転生チートトレーナーはモブウマ娘を三冠にできるのか。 作:サイリウム(夕宙リウム)
東京レース場、芝2000m(中距離)、天候・曇、芝・良。
さて、ティムサさんのメイクデビューを6月後半に控えた今、もう一度現状の再確認を行いましょう。タヴァティムサさんのステータスは現在このような形となっております。
〇ステータス
『タヴァティムサ』 ☆1 調子:好調
芝B ダートE
短G マC 中B 長C
逃G 先B 差C 追F
スピード F
スタミナ G-
パワー G
根性 H+
賢さ H-
……何故また好調になっているのかは解りませんが、彼女の長所はスピードになります。その他のステータスの低さや、適性が未だ不完全という短所もありますが、デビュー前にFまで伸ばせているのは、彼女の非常に大きな強みと言えるでしょう。
(メイクデビューに限る話ですが、基本的にスピードに関してはFさえあれば勝利が見えてくるレベルです。)
ゲームでの経験や、この世界における過去のメイクデビューを見る限り、彼女のスピードであれば十分勝ちを狙えます。先ほどのステータスがスカウト時であるため、今後の成長を考えるとスピードに関しては何の問題もありません。
しかしながら、"適性"の問題。これが非常に大きい。
ティムサさんは現状、芝適性・中距離適性・先行適性のすべてがBとなっています。ゲームに於いてこれは結構な痛手であり、各種倍率が多少違いますが、Aが100%の実力を発揮できると考えると、Bは85~90%程度の出力になってしまいます。
ある程度ステータスが育っていれば適性が低くてもスペック差で押し勝つことができますが、デビュー前のティムサさんのステータスはそれほど高くありません。このデバフは大きく響くでしょうし、今後のことを考えれば早めに直しておいて悪いことはありません。そのため、真っ先にこの"適性値の改善"に乗り出した、というわけです。
『ということで、皆さんにはよりターフや、距離に慣れるという作業を行ってもらいます。』
『慣れる、ですか?』
幸いティムサさん含め彼女のご友人たちも全員が芝適性持ち。ここでどなたかがダート適性を持っていた場合、ダート専用のメニューを組まなければいけませんでした。流石にそれは手間ですし、適性の向上も他トレーニングと同じように『メンバー』によって効果の向上が予想されます。
皆さん同じトレーニングができる、と言うのはとても良いことでした。
(因子継承の存在がない以上、使えるものはなんでも利用すべきでしょう。)
残念ながら距離適性の方は皆さんバラバラでしたが……、ティムサさんが長距離適性Cを持っている様に、他の方にもほんの少し被るところがあったためこちらも同様に練習が可能です。
『まずターフに、芝に慣れるためには。とにかくターフを走ることが重要です。【芝】練習ですね。こればかりは他に方法がないため、先日教えたフォームを意識しながら走ってください。回数や距離、休憩のタイミングなどは適宜指示いたしますのでそれに従ってください。』
そして次に行うのが、作戦に対する適性値の向上です。ティムサさんと銀髪のクマさんが先行適性持ち。残るスタッフさんとメロンさんが差し適性をお持ちでした。こちらの方は自身の"チート"のカバー範囲内であったため、少しズルをすることができます。
『レース時の策として大きく分けて4つ、逃げ・先行・差し・追込が存在します。しかしながらこれはただの分類でしかなく、先行一つとっても多種多様な戦法があります。』
例えばティムサさんの場合、チート経由での知識にはなりますが先行策の中でも"逃げ"に近い位置で走ることが好ましいタイプであることが解ります。かのシンボリルドルフさんのように全体を俯瞰しレースを自身の好みに作り替えるような技術は彼女にありませんし、そしてその適性も全くないため身に着けるのには多大な時間を必要とします。
(つまり、ルドルフさんのようになるのはかなり難しいと言っていいでしょう。彼女だけの先行策、それを目指し確立していく必要があるわけです。)
