転生チートトレーナーはモブウマ娘を三冠にできるのか。   作:サイリウム(夕宙リウム)

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7:認可

 

 

「こちら、バイトアルヒクマさんたちの引継書と、彼女たちの今後のトレーニング計画書になります。また、担当させて頂く前に教官殿の代わりに行っていたトレーニングの記録はこちらになります。」

 

「うむ! 読ませていただく!」

 

「拝見します。」

 

 

持ち込んだ資料、結構な厚みになった物を四人分提出します。量が量なのでデータ化して持って行きたかったのですが、インパクトのためにもわざわざ印刷してまいりました。理事長と、その秘書のたづなさん。お二人がその資料に目を通してくださっている間、未だ話の内容について来れていない様子の桐生院さんに、詳細を伝えます。

 

 

「(実はあの三人、ティムサさんのトレーニングに協力して頂いたお三方と契約させて頂くことになりまして。)」

 

「(……え、じゃあ合計で4人?)」

 

「(はい、その認可を頂くために参りました。)」

 

 

時刻は午後、昼食の時間を過ぎちょうどティムサさんたちが午後の授業を受けている時間帯でしょう。

 

理事長室、この部屋にいるのは、私たちトレーナーの雇い主にしてこの学園の最高責任者。ゲームでもたまにトレーニングに来てくださっていたかの『秋川やよい』理事長。そしてその秘書であり、密かにウマ娘ではないかと言う噂が"こちらでも"囁かれている『駿川たづな』さん、そして何故かここにいる、私の同期である『桐生院葵』トレーナーです。

 

彼女は私と違い、『新人なのにいきなり4人も担当しようとしている』なんて問題行動は起こさず、ハッピーミークと共にメイクデビューに向けて準備しているところ。おそらく桐生院さんが呼ばれたのは"証人"となってもらうためにでしょう。ご迷惑を掛けたお詫びとして、後日お礼をしなければ……。

 

 

「……問題は、なさそうですね。いやむしろ想像以上に出来ています。」

 

「仰天! 大変よくできていると思うぞ!」

 

「ありがとうございます。」

 

 

資料から顔を上げた二人が、自身に向かってそう言ってくれる。チート能力にかなり助けて貰ったものの、かなりの時間を費やして作成してきた資料です。やはり自身の努力を認められるというものは心地の良いものですが……、今は決して気を抜くタイミングではありません。

 

 

「なぁたづな。別に良いのではないか? 今この学園にいるトレーナーは全て、私の目の前で夢を語ってくれた人間たちだ。その人柄も能力も、中央の名に恥じないと信じている。お前もそれは理解しているだろう?」

 

「もちろんです、ですがこの場にお呼びした以上。こちらを含め、両者ともに説明すべき責任というものがあります。」

 

 

彼女がそう言った後、此方へと向き直りながらその背筋が伸びる。自然とこちらも姿勢を正し、このお二人に認めてもらえるように最善を尽くすために意識を研ぎ澄ましていきます。

 

 

「今回こちらに来ていただいた理由としましては、新しく加入なされる3名。この方々を模擬レースにてスカウトされたトレーナーさんたちから、ある報告を頂いたからです。まずはそのご説明をさせて頂きます。」

 

 

あのお三方が模擬レースに出走し、優秀な成績を収めスカウトされたことは周知の事実です。然しその時に、少々問題となるような行為をしてしまった方がいました。

 

クマさんやスタッフさんは問題なく、順序に則ってお断りさせて頂いたようです。スカウトしたトレーナーさんからお話を聞き、トレーニング計画や受けられるサポートについて尋ねた後、『現状の維持、もしくは悪化する可能性がある。』と判断し、丁寧にお断りさせて頂いたそうです。

 

しかしメロンさんがあろうことに、スカウトの文言が気に入らず『やだ!』と一蹴。何も話を聞かず帰っていってしまったそうです。

 

 

(め、メロンさん……。)

 

 

