次の回、と回は進んでいく。
僕達は教師陣をなんとか塁に出すも無失点で抑えていた。
しかし、
『バッターアウト!!』
僕達もまた、永琳により誰も塁に出れずにいた。
5000点という規格外の点数。しかし、それはあまり問題ではなかったりする。
もし点数が問題なら先ほどの高橋先生の時点で詰んでいる。
問題は永琳の操作能力だ。
僕が投げられたボール、別名カット・ファストボール。
それ以外にも多種多様なボールを投げている。
そして彼女はそれを打てるか打てないかの力で投げているのだ。
これは交流会であり、蹂躙会ではない。
ある種の教師と生徒の親睦会であり、一方的な試合にならない様にしてくれているとも言える。もしそうでなければ点にものを言わせる投げ方すればいいしね。
しかし、ある意味すごいのは鉄人かもしれない。
確かに永琳は手加減をしているだろう。しかしそれでも威力はそれなりに出てしまうのは確かだ。
それを受け止める時の反動、勢いの殺し方……
操作技術の高さが覗える。
「……」
いつの間にか2アウトになっており、雄二がバッターボックスに立っていた。
しかし雄二の表情は曇っており、どうも試合に集中し切れていないようだ。
第一球、永琳の召喚獣の投げた球はアウトコースだったが、
『……っ!!』
それは弧を描くようにインコースへと入って行く。
確かに変化球ではあるがそれはスローボールであり、比較的に打ちやすい球。
なかなかそういう球が少ないだけに打っておきたいのだが……
雄二は反応するもなぜかバットを振らないでいた。
『ストライーク!!』
『っち!!』
表情は苛立ち、困惑。だめだ。まともに打てる状態じゃない。
第二球。
永琳はインコースからアウトコースに流れる球、釣り球だ。
「この……っ!」
雄二の召喚獣はボールに引っ張られるように体を逸らし、
『カコンッ!!』
あまりにも軽い音と共にボールが打ち上がり、
『アウト』
鉄人によりキャッチされた。
「くそっ!!!」
雄二は小さく吼え、ベンチへと戻ってくる。
「雄二、いつまで引き摺ってるつもり?」
「あぁ?」
「霧島さんだって人間だよ? 機嫌の悪くもなるし、雄二の怒りもわかる。
でも今は試合中だ。個人の……」
「何が機嫌の悪いだ!そんなもんで納得できるか!」
火に油を注いだがごとく、更に怒り出す雄二。
「だいたい、どうして俺が、本人の同意も無いまだない紙切れ1枚没収された程度で、あそこまで怒られなきゃならないんだ!
割り切れだ? 何も苦労も知らねぇ貴様が言うんじゃねぇ!!」
雄二は僕の襟を掴み睨み付けて来る。
「やめなさい!!あと紙切れって何のことよ?」
幽香が間に入って雄二の腕を振り解き、雄二に問いかける。
「すっこんでろ!!それともなんだ?
お前らもアイツの味方か?」
「紙切れって言ってるから聞いてるのよ。
私が聞いたのは
「……え?」
雄二は幽香の言葉に気が抜けたような表情をする。
「あ、私も知っています。坂本君から貰った大事な物だって」
「ウチも聞いたことあるわ。確か坂本が自分の夢を笑わないって言ってくれたって言ってたわね」
「……」
雄二の表情はどんどん青くなって行く。
夢を笑わない……
『バカ言うな。あんなもん、没収されなくても、見つけたら俺が捨ててやる』
なるほどね……
「雄二」
「……なんだよ」
「どうするの?負けてるよ?僕達」
「どうするもこうするも……きっちり守って、点数を取って勝つだけだ」
あっけカランに答えているつもりだろうが表情はきつい。
「はぁ、柄じゃないんだけどな~雄二」
「だからなんだ……」
『バキッ!!』
「ウガッ!?」
「「「はぁ!?」」」
僕は振り向いた雄二に拳を振り抜いた。
雄二の体は面白いようにベンチから吹き飛び、教師陣からも驚愕の声が上がった。
「明久!!何しやがる!!」
「頭はまだ働かない?雄二はわからないの?」
僕は雄二に近づき、
「そんな状態で考えても考えなんて見つからないよ。
雄二、僕たちは何のためにいるんだい?君はなんだい?
一人で解決するような問題じゃないんだよ。一人で突っ走って失敗したばっかなの忘れたの?」
「それは……」
「雄二、君は僕等のクラスの代表だ。いいかい?
雄二君は一人じゃないんだ。今ここには君だけじゃなくクラスのみんなが居るんだ!!
