転生チートトレーナーはモブウマ娘を三冠にできるのか。 作:サイリウム(夕宙リウム)
「「「「お疲れさまでした~!!!」」」」
トレーナールームに響く楽しそうな声、いつもであれば他の方の迷惑になるため少し声を抑える様に注意するところですが、今日ぐらいはお小言を控えるべきでしょう。
ティムサさんのホープフルSが終わり、数週間。二年目が始まってすぐに行われたGⅢ・京成杯にて無事バイトアルヒクマさんが勝利いたしました。これにより4人全員の目標を達成することが出来たということで、祝勝会を開催させて頂いた、と言うわけですね。
まぁ言ってしまえばトレーニングやレースの関係上まともにできなかった、"クリスマス"、"忘年会"、"お正月"、"新年会"の4つを纏めてやってしまおうというわけでもあります。一応クリスマスプレゼントとお年玉は当日に皆さんにお渡ししたのですが、トレーナーとしての業務などの関係上ゆっくりお話しすることも難しかったので……。クマさんの勝利という区切りのよいタイミングで開催させて頂いた運びになります。
「男料理で申し訳ありませんが、色々用意いたしました。今日だけはカロリーなど気にせず、好きなだけ食べて頂いて結構です。チートデー、という奴ですね。」
「ほんと! じゃあこのケーキとか全部食べていいの!?」
「えぇもちろん。ただ皆さんの分も残しておいてくださいね。」
チキンやローストビーフなど色々用意したのですが、真っ先にお店で買ってきたケーキに手を出すメロンさん。まぁ女学生としては正しい行動かもしれませんが、10号ホールケーキの1/4を速攻で持って行くのは色々どうかと……。いや好きに食べていいと言った手前何も言えませんね、はい。どうぞお好きなように。
「そうだよメロンちゃん! もうちょっと慎みを持つべき!」
「そういうティムサだってカニ速攻で独占してるじゃんか!」
「はいはいケンカしない。というかモタモタしてたらクマに肉系全部持ってかれるぞ?」
「んぐんぐ。おいしいです~。」
「「あ~~ッ!!!」」
あ、あはは。おかわりは用意してますのでケンカしないでくださいね。それとスタッフさん、今日は貴女も主役ですから是非好きなものを食べてください。みなさんの配膳などは私がやりますし、料理は4人分用意しているので食べて頂かないと余ってしまいます。
「そ、そう? ならお言葉に甘えて……。」
「にしてもさ! トレーナーさんさ! 私たちすごくない!?」
「ですね~。メロンさんの言う通り全勝しちゃいましたし~。」
確かにそうですね。ジュニア級GⅠは皆さんで独占。クマさんも重賞二勝でどちらとも圧倒的と言える結果を出しました。URAファイナルズの案件で、新年から私たちトレーナーも駆り出されたので上もかなりお忙しいのでしょう。未だ理事長からのお言葉は頂いておりませんが……、確実に皆さんの"実力"は示せたかと思います。
何度目になるかは解りませんが、皆さんこれからもよろしくお願いいたしますね。
「もちろん、トレーナー。というかトレーナーのおかげで勝てたようなものだし。」
「そうそう! スタッフちゃんの言う通り! メロンが最強に成れたのはトレーナーさんのおかげだもんね! むふー! このままいけばパーフェクトなマイルクイーンになっちゃうもんね~!!!」
「メロンちゃん~? 調子に乗り過ぎですよ~?」
まぁまぁ、クマさん。祝いの席ですしね。明日からはさすがに控えて頂きますが、今日ぐらいは見なかったことにいたしましょう。さ、皆さん。ちょうど鍋がいい塩梅です。熱いうちに食べてくださいね。ほらティムサさんも……。
そう言いながら器を手渡そうとしたのですが、少し不安そうな彼女の顔が目に入ります。
「ティムサさん?」
「あ、はい! 頂きます!」
「どうかしましたか? 一応皆さんの苦手な食べ物は入れないようにしたのですが……。」
「あ、いえ! ちょ、ちょっと不安になっちゃって……。このまま勝てるのかな、って。」
お渡しした器を受け取りながら、そう呟く彼女。……なるほど、ホープフルが明けてから少々不安そうな顔をしていらっしゃったのは、それが原因でしたか。何度かお尋ねしても『大丈夫』と返されていましたし、ステータス表記での調子も"絶好調"を維持していたため大丈夫かと判断したのですが……。
祝いの席とはいえ、この場で聞いておいた方が良さそうですね。
「あの、ホープフルの時。ブライトさんが『領域』を使ってたんです。」
「領域? 領域ってあの?」
「見間違いじゃないの? あれっておとぎ話でしょ?」
