転生チートトレーナーはモブウマ娘を三冠にできるのか。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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16:おばけたち

 

 

 

「夏だ!」

 

「海だ!」

 

「合宿だーぁ!!!」

 

 

大声をあげながら砂浜を走り回るメロンちゃんを眺めながら、大きく背を伸ばす。うん! とってもいい天気!

 

7月に入る直前、私たちは即座に夏合宿のためにきれいな砂浜が広がるこの海までやってきた。近くには整備されたターフにダートもあるすごいとこ。宿泊させてもらうホテルとかもいろいろすごかったし、食事もすごかった。庶民出身の私たちからすればほんとに世界が変わったみたいで……、正直私もメロンちゃんみたいに駆け回りたい。

 

それにしても……、ほんとに赤点とらなくてよかった……。あれ間違えてたら学園から出してもらえなかっただろうし、ほんとによかった……。

 

 

「学園の合宿場とは違うところになるとは思ってなかったよな、それにかなり整備された砂浜だし。たぶんプライベートだろここ。」

 

「スタッフちゃん!」

 

「ほい、スポドリ。実家から大量に送られてきたからおすそ分け。」

 

 

そういいながらキンキンに冷えたそれを投げ渡してくれる彼女。まだ軽いアップぐらいしかしてないけど、日差しが強いせいかめちゃくちゃ気持ちいい冷たさだ。いつの間にかスタッフちゃんの横にいたミークちゃんが、クーラーボックスに顔を突っ込んで涼をとっていることからも確かだろう。

 

 

「もらって、いい?」

 

「もちろん! 重賞祝いとかで業者レベルで送ってきたからな、いやトレーニングに使えそうなものがいいとは言ったけど限度があるだろ……。あ、桐生院さんにも許可もらってるから好きなだけもってってくれ!」

 

「ありがと。」

 

 

ぽわぽわし始めたミークちゃんがここにいるように、ここには私たちだけでなく桐生院トレーナーたちも来ている。というか正確に言うと、トレーナーの名家である桐生院家が保有する合宿施設に私たちがお邪魔している形になる。泊まらせてもらってるホテルも、このビーチも、近くにあるコースも全部桐生院さん家のものだ。

 

『いろいろお世話になってますから』ということで誘ってもらい、トレーナーさんがそれを受け入れたことで私たちが恩恵を受けている、って感じだね。そんなトレーナーさんだけど、娘の顔が見たいからって桐生院のご両親がこっちに来ているからってことでご挨拶に行っているんだって。

 

 

(でも両親の紹介は私の方が早い……! でもやっぱ私もこんな土地とか持っていた方がいいのかな? 賞金で買う? マンションとか買っちゃう? それか資産運用?)

 

「……また変なこと考えてるな、ティムサの奴。」

 

「うん、色ボケ。……でも私のトレーナーに比べればマシ。あれ無自覚。」

 

「ちょ、二人とも!?」

 

 

二人に突っ込みを入れながら思考を回していく。別にオープンにしているわけではないんだけど、いつの間にか私の恋心はみんなにばれてしまっている。結構バカにされるけど、ちょっとしたからかいが主だしメロンちゃんとかはいろいろ手伝ってくれてるから特にいうことはない。

 

スタッフちゃんも『まぁ頑張るなら応援してやるけど……』というスタンスのようだし、私たちの中でトレーナーさんを狙っているのは一人だけ。

 

つまり私の恋敵は桐生院葵ただ一人……!

 

 

「いや別に恋するぐらいはいいだろうけど、どう考えても未成年っていう差は埋めれないだろ。常識的に考えろよ……。逆に聞くが、あの人がそういうの守らない人だと思うか?」

 

「うぐっ!!! お、思いません……。」

 

 

トレーナーさんはすごい人、それは誰にも否定できないことだとは思うけど……。私だってね! 確実にこっちを恋愛対象としてみてないことぐらいわかってるもん! だってボディタッチとかしてもぜんぜん反応しないもん! いや普通に考えたらしたらいろいろダメなんだろうけど、そういうのじゃないじゃん“恋”って!!! わかれ!!!

