次の日、僕は着替え、正人に渡した札を目印に飛ぶ。
実際目印なくてもいけるが、昔みたいに別の所に飛びたくないので安全策だ。(寝室とかほかの部屋とか。
「マジでお前って人間なのか?」
「あって一言目がそれ?」
到着すると一言目がそんな酷い一言だとは……
あっちの彼らくらいだ。
「あの……兄様、この人は?」
「あぁ、俺の昔の学友だ。明久、こいつが妹の
其処に居たのは大体中学生くらいの茶色い髪の少女。
「えっと、野園瑚九里です。一応これでも高1ですので……」
「どうも、正人の友人の吉井明久です。よろしく」
「あ、はい」
僕が手を差し出すと瑚九里は少し悩み始めた。
「あ、あの……聞いていると思いますが私呪われてて……」
彼女の隣にはドレスグローブのロングのタイプがあり、丁度飲食のためにはずしていたようだ。
呪い……それ故にできるだけ接触、特に肌が触れないようにしていたのかもしれない。
「はいはい、気にしない」(手を取る
「え……」
「よろしくね」
「あ、はい……」
うん?なんで赤くなるんだ?
「明久……」
「何さ、正人」
「妹に手を出してみろ……その時は……」
正人はシスコンだった様だ……
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「で?えっと、悪霊の封印?は何時解けるって?」
「今日昼」
「は?」
ちょっと待て、今昼だぞ?
「不定期だし、継承は悪霊が出たときしかできないらしい」
「……」
やっぱりおかしい。まぁ、継承は同時に封印発動であるなら理解できる。
しかし、恨みだけならまだしも悲しみ……そう、このまるで会えない事への、引き裂かれた事への悲しみはなんだろうか?
すると外でなにやら騒ぎが起こり始めた。
「出たぞ!!」
「戦えるものは中庭へ!!子供達は奥へ連れて行くんだ!!」
「ちっ、狙ったようにきやがったな」
「ここに居ましたか!!継承の準備を!!」
「……はい」
騒ぎと同時に男の人が入ってきて瑚九里を連れていった。
「……」
「正人はどうする?」
「行く。けど、何もできないから戦えない奴等の逃げるまでの護衛かな」
正人は壁に立てていた昆を取る。
「体術だけはまぁ、それなりだからな」
「正人、一言っておくよ」
「なんだ?」
「重要なのは力なんかじゃない。君がどうしたくて、何をしたいか。
それだけだよ」
「……分かった」
僕はそれだけを言うと憎しみの感情が強い方へと走り出した。
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「くそ!!なんで効かないんだ!!」
「あきらめるな!!継承が終わるまで耐えるんだ!!」
僕は其処にたどり着くと何人もの大人達が倒れ、その中心に霊力の玉を受けながらもたち続ける影があった。
その姿はまるで般若のようであり、額から角が生え、髪は白く染め上がり、形相も怒りと憎しみで染め上げられ、その目は硬く閉ざされていた。
何とかその黒い着物と体系から、もとは女性の様だと判断はできる。
「退いてください!!」
「あ、危ないぞ!!君!!」
僕は飛び出し、斬りかかられそうになった男性の盾になる様に、七ッ夜でその手に持った刀を受け止めた。
「早く逃げて!!」
「あ、あぁ……!!」
その霊は何かを叫んでいるがよく聞こえない。
しかし悲しみの感情が見えてしまい、どうしても恨みだけでこうなったとは思えない。
何か理由があるはず、それを解決すれば……
僕は振り回される刀を回避しながら考える。
だめだ、具体的原因が分からない!!
「瑚九里様!!」
「瑚九里!!」
すると奥から瑚九里とそれを追って数人の人、そして正人が現れた。
瑚九里はその腕に大きな箱のようなものを持っており、呪いにより体力がない関係で息が荒れていた。
次の瞬間、まるで霊は何かに引き寄せられるように瑚九里の方へと走り出した。
「なっ!!!」
「瑚九里様を聖具をお守りしろ!!」
周りの人々は霊弾を打ち出すが意味はなく、
「ちっ!!」
瑚九里に近づき、振り下ろされた刀を正人が弾く。
それは何とかそらす事ができるも、昆は砕け、霊も第二撃とまた刀を振り下ろそうとし……
「……家族に、俺の家族に手を出すな!!!!」
正人が叫び、腕を盾にするようにした瞬間、その腕から光が放出され霊が弾き飛ばされた。
「……え……?」
正人が持っていたもの、いや霊を弾き飛ばしたのは刻印の彫られた白銀の昆。
あれは……
《心具……久しぶりに見たわ……あれを発現する人を》
僕はおかしいと思っていた。
正人は力がないと言っていたが、僕は正人から霊力を感じていた。
だが今はっきりと確信した。
相性が悪かったんだ。
「え、え?」
正人を包む銀色の光。
見た感じ野園は放出系、霊弾などを使って戦うみたいだが、
正人は肉体強化が主で、放出と相性が悪く、力を発揮できなかっただけのようだ。
「……せ……」
「ん……」
声?今霊が喋った?
「か……せ……カエセ……」
「え……」
繰り返すように返せとつぶやく霊。
「兄様……これ……」
「確か……聖具?」
「違います……これを開けて下さい……私では開けれなかったので……」
息絶え絶えに喋る瑚九里に、正人は頷く。
「ま、待て、はやまるな!!」
「少し黙ってて」
「うぼ!?」
声からして昨日の人だろう。僕は正人に近づきとめようとする男に肘を入れて気絶させる。
正人はあけようとするが開かず、仕方ないので昆で壊そうとして触れた瞬間。
『カチッ』
まるで鍵が開くような音がし、正人はそれを開き、
「……!!なんだよ、これ!!!!」
その中に入っていたのは……子供の亡骸。
僕はそれを見た瞬間、
「っ!!!???」
霊と戦う女性。
女性が子供を抱く姿。
子供を連れて行く大人達。
泣き叫びながら子を呼ぶ女性。
親を呼ぶ子供の声。
「くっ……!!」
「明久!!大丈夫か!?眼から……」
何かが伝うのを感じ、頬に触れると赤い雫がたれていた。
何より浄眼が発動しており、多分先ほどの映像はこの親子のものだろう。
「聞いてしまったんです……それは封印なんかじゃ……なかったんです。継承を行った者の魂を道に……」
「この親子を……静める為のものだったんだね……」
「あ、明久さん?なんでそれを……」
「じゃあ、こいつを渡せばいいんだな?」
正人は亡骸を抱え、呆然と立ち続ける霊、母親に抱かせる。
「……」
母親はその亡骸に触れ、眼から赤い涙を流し始めた。
「あ……畜生!!きっと眼が見えないんだ!!」
「そんな……やっと合わせれたのに……」
「これじゃあ意味がないじゃないか!!」
「いや、ありがとう二人とも」
明久は立ち上がり、腕を上げるとその平より金色の光が漏れ、その親子に降り注ぐ。
《!!??明久!!》
刹那は焦った様に叫び、
「な、なんだ……あれは……」
その光景を唯呆然と回りは見、そしてポツリとそう誰かがつぶやいた。
光を浴びた子の亡骸は色を持ち始め……光が包み込み、映像で見た男の子の姿に……
霊の母親は、黒い着物から鮮やかな着物に変わり、その形相、角も消え、元の姿へと変わっていく。
「ぐっ!!??ゴフッ!!」
「明久!!」
明久は突如口から血を吐き、正人が近寄ろうとするがそれを制止した。
《明久!!人の状態でそれをしたら……》
「良いんだ!!僕は……あのまま悲しいく縛られる、叫び続けるのは見てられない!!」
子は、いや、母親も眼から涙を流し抱き合っていた。
その涙は悲しみではなく歓喜、再開での喜びであった。
「はぁ……っ!!」
明久は両腕を上げる。
次の瞬間、周りの木々、花々から光か漏れ、それらは明久の手のひらに集まり、明久はそれを二人を包むように降り注がせた。
光はまるで抱き合う親子を包むように、花の花弁の如く何重にも、何重にも包み込み、
「……あそこ……だな……」
明久がある一点を指すとその位置へと光の球体は飛び、降り立った。そして散っていくように空を舞って行った……
其処には石のようなものがあり、それはまるで抱き合う親子のようにも見えた……
「これで……良いん……だ……」
《明久!!!!》
僕は力が抜けるのを感じ、倒れながら意識を失った。