少し心配そうにするスタッフさんに、本当かどうか信じられないという顔をするメロンさん。クマさんは何も言いませんでしたが、ほんの少しだけ動いた表情から察するに、これまでその存在を信じていなかったことが解ります。
「アレを目にした時。本当に"格の違い"みたいなのを見せつけられて……。勝てはしたんですけど、全然勝てた気がしないんです。もし次同じことをされれば、敗けちゃうような気がして……。」
「そうでしたか……。」
不安そうに、そう伝えてくれるティムサさん。正直に言うとステータスの差からあのレースで負ける可能性は非常に低かったですし、今後もしっかりと練習を積みステータスを向上させれば滅多なことはないと断言できます。しかしながらそう彼女たちに伝えても、完全に不安を払拭するのは難しいでしょう。
一から、説明する必要がありますかね。
「では、少々お時間を頂きまして、『領域』についてのご説明をさせて頂きますね。……あぁそれと、もちろん食事しながらで結構ですので、緩く聞いていただければと。」
まず、『領域』について。国や地域によって言い方などは変わりますが、此方は一握りのウマ娘が生まれながらに持つ特殊能力のようにとらえて頂ければよろしいかと。かのシンボリルドルフさんが過去のインタビューにて『時代を作るウマ娘』が持つ、と仰っていましたが、基本的に強者と呼ばれるような方がお持ちであることが多いです。
「現在の科学でも証明できない事象を引き起こすため、有史以来ウマ娘が神の使いなどと言われてきた理由の一因とも呼ばれています。使いこなせばレース以外でも使用できるようになり、極めれば現実世界に影響を及ぼすことも可能だとか。まぁ簡単に言ってしまえば、"不思議ちゃんパワー"ですね。」
「「「「不思議ちゃんパワー。」」」」
「はい。レースに於いて急に加速したり、スタミナが回復したり、様々な効果があるようです。」
及ぼす効果はまちまちですが、共通していることとして『対象者の心象世界を表現し、自己に何らかのバフを掛ける』と考えられています。ティムサさんが先ほど仰った、ブライトさんの『冬の世界が春の草原に塗り替えられていく様子』というのは彼女の心象世界だったのでしょう。
「彼女の『領域』効果はおそらく加速、ゆっくりと時間を掛けてどんどんと加速していくものと考えられます。前回のようなホープフルの2000mでは十分な差をもってゴールできましたが、確かに長距離での戦いとなると難しくなってくるかもしれません。」
「へぇ~。」
「ほんとにあったんだ……。」
えぇ、スタッフさんがそう仰るのも解ります。確かに突拍子の無い話。しかし、れっきとして存在する力の一つです。世代に一人、と言われるほどに使用者が少ないため都市伝説となってしまったのでしょうね。実際は世代に十数人ほどいるそうですが……、『領域』の使い方を解らぬまま引退なされる方もいるでしょうし、そう表現されているのでしょう。
ちなみにですが己の心象世界を具現化するため、誰一人同じ光景ではなく発揮できる能力も、その発動条件すら違うそうですよ。
「生徒会長、かのシンボリルドルフさんの『領域』は雷で、体に纏わせることができるほど強力だとか。一時期彼女が"雷帝"と呼ばれていたことはこれが原因なのかもしれませんね。その他にも私も実際に見たことはないのですが……、かの"神"と謳われたシンザン氏はターフ全体を『領域』内に収め、一部の観客にすら心象世界を見せることができたそうです。」
他にも自身が師匠として教えを乞うはずだったあの竹林トレーナーの教え子は、背後にあるゲートを『領域』をもって実際に爆破し、忌み嫌う存在がなくなった喜びでスタミナの回復と超加速することが可能だとか。
「その『領域』で凱旋門を爆破しそうになり国際問題になりかけた、というのを以前の研修期間に伺ったことがあります。」
「「「「えぇ……。」」」」
まぁゲームでもあったように、色々な演出がある。と言うことですね。
「ね、ねぇトレーナーさん! それさ! メロンたちにも使えるの!?」
発言者のメロンさんの声に合わせ、全員の視線が私に集まります。特にティムサさんは机から乗り出しているレベルです。あ、あの。非常に言いにくく、申し訳ないのですが……。
「私が見る限り、非常に難しいかと……。又聞きにはなりますが、なんでも『領域』を使える方は生まれつきそれがなんであるか、どう扱うべきなのかを何となく理解しているそうで……。」
「あ~、うん。じゃあ私たちには無理そうだ。」
「ざ、残念……。"領域展開"とかしてみたかったのに……!」
