「「「「「やっぱり……か(ね)」」」」」
それぞれの戦いを終わらせた彼女達は玄関口へと自然と集合していた。
「苦戦していたようね、幽香」
「それを言うなら咲夜もでしょ?あのカードまで使って」
「私達は数は多かったが個体の強さはそこまでなかったから助かったよ」
「慧音はそこまで戦闘は得意じゃないから私も助かったわ。それより……」
4人はある一人に視線を集中させ、
「「「「何故妹紅は女子制服を着ているの(かしら)(だ)?」」」」
「声合わせないでよ……燃え尽きちゃったの」
「なるほどね。それより今の現状は?」
「はっきり言うと私は大丈夫だけど……貴女達はギリギリね」
永琳は残り4人を見てそう幽香の質問に答える。
4人は自身の力……体力等が限界に近いのは理解していた。
「明久から聞いて覚悟していましたが……神性があそこまでとは」
「まぁ邪神の、だけどね」
「私なんか炎が全くだったわ」
「しかし行かなければいけないのは確かだ」
疲れてはいる、しかし明久は今なお戦い、幼馴染を救うために奮闘している。
「……あんたたち何してるのよ」
すると玄関口横の階段の横から声がする。その声は5人にとって聴き慣れた声であり、ある意味聞こえるはずのない声だった。
「……霊夢……貴女結界はいいの?」
それは学園を包む結界を学園長室で張り、待機しているはずの霊夢だった。
「あんたたちが大暴れしたからその見回りよ。アンタ達もそこで立ち止まってないで明久の加勢してきたら?」
「霊夢はいいのか?」
「私は明久に頼まれた仕事をするだけよ」
霊夢はそう言うと歩いていく。
「……あれってあんに心配だから早く見に行けって言ってるんだよな」
「……ふふっ、そうだな。さてなら見に行くとしよう」
慧音の言葉に皆は頷き玄関口へと足を進めた。
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「……すごい……」
後ろ……学校側へと下がり明久の戦いを眺めていたセレナの口からこぼれた言葉はその一言だった。
「ちっ!!!」
ゲベは次々と眷属を召喚し、それらは明久へと群がっていく。しかし明久はそれを無視したように駆ける。
明久と眷属たちが接触しようとした瞬間、明久はおもむろに右手を構え振り払った。その右腕は霊力などが纏い、小型の龍の手が作られそれは振られた軌道に合わせ眷属をなぎ払い、地に爪痕を残す。
そして明久はおもむろに横にステップをすると足元からツルが飛び出し、
「クソっ!!!未来予知でもしてんのか!!!」
「悪いけど今はできないな」
悪態つくゲベに明久は無表情で答え、拳を打ち出してきた機械状の人型の腕を跳ね上げ、その腕を掴みまるで振り子のように腕を軸のその頭部を下から蹴り上げ砕く。そして頭部を失った体を振り上げ迫ってきた鳥のような羽を持った人形に叩きつけた。
そして正面から突撃してくる黒い牛のようなものを正面から受け止め、頭を掴んだまま地面に叩きつけた。
またツルが出てくるが関係ないというかのごとく腕のなぎ払いで切り飛ばし、眷属は薙ぎ払う姿はまさに一方的の一言でありセレナも驚きに声を出せず、先ほどの言葉がなんとか絞り出せた一言だったのだ。
ゲベは下がるようにして眷属を召喚し、明久はステップを踏むように横に飛ぶ。
何の意味があるのだ?と考えすぐに理解できた。
「……まさか……」
それは弧……そう明久の立ち位置は弧を描くように眷属とゲベが一直線になっていたのだ。
「貫く……!!」
明久は軽くステップを踏み、次の瞬間トップスピードで眷属へと突撃した。それは明久がきていたコートによりさながら漆黒の矢。
眷属を貫き明久はゲベの眼前へと迫る。
「そんなにやりたいなら……自分の手でやるんだな!!!」
ゲベはそう叫ぶと手を広げ体から何かが浮かぶ。それはまるで女性のような輪郭を持ち……いや、それは彩凛だった。
明久の突き出した手は止まらず、
その女性の、彩凛の胸を貫いた。
「ははは、よかっ……!!!???」
「やっぱりね」
嘲笑っていたげべの表情は驚愕へと染まり、明久はその銀色に輝く双眸を見開きながら言葉を紡ぐ。
「賭けだったけど……あれだけカマかけたおかげか彩凛の部分を一点にまとめてくれた」
「貴様……!!!!」
明久はその貫いた腕をなお深く潜らせる。
「ぐっ!!!!」
「さぁ、返してもらうぞ!!!!」
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それは心理世界。闇色に染まるその一点に彼女はただ座っていた。顔は影のように染め上げその容貌すら見えない。
「やぁ、少し見ないうちにだいぶ変わったね」
「……なんでいるの?」
聴き慣れた声に顔を上げるとそこにはいないはずの明久が立っていた。
「ゲベに君を濃く表立たせて侵入したんだよ。まぁ精神だけだけどね」
「……バカみたい。貴方を殺そうとした私になんのようがあるって言うの?恨み言?」
「久々だね、その他人ごとのような喋り方」
明久は苦笑し、頬をかく。事実自分は操られていたとはいえ彼を殺そうとした。意識はあった。しかし抵抗出来なかった。
それに……
「……聞いたでしょ、私は化物よ。それもあの子達とは違って邪神の化身」
そう、私は邪神の落し子。悪意と滅びしか生まない存在。
ゲベという男に取り込まれすべてを見てしまった。私は一種の実験だった。
異能を植えつけ、悪意が見える世界に落ちた時どんな成長を見せるかというただの道楽。
「なんとなく予想は出来てた。私は幸せにはなれない。だって幸せは不幸だった」
「……」
「知れば知るほど貪欲になってしまう。知れば知るほど失うことを恐れてしまう。
際限のない欲求に意識が飲まれてしまう……ねぇなんで?」
私はうずくまるように膝を抱える。
「なんで貴方はここに来たの?なんで迷惑をかけて、挙句にはあなたを殺しかけたこんな私の前に……!!!!」
「なんでって理由が欲しいの?」
明久の声は本当に何言ってるんだコイツというような声だった。
「迷惑ね~まぁ確かにたくさんかけられたね」
「‥‥‥‥‥‥」
「中学時代、家庭科部のはずなのにクマに会いに行こうとか言ってマジで熊に遭遇するし」
「うっ」
「小学校時代もそうだったけど肝心なとこでドジして怪我したり迷子になったりして」
なんだろう、彼は私に文句言いに来たのか?
