見ようによってはゲベは地に大の字になりながら明久はそれを見下ろしている。
しかしそれを遠くで見ていたセレナ、そして彩凛にはゲベが楽しそうに笑っているようにも見えていた。
「あ~負けてしまったんだな」
「そうだね」
「なんでお前そんなに強いんだよ……」
「強くなんかないよ」
明久はそう答え腕を差し出す。ゲベはその手をつかもうとし、
「っ!!!!」
その腕に、いや全身にまるで陶器がひび割れるかのように亀裂が入った。
「ゲベっ!!??」
「気にするな予想できてたことさ」
げべは崩れ始める手を見て苦笑しセレナのほうを向く。
「すいません教皇。貴女をお守りすると誓ったのにこんな無様を晒して」
「ゲベ、貴方は……」
「っく!!」
明久は腕を伸ばしゲベをつかもうとする。もし掴めたら自分の能力でどうにかできるかもしれない。
しかしその腕を掴むもそれと同時に、
『パリンッ』
砕け散るようにゲベの体は溶け、黒い水溜りのようになった。
「……クソッ!!!」
掴めなかった……また……止められなかった!!!
地面を殴った明久はそう考えた瞬間直感的に腕をクロスするようにガードした。
次の瞬間黒い水溜りのようなものからまるで闇のような黒い弾丸が飛び出した。明久はそれに吹き飛ばされるようにはじかれながら空間が歪み始めることに気がついた。
(空間転移!?というより次元か!!!)
明久はそれを打ち消そうとするがゲベの戦い、彩凛の再生。何より心理世界の発現で体力も精神力もかなり削れていた。
あの心理世界は平等に負荷がかかるわけじゃない。どちらかといえば明久の方が負荷はでかいのだ。
「……ちくしょう」
明久は苦笑し空間の歪に飲み込まれた。
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彩凛やセレナは唖然としていた。
先程までの異様な世界は別としても明久はほぼ圧倒的強さを誇示しているようにも見えた。
しかし今明久はいない。彩凛からすれば明久の能力など大概は知っており、その明久がいま眼前から消えたことに思考が追いつかず言葉も、いや手や指すらもうごせずにいた。
それだけでなく泡立ち、うごめく黒い物体を見ることで動きだけでなく思考も支配されたような感覚に襲われる。
しかし、
「……!!」
その眼はまるで睨むように黒い物体を見つめていた。黒い物体は形を変えていき……
「……ふ~ん、俺の支配下から逃れた……いや、完全に独立しているのか?
どちらにしてもはた迷惑なことをしてくれたものだ」
そこに立っていたのは先ほど溶けて姿を消したゲベだった。
だがその姿を見たセレナは杖を構え、彩凛の前に立つ。
「……ゲベ……ではありませんね。貴方が
「ゲベ?あ~まぁ楽しませてくれたからな。使わせてもらってるよ。
だが分かっているのか?確かに貴様の力は人より強い。だが……その程度だ」
ゲベ……いや、其の者は嘲笑う様にいい、セレナは冷静を装いながらも内心は取り乱していた。
もし間違えなければ先程までのゲベが使っていた力の持ち主とも言える者。
「……ですが守ると言いましたから」
「おうおう、美しい言葉でして。
まぁ、守れなければ意味ないけどな」
その声に応えるように影から槍のように飛び掛る、まるで魚のような生き物が飛び掛ってきた。
セレナはすぐに障壁をはるも、その生物は数度噛み付くように障壁に飛びかかり突き破った。
「っく!!」
セレナはすぐさま呆然とする彩凛を庇う。
(守ると約束した。だからこの子だけでも……)
セレナは食いかかろうとする生物を見つめ……