「ふるべゆらゆら~。」
メロンさん、それは違う漫画ですよ。クマさんも変なのを呼ぼうとしないでください。
……ステータスを見る限り、彼女たちに『領域』、固有スキルは存在していません。その予兆もないですし、そもそも通常のスキルすら彼女たちは保有していません。無いものに縋るくらいなら、最初から存在しないと考えて動いた方が賢い選択と言えるでしょう。時間は有限なのですから。
「では、本題に移りましょう。どうやって『領域』を持つ相手に勝つか、ですね。」
「……。」
「簡単ですよ? 基礎能力で圧倒してしまえばいいのです。」
「……ふぇ?」
驚きながら変な顔をしてしまうティムサさんをそのままに、話を進めます。
脳筋のように思われるかもしれませんが、ステータス差というのは案外馬鹿になりません。『領域』は基本的に"基礎となる能力"にバフを掛ける行為です。よくゲームなどで攻撃力1.2倍というスキルがあったりするでしょう? アレと同じで、元々の能力値が高ければ高いほどその上昇率は大きくなります。
「つまり言ってしまえば、『領域』を使われる前提でトレーニングを行い、基礎能力だけで上回ってしまえば勝てるというわけですね。それに……、ティムサさんにメロンさん。お二人はこの方法で勝利したのですよ?」
「「ふぇ?」」
メロンさんは気が付かなかったようですが、実は"阪神JF"にはメジロドーベルさんも出走しており、彼女も『領域』、固有スキルを使用していました。しかしながらお二人ともしっかりと勝利を収めております。すでに実証済み、と言うわけですね。またゲーム内での話にはなりますが、固有スキルなど使わずともステータスの暴力だけで凱旋門を勝つことができることから、この方法の正しさを補強できるでしょう。
それに、これでも負けてしまうのであれば、通常スキルを習得すればいいだけの話。
「なので皆さんは、『領域』など気にせず普段通りトレーニングに励んで頂ければ、と。それでも不安でしたら、まだまだたくさん秘策をご用意していますので。ご安心ください。」
少し微笑みながら、そう言う。
彼女たちがスキルを獲得するには、ネームドの方々と比べ何倍も時間がかかることが推測できます。ゲームでは皆さん最初から何らかのスキルが取れる状態でしたが、残念なことに彼女たちは何も持っていません。そして全員が同じような状態ですので、サポカのスキルヒントのように教え合うことも難しい。
(ですが自身のチートを扱えば、時間はかかりますが金スキル含めすべてのスキルが習得可能です。)
流石に金スキルの発展形、覚醒スキルとなると難しくなってきますが、金スキル二桁なんてこともやろうと思えばできます。全距離全適性、芝ダート問わず。まさにチートと言うべき能力だと言えます。
……まぁ正直に言ってしまうと、最悪数か月かかるスキルの入手よりもステータスの向上の方が効率がいいですし、同じ数か月を掛けるのであれば適性値をSに上げる方が、より効果的です。
なのでスキル習得は当分することはないと考えられますが……。彼女たちが必要と言うならば、いくらでもご用意いたしますとも。
(それに、懇意にさせて頂いている桐生院トレーナーのミークさんはすでにいくつかのスキルを入手済みでした。ミークさんから教えて頂いてもいいですし、桐生院さんの代名詞とも言える『鋼の意志』を教えて頂く、と言う手もあります。)
まぁ正直言ってあのスキルがゲーム通りの効果だと、教えて頂く必要性があんまりないのですが……。彼女の名誉のためにも口を閉ざすことにいたしましょう。決して無駄な技術ではないですからね、はい。
「さ、折角の祝いの席です。皆さんどうぞ好きなだけ食べてくださいね。」
「「「「あ、は~い。」」」」
◇◆◇◆◇
「ふぅ。」
理事長室から出て、小さく息を吐く。
(やっぱり、いくつになってもこういうのは慣れませんね。)
さっきまで行われていたのは、秋川理事長との面談。『URAファイナルズ開催に向けて皆には苦労を掛けている! 故に可能な限り皆が最善を尽くせる学園にしたい! 桐生院トレーナーには"新人"という目線から学園に足りていない物を教えて貰いたい!』という名目で行われたものだった。
前半は名目通りの聞き取りだったが、後半からはほぼ雑談と言うか愚痴の様なものだったけど。
『た、確かに実績を以て黙らせろとは言ったけど……。ちょ、ちょっとこうなるのは想定外……。え、なんで? なんで制覇しちゃってるの? いや良いし素晴らしいんだけど、どう反応すれば? 正直1人でもOPに上がれば褒めちぎる予定だったのに? 何て言えば??? お、教えてくれ桐生院トレーナー! 理事長としてこう、威厳がある感じで褒めるにはどうすれば?』
