僕はベンチに戻ると、
「おつかれだ」
「約束は果たしたよ、雄二」
「おう」
僕は雄二とハイタッチし、
「さて、後は時間稼ぎだが……姫路、島田」
「なに?」
「何ですか?」
「姫路は秀吉と、島田は……藤原でいいな。
二人はバッターを交代してくれ」
「そうですね。私だと時間稼ぎは難しいですし」
「頼んだわよ」
「了解したのじゃ。では行って来る」
秀吉はバッターボックスへと向かう。
「いいか、さっきも言ったが打つことは重要じゃない。
どれだけ時間を稼ぐかが重要だ。
頼んだぞ」
この回、これにすべてが掛かっている。
__________
その後、秀吉と近藤君は何とか粘るもアウトとなり、
「さて、私の番だね」
妹紅がバッターボックスへと立った。
すると永琳と妹紅の間で一瞬火花が散ったような感じがした。
ちなみにこの時2人の(視線での)会話は、
「永琳とこうやってヤリ合うのは久しぶりね」
「そうね、遊びとは言え久しぶりなのは確かね」
「明久と会って殆どしなくなって、あの異変以降は弾幕ごっこを輝夜とやるくらいだし」
「その前はほぼ日常的に殺しあってたのにね?
思うと本当に私達も変わったわ」
「同意。ってことで賭けしない?」
「賭け?」
「明久との一日……」
「いいわ、その勝負乗ってあげる」
「アハハハハ……」
「フフフフフ……」
「「負けない」」
『バチバチッ』
「何だろう?あの二人だけ別の試合をしてる気がするんだけど……」(賭けの対象にされているとは知らない
「多分妹紅が挑発したのよ」(何となく状況を理解した
「幽香は理解できたの?」
「何となくよ。でも二人だけで決めるなんて……私を参加させなかったこと後悔させるわ(ボソッ」
なんだか隣で幽香が黒い笑みを浮かべています。誰か助けて。
いや、みんな距離取らないでよ。そこまで首振って拒否しなくていいじゃん。
『ファール!!』
いけない。試合見てなかった。
「2ストライクでさっきからファールを打ってるわね」
永琳は釣り球などはせずすべてストライクゾーンに投げ、妹紅はそれをすべて弾いていた。
一体あの二人は何をあそこまで必死に戦っているのだ?
__________
『ファール』
永琳が投げれば妹紅が弾き、それはとうとう20を超えようとしていた。
「永琳」
「なにかしら?」
私の召喚獣はバットを握る。しかしさすがに疲れが溜まってるのも確かだ。
「ハッキリ言ってもう力残ってないんだよね」
「あら?それじゃあ私の勝ちでいいかしら」
あぁ確かにそうだ。しかし私には役目があった。
「あぁ、
出来るなら賭けにも勝ちたかったけどね。
『───ジジ・・・・・・ジ・・・・・・』
スピーカーからノイズ混じりの音が聞こえた。
『来たかっ!!』
雄二が嬉しそうに声をあげる。
そして一瞬送れて、アナウンスが響き渡った。
『これより、中央グラウンドにて、借り物競争が始まります。
出場選手の皆さんは、所定の場所に───』
『『『来たぁっ!!』』』
クラス馬鹿達の声が重なる。
私の召喚獣はバットを振り切るもボールには触れられなかった。
しかし目的は果たした。
「……やられたわね」
「アンタでも欲望には勝てないってことさ」
「勝ったのに負けた気分よ」
「私は始めて永琳に頭脳戦で勝ってとてもうれしいよ」
私は明久の待つベンチへと戻ることにした。
__________
「疲れた~」
「ああ、よくやってくれた」
「明久~」
妹紅は手を上げる。
「うん、お疲れ様」
『パンッ!!』
僕達はハイタッチをする。
『?彼らはどうしたんでしょうか?
アウトになったのに、何か良い事でもあったのでしょうか?』
『もしかして何か策でもあったのでしょうか』
『あいつらのことだ。また何か企んでいるのでしょう』
『えぇ、見事に嵌められたわ』
『え?八意先生、それはどういう意味で……』
永琳の言葉に周りが確認を取ろうとした瞬間だった。
『遠藤先生!借り物競争です!すいませんが一緒に来てくださいっ!』
『えっ?でも私ここでこれからリーディングの立ち会いを』
『なんと言おうとダメですよ!今日は野球より体育祭が優先されるんですからっ!』
『『『───っ!?』』』
先生達が目を見張ったのがわかる。
そう。ルールで事前に決まっている。
野球はあくまで交流が目的。優先されるべきは体育祭の本種目、と。
『あ、えっと・・・すいませんっ。そういうわけで、ちょっと行ってきますっ!』
『急いで!』
立ち合いの遠藤先生とが手を引かれグラウンドから去っていく。
『それなら仕方が無い。ベンチで待機している先生の科目で代わりを──』
『上白沢先生!来て下さい!』
『竹中先生、お願いします!』
アリスも先ほど席を外している為ここには居ない。
まぁ、僕が咲夜に頼んだんだけどね(笑い
「坂本。これは貴様の作戦か」
「さぁ、どうでしょうね?」
「とぼけるな。先ほどからここに来ている生徒は全員Fクラスの人間だろうが」
「はは。偶然じゃないですか?」
雄二、悪者顔になってるよ。
もちろん偶然なわけがない。
さっき雄二が策を思いついた時クラスの仲間に伝えておいたのだ。
おそらく借りてくる紙の中にはまったく別のことが書かれているだろう。
「これで立ち合いの先生はいなくなったな、鉄人」
「ならば仕方が無い。さっきの回の立ち合いをした先生にまた頼んで」
「おっと、それはルール違反だ。事前に決めただろう?“同じ科目は二度使わない”と」
「ならばどうしろと言うんだ。立ち合いの教師は他にいない。
試合に参加している教師は立ち合いができない。どうするつもりだ?」
「鉄人。まだ他にも勝負できる科目があるじゃないか」
「何を言っている?立ち会いの先生は居ないと――」
「西村先生違いますよ。立ち合いの教師がいなくても勝負が可能な科目が
残っていると言てるんですよ」
「なに?」
「さぁ、はじめましょうか?先生方。
5回の勝負は保健体育の───『実技』で勝負です」
テストの点数勝負じゃない。
実際の身体を使う体育。これだって立派な授業科目の1つだ。
「さぁ全員、グローブをつけろ!5回の勝負はハードだぞ」
「あっ、待ってください。私、土屋君と交代しますね」
「ウチも横溝と交代するわ。私でもさすがにね」
美波は運動神経はいいだろうけど男子相手だと差があるし、姫路さんの体には実技はきついだろう。
「……わかった」
「ああ、行ってくるぜ」
「あとは私達に任せろ」
そして全員が野球部の部室から拝借してきたグローブを装着する。
こうして、最終回。たった一回だけの、教師と生徒の本当の野球大会が幕を開けた。