彼女の性質として、最初から最後まで誰かに追われる"逃げ"は多大なストレスが掛かることが推測できます。そしてまた"差し"のように後方からごぼう抜きができるほど体格に、パワーに優れているわけではありません。故に彼女が選択すべき方針は、先頭に立つのではなく、三・四番手ぐらいに出ておいて、最終コーナーから抜き去って逃げ切る。というタイプが一番好ましいようです。
比較的逃げに近い先行、といった形ですね。彼女の強みである速度で押し切る戦術になります。
『ティムサさんを含めて、皆さんの最適な作戦について此方で把握済みです。できるだけ解り易いように書面で纏めましたので、後ほど目を通してください。こちらの練習に関しては実際にレース形式で走って頂くという物も行いますが……、基本は座学になります。』
『ざ、座学ですか。』
『えぇ、ですが机に向かうだけが座学ではありません。行って頂くのは"レース鑑賞"。過去のレース映像から皆さんが行うべき策に似た走り方をしていらっしゃる先人たちのものをピックアップ致しました。今からデータの方をお渡ししますので、それを見ながら【ビデオ研究】の方を行って頂く、という形ですね。』
とまぁこのようにティムサさんたちには指示を出させていただきました。
簡単に纏めますと、各適性値向上のため"スピードトレーニングLv1【芝】"、"賢さトレーニングLv4【ビデオ研究】"を指示した訳です。特にティムサさんには"マンツーマン指導"をさせて頂きましたので……。
〇ステータス(5月後半終了時)
『タヴァティムサ』 ☆1 調子:絶好調
芝A ダートE
短G マB 中A 長B
逃G 先A 差C 追F
スピード D-(F)
スタミナ G-
パワー E+(G)
根性 H+
賢さ E (H-)
5月の後半に差し掛かる際にはこのような形に。無事すべての適性値をAにすることができました。さらに対応するステータスの向上。非常によい滑り出しと言えるでしょう。ティムサさんのご友人たちや、たまに練習に参加してくださる桐生院さんのおかげでより効率的にステータスを上げることが出来た形ですね。
……ただちょっとティムサさんが先行適性値の向上に手間取り、【ビデオ研究】の配分を増やしたためスピードの伸びが少々悪いです。スピードはいくらあっても困りませんから、もう少し【芝】での練習を行い、スピードとパワーをもう少し上げておきたかったです。
しかしそれも仕方の無いところがあります。そもそも【ビデオ研究】はLv4のトレーニングであるため、前提として数多くの知識が必要となる練習です。未だ中学生であり、初期の賢さがGを下回るHだったティムサさんにこれを求めるのは酷というもの。
(ゲームでも【勉強】、【読書】、【クイズ】と段階を重ねていましたからね。)
それを一足跳びどころか大幅に超えて行ったわけです。一応それを踏まえてのスケジュール構成であったため、他の方、ご友人たちは問題なく時間内に終わったのですが……。少しティムサさんは遅れてしまいました。元々あまり頭を動かすのが得意なタイプではないようですし、仕方ないところがあるのかもしれません。
難しい内容を効率よく覚えて頂くために"マンツーマンでの講義"や"付きっ切りでのレース鑑賞"、そのほかにも色々手を試したのですが……、やはり"育成"というものは一筋縄ではいかないようですね。難しいモノです。
(しかしながら何とか6月に入る前には適性練習を終えることができました。ここからは最終調整を。)
『ティムサさん、メイクデビューまで一月を切りました。』
『……はい。』
『ですが模擬レースの時の貴女より格段に強くなっています。今の貴女でも勝利を拾うことはそう難しい話ではありません。残りの時間は小さな障害を少しずつ取り除くために使用し、勝利をより確実なものに致しましょう。』
『……はい! 頑張ります!』
彼女が現状不足しているのは、スタミナと根性です。可能であれば両者ともにFまで持って行きたいところですが、一月では流石に限界があります。時間いっぱいまでこの二つのステータスの向上が見込めるプールでの練習、スタミナトレーニングを進めていくことにいたしましょう。
……え? 水着? 私がですか? いえ、普段と同じ様にスーツで指示出しを行わせていただきますが……? あ、大丈夫ですか? なら良いのですが……、なぜ残念そうな顔をされたのでしょう?