……まぁ気持ちはすごく解る。
この体に流れる血は"トレーナー"のもの、指導する者として歴史を積み上げてきた家のものだ。故に生まれた瞬間から私は、支えるべき担当のために、見聞きした全てを彼女たちに注ぐことを求められてきた。様々なことを見聞きし、理解し、来るべき時に備える。
そんな生活を送ってきたせいか、この世界の厳しさ。『レース』の厳しさは嫌と言うほどに理解している。
(いくら中央のトレーナーと言えど、自身が担当した子すべてに勝利を捧げるなどできるわけがない。)
レースで1位に成れるのは1人だけ、そしてその1位の席の数は、ウマ娘の人口に対して驚くほど少ない。初勝利を挙げただけで両手をあげて大喜び、OPに勝つなんてもう夢のまた夢。そんなトレーナーだって数多くいる。重賞なんて気が触れてしまうほどに嬉しいことで、GⅠなんて何も考えられない。
(よくこういうものは過剰な表現がされますが、決して誤りではありません。)
こんな過酷な世界において、あの人は信じられない偉業を成した。
初年度から4人を担当。そしてその全員にメイクデビューを勝たせたと思えば、即座に全員をOP級に昇格させる。周囲が『これ歴史的快挙じゃね?』と噂し始めた頃には、バイトアルヒクマさんが初重賞制覇。私含めあの人と関係を持つトレーナーたちは驚きを露わにし、また同時に自分のことのように喜んだ。
(重賞だけでもとんでもないことなのに、次の月にGⅠを3つも取って帰って来るんですもの。)
最初は重賞の時と同じように喜べたのだが、二つ目から言い知れぬ感情を抱き始め、ジュニア級GⅠ全てを制覇した時には誰も何も言えなくなってしまった。あの人と顔を合わせた際は皆、祝いの言葉を口にしたが『担当の勝利を信じていただけですよ。彼女たちの努力の結果です』と言われればもう口を閉ざすしかない。
(まぁ隣で何度も見せて頂きましたし、それは理解できるんですけど……。)
トレーナーとなればある程度過去のレースにも目を通す。それが次の時代を作るだろうウマ娘なら、なおさらだ。そして彼女たちの過去の資料を見た者は全て、驚愕する。ティムサさんをはじめとした彼女たちは確かに中央に恥じない能力の持ち主。しかしながらあの人に担当される前は、埋もれる側。決して時代を作るような強者ではなかった。
決して、最初から飛び抜けていたわけではない。
つまり、彼が引き上げたのだ。
そんな途轍もないことをしているのに、彼は常に自然体。決して成果を誇らず、担当たちの努力の結果だという。トレーナーとしては正しい事かもしれないが、少し恐ろしさを覚えてしまう。普通の人間ならばもう少し自慢してもいいのだと、注意してあげたいくらいに。
(同期のトレーナーさんの中には、虚空を見つめて放心なさってる方もいましたよね……。)
そして、そんなものを見せられてしまえば、自然と私たちは動き出す。
強者と対戦するのならば何よりも情報が必須だ、もし対戦しなくても短期間であれほどまで鍛え上げる方法を知れば、トレーナーとしてより成長できる。本人がトレーニング内容を始めとしたその全てを公開しても問題ない、と公言したことでその動きは加速し、ほぼすべてのトレーナーが研究を始めた。
私も家の関係で親しくさせて頂いている方や、学園に来てから知り合った方と言葉を交わし、何故か『すみません、ミークさんが好きそうな水族館の……。おや、皆さん集まって何を?』と現れた本人も合流し、彼のトレーニング方法についての分析を行った。
そして本人から直接話を聞けるという利点もあり、私たちはかなり早くの段階で一つの結論にたどり着く。
(それは、"人間には不可能"というもの。……あ、あと水族館の件は本当にありがとうございました。)
あの方がやっているトレーニングという物は、言葉にすれば非常に簡単です。
それはただ単純に基礎を積み上げるというもの。技術的な指導、スリップストリームなどを始めとした習得に時間が掛かる技術の指導は一切せず、ただひたすらに基礎的なトレーニングを繰り返すものです。それだけ見れば非常に簡単のように思えるのですが……。
「指示出し、体力管理。その全てにおいて神がかっているんですよね……。」
ウマ娘とトレーナー、担当契約という強い絆を育もうとも、どこまで行っても他人。ウマ娘たちの体を完璧に理解するなど、どうあがいても不可能です。また更にウマ娘の肉体は多くの神秘が眠っている関係から、本人ですら把握できていないことすらあります。