 

 

「いやまぁ、な? ちょっといろいろアレなメロンに、『合意があればいいんじゃないですか~?』って言いそうなクマと違ってそこら辺の常識があるんならいいけど……。どう考えてもあの人、優良物件を超えた“何か”だろ。周りがお前の卒業までほっとくと思うか?」

 

「ぬ、ぬぅぅ……!」

 

 

メロンちゃんにもらったなんかそういう系の雑誌には『交際し始めてから結婚までの平均は3~4年』っていうデータがあった。つまり今差し切られたら完全に間に合わない……!!! どうにかして先にトレーナーさんを確保しないと! なにか、何かいい案は……。

 

 

「……! ここはやはりミークちゃんになんかいい感じのフォローを……!」

 

「やだ。私どっちも応援してる。あと常識的に考えたら私のトレーナーの方がいいと思う。成人してるし。最強タッグ。」

 

「くっ! だめかっ!」

 

「そりゃそうだろ。」

 

 

ノータイムで拒否られてしまったっ!

 

 

「というか並走でトレーナーに勝ててない時点で、ティムサは無理。恋愛でも走りでも負けてる。」

 

「ぬゅわっ!!! い、痛いところを……っ!」

 

「いやミーク、お前のトレーナーがおかしいんだからな? 普通人間がウマ娘に勝てるわけないんだがな? ……いや、なんで追いつけないんだろ。」

 

 

“私の”トレーナーが留守にする時間が多くなったことで、自然と桐生院トレーナーと練習する時間が多くなった。『スキル』だっけ? その見本を見せながらの口頭での解説、実際に並走しながら少し前を走る彼女の動きをトレースしていくって練習はめちゃくちゃ為になったといえる。

 

さすがにトレーナーさんみたいな指導はできないらしいけど、それでもちゃんと練習できてたしこの人に担当してもらえればいい所まで行けるんだろうな、ってのは実感できた。ちょっと嫌だけどその実力だけは認めてる。

 

そんな彼女のおかげで、ミークちゃんも含め私たち5人の走りは格段に成長したと実感できるほどになった。教えてもらったスキルをある程度発動できるようになったし、このままいけば菊花賞では確実にものにできる。

 

 

けど問題が一つ。

 

 

メロンちゃんを除き、桐生院トレーナーとの模擬レースで全く勝てないのだ。

 

 

「さすがにスタミナ的な問題があるからってことで距離は短めだったけど……。なんで勝てないんだ? というかなんでメロンは勝てたんだ? いやそれでも一回だけだけど、なんで???」

 

「私のトレーナー、すごい。でもおばけ。」

 

「否定できないよねぇ……。」

 

 

ちょっと前までいろいろ死にかけてたメロンちゃんが、合宿でめちゃくちゃはしゃいでいるのもそれが理由。確かに滅茶苦茶強かったし、彼女以外誰も勝ててないからそうなるのもわかる。ちなみに一番ショックを受けてるのは短距離専門のスタッフちゃん。

 

一番自分の得意距離に近いのに人間に勝ててない、一番多く挑戦して一番多く負けてるのが彼女だ。ちょっと前に『何やっても勝てない……』ってターフに寝ころびながら絶望してたのは記憶に新しい。

 

常識的に考えたら私たちウマ娘が人間に勝てないとかいろいろ問題な気がするけど、まぁ桐生院だし……、ね?

 

 

「正直桐生院さんがレース出た方がいいんじゃないか、って思うよね。」

 

「「わかる。」」

 

「みなさ~ん。トレーナーさんがお呼びですよ~。」

 

「「「あ、はーい!」」」

 

 

クマちゃんの声に返事をし、そこらへんで遊んでたメロンちゃんを回収してトレーナーさんのところに向かう。ちょっとぐらいは遊んでもいいって言われてたけど、私たちはここに合宿しに来てるんだ。菊花賞のためにも頑張らなきゃ、うし!