別にその程度ならよくあること、むしろ変に反撃されてターフに埋められたり、逆に気に入られ過ぎて拉致されたりと言った問題に発展していないため、スカウトしたトレーナーさん方は皆『大丈夫ですよー!』とのことらしいですが、彼女たち全員が私の指導下にあったため、一応確認のために上に連絡したとのことです。

 

 

「報告を受けた以上、此方としても最悪を想定して動かねばなりませんでした。ですがお見せいただいた引継資料を見る限り、決して数日で作成できる代物ではないように思えます。しっかりと準備を進められていた、また最初から4人同時に契約を結ぶつもりがなかったと、判断致します。」

 

「……ありがとうございます。」

 

「いえ、こちらこそ要らぬ疑い。生徒たちを利用する人間だと疑ってしまい、大変申し訳ございませんでした。……しかしながら、未だ貴方の管理能力について証明がなされたわけではありません。」

 

 

たづなさんが危惧していたのは、おそらくトレーナーとしての実績のためウマ娘である彼女たちを利用したり、誰か一人のためだけにトレーニングを行い、他の子が不利益を受けてしまうことを考えていたのでしょう。一瞬だけたづなさんの視線が桐生院さんの方に向いていましたし、おそらく彼女からの話を事前に、それこそ世間話のように聞いていたのでしょうね。

 

 

(とりあえず、第一関門は突破ですね。……あとは、能力の証明をしなければ。)

 

 

今後のトレーニング計画書を提示したとしても、確実にそこに書かれているものを実行できるとは限りません。もし計画書が机上の空論に終わった時、私の評価は『まともな計画すら立てられぬ人間』になってしまう。そんな人間に生徒を預けたいとは思わない。

 

気合を入れ直し、言葉を発しようとしたところ……

 

 

「うむ! ではたづな! ここからは私に任せて貰おう!」

 

 

大きな声で元気よく声を上げる理事長、そして掲げるのは"おまかせ"と書かれた扇子。……漢字二文字以外もお持ちだったのですね。一瞬何か言おうとしたたづなさんでしたが、軽く一礼して会話の主導権を理事長に渡します。

 

 

「その管理能力うんぬんであるが、私は特に問題の無いように思える! 確かに大変だろうが、トレーナー。キミが独力で十分なんとかできると判断したが故に、契約を結んだのだろう?」

 

「はい、その通りです。」

 

「ならば良し! それに話を聞いていれば逆スカウト、求められたのならば応えるのがトレーナー! うむ、天晴! 頑張り給え!」

 

 

そう言いながらぴょんと椅子から降り、"必勝"と書かれた扇子を手渡ししてくれる彼女。

 

 

「しかしな? やはりいくらトレーナー不足の学園と言えど、新人に4人も任せれば色々と口出ししてくる者もいるだろう! 私はまだ若いし、皆も知る様に、現在URAファイナルズ開催に向けて準備中である! 学園内は大丈夫でも、外から噛みついてくるものもいるだろう!」

 

 

「故に!」

 

 

「実績を以て黙らせるのだ!!! 実績をあげている者にいくら噛みついても、道化にしか見られないからな! あーはっはっ!!!」

 

「……かしこまりました。」

 

 

一瞬、目の前のまだ若いというよりも、幼いというべき彼女がその様な言葉を口にしたことに驚いてしまいますが、深く礼を返し了承の意を示します。考えてみれば、この中央トレセン学園はとてつもなく大きな影響力を持つ存在です。

 

この世界における一大娯楽であるレース、その競技者たちを育成し、輩出する機関の長が、ただの血筋だけで選ばれるはずもありません。……おそらく、政治的手腕にも大変優れているのでしょう。でもなければ「すべての距離、コースに対応した一大プロジェクト」である、URAファイナルズなど開催できるはずもありません。

 

 

(……とにかく、上からのオーダーは頂きました。)

 

 

実績を以て、示す。ティムサさん、クマさん、スタッフさん、メロンさん。トレーナーを務めさせていただく4人だけでなく、任せてくださったこの方々の期待に応えるためにも、全力を尽くさなければ。

 

 

「あ、ところで。ちょっと聞きたいのだがいいか? 耳を貸してくれ。」

 