(あの人はおそらく、それを理解している。)
私たちトレーナーができるのは、普段の様子と比較することのみ。注意深く観察し、ほんの少しの差異から複数の可能性を導き出し、どれが正解なのかを精査していく。その過程は必ず多くの時間が掛かるものであり、その差異が小さければ小さいほどに時間が掛かります。
(そして時間を掛けたとしても、間違うことがないとは言えません。)
しかしながらあの人にはソレがないのです。"最初から答えがわかっているかのように"、私たちが時間を掛けて行うその全てを一瞬で理解し、最適な指示を飛ばし続ける。
常に最大効率を維持し、消化のタイミングすら把握していると思われるエネルギー補給。どこまでやれば壊れてしまうのかを理解し、その直前で休息を取らせる。そして即座に回復を行い、再度トレーニングを施す。もし私たちが真似すればどこかで必ず彼女たちが壊れてしまいそうなもの。
しかしあの人は涼しい顔をして、私たちでは一生たどり着けないような最適解を選択していくのです。何度かトレーニングをご一緒させて頂けた故に、その"異常さ"を理解できます。
あれは、私には、絶対に真似できない。
「思わず『URAが開発したロボットか何かか?』って思っちゃったんですよね。ふふ。」
急に確かめたくなっちゃって、心臓があるのか確かめるために、お胸に耳を当ててもいいか、って聞いちゃったんですよね。あの人は不思議そうな顔をしながら受け入れてくださいましたが……、とんでもなく慌てて、烈火のごとく怒り出すティムサさんに止められちゃったので結局聞けなかったんですよね。
(……にしても、なんでミークからすごい眼で見られたんでしょう?)
まぁ心音は聞けませんでしたが、隣で観察していればあの人が担当に掛ける想いは自然と理解できます。人間とは思えない指示を出すときは必ず冷たい印象を感じますが、おそらくそういう性格なのでしょうね。トレーナーとして正しくあろうと自分を律するが故に、そうなるのでしょうか?
「とにかく、私もあの人に追いつけるよう。追い越せるよう、励まないといけませんね!」
ミークも無事メイクデビューを終えてOP級に昇格。順調に戦績を積み上げてますし、私もミークを支えられるように常に最善の選択をしていかなければ。
「……それにしても、どうやってお礼をすればいいのでしょうか。」
新しくお友達となったティムサさんと対戦したくないというミークの言葉から、彼女はダート路線を進むことになりました。対戦相手にならないということで彼女たちの練習に何度も参加させてもらっているのですが……、そのたびにあの人から指導を受けているんですよね。
「ミークもおかげさまでかなり成長できましたし、私も傍でトレーナーとしての経験を積むことができました。」
故に何かしらのお礼、ティムサさんたちのGⅠ制覇のお祝いも含め何かしらの品を送るべきかと思うのですが……。何がいいのでしょう? 全く解りません。流石にこの件をミークに相談するのは駄目でしょうし……。あ、そうだ。実家のお母様にでも聞いてみよう。
「そう言えばミークのトレーニングやURAファイナルズの関係で新年に帰れていないですし、ついでにお父様にも電話しちゃいましょう!」
〇タヴァティムサのひみつ・7
後日滅茶苦茶高級そうな贈り物を持参した桐生院トレーナーを見てしまったため、滅茶苦茶警戒を強めた。こ、こっちだって賞金があるからそういうのできるんですよ! 取らないでください!!!(取られる以前にそもそもお前のではない。)
〇仲間の様子
・バイトアルヒクマ
5戦5勝で重賞2勝、オークスまではいくつか重賞にお邪魔しますね~。あ、あと『領域』使いのドーベルさんのことは把握しました~。仮想敵として励ませていただきます~。
・エキサイトスタッフ
メロンお前調子乗って話聞いてないけど、絶対にマイルにヤバい奴いるからな? 改めないと知らんぞ? ほんとにヤバいからな? あ、私はスプリンターズステークスまで短距離重賞巡りさせてもらいます。
・フリルドメロン
へっへ~ん! このまま桜花賞もNHKも勝っちゃうもんね! トレーナーさんの言うこと聞いとけば勝てるんでしょ? なら頑張る~!(背後からリロード音)
〇ハッピーミークの独白
……私のトレーナーって、色ボケ?
感想、評価、お気に入り登録、よろしくお願いいたします。
また誤字報告大変ありがとうございます。
次回からは皐月賞に入っていきます、おそらく二話構成です。