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。」

 

「あ、お疲れですかトレーナー。」

 

「両親がすみません……!」

 

「いえいえ、お気になさらず。それと大丈夫ですよ。」

 

 

第二の秘策のためにお呼びした方と、桐生院さん。お二人に手伝ってもらいながら用意の方を進めていきます。といってもさすがに精神的に疲労していることは事実。少々動きに精彩を欠いてしまっているかもしれません。ちょっと一息入れたいところではありますが……、これからティムサさんたちのトレーニングを行わなければいけませんからね、少々気張っていきましょう。

 

ちなみになぜ疲労してしまったかというと、この度合宿場として桐生院さんのご実家が所有していらっしゃる施設を使用させていただくことになったのですが……。そこでなぜか彼女のご両親とご挨拶することになったのです。一応この一帯の所有者ですし、今回お世話になる身です。社会人として普通にご挨拶させていただく予定だったのですが……。

 

 

(……確実に婿にしようとしてましたよねぇ。)

 

 

さすがにいろいろ性急すぎたのでやんわりと否定しながら、言質を取らせない立ち回りをさせていただいたのですが……、特にお母さまの攻撃がとても激しく、かなり苦労いたしました。いや本当に……。確かに桐生院さんは素敵な女性だと思いますが、本人にその気は無いようでしたし、同時に彼女も私もまだトレーナーとして始まったばかりです。今は仕事に集中したいというのが本音ですかね。

 

 

「それにしてもトレーナーさん、この器具はいったい? それとこちらの方は……?」

 

「あぁ、そういえばまだでしたね。こちら久保さんです。」

 

「初めまして桐生院トレーナー。私、株式会社YOUCAREから参りましたトレーニング器具開発部門の久保と申します。現役時代は“ワークユー”という名前でやらせてもらってました。」

 

 

こちらの久保さんは、ゲームの方では一切名前の上がっていらっしゃらない方です。しかしながらとあるアイテムの名前を挙げれば、すぐにどんな人物であるか想像がつくかと。そんな彼女は持ち込んだ段ボール箱から重りのようなものを取り出し、桐生院さんに説明を始めます。

 

 

「こちらの『アンクルウェイト』などの開発に携わらせていただいています。今回はトレーナーさんにご協力いただくということで、いろいろと持ち込ませていただきました。」

 

 

そうですね、かの【クライマックスシナリオ】で猛威を振るったトレーニングアイテムたち。その開発元である企業の社員さんです。

 

ティムサさんたちのトレーニングを桐生院さんにお任せしていた間、私の方でこちらの企業様と交渉の方をさせていただき、様々な支援をいただくことに成功しました。いわゆるスポンサー契約、という形ですね。

 

しかしながら現在は理事長がURA開催のために走り回っている時期。クライマックスシナリオの開始はもっと後になるわけです。自身が欲していたトレーニング器具たちはいまだ試作品段階でしたし、企業としてもかなり若手の部類。さすがに今を時めく彼女たちに試作品をお渡しするのは……、ということで初期の交渉は非常に難しいものでした。

 

 

(なのでちょっとチートでズルをさせていただいたんですよね。)

 

 

私の持つ力は、育成にかかわること全般。少々毛色は異なりますが『トレーニング用品に何が必要なのか』という答えを無理やりひっぱってくることも可能です。そのため開発の方々にいろいろ口出しをさせていただき、自身が求める品々を試作品レベルから製品化一歩手前の状態まで引き上げていただきました。

 

さすがにゲームで購入できたすべてをその状態にすることは難しかったのですが、ちょうどいま久保さんが持っていらっしゃるアンクル、消費体力が20%上昇する代わりにステータス向上が50%上昇する『スピードアンクル』『スタミナアンクル』『パワーアンクル』『根性アンクル』の計四種はもちろん、使用した場合ステータス向上が60%向上する『ブートキャンプメガホン』の確保には成功しています。

 

 

(そして何よりもこの『健康祈願のお守り』。)

 

 

これに関してはなぜか最初から完成しており、『これほんとに売れる?』という状態で販売するかどうか迷っているところに『あるだけください』とお願いし頂いた形になります。

 

つまりアンクルとメガホンによってより効率を上げたトレーニングが可能になったというわけです。1(通常時)+0.5(アンクル)+0.6(メガホン)=2.1、2.1倍の効率で練習していく、というわけですね。夏合宿はもちろん、今後すべてのトレーニングにおいて使用しますので、常時2.1倍というわけですね。

 

 

(あ、ちなみにゲーム内であった上限値100の制限はチートで無効化できるので青天井です。)

 

 

これが、自身が用意した第二の秘策になります。

 

……本音を言いますとこれを国内の合宿場ではなく、パリの【L`Arcシナリオ】環境で行いたかったのですが、さすがにフランスに伝手がなく断念いたしました。自身の師匠であるあの竹林トレーナーと連絡が付けばまだなんとかなったのかもしれないのですが……。あの人いまだ行方不明ですからね……。

 

一応たまにお手紙が届くので元気にはしているようなのですが、いまだ担当に確保されちゃっているのが現状のご様子。さすがに自身の担当させていただいている皆さんがそうなってしまうことはないとは思いますが、十二分に注意していきましょう。

 

 

「な、なるほど……。確かにこれはすごい効果がありそうですね! ミークの分も用意していただけたみたいで……、ありがとうございます!」

 

「いえいえ、こちらとしてもトレーナーさんのおかげでかなり開発が進みましたし、GⅠを制覇した方々からの感想を聞けるのはめったにない機会なので! あ、あと良ければ正式に発売する際はCMとかの出演もお願いしたいんですが……。」

 

「久保さん? そういった話はまた後日に。」

 

 

そろそろティムサさんたちが来ると思いますので、そういうお金の話は後ほどということでお願いいたします。それとCMの件ですが、メロンさんは『そういうの出たい~!』と言っていたので大丈夫かと思いますがほかの方々の意思確認はまだできておりません。拒否される可能性もあると思うのでご容赦のほどを。

 

っと、噂をすれば……。

 

 

「トレーナーさぁん! お待たせしま……、誰ですかその女ッ!」

 

 

ミークさんを含めて5人でやってきたウマ娘たち。そんななか、血相を変えて指をさしながら叫ぶティムサさん。いや確かに皆さんとお会いするのは初めてでしょうが、初対面でそれはかなり失礼ですよ……。さすがに注意しなければですね。わざわざこちらの都合でご足労いただいた方ですし。

 

 

「ティムサさん、失礼ですよ。」

 

「あっ。いや、その……。ごめんなさい……。」

 

「(あ、察し。)い、いえいえ。気にしてないですよ。改めて自己紹介させていただきますね。」

 

 

気にせず自己紹介を始めてくださった久保さんに感謝しながら、その話に耳を傾けます。基本的に先ほど桐生院さんになされたものと同じですが、やはり事前に皆さんのことを調べてきたようで全員の実績を称えながらのものになってますね。

 

 

「というわけで夏合宿の期間中は久保さんに手伝っていただきながら、この器具を使用していく形になります。少々普段とは違うと思いますが、頑張っていきましょうね。」

 

 

 







第二の秘策! 常時アンクル×メガホン!


〇タヴァティムサのひみつ・9
なんか親しそうにしてるし! 泥棒猫が増えた!(増えてない)でも結構ガチでトレーナーさんに怒られちゃったので(´・ω・`)


〇オリキャラなどについて
おそらく今回限りの登場。

・久保さん(ワークユー)
一応中央に所属していたが、OP級までしか上げれなかったため普通に就職してトレーニング器具などの開発に携わっている。転トレさんに対して恋愛感情はないが、タヴァティムサの態度からいろいろ察してしまった。年齢的に実る恋ではないだろうと思いながらひそかに応援している。……あとここにはバケモノしかいないんですか???(練習を見ながら)

・株式会社YOUCARE
とあるウマ娘が経営している企業、みんな大好きロイヤルビタージュース(RBJ)を独占製造&販売している会社。しかしぜんぜんRBJが売れなかったため現在トレーニング器具の開発に取り組んでいたところ、転トレさんに捕捉された。彼のおかげで開発が約3年ほど縮んだといわれている。

転トレさんにもちろんRBJを進めたが、『やる気下がりますしいりません』と言われて(´・ω・`)。まぁこいつRBJなくても補食とかで何とかできるしね……。



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