一瞬の純白。
ゲベは一瞬腕で目を庇い、そして開くとそこはさきほどと変わらない学園。
「……ふんただの目くらましか」
「……」
明久はただ黙っておりその目も閉じじっと立っていた。
「それとも不発か?どちらにしてもそれならこち……ら……が……」
しかしゲベの言葉は続かなかった。
なんだ、この違和感は……
げべはそう思い右腕を見る。
「な……に?」
そこには異形のように黒く変色した腕ではなくただの人の腕。
「なぜだ!!!なぜ変化しない!!」
「それは幻だからさ」
ゲベは叫び混乱する。たとえ自分がある意味眷属だとしてもあれは神の力。
それを抑えられるだと!?自分の考えが確かなら……しかしそれはありえない。
そう自問自答を思考するゲベに明久はポツリとつぶやいた。
「幻だと?」
「……人はその恐怖心より妖怪を生み出した。人はすがる気持ち、信仰心より神を生み出した」
それはまるで人を神だとでも言うような言葉。しかし、
「けど別に人は神じゃない。その妖怪、神なども実在するかもわからない空想上の産物」
「貴様は何を言ってるんだ?」
「確かに僕たちはそれらの存在を知ってる。でも本来は知るはずのないこと、ソレと現実は背中合わせで対面できるはずがないから。
僕の心理世界はねそんな世界も反映し、
そうこれは無月からも危険だと言われたもの。全ての存在や事象、概念……意味を掌握するようなこと。
「この世界ではそれらは存在しない。一般とも言える概念のみが世界を縛ってる、人は空を飛べないみたいにね」
明久はゲベに手を向け、
「この世界を特には僕が消すかどうか認識するくらいかな。まぁ影響は僕も同じく受けてるけどね」
「そんなこと……」
「そういう世界なんだよ。
そう……
「ふ、ふざけるな!!!」
ゲベは駆け出し明久に接近する。
しかしその速度は人から一線を超えながらもただそれだけだった。
簡単なことだ。人間の体が音速というような運動に耐えれる
その突き出された腕は明久の顎を狙い、明久はそれを弾くと逆手でつかみその勢いに任せるように投げ飛ばした。
「っ!!!」
明久自身確かに世界に縛られソレを扱うことはできない。しかし明久にとってそれは確かにあるものでありながらも、そのうち1つでしかない。
受身を取り滑るように体制を整えるゲベに明久は接近し突如視界から消えた。
「どこに!?」
「こっちだ!!」
声が聞こえるより早くゲベの頬を明久の拳がとらえる。
明久は……いやソレと扱われた七夜の技術、明久がし続けた修行はいかに人に体を効率よく使い、制御し限界を引き出すかに特化したもの。
ゲベに体制を整えさせないというかのごとく猛攻を繰り出していく明久。しかしゲベもゲベでそれをなんとかいなせる部分はいなしていく。
協会のハンターとして修行していたのはゲベも変わらない。
だけど……
「な、なんでだ。なぜ……」
ゲベは体がおかしいことに気づいていく。それは考えてるとおりに……いや昔なら出来たであろう行動をするのに苦労している自身がいることにだった。
《ゲベ……貴方にはきっと聞こえていないだろうけど、あなたは見失ってしまった。貴方は力に溺れ自身を見失った。
自分を見失ったものが自分を制御できるはずがないように……》
刹那は明久の目を通して見、そして思う。
《明久は確かに力を手に入れた。それは他者から見れば魅力的なものかも知れない。でも彼は力よりも自分求めた。
たとえどんなに優れたものをえようとそれを使う技術がなくては意味がない、それを制御できる精神がなければ》
たとえどんなに高性能なPCであろうと使い方も知らない赤子がそれを10全扱えるわけが無いと同じように。
《躓き、迷い、苦悩しながらも彼は歩みを止めなかった……あなたはどういう選択をするの?》
刹那の言葉届くはずがない。しかし明久の
ゲベは明久の拳いなし、時として受けながらもある感情が芽生え始めていた。
ー楽しい……ー
先程まで思考に追いついていなかったからだが少しずつ追いつき、また成長していくことが、いなせる回数が増えていくことが……
また彼の拳から憎悪等は感じない。ただ拳をぶつけるという武人のような感情。
それと拳を合わせられるという感情が彼を奮い立たせ始めていた。
それに合わせてまるで不のような感情も沸き上がってくる。それは昔から感じていた感情。
しかし……
「……あぁ……吉井明久」
「何……かな?」
そんなものはどうでもいい。なぜ忘れていたのだろうか。なぜ見失っていたのだろうか。
あぁ……
ゲベは距離を取るように離れ、明久はそれを追わなかった。
そして上げたその顔はまるで濁った様な目ではなく、
「協会第10位ゲベ……ゲイル・ベルモント……先までの失礼を謝罪する。
これよりこの身の全霊を持って貴殿をたつ!!!」
強い闘士を灯した武人の目をしていた。
「……やばいな、あっちの勝率が上がっちゃったや……でも」
明久は構えを取り、
「僕は吉井明久……僕はこの身の全霊をもって勝つ!!!」
「「行くぞ!!!!」」
ゲベは3つ叉の切るより刺すに特化した武器、
せこいとかズルだとか言わない……二人はただ全力を出し切るだけ。武器がどうこうはついででしかない。
一撃でいい……本当の全力を、自分の全開を出し切る!!
ゲベは柄を中指と薬指の間に挟むように逆手で持ち、それを横薙ぎに払った。
明久はそれを避けるとゲベの体が影になるように、回転するようにもう一方の釵が明久を狙う。
怒涛のように繰り出される釵は明久に服を裂き、時として傷を付ける。
「おおおおおおお!!!!」
そして渾身の力で突き出された釵は明久へと迫り、
「「……」」
突如の沈黙……
ゲベの放った突きを……明久は又になる部分に指で挟むようにして受け止めていた。
そして離すと同時に繰り出された正拳がゲベの鳩尾を捉える。
「ぐっ!?」
「行くぞ!!!!」
その正拳はまるで初段と表すように明久は息を吐き、
「はっ!!!!」
右の手刀が肩をなぎ、左の掌打が引く手刀にあわせて放たれる。
そして右のハイキック、回転するように左の回し蹴りを叩き込み、ふらつくように下がるゲベに一歩踏み込むように左のアッパー。
そして軽く浮いた体に少し飛ぶように右の掌打を叩き込み、
「フゥ……」
浮いたゲベの眼前で左腕を腰に沿え、右手を眼前に添えるように構える明久。
「っち……やっと勝ちたいと思ったのにな……」
「……セイヤッ!!!」
まるで感覚が、いや時が止まったかのような衝撃。
迫る左の正拳突きはゲベを捉え、貫く。しかしゲベからすればそれはまるで音を……衝撃すらも置き去りにするような拳だった。
次の瞬間襲いかかってきた衝撃にゲベは弾き飛ばされ、世界が砕け散った。
明久はゲベへと歩み寄り、
「……僕の……勝ちだ」
「……あぁ……」
ゲベは大の字に寝転びながらもそう答えた。