◇◆◇◆◇
6月の下旬。私の、メイクデビューの日。
係員の人から青のラインが入った体操服と、真っ白なゼッケンを手渡され、控室まで案内してもらう。私がもらったそのゼッケンには大きく黒字で"8"と書かれており、その下には自分の名前、『タヴァティムサ』という文字が。
そこに描かれた名前が、6枠8番という番号が、本当に私が『レース』に出走するという事実を教えてくれる。
(……もどしそう。)
極度の緊張、胃だけじゃなくて全部の内臓がぐちゃぐちゃにかき回されたような気分。自分がどこを向いているのか解らなくなってしまって、けど時計の時間はずっと進み続けてる。こんな状況でレースなんかできるわけがない、だから早く直さないといけないんだけど、進み続ける針が私の焦りを加速させていく。
(6枠、8番。)
鏡越しに見えるのは、真っ青な顔になった私。青のラインが入った上に、青のハーフパンツ。そして白いゼッケンをつけた私。今日初めて、トゥインクルシリーズに挑むウマ娘。
トレセンに来る前は、もっと明るくて、みんな楽しく笑い合うような、お互いの健闘をたたえ合うような、そんな優しい世界だと思っていた。……けれど、実際にあるのは恐怖を覚えるほどに厳格な実力主義の社会。一回も勝てないウマ娘に、居場所なんか存在しない場所。
(走るのが、……負けるのが、怖い。)
トレーナーさんと、友達と一緒に練習をした二か月ちょっと。確かにちょっと脱線してしまう時はあったけど、ずっと真面目に頑張って、トレーナーさんの指示を全部こなして来た。沢山頑張って、トレーナーさんからも絶対に勝てると太鼓判を押してもらった。
私よりも賢いクマちゃんに、私よりも長くスパートを掛けられるスタッフちゃんに、私よりも力が強いメロンちゃんに、沢山助けてもらった。なんでもできるミークちゃんにも、沢山、手伝ってもらった。トレーナーさんに言われたこと、できる事、ちゃんと全部出来たはずなんだ。
だけど。
(あの時の、あの時の光景が。)
あの時の模擬レース、掲示板にすら入れなかったあの時のこと。一番先頭を走っていた彼女の影すら踏めなかったあの時のことが、どうしようもなく負けてしまったあの時のことが、どうしても頭から離れない。
今日のレースも、あの時と一緒になってしまうんじゃないか。私はやっぱり勝てないんじゃないか。
それを、ずっと考えてしまう。
(……あの、人たち。)
学園で生活していれば、嫌でも"強者"の話は耳に入って来る。みんなやトレーナーさんのおかげで何とか気にせずにはいられたけど、ずっとそのことは頭に残り続けている。すごい逃げウマ娘がいるとか、マイルじゃ負けなしの子がいるとか、メジロのすごい人はこの世代に二人もいるとか。ずっとそんな話が聞こえてくる。
ミークちゃんの様な、なんでもできるすごいウマ娘。もしかしたらもっとそんな人たちがいて、ミークちゃんよりも強い人が一杯いるのかもしれない。あの時の模擬レースで私よりも先着したあの子たちの様な人が、一杯。私よりももっと強くて、もっと速い人が、一杯。
考えれば考えるほど、どんどん悪い方へと向かって行ってしまう。
けれど、止められない。
トレーナーさんは、私に色々なことを教えてくれた、フォームの練習から私がすべき作戦、そして体の鍛え方。このレースに勝つために必要なこと全てを、あの人は私に教えてくれた。トレーナーさんに何も問題はない、もし私が負けるとすれば、ただ私が、最初から、どうしようもなく弱かった、そうとしか考えられない。
私は、私を信用できない。とても強いとは、思えなかった。
「ティムサさん?」
「とれー、なー?」
大丈夫ですか、と声を掛けてくれる人。いつの間にか、トレーナーさんが私の控室に来ていた。
「ノックしても返事がなかったので……、大丈夫ですか?」
「あ、いえ、あの……。」
何か返すべきなんだけど、何も思い浮かばない。絶対に言うべき言葉があるはずなんだけど、頭の中がぐちゃぐちゃで、不安でいっぱいで、何を言えばいいのか解らなかった。けど、何故か、その顔を見ると、酷く安心してしまう。