頼れよ、僕達を!!」
「明久……」
「あ~疲れた……
雄二はリーダーで僕達は駒だ。
さぁ雄二どうするの?」
「……」
雄二は息を吐き、顔を上げる。
その目にはもう迷いは映っていなかった。
「すまねぇが俺の我が儘のために力を貸してくれ!!」
言い放った言葉には力が篭っていた。
すると妹紅は溜息をつき、
「今回だけだよ?今回だけその眼に免じてなかったことにするさ」
「藤原……」
「さて、がんばりますかね」
「そうね、馬鹿な代表様の頼みだものね」
「風見……」
「とりあえず、この場をしのぐよ雄二!!」
「おう!!いくぞ、お前等!!」
「「「ったりめぇだ!!!!」」」
僕達は守備位置へと向かった。
___________
『ス、ストライーク!!!』
雄二の変わり様は凄まじいものだった。
先ほどまでの力のないピッチングは嘘の様に、
『オラッ!!!』
「っく!?」
気迫の篭ったボール。
いや、あまりの雄二の変わりように先生達も気圧されている様だ。
『バッターアウト!!チェンジ!!』
先ほどまでの守備が嘘のように雄二は教師を三者凡退していた。
「こっちの攻撃はあと二回だ!!
きっちり点数をもぎ取って、俺らのお宝を取り戻すぞ!!」
「「「おうっ!!」」」
いつもの調子を取り戻したようだ。
やはり雄二はこうでないといけない。
しかしだ。
「向こうにゃ点数では負けてるが運動能力じゃ決して負けてねぇ!
若さってもんを見せてやれ!」
「「「おうっ!!」」」
「これから先、俺はさっきまでのような腑抜けたような行動はしねぇ!
全力を出す!だからもう一度言う・・・・・・お前らも協力してくれ!
没収された大事な物を取り戻すために!合言葉は───」
「「「Get back ERO‐BOOK!!」」」
「反撃行くぞお前ら!」
「「「っしゃぁーーっ!!」」」
理由が最低すぎた。
しかし雄二の眼を見て、それだけが理由じゃないと思えたからいいとしよう。
「で、坂本。策はあるの?」
「当たり前だ」
「どんな策なのかしら?」
「なに、ルールに乗っ取った方法だ」
ルール?あの時決めてた……!!
「あ~なるほどね」
「え~明久わかったの?なんなのさ」
「お前等!!俺達の点数じゃあまともにやっても勝ち目はない。
だからこそ頼む、できるだけ時間を稼いでくれ。
できるだけ長くだ!!」
雄二が皆に作戦を伝える。
「わかった」
「エロほ───参考書のためだ。時間稼ぎくらいいくらでもやってやるさ」
「その代わり、次の回はしくじるなよ」
「当たり前だ。
明久」
「何?」
僕はバットを持ち、振り返る。
「すまないが頼む」
「何言ってるのさ」
僕は苦笑する。
「どっしり構えてなよ」
「おう!!」
僕はバッターボックスに立つと、
「いきなり坂本を殴ってどうしたかと思ったが……
いつものあいつに戻ったようだな」
「えぇ。これから逆転させてもらいますよ」
僕は永琳の方を向き、
「本当、狙ったかのようだね。数学で助かったよ。
これで永琳との点差はほぼない!!」
数学
教師 八意永琳 5000点
vs
2-F 吉井明久 4987点
「「「な!?」」」
「さすがね」
「いや、でも負けてるよ」
数学は得意というのはなんとなく違う。
けど紫や藍。そして自分自身分割思考により早く解け、何より書くのも時間が掛からない。
現代文などのように読み取り、説明をする必要はない。
科学のように文を理解する必要はない。
歴史のように物事を書く必要はない。
ただ数式を書く。変に字を書かず、文の構成もない。
ただ解くのと書くのを同時進行するだけ。
だからこそ一番点が高かったりする。
「悪いけど
永琳は腕を振りかぶり、僕は構える。
その腕より放たれたのは剛球。
「打たせてもらうよ」
そのボールは手前で急激に落ちた。
しかし僕はそれに動きをあわせ、
『カキーンッ!!!』
「「「あっ……」」」
「約束は守ったよ、代表」
『……ほ、ホームラン』
「打たれちゃったわね」(苦笑
僕は逆転の狼煙となる一打を打ち出した。
ってことで雄二には空を飛んでいただきました。
今回は少し長めだったかもしれませんね。
明久からすればそれこそ5千点を超える点数を取るのはそこまで難しくないことです。
しかしテストには時間と言うものがあり、時間内に書かなければ点にはなりません。
よって書く過程が少ない数学が一番の最高点数になっております。