兎の耳が伸びる『琴兎耳カズアキ』。どちらも自己紹介を済ませると、アドリの後退に合わせて退室し、ウォルターと並ぶ。

 

「既に見てもらったと思うけど、私達なりに命を奪ってきた鯨達や、そうした糧を恵んでくれる海洋への感謝と敬愛の念を後世に語り継いだり、恵みに対する返礼の活動はしてるつもりだけど、それさえもハンティングトロフィー扱いしてる辺り、『ジェリーフィッシュ(クラゲ)』連中からすれば気に食わないみたい。内外問わず、文字通りの意味も含めて捕鯨(それ)で食ってるこっちとしては、そこまでやってもケチつけてくるなら、やられる前に徹底的に潰して黙らせるつもりで準備をしてたとこ」

 

「そうした意味では、良くも悪くも頃合いでしたね。帰港した捕鯨船を強引にでも撮影して、バッシングと共に拡散すれば、野次馬を釣っていい具合に騒乱を招けるでしょうから」

 

 話題の捕鯨船を出迎えるべく港へ向かう道中、先程遠目に見えた骨格標本の展示場を通る中で、その中央に陣取る一際大きなマッコウクジラの骨格標本へ遠い目を向けていたケイラは、被っていた野球帽を脱ぎ、胸元に当てて目を閉じ、黙祷を捧げる。その横で胸に手を当て、同様に黙祷を捧げていたカズアキは、顔を上げると、予測した今回の『ジェリーフィッシュ』の目的を語る。そこに突如鳴り響く着信音に、野球帽を被り直したケイラが取り出した端末を操作する。

 

『こちらイシュメール号!「ジェリーフィッシュ(クラゲ)」連中が帰港を妨害してきやがった!護衛に乗り込んでた『S.H.A.R.K.S』の迎撃で大分片付いたが、陸(そっち)の方にも何かしでかすかもしれんから、警戒してくれ!』

 

「カズの懸念通りか……すぐそっち行く!安全を最優先に、早急に連中を片付けて!ごめん先生、少し急ぐわ!」

 

「おぉっと!それじゃ先生、また後程」

 

「2人とも、先生に肩を。案内しますので、こちらに」

 

 警戒していたとはいえ、捕鯨船——『イシュメール号』から『ジェリーフィッシュ』の襲撃を受けたと報告を受け、アドリの車椅子を後ろから走らせるケイラ。カズアキも後を追い、残されたウォルターも、「失礼します」と左右から貴田利姉妹に肩を貸され、カズアキの誘導でハウンズを伴って続くと、幸い外に出る頃には既に片付いたようで、捕鯨船は無事接岸していた。

 

「ミレニアムに発注していた防衛用の砲台は配備出来たが、海側には船舶への誤射を危惧して向けなかったのが災いするとは……直ちに全『ホネクイハナムシ(ゾンビワーム)』の起動と、引き続き沿岸部周辺の警戒を!識別信号の設定は後でいい!現在外部で活動中の者はいないから、陸から接近する物体には無差別攻撃しても構わん!」

 

 船の無事を確認したケイラの号令に合わせ、周囲から発する起動音に顔を向けると、先程は見えなかった校舎屋上を始めとする複数の高所には、その発生源たる大型砲台、『ホネクイハナムシ(ゾンビワーム)』が、ガトリングにミサイルランチャー、榴弾砲と多種多様多数の真紅に塗られた触手の如き砲身を稼働させる。

 その矢先、今度は上空から響き渡るヘリコプターのローター音に目を向けると、先日の闇銀行襲撃には使われなかった『AS-12 AVES』を先頭に、ここ最近キヴォトス各地で散見されるようになった、アンバランスな縦長の機体横にローターが付いた『F17 FLAMINGO』が何機も現れ、それに守られるかの如く、下部に『Sz11 SPEER』や、『MT-E-104』を露天懸架した、胴体左右のコンテナブロックにローターを装着した、より大型のヘリコプター、『F21C STORK』が続くが、早くも目覚めたばかりの『ホネクイハナムシ(ゾンビワーム)』達に捕捉され、ロッキングアームを解放する前に次々と撃ち落とされていく。

 

「武装ボートに大型兵器と、最近羽振りがよくなったとは思ってたけど、『RaD』のMTまで持ち出してくるとはね……尤も『RaD』は『S.C.H.A.L.E』と提携してるそうだから、大方余所に卸された奴だろうけど……とりあえず、攻撃終了次第全機機能停止!撃墜機のパイロットの有無を確認し、いれば見つけ次第捕縛を!」

 

『了解!』

 

【挿絵表示】

 

 

 単純な配備数の違いもあって、ルビコンの『ウォッチポイント・アルファ』で621が破壊した複合エネルギー砲台、『ネペンテス』以上とウォルターが錯覚する密度の弾幕を放った『ホネクイハナムシ(ゾンビワーム)』達だが、獲物の後続が絶えて沈黙した頃合いを見計らい、ケイラが下した指示に従い、攻撃どころか満足に動かすこともできないまま破壊された機体から、『ジェリーフィッシュ』に雇われ乗っていた傭兵や、「協力を申し出た」とブリーフィングで語られていた、キヴォトス辺境に位置する超巨大学園、『レッドウィンター連邦学園』の工務部員達を、『ROV』と『S.H.A.R.K.S』の面々が引っ張り出し、捕えていく。

 

「レッドウィンターの工務部員ですか……使い捨ての兵力と見るには、随分と装備に恵まれてましたが、或いは自分達と同じく、数だけはいっちょ前なコイツ等を先遣のつもりで嗾けて、片付けれれば御の字ってところでしょうか。とりあえず、今回は何とかなりましたけど、連中のことですから、もうしばらく波状攻撃を仕掛けてくるでしょう。お手数おかけしますが、もうしばらくお付き合いお願いします、ウォルター先生」

 

「気にする必要はない。元よりそれが仕事のつもりだったからな」

 

 今回だけでも十分大規模の戦闘だったが、『ジェリーフィッシュ』の侵攻はまだ続くらしい。ケイラに報告する『ROV』隊員達の姿から逸らした目線を、申し訳なさげに向けてくるカズアキに対し、むしろハウンズの出番があることを幸いとするウォルターは、何事もない様に返す。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。