模擬レースでボロボロになってしまった私を引き上げてくれたあの時のように、優しく私が進むべき道を示してくれた時のように、このどうしようもない不安も、全部消し飛ばしてくれるような、そんな期待を、してしまう。
そしてこの人は、私の望みを、叶えてくれる。
「勝てますよ。」
「……え。」
私が望んだ言葉を、何度でも、言ってくれる。
「勝てます。まだたった数か月の付き合いですが、断言しましょう。ティムサさんならば絶対に勝てます、作戦は覚えていますか?」
「……前の方に付いて、最終直線に入ったらギアを上げる。」
「そうです、たった二つ。これさえできればちゃんと勝てます。」
出走者の中で、一番強いのは私。そう言ってくれる、トレーナーさん。
「タヴァティムサさん、あなたの走りを、見せてください。」
◇◆◇◆◇
東京レース場、これから始まるレースがデビュー戦と言うこともありこの時間帯ではそれほど人は多くありません。そのおかげと言うべきか、一度控室の方に寄った後でも最前列にスペースを見つけることができます。……まぁ私の場合、共に観戦してくれる方がいらっしゃるのでそのあたりの心配はしなくてよいのですが。
「あ、トレーナーさん! こっちこっち~!」
「あぁ、メロンさん。皆さんも、場所取りありがとうございます。」
大きく手を振るご友人のメロンさんに軽く答え、一緒にいたクマさんとスタッフさんにも礼をいう。自身の担当であるティムサさんのトレーニングに付き合ってくださっている方々。今日もわざわざ時間を見つけ応援に駆けつけてくれました。
「トレーナー、ティムサの奴。どうだった?」
「やっぱり緊張してましたか~?」
心配そうに聞くスタッフさんに、ゆっくりと声を紡ぐクマさん。メロンさんも普段の元気溌剌な感じではなく、どこか緊張を感じさせるようにソワソワとしています。やはり仲のいい友人のこととなると、皆さん心配になってしまうようですね。
「かなり緊張していたようですが、何とか持ち直してくださりました。問題なく一着で帰って来てくださるかと。」
「おぉ~! ティムサっち愛されてる~!」
「よかったですね~。」
メロンさんの冗談を聞き流しながら、ターフの方へと眼を向ける。実際、ティムサさんの勝利はほぼ確実と言っていいでしょう。他出走者の方々のステータスを軽く見せていただきましたが、どなたも想定の範囲内。ティムサさんが頭一つ飛び抜けている形となっています。
(ゲームと同じように、最高でもF+。スキル持ちの方もいましたが、脅威ではありません。)
ティムサさんの人気は、三番人気。しかしながら初戦での人気はあまり当てにはなりません。そのウマ娘の血統や、模擬レースでの結果。そして指導するトレーナーの実績によって決まるものであり、次回以降の前走の記録や実力で定まるものとは違います。
(学園で何度か話したことのあるベテラントレーナーさんの教え子が一番人気、後は親族の成績から判断された子が二番人気。そして私の経歴、首席という面からティムサさんが選ばれた形でしょうね。)
他にもメジロ家の血筋を持つ方もいらっしゃいますが……、その全員がティムサさんよりも下です。ネームドという警戒すべき対象がいない以上、彼女が一番先にゴール板を駆け抜けるのは間違いないでしょう。
そんなことを考えていると、お姉さん気質の、濃い桃髪の方。スタッフさんが私に話しかけてきます。
「トレーナー、私たちのデビューの時のためにも聞いておきたいんだけど、この東京レース場で気を付ける事って何?」
「そうですね……。」
ティムサさんのことを心配しているのか、「今後の自分たちのため」という方便で質問をしてくる彼女。おそらく本当に聞きたいのは、ティムサさんが本当に勝てるかどうか、と言うことなのでしょう。できるだけ声が柔らかくなるように意識しながら、言葉を紡ぎます。
「東京競バ場、もといレース場。著名な大ケヤキが存在するレース場ですね。ここの特徴はなんといっても長い直線、高低差の方もありますが、やはりこの直線がレースの鍵と言っていいでしょう。」
約530mの直線に、高低差2mの坂。この直線を制すために末脚勝負になりやすいこのレース場は、比較的差しや追い込みが有利と言われています。しかしながらそれは成熟しきったウマ娘たちの話、ジャパンカップや天皇賞のようにシニア級も出てくるレースではそうなのかもしれませんが、メイクデビューに於いて注意せねばならないのはたった2点です。
「最高速と、直線を走り抜けるスタミナ。おそらくどのレースでも言えることですが、メイクデビューに於いてはこの2点の勝負になります。」
スピードとスタミナ、この2つを何とかすれば負けるのはありえない。もっと言えばメイクデビューの成熟しきっていないウマ娘に対しスタミナはそこまでいらないので、スピードだけでも何とかなる。
「まぁつまり、今回の出走者の中で一番最高速の速いティムサさんが勝つ、と言うことです。直線が長い以上、それに達するまでの時間は確実に用意できます。そして最後の直線で勝負になるこのレース場の特徴から、スローペースになりやすい。故に、最後までスタミナの温存がしやすいのです。」
勝つために必要な要素はすべてそろっている。そうスタッフさんに伝えれば、何とかその不安を払拭していただくことに成功したようです。隣で聞いていたメロンさんもクマさんも頷いてくれているようですし、大丈夫そうですね。
「……っと、ファンファーレですね。」
そんな話をしていると、鼓膜を震わせるファンファーレ。自然と話し声が止み、ゲート付近を映すモニターに視線が集まる。ちょうど8と書かれたゲートに収まるティムサさんの姿が見え、少し唾を飲み込んでしまう。いつの間にか実況の声がレースと出走者の説明を進めており、耳を傾ければ彼女の名前がほんの少しだけ聞こえた。
【スタートです。】
ゲートが、開く。
何でもない実況の声、酷く冷たく聞こえたソレは唐突にやって来た。
(……スタートは問題なし、位置取りも……、内側ではないが悪い場所ではない、ですね。)
モニターに映っていた彼女の顔から少し心配になってしまいましたが、無事スタートを決めて所定の位置に付いてくれます。13人立ての8番と言う比較的外側ということで内側に入り込むのは少し難しかったようですが、先ほど伝えた指示通りの位置に付いてくれます。
あそこならば彼女の脚質に合っているはずです。
(第1直線、第1コーナー、そして長い第2直線を超えれば最終コーナー。)
想定通りレースはスローペース、新馬戦と言うこともあり出発から到着まで2分以上はかかるでしょう。遠い観客席からはティムサさんがターフを走っている姿しか見えません。私一人、ここで眺めるだけ。
そうこうしている間に出走者たちは2つ目の直線を走り終わります。
【さぁ先頭が最終コーナー、大ケヤキへと入っていきます。】
遠目で見える集団が木の陰に隠れ、同時にモニターからも消える一瞬。ほんの数秒の間、付近にいる皆の息が止まり、彼女の姿が見えることでようやく元に戻ります。不安が、期待へと、願いへと変わる瞬間。
ティムサさんが直線へと入った瞬間、隣にいた彼女たちが、一斉に声を上げます。
「「「いけぇぇぇ!!!!!」」」
一瞬、彼女と、視線が交差する。
はい、そこです。
『ッ! はぁぁぁあああああ!!!!』
声を上げながら、ティムサさんがペースを上げる。
【残り400m、オケアヌスを抜いてタヴァティムサ。タヴァティムサが先頭!】
一気に、先頭へ。そして、更に突き放す。
【タヴァティムサ先頭! タヴァティムサ先頭!】
そして、他を寄せ付けず、そのまま。
【タヴァティムサ、脚色衰えずそのままゴールイン!】
1着。
「ふぅ……。」
緊張が解け、つい息を漏らしてしまう。
ステータスを見れば当然、そう断じていたはずなのに。ひどく安心している自分がいた。
〇タヴァティムサの秘密・3
一番得意なトレーニングはスピード。一番嬉しいトレーニングは賢さ。(トレーナーとの距離が近いから。)
〇ステータス(メイクデビュー時・()内は初期ステータス)
『タヴァティムサ』 ☆1
芝A ダートE
短G マB 中A 長B
逃F 先A 差C 追F
スピード D-(F)
スタミナ F (G-)
パワー E+(G)
根性 F-(H+)
賢さ E (H-)
スキル:なし
クラス:デビュー・未勝利
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また誤字報告大変ありがとうございます。