「え、あ、はい。かしこまりました。」

 

 

言われた通りに膝をつくようにしゃがみ、耳を貸す。

 

 

「あ。あの。よく聞く話なのだがな? そういう二人っきりの所に新しくメンバーが入るとな? 色々と問題というか、痴話喧嘩というか、そういうのがよく起こると聞くのだが……、大丈夫? 暴走しない? 昼ドラみたいにドロドロしない? ほんとに大丈夫?」

 

「え!? あぁ、えぇっと……。大丈夫だと思いますよ? スカウト時から皆さん同じようにトレーニングをさせて頂いているので、それが続くだけです。そもそも、あまり人に好かれるような人間でもありませんので……、故に懸念されるようなことは起こらないかと。」

 

「あ、そうなの? うむ!!! ならよし!!!!!」

 

 

小声でこそこそとそう聞いた彼女は、変なことを聞いてしまったなと笑いながら大声で誤魔化し、先ほど座っていた椅子へと戻っていく。……あれでしょうか? いくら理事長と言えど年相応に恋愛に関する興味がある、と言うことでしょうか?

 

 

(そう言えばメロンさんが『今の昼ドラ愛憎マシマシでめちゃ面白い!』なんて言ってましたし、理事長もご覧になっていたり……、はさすがにしませんか。)

 

 

そんなことを考えていると、ぴょんと椅子に座り直した理事長がこちらを向いて言葉を発しようとしていました。即座に雑念を切り捨て、意識をそちらに向ける。

 

 

「よし! ではこの件はおしまい! 桐生院トレーナーも時間をとらせて悪かった!」

 

「あ、いえ理事長! お気になさらないでください!」

 

「うむ! ありがとう! じゃあそんな二人に少し頼みごとがあるのだが……、URAファイナルズ開催に向けてのイベント。そこに出演してみないか?」

 

 

……あ、うまぴょい踊らされるんですね、私たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみません、お時間宜しいですか? 月刊トゥインクルの者です。

 

 

「え? インタビュー? メロンに! いいよー! ……あ! ちょっと待って! トレーナーさんから書類見せて貰って! って言われてたんだった! おねがいー!」

 

 

はい、此方になります。入校許可書と、取材許可書。それとこちらが自身の名刺になります。本日の取材内容を掲載する際は、後日確認のためにトレーナーさんと学園の方にお伺いいたしますので。

 

 

「あ、そうなの! はいはーい! 一応トレーナーさんにも伝えておくね!」

 

 

ありがとうございます。え~、まずはフリルドメロンさん。メイクデビュー勝利おめでとうございます。

 

 

「うん! ありがと! どうどう? 私強かったでしょ! トレーナーさんのおかげー!」

 

 

はい、とても圧倒的な勝利でした。まさに女王が生まれる瞬間を自分たちは見ているのではと思うほどに。

 

 

「えへー! 言い過ぎだよぉ! あ、それに! 私ちょっと中距離無理だからさ。多分途中でマイルに転向すると思うからよろしく! みんなに紹介するときは"未来のマイルの女王"でお願い!」

 

 

了解です、是非そうさせて頂きますね! それで宜しければ、初勝利時の感想などをお伺いしたく。当時の心境は勿論、振り返ってみて感じたこと、思ったこと、なんでも構いません。

 

 

「う~ん、といってもなぁ……。トレーナーさんがある程度出走レースを選んでくれたみたいだし、クマちゃんもスタッフちゃんも勝てるって思って挑んだからさ。『無事勝てて良かったー! これでみんな一勝ウマ娘!』って感じかな?」

 

 

選んでもらった、とは?

 

 

「あ~うん。なんか強そうなウマ娘? 私たちがクラシックで相手するだろうライバルとデビューで潰し合わないようにちょっと調整したんだって。」

 

 

なるほど……、他には?

