忙しかったんですよ。
教室、ただでさえ荒れていたそのFクラスは、机は吹き飛び、黒板は砕けているという荒れ様だった。
幽香はその手に持った傘を振り、異形の首を狙う。
しかし異形もただであたってくれる訳もなく、その体からは想像できない速さで回避した。
元々異形は空に翼により浮いており、それを狙うのは難しく、
「……速いわね」
一瞬の動きは速いとしても、全体的の起動は遅い幽香にとってそれを捉えるのは難しくもあった。
全体的に機動性の高い相手と一瞬の高機動。例えその一瞬が相手を超えたとしても始める前から回避に移られては当てれないのだ。
幽香は傘を広げ異形の打ち出した弾丸を防ぐ。
「■ ■ ■ ■ !!」
「何?今のうちから勝利の笑いかしら?」
明らかに機動性が勝っていると思ったのか異形は嬉々としたような咆哮を上げる。
しかしこちらが不利なのも事実。
確かにいま学園は紫の結界により強度はましており、たとえ壊れても修復できる。
しかし今、こちらに来る条件である封印を
例え爆発的な火力を出そうとも当てれないのも事実。
幽香はそう考えながらも砲撃、マスタースパークを相手の背後を取り打ち出す。
それは何時もならばスペルとして、手加減をして打ち出しているもの。しかし今回は殺し合いだ。
手加減無用と打ち出された砲撃は一瞬だが教室お覆い、対面の……何時もあの馬鹿たちと挨拶をするドア側を吹き飛ばした。
「っち!!」
しかし幽香は舌打ちした。
自身もだいぶ甘くなったものだ、たった半年とは言えこの教室……
明久や妹紅やあの馬鹿たちと過ごしたこの場所を傷つけたくないというのか?
「■ ■ ■ ■!!!???」
流石に避けれなかったのか、異形はその焼け飛んだ翼にもがく。
明らかに殺す気で行ったつもりなのに、無意識にこの教室が吹き飛ぶのを恐れたかのように手加減をしてしまった。
幽香は唇をかみ、異形は咆哮を上げると消し飛んだはずの翼が再生した。
「あら、再生できるのね。できるだけ時間かけたくないんだけど……
貴方と遊ぶのあまり楽しくないのよね」
「■ ■ ■ ■!!!!」
異形は怒り狂ったように咆哮を上げ、
「なっ!!??」
一瞬ブレたかのような速さで幽香を捉え、壁に叩きつける。
「がっ!!!!! っ!!???」
そしてその馬のような顔と似つかわしくない牙を揃えた口を開き、幽香を噛み砕かんとするも幽香はそれを傘で受け止めた。
「あらあら、傷つけられたのがそんなに怒るような事だったかしら!!??」
「!!!!!!」
壁に叩きつけられ……いやその異形に足により捕獲されるように宙に浮いた状態で。
さらにその足は幽香を絞め殺さんとし、幽香も不安定な体制、締め上げられる体に傘は押されその牙は近づいていく。
「……このっ……放しなさい!!」
幽香は腕に妖力を込め片手を傘から離した。一瞬相手の牙が一気に近づくも、その横っ面に砲撃を叩き込んだ。
異形は吹き飛ぶように離れ頭を振るもあまり効いてないかのように、しかし怒りの形相で睨みつけている。
しかしそれを無視して幽香は胸元のポケットに手をいれる。そしてその手にはヘアピンが握られていた。
「……よかった……」
幽香はそれを握り締める。次の瞬間幽香から妖力が漏れ出した。
それは赤く……しかし淡いオレンジ色に変わり、幽香を包み込んでいく。
「さっきも言ったけど時間はかけたくないの……だから終わらせるわ」
光が晴れるとそこには髪を腰よりも長く伸ばした幽香が立っていた。ただその身を包む妖力は先ほどとは比べ物にならないほど高い威圧を放っていた。
「■ ■ ■ ■ !!!!!!」
刹那……
『キュボッ』
一瞬……その言葉が合うように高速で幽香の足が振り上げられており、異形の頭があったであろう部位が消失していた。
ただの蹴り……いや、妖力を込められた
「まだ昔の力には届かないけど……今はこれでも十分ね。本当明久の一撃は効いてたみたいね」
そう言って微笑む幽香の手に膨大な妖力が集中していく。
異形は吹き飛ばされた頭部を再生するように首元が泡立つも、それは先ほど翼を再生したよりも遅かった。
危険だ。そう察したかのようにその体は下がろうとするも、その足は花の蔓に縛られ固定され身動きがとれなかった。
「よく力バカって言う奴はいるけど……これでも魔法は得意なの」
異形は理解した。この花が……いや、幽香の魔法で生み出した花が自分の力を吸い取っていると。
「じゃあさよならよ。いくら再生できるといっても欠片も残らなければ無理でしょ?」
幽香は妖力の纏う腕を異形にかざすと光が散る。砲撃ではなくただの光とも取れるそれ……しかしその光が触れるとともに異形の形は崩れていく。
その光は次々とまるで分解するように異形を消し去った。
「……はぁ……」
幽香はため息つくとオレンジの光が散り、幽香の髪型が肩近くまで戻り座り込む。
「やっぱり疲れるわね……『無』。仮初の再現だけでここまで疲れるなんてね……
オマケに明久に切られた髪もそうそうもどるわけないか」
髪を触りそう言うと幽香は外を見る。そこにはあの男と明久がにらみ合っている。
「勝たないと承知しないわよ?」
幽香は髪飾りを握り締め少しだが休憩するために一息ついた。