さて困ったものだ。
あの異形を倒した後……
「「「……」」」
僕は黒光りする大きな車に乗っていた。
確かこれってベンツだよね?
窓の外は見えず、どこを走ってるのかもわからない。
すると車は停止し、
「……着きました」
そう言ってスーツを着た人がドアを開けると其処には豪邸があった。
なんともまぁ、立派と言うか……うん、お金の無駄?
「こちらへ」
僕は先ほどの男性に着いて行ってると、
「……なぜ……が……」
「ここに出来損ないが……」
「一族の恥……」
周りの人達は僕達を、いや正人を見てひそひそと話し始める。
あまりとやかく言う気はないが、なんとも不愉快だ。
「こちらです」
其処には広く開いた場所があり、布の向こうに……7人か。
人影が見えるのは5人。2人は護衛かな?
「どうもはじめまして、私達はここを管轄する夜宴の代表です」
「どうも。で、何で僕は呼ばれたんですか?」
「なに、君が力を持つものだからだよ。
その力を私達に……」
「お断りさせていただきます」
「貸して……何?」
「だからお断りさせていただきます。
私利私欲しか見えない頼みなんて聞く気ないですよ」
「……」
あまりの即答にその場は静まり返った。
でもはっきり言って丸出しの欲望。
何よりも気になる正人に対する軽蔑の視線。
胸糞悪くなる。
「そうか……わかった。
して小僧」
「なにさ」
「明日、お前の妹の儀式が決定した」
「なっ!?追い待て!!まだあいつは……」
「決定事項だ。それに貴様に反対発言の権利はない。いいな」
「っ……」
さすがにそれは……
僕が意見しようとすると正人はそれを制した。
「いいんだ……」
「……わかった、これで失礼します」
「送りを……」
「いえ、要りません」
僕は正人の肩に触れると景色が学校の屋上へと変わった。
「え?ちょ、何だこれ!?」
「うん?移動しただけだよ」
別世界の僕がやっていた方法を見て思いついた。
まあ彼は事象を繋げて、僕は空間と空間を繋げただけだ。
「にしても、何で止めたのさ、正人」
「悪い。でも家の問題だし……お前に迷惑は……」
「……正人が僕に迷惑を掛けなかった事あったの?」
主に宿題とか。
「そ、それは否定できないが今は関係ないだろ?」
「あるよ。悪いけど友人が困ってるのに助けれないのは、僕にとって酷だ」
「「……」」
僕達は無言で睨み合う。
中学時代もよくこうやって睨み合うことは多々あったが、
「……わかったよ。こういう時のお前は何言っても無駄だもんな」
正人は溜息を付き、降参のような両手を挙げるポーズをとる。
そして入り口の壁に背を預け座ると、
「俺の一族は知ってるだろうが対魔一族だ。
だがちょっとおかしな所もあってな」
「おかしなこと?」
「……祟られてる……と言うか、大体10年に一回かな。
あの大屋敷には悪霊が現れる。そしたらそれを封印するために特別な力を継承するらしい。
だからこそ夜宴は力こそ絶対なんだ」
力……多分霊力のことだろう。あの時あの場に居た人達、皆から感じたから。
「それで、聞いただろ?出来損ないって。
俺は小さい頃から修行してたんだけどな……未だ力に目覚めてないんだ。
呆れるよな。お袋も名の知れた術師で、親父は……継承をして10年前の封印を成功させた英雄」
「……それで……さっき妹さんが継承するって言った時、どうして焦っていたの?」
「……継承を受けて封印を行った者は、死ぬんだよ」
「え?」
「話によると魂をその悪霊を縛る鎖の変えるらしんだけどな。妹は力も同世代ではトップ。
だけど10年前、その悪霊から呪いを受けてて体が弱いんだ」
「要するに……後がないから……封印に使おう……と」
「多分お袋が居たらそんなことはしなかっただろうけど、今お袋は不在……
だから強行手段で居ない間に……って考えたんだろうな」
もう空は暗くなり、夜も深けて来ていた。
「そんな状態でも俺は何も出来ない。力がないこの体が恨めしいよ」
「結局どんなに頑張っても……
俺は……何も守れない……家も、妹さえ守れなかったんだから」
正人は空を見てポツリと呟いた。
「……明日は休みか」
「ん?そうだな」
「よし、もう一回お邪魔するか」
「は!?何言ってんだ、お前!!話し聞いてなかったのか!?
多分あの急ぎようから封印が解けるのは明日。そんな中……」
「そこら辺はどうでもいいかな」
「どうでもいいって……」
「正人の妹さんの命がかかってるんでしょ?
なら動くには十分な理由だ」
「あ、明久……」
「それと……守れなかったは終わった後に言う言葉だ。
何もしないで言うことじゃない。そんな事言ってるよりもやれることをすべてやろう?
何もしないで後悔するより、やるだけやって成功させるほうがいいさ」
「……まるで確実に成功するって言ってるようなもんじゃねぇか」
正人は笑い、そして立ち上がると手を差し出してきた。
「明日は……頼むぜ、明久」
「期待にそえるかは別として、やれることはしてやるさ」
僕があの場で感じた恨み、妬み……怒り、そして悲しみ。
僕は正人の手を取り、それらを絶対解決すると誓った。