 

 

「他にかぁ……。あ、そうだ! ずっと自慢してたティムサちゃんとやっと並んだ! と思ったらね! その後すぐにティムサちゃんOP勝っちゃったんだよ! 私たちも次走直近に控えてるけどさ! また調子乗り始めたの! ……まぁさすがに酷かったからトレーナーに怒られて泣いてたけど。」

 

 

な、なるほど……。同じトレーナーに師事している同期、バイトアルヒクマさん、エキサイトスタッフさん、そしてタヴァティムサさんがライバルで、切磋琢磨している相手と言うわけですね。

 

 

「あ~、ちょっと違うかも。記者さんも知ってるとは思うけどさ、私たちって得意な距離一つも被ってないのね? だからライバルと言うよりも、仲間意識しかないかなぁ~。さっきティムサちゃんのこと言ってたのはアレね? 色ボケの上に調子乗ってるからちょっとだけウザかっただけ。……あ! ここ絶対載せないでね!!!」

 

 

も、もちろんですとも。

 

ではメロンさんのトレーナーさんに付いて教えて頂けますか?

 

 

「トレーナー? 朴念仁。」

 

 

ぼ、朴念仁?

 

 

「うん。朴念仁。」

 

 

そ、そうですか……。

 

 

「だってね? 私たち体作るために結構食べてるんだけど、その分体重も増えるの。ウチのトレーナーさん管理主義だからさ、体重とかも毎日報告しなくちゃいけないの。ティムサちゃんからすれば地獄よ? 好きな人に日々増量する姿を把握されてるから。」

 

 

ま、まぁ筋肉量の増加でしょうし、いいのでは?

 

 

「まぁそうなんだけどね。いっつも報告する時にティムサちゃん顔真っ赤になってるんだよ? それなのにトレーナーさん全く気が付かないの!」

 

 

あ~。まぁそういう方もいらっしゃいますよね。

 

 

「それにね! 他にもティムサちゃんが、明らかに色ボケてるところたくさんあったのに、あの人全~然! 気が付いてないんだから! この前URAファイナルズ? そのイベントでトレーナーさんが出てたでしょ。」

 

 

あ、はい。存じております。実際に取材させて頂いたのは弊社の他の者なのですが、彼女から新人トレーナーが出演するということで非常に活気のあるイベントだったと聞きました。また非常に専門的な会話もあり、『素晴らしいですぅ!!!』と叫んでおりましたね。

 

 

「あ、あの人トゥインクルの人だったんだ。……まぁいいや。それでそのイベントでね? うまぴょい踊ったでしょ? トレーナーが。その時ウチのティムサがわざわざペンライト振って応援してたんだけどねー? 『キミの愛バが!』の所でさ、『ワタシが愛バだ!』みたいなこと叫ぼうとしてたんだよ! まぁ結局羞恥で死んで何も出来てなかったけど……。」

 

 

と、とても仲がよろしいんですね。

 

 

「まぁね! ……私たちってさ、言ってみればティムサちゃんのおかげでトレーナーさんに拾ってもらった様なものだし。もしティムサちゃんと付き合いがなかったら『重賞制覇してGⅠにいくぞー!』なんて絶対言えなかったと思う。だから感謝してるし、恋路も応援したいんだけどね~。」

 

 

……なるほど。

 

 

「片方はクソボケだし、もう片方もクソボケ。もう押し倒せ! クソボケ同士早くくっつけ! って思っちゃう。」

 

 

あ~、はい。とりあえずここ数分の記憶は削除しておきますね。では気を取り直しまして、今後の目標などをお聞かせください。

 

 

「はーい! まず直近の目標は"阪神JF"! あとできたら"私たちでジュニア級GⅠの独占"!!! その後はマイルクイーンのためにNHKマイルとかマイルCSとか! 狙っちゃうもんねー!」

 

 

はい、ありがとうございました。今後のご活躍を応援させて頂きますね。

 

 

 

 








〇タヴァティムサのひみつ・5

実はトレーナーのうまぴょいを録音録画して延々とループしてる。本当にずっと見ているので、流石にメロンちゃんたちに引かれて、控えるようになった。





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また誤字報告大変ありがとうございます。


次回、ホープフルS。彼女たちがネームドに捕捉され始めます。ほわぁ?

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