待ってないですか・・・・・・はい
「……」
いきなりの発言に僕は口を閉ざすことしかできなかった。
結婚……
「前々から出てた話なんだけどね。
昨日正式に決定したわ」
「柚月はそれを受け入れたの?」
「えぇ、これでも九雀の娘だもん、受け入れるしかないわ」
「違う、僕が聞いてるのはそんな家のことなんかじゃない。柚月のことだよ」
「……私には拒否権はないわ。散々我儘を押し通したんだもん」
柚月はそう言うと立ち上がった。
「それで今日は最後の我儘。結婚したらほかの男の人と出かけれないからね。
たのしかったわ明久」
「……これ」
「え?」
僕は袋を柚月に渡す。
それはあの時見つけたアクセサリー店で買ったものだ。
「まぁ、形は変わったけどプレゼント」
「……本当、明久は意地悪だよね」
「そうかな?」
「うん、意地悪だよ……さぁ、迎えが来たようね」
車が来たのを確認し、柚月は其方へと向かう。
「柚月」
「なに?」
「忘れないで、僕は……どんなことがあっても君の味方だよ」
「!!……ありがとう……」
僕は車を見送り、
「藍、どう思う?」
「答えはもう決まってるのでは?」
明久の声に応えるように、突如として隣に藍が現れる。
妖術を使い姿を消していたのだろう。
「昨日今日で結婚なんておかしいからね」
「……場所は調べておく」
「ありがとう」
隙間を開き消えていく藍を見送ったあと、僕は空を見上げ、
「本当、昔と変わらないよ」
ため息をつき、家に帰ることにした。
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次の日。
「……と言う事で、場所は3県ほど離れた教会です」
「遠いね。う~ん」
藍の報告を聞き、僕は頭をひねる。
「走って行けないこともないけど、体力は温存しときたいし。
能力を使うのもな……」
仕方ない、あれ使うか。
僕は引き出しを開け、そこには特別自動二輪車運転許可証と書いたカード。
「父さんから取っとけって言われてとってたけど……
できるならちゃんとした免許証で乗りたかったよ」
車の分とかもあったけど、バイクの分しか取らなかった。
そして外に行くと、ガレージを開く。
そこにはシルバーと朱を主とし、黒と蒼のラインの入ったバイク。
「父さんと母さんが改造しすぎて普通の人じゃ乗れなくなったバイク……」
「最高時速1800kmも出されれば誰も乗れません、普通」
「デスヨネ~」
車体の後ろにはブースターが4個付いており、装甲の強化のため特殊合金の表面を緋緋色金とオリハルコンでコーティング(提供紫)。
ある意味人類と妖怪の共同開発で出来たバイクだ。
僕は香霖より買った黒のコートを着、ヘルメットをかぶる。
「ふう」
エンジンをかけ、ボタンを押すとシルバーとブラックのカラーリングが逆転する。
俗に言う認識阻害だ。
「行ってきます」
「はい、がんばってください」
藍に声をかけ、僕は走り出した。
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明久と出かけて1日が経った。
あの時遊んでいたのが嘘のように、私はドレスを着飾っている。
「はぁ……」
正直、相手の男にはいい噂は聞かない。
しかし、その企業は金属精製なども行っており、現時点最高強度の金属を生成するなど実績を上げている。
だからこそ、優良株は今のうちに取り込もうってところだろう。
父さんはいい人だけど押しが弱く、押し通されたってとこかな。
「そう言えば……」
私は明久よりもらった袋を開く。
そこには柚の花があしらわれたヘアーゴム。
「綺麗……」
大きさもちょうどいいし、
「……着けても、問題ないよね」
まとめた髪につけ、鏡を見る。
「……」
「柚月様、用意ができました」
「分かりました」
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悔しいものだ。
自分が参加できない間に柚月に結婚の準備が進められていたなんて。
「あの子には自由にして欲しかったのに……」
柚月には自由に恋をして、好きな人と結婚して欲しかった。
私がそうできたように。
夫を責めることはできない。婿養子として、周りは下のように扱っている。
その中6年もその話を拒絶してたのだ。今回はまさか分家総出できたのでは仕方ない。
しかし何より相手が気に食わない。
あの男にはあまりいい噂は聞かないし、何より柚月には好きな相手がいる。
本人がそう言ったわけではないけど、雰囲気がそう表していた。
「……どうにかできないものかしら」
母親としてなんとかしたいのに……
私は足をすすめる娘の姿に只々、拳を握り締めるしかなかった。
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目の前にいる男性。
もし女子たちがいれば叫びそうなほど整った顔立ち。
しかし私には何故か惹かれるものを感じなかった。
明久なら……
いけない、何を考えているんだ、私は……
「柚月さん、あなたはこの男性を健康な時も病の時も富める時も貧しい時も良い時も悪い時も愛し合い敬いなぐさめ助けて変わることなく愛することを誓いますか」
考えてるあいだに結構進んでたようだ。
さて、ここではい、といえば全てが終わる。
「h……」
しかしその言葉を紡ぐことができなかった。
口が、喉が、声が、その言葉を言うことを拒絶する。
「……ヤ……ダ……」
「え?」
「はい?」
次々と再生されるように頭に浮かぶ映像。
「嫌だよ……」
こんな、こんな形なんて嫌だ。
「助けてよ……明久」
髪飾りに触れ、ここにはいないと理解しながらも私は彼の名を呼ぶことしかできない。
「何を言ってるんだい?この結婚は二つの家のためなんだよ?」
「……」
『パリーンッ!!!』
その時、突如ステンドガラスが砕け散り、一つの影が私の前に降り立った。
その顔は見慣れた茶色の髪……それはこの場にいるはずのない姿。
「え……明……久……?」
「ほかに誰がいるの」
明久は私に近づくとハンカチで目元をぬぐい、
「いやなら嫌と言ってくれればよかったのに。
言ったじゃない、僕は柚月の味方だって」
「……うん」
明久はそう言って微笑むと私の頭を撫でた。
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それはいきなりの出来事だった。
しかし、私にはこれがデジャブに感じた。
そう昔、私がそうなりそうだった時起こったこと。
「何だお前は!!」
「う~んとですね……」
その少年は柚月をまるで抱きしめるように引き寄せ……
『「とりあえずこの結婚式が気に食わないんでね。お姫様は頂いていくよ」』
一字一句間違えず、先輩が言ったことを宣言した。