「僕はどうしたいのかな……」
セレナという大事な友人の頼み。
しかしそれを受け入れきれないという自分がいた。自分をしたっていた相手を……何も罪もない人達をゲベという男は自分の欲のために生贄にした。
その事実が僕を悩ませていた。僕は……
「なに神妙な顔してるのかな」
「……彩凛……」
ある公園で考えていると帰ってる途中なのか彩凛とあった。
「ふふ、いつもじゃ考えられない顔ね」
「ひどいな、僕だって悩む時は悩むさ」
「ふ~ん。じゃあここは先輩が聞いてあげようかしら」
「君が先輩ヅラしても違和感しかないね」
「うるさいわね、でも事実でしょ」
彩凛は少し頬を膨らませるようにしていう。
「じゃあ相談に乗ってもらおうかな」
「どうぞ」
「……僕はわからないんだ。友人の頼みである人を止めてほしいって言われた」
「……」
「でも僕はそれを無理だと思ってる。いや、僕はその人が許せないんだ……
信じてくれた人を……慕ってくれた人を裏切った……いや、それ以上のことをしたその人を」
公園に静寂が落ちる。しかしそれはすぐに崩された。
「やっぱり、明久ってバカだよね」
「は?」
「それがどういう理由かは知らないよ。明久の考えは見えないからね。
でも今更じゃないの?」
「どういう意味さ」
「……ねぇ、明久覚えてる?ここであったこと……」
「ここは彩凛と初めて会ったとこだね」
そう、この公園は彩凛と昔、初めて出会った場所だ。
「でもそれが……」
「あの時、明久は一人で遊んでた私を誘ったよね。
手を引っ張ってさ……」
彩凛は立ち上がり、
「昔はさ……本当迷惑だった。いきなり私に話しかけて、いきなり私の中に土足で入ってきた人間は思考も視線も見えない。はっきり言って恐怖だった」
「……」
「でもね……あの時それは変わった。それも確かここだったね」
「……うん」
「あの時私は自分のこと言ったんだよね。この能力のことも。
でも明久は拒絶しなかった……そして約束してくれた……その時初めて明久の考えが見えた」
「ははは、たまたまだろうけどね」
「うん、でもそのたまたまのおかげで見れた。
『僕は君と友達になりたい。もし誰かがそれで君を傷つけるなら僕は守るよ』
……ただそれだけの言葉……そして守ってくれるって言った言葉」
「そういやそんなこと約束したね」
「……明久は基本勝手だよ」
「ひどいな」
彩凛は振り返り笑う。
「そう、勝手に人を引っ張り出したりさ。でも私はそれに救われた。
明久は勝手。だからこそ今まで通り、勝手にすればいいんだよ」
「え?」
「勝手に突っ走って自分のやりたいことをする。
許せないならその人を思いっきりぶん殴ればいい。許すかどうかはその後でもいいでしょ?」
「……ふっそうだね、悩む必要もないか」
「そうそう、ていうか明久って嘘つきだと思うのよ、やっぱり」
「えぇ!?いきなりなんで!!」
「だってさ、この頃全然かまってくれないっていうか、中学くらいから距離とってるでしょ?」
「それは……」
明久はごもり……
「それは?」
「……」
「やっぱ明久ってシスコン?」
「いや、なんでそうなるの」
「だって幽香も慧音って人も明久にとって姉のような人じゃない?」
「いや、それでその答えがなぜ出るんだ……」
「あら?一応これでも年上として……女としても磨いたつもりなのにね」
「……そこは否定しないよだから困ってる」
「……」
「なにさ、その驚いた表情は」
「いや、明久にそういう感情あったのね」
「ひど!!??僕をなんだと思ってるのさ!!」
「朴念仁……いえ、朴念神ね」
彩凛の言葉に明久は頭をかき立ち上がる。
明久は深い溜息をつくも先ほどの暗さはもうなかった。
「……ありがとう、彩凛」
「先輩として……幼馴染として当然よ」
彩凛は笑い、明久も笑う……
「……見つけた」
しかしそれを遮るように声がかけられた。
明久はそちらを見るとローブにフードを深くかぶった人間がいた。
明久はすぐさま彩凛を後ろにやり様子を見る。
感じたことのある気配……そのローブの人物はフードを外すとそこには……ゲベがいた。
「お前は……」
「……貴様……なるほどこれは好都合かもな。
まぁ今回は貴様に用はない予定だったが……」
「なに?」
「私が用があるのは……そこの奴だ」
ゲベがさした先、それは明久の後ろに立つ彩凛だった。
「なっそんなこと」
「ヤレ」
ゲベの言葉と共に明久の腹部に突き刺すような激痛が走った。
明久はそこを見ると横腹を貫く手……そしてその腕は
「え……なんで?」
彩凛はわけがわからないように目を見開いた。
なぜなら彼女の気付かぬうちに彼女の手は明久を貫いたから……
彩凛はその手を抜き、呆然とする。
「やはり当たりだったな」
「どういうことだ……」
「昔、あのお方はある人形を作り出した。ほんの気まぐれに……自身の身を宿らせた人形……」
「……」
「その人形の欠片が必要ってことさ、俺にはな……」
「何が……言いたい!!」
明久は横腹を抑える。ゲベは嗤う……
「なんだ、わからないのか?それとも信じたくないのか?
なら教えてやるよ」
「やめて……いわないで……」
「哀れな無貌の人形……
そいつはな……人間じゃねぇんだよ!!」
「……い、イヤアァァア!!!!」
彩凛が叫ぶと同時に明久は駆け出した。右腕を拳にし、ゲベに殴りかからんとして……
「無駄だ、吉井明久」
「なっ!!」
それは彩凛が間に入ることにより止められた。
明久の拳は腕を広げながら涙を流す彩凛の眼前で停止する。
「あのお方の意志を継ぐ俺にこの人形は逆らえない」
「あ……明ひ……さ……」
「だからこそ……」
『ザシュッ!!!』
そんな音と共に全身が……特に右腕に激痛が走る。
彩凛の腕はまるで触手のように……赤黒く染まったものに変わり、それは明久の体の数箇所を針のように貫き、そしてそのうち一つは刃のように明久の右腕を切り飛ばした。
「あ……ガッ……」
「あ……き……」
その声を最後に彩凛は黙り込む。
「しかし本当に良かったよ。この人形がお前の知り合いでな。
だが俺の受けた屈辱はこんなのでは済まない。
死なないでくれよ?死ぬなら君の大事な友人という残骸がくずれてからにしてくれ」
ゲベは嗤い歩き出す。彩凛も後を追うように……そして溶けるようにして消えた。
明久は仰向けに倒れ息を整える。
傷は……横腹、腕がひどいな……それに肺も傷ついてそうだ……
嘘じゃないって言ったそばから……本当に困った自分の悪運だ。
すぐに形を持った刹那が寄り、抱きつくように声をかけてくる。
それはあまりの……いや、いつもの彼女から考えられないほど必死な表情。
……本当に困った幼馴染だ……あんな顔を見せられたら困るじゃないか……
明久は目を閉じ意識を深く沈めた。
刹那は本当の意味でよほどがない限り出てこれません。
本当なら……
日常でたまに出たりもしてましたがね。