「よし、閉まっていくぞ!!!」
「「「うおぉおーっ!!!」」」
円陣を組み、僕達は持ち場へと向かった。
僕はピッチャー。
そして――――
「行くよ、妹紅」
「おっしゃっ、ばっち来いだ」
妹紅がキャッチャーの位置に立つ。
「先生」
「何でしょうか?」
「この回、誰も塁に出さない積もりなんで」
僕は自身の言葉に笑い、構えた。
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その様子は異様だった。
「なんだ?あれは」
『ストライーク!!』
明久君の投げたボールはカーブを描き、バッターボックスに立った先生はバットを振り切っていた。
別段彼のボールは剛速球だとかそう言う訳ではない。
それこそやろうと思えば私もだが目にもとまらぬ球を投げれるだろう。
しかしそれを明久君はしない。
だが……
「なぜあいつ等はサインを出さないんだ?」
そう、明久君はサインをまったく出さず投球、妹紅はそれを正確に捕球しているのだ。
「それはあの二人だからでしょうね」
「どう言う事ですか?八意先生」
「NOサイン投法、と言えばいいのかしら?
あの二人にとってサインなんて不要なんですよ」
長い年月の付き合い。
それは言葉を交わさずとも、目線で語らずとも互いに無意識に理解できるほどまでの繋がりを作った。
これは私でも出来ないこと。
あの二人は無意識に互いを認識し、理解する。
だからこそ近くに居なくても互いに見つけ、考えていることがわかる。
昔の異変でも、明久君はこれで妹紅を見つけたのだから。
「なんだか悔しいわね」
実際、これを出来る者は数人知っている。
1人は今ここに見える藤原妹紅。
そして八雲紫。風見幽香。上白沢慧音。
この頃は咲夜も出来る様になって来たらしい。
そして最後に博麗霊夢。
『バッターアウト!!』
思い深けてる間に2アウトね。
「私が行きますね」
「大丈夫ですか?」
「えぇ、運動は得意ですから」
それに……
「あれだけ見せ付けられると悔しいですからね」
バットを持ち、二人の所へと足を進めた。
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「来たね」
バッターボックスに立つは永琳。
「えぇ、見ていて悔しかったもの」
「悔しい?」
「へへ~ん、良いだろう」
僕は意味が解らなかったが、妹紅は解ったのか胸をはる。
「妹紅後で覚えておきなさい」
「おう、相手になるよ?」
またなんか二人の間で火花が散ってるよ。
「と、とりあえずはじめようか」
僕が構えると永琳は笑顔を消し、真剣な表情になる。
第一球。
僕の投げた球はスライダー。
『ボール』
さすがにばれてるか。
妹紅はキャッチし投げ返してくる。
生半可な球は簡単に打たれるだろうし。
2球。
僕の球は速球。
永琳は合わせる様にバットを振り、
『カクンッ』
「っ!!」
当たる直前に球は下に落ちた。
しかし永琳はそれに合わせ、
『カキーンッ』
『ファール』
危ない。もう少しでホームランの軌道だった。
無理に3振は取れないな。
……投げてみるか、あの球。
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何とか反応は出来たけど球威が強いわね。
明久君の本当に怖いところはモーションが解らないことね。
普通速球と遅球では少しだがモーションが変わる。
しかし彼はまったくと言って良いほどモーションが変わらないのだ。
でも、次は打つ。
「……永琳」
基本学校では名前をあまり呼ばないのにどうかしたのかしら?
「なにかしら?」
「いや、行くよ」
彼は構える。
そして投げられた球は今までで一番の速度を出していた。
でも、
「捕らえた!!」
日常的に弾幕勝負をする私達にはそこまでの問題じゃない。
制限をかけているとは言え、これくらいなら……
「……え?」
しかしバットを振ろうとした時気が付いた。
そのボールは複数にぶれながら飛んでいることに。
「っく!!??」
『ガキッン!!』
何とか当てるも手元近くであり、球は空高く打ちあがり
『パシッ』
明久君のミットへと納まった。
あのボールは……
「ふふふ、今回は完璧に負けたわね」
悔しい。しかし私は自然と笑っていた。
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ナックルボール、今僕の投げた球はそう呼ばれる。
本来は110km/hくらいのボールで、その不規則な動きから『魔球』と呼ばれるものだ。
「危なかった」
「ちょっとあの球は取れる自信ないんだよね~
特に明久の速いし。取れて2,3球に1回だもん」
ただしあまりにも不規則なため取ることも難しく、あえて反応の良い永琳だからこそこの球を投げた。
「今回は大丈夫だったけど次回があったら打たれそうだね」
「じゃあそうならない様この回で勝たないとね」
ラストチャンス、この攻撃が僕達の最後の攻撃となるだろう。
気を引き締めないと。