3年最初のバッターはっと。
「掘田先輩、よろしくお願いします」
「お前は……ウチのクラスの奴が迷惑かけるな。
清涼祭の妨害といいすまない」
「お気になさらず。さあはじめましょう」
「いくぞ!」
化学
3-A 堀田雅俊 217点
vs
2-F 坂本雄二 109点
雄二にサインを送る(始める前に決めていた)
まずは外角低めの直球で様子見だね。
『ットライッ!』
先輩もまずは一球目はじっくり見てきた。
こっちの球威と速度確認したのだろう。
点数も表示されているわけで、向こうがこちらを脅威と思うべき要素はないと思っているだろう。
僕は雄二に返球し二球目の指示を出す。
そして第二球目を振りかぶり投げる。
二球目は外角高めにボールが向かってくる。
相手も今度もバットを振ってくるが、ボールがバットに当たる直前にククッとボールが曲がる。いわゆる変化球だ。
カキン、と小気味良い音をたてて宙へ上がるボール。
相手もまさか変化球がくるとは思ってもいなかった様子。
高く上がったボールは特にそのまま伸びる事もなく、妹紅がキャッチする。
「く……っ!」
悔しげに先輩がベンチに戻っていく。
「よし。俺の出番だな。
化学
3-A 常村勇作 223点
vs
2-F 坂本雄二 109点
常夏コンビの1人で、先ほどキャッチャーをしていたソフトモヒカン頭の先輩だ。
こっちも一応、Aクラスだけあって点数も高い。
「さてと。吉井に坂本に……!溜まりに溜まった今までの屈辱、きっちり利子つけて返してもらうぜ……っ!」
正直、自業自得だと思うのだが……まあ、この
≪一球目は外すよ≫
僕はミットを構える。その場所は、バットの届かないくらいの外角だ。
さすがに点数が高いのも確かだしね。
雄二がボールを投げると変態はわざとらしいほど大きくバットを空振った。
「っと、手が滑った!」
空振ったと思われたバットが止まらずに回転して僕の召喚獣に放り投げてきた。
化学
3-A 常村勇作 223点
vs
2-F 吉井明久 2320点
「はっ!?」
「危ないですね先輩」
僕は放り投げられたバットを左腕で止め、ボールは右手でキャッチした。
やはりか。
「な!?なんだその点数!!??てめぇ、不正しやがったな!!!」
「口に気をつけてください、先輩。それとこの点数は不正じゃないですよ」
「ふざけんな!!観察処分者ごときが……」
『言葉に注意してください、常村君』
「っち!!」
しぶしぶと納得してない表情で戻る変態。
これは絶対また何かするな。
雄二に確認する。
≪危険かもよ?≫
≪そろそろ仕掛ける≫
何をする気だろう?
「来い、坂本!!」
変態が身体をマウンドに向けて開いた状態で構えている。
あの構えはピッチャーに向かってでも、キャッチャーに向かってでも、
バットを投げやすい姿勢だが多分、雄二狙いかな?
点数で狙いを変えたってところだろう。
先生は呆れながら続行した。
バッターとピッチャーとの間に緊迫した空気が流れる中、雄二が投球を行った。
バッターの脳天目指して飛んでいくボールと、キャッチャー目がけて振り切られるバット。
互いの渾身の一撃は、それぞれの目標に対して吸い込まれるように……
『───デットボール』
てん、てん、とボールが地面に転がる。
そして、結果が表示される。
化学
3-A 常村勇作 103点
vs
2-F 坂本雄二 98点
速さ的にボールのほうが早く変態に直撃し、
そのボールをキャッチすると僕は直ぐさま投げ、バットを弾いた。
しかし少し遅かったのか、掠っていた様だ。
「テメェ、今のわざとだろ!先輩に向かって良い度胸じゃねぇか!」
「何言ってやがる!そっちが先に仕掛けてきたんだろうが!肝試しに負けたのを根に持ちやがって!器が小せぇぞ先輩!」
「んだと!?上等だ!こうなりゃ野球なんて面倒な事やってねぇで、直接───」
「望むところだ!!元々お前ら2人は気にくわなかったんだ。ここらで一発───」
常夏コンビと僕達Fクラス男子との間で声が上がる。
元々お互い良い感情を抱いていない相手だ。
こうした事で敵意が強まるのは仕方がないな。
これも雄二の目論見通りだろう……
しかしだ、
「おやめバカどもっ!」
そこで、しわがれた声が割って入ってきた。
「やれやれ、つくづく救えないガキどもさね……
どうして召喚獣勝負にまでしてやったのに、おとなしくできないんだい」
そう言って額を押さえているのは、毎度お馴染みの学園長だった。
「なんだババァ。何をしに来たんだ?」
「学園長と呼びなクソガキ。
まったく……組み合わせを聞いて人がちょい様子を見に来たらこのざまかい。
折角、来賓だって召喚野球に満足してくれたんだ。
この後におよんでアンタらがバカやって評判を落とすんじゃないよ」
「止めないで下さい学園長!2-Fのクズどもに礼儀と常識ってヤツを叩き込む必要があるんです!」
「そうだ!2-Fのクズどもなんて社会のゴミなんですよ!
だから、俺達が教育してやる必要があるんです!」
「こっちこそもう我慢ならねぇ!人のことを散々バカにしやがって!
ババァ!この先輩面したカスどもを殺らせて下さい!」
「だから……」
「やめなさい、って言ってるのが聞こえなかったかしら?」
「「「「!!!!????」」」」
いきなり割り込んできた声に変態、いや雄二達も動きを止めた。
「あんたも来たのかい、八雲紫」
紫は白衣を着、こちらに向かって歩いてきた。
「あとそこの貴方達、口を慎みなさい」
紫は変態達を見てそう言うと、
「「けどじじt」」
「口を慎みなさいって言ったのが聞こえなかったかしら?」(ギロッ
「「……!?は、はい」」
「召喚獣の痛みが返って来ないから……痛みが分からないから平然とこんなことをするんでしょうね」
紫はため息をつき、
「学園長、この試合だけ、召喚獣の設定を変えるけど良いかしら?」
「「「え?」」」
「どんな風にだい?」
「今回だけ、全員に痛みがフィードバックするようにするんです」
「なるほどね、いいよ。やっときな」
「物理干渉だけははずしてくわね」
要するに、僕みたいに痛みを感じるってこと?
「じゃあ、そういうことだよ。全員真面目にしっかり野球をやりな」
そう言って手を振ると、学園長は校舎に向かって歩き去っていった。