「本当よく迷惑かけられたもんだよ。挙句にはこんな状況だし?」
ダメだ本当ワタシ泣くわよ?泣く体ないけど泣くわよ?
「でもいいんじゃない?別に迷惑かけたって」
「え?」
いきなりの言葉に私は顔を上げ、見たその明久の顔は笑顔だった。
「昔言ったでしょ?僕らは友達なんだ。別にある程度なら迷惑をかけてくれても構わない。
限度はあっても頼ってくれるってことは信じてくれてるからでしょ?」
「でも……」
「それに彩凛は彩凛だ。邪神の化身?落し子?だからどうした。それもひっくるめて今目の前に、昔から僕の友達で幼馴染で……こうやって顔を合わせて向かい合ってるのは君だけなんだ」
「……」
「幸福が不幸ってならそれをねじ曲げてやるさ。貪欲になる?ならそれをみたせるほど幸せになればいい。失うのが怖い?なら問題ない、僕が絶対守ってみせる」
「明……久……」
「もう一度言ってあげるよ。昔言ったじゃないか」
そう言って明久は私の方へと手を差し伸べ、
「大丈夫、もし君がピンチになったらいつだって……
「……」
「まぁ、一度失敗しちゃったけど。そしたら何度でも助けに来るさ」
明久は苦笑し、なぜだろうか私も笑っている気がする。
「それって口説き文句?」
「ん?よくわからんが彩凛が僕を必要としてくれる限りはね」
「……拒否のしようがないじゃない」
「なんでそこで文句言われるのかわからんが……さぁ行こう?共に」
「……えぇ、一緒に!!」
彩凛の顔を覆っていた
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「……!!!おおおおおおおお!!!!!!!!」
「っくやめろぉぉおおおおおお!!!!!!」
叫び抵抗しようとするゲベを無視して明久は腕を引く。それに合わせるように彩凛の輪郭を持ったモノにヒビが入っていき、
「せりゃ!!!!!」
一気に引き抜くと同時に砕け、彩凛を引きずり出した。明久はそのまま彩凛を抱き抱え距離をとり、
「げっ!」
少し呻くもすぐさまコートを脱ぎ彩凛に着せる。
「……見た?」
「………ナニモミテマセン」
「……まぁ何度も見てるし問題ないでしょ?」
「見てないよ!?」
「あら、昔一緒にお風呂とか入ったじゃない」
「何年前の話だよ!!!」
まるで痴話喧嘩のようになるも明久は一旦止めるように微笑み、
「……おかえり」
「……ただいま……」
「ん?泣いてるの?」
「泣いてないわよ!!」
「……セレナ、頼むね」
「はい……後今の話について後で詳しく聞きますからね?」
「あれ~?なんかすごい負のオーラが見えるんですが……」
明久はその気に恐怖しながらもゲベのほうを向く。
げべは苦しそうに胸を押さえ叫んだ。
「なぜだ!!あのお方から力を得た俺ですら分離できなかったのに……人である部分を分離するとは!!!」
「もともとその予定だったんだけどね。おかげでかなり食いだめする羽目になったよ」
「あの監視に出した使い魔を撃ち抜いた時もそうだ。なぜそれほどの力を持ちながら自分のために……!!!」
「使ってるよ。いま自分が一番したいことをするためにね」
「わからないわからないワカラナイワカラナイ!!!!!」
ゲベは頭を抱えるように叫び散らす。明久はただそれをじっと見て、
「わからないんじゃない、わからなくなってしまったんだ。
それにその力は君のものじゃない。与えられたり奪った程度の仮初の力に振り回されてるだけだ」
「うるさいウルサイウルサイ!!!!!」
「そんなもの必要なんてないんだよ。なんで君は与えられた力に頼るのさ。なんで奪うことに頼るの。
なんで自分を信じないのさ。なんで合わせようと思わないのさ」
「力が力が!!!!!!」
「……そんな仮初のものなんていらない……なら……」
明久は左手を上げ、
「すべてを1に戻そう。
その言葉とともに世界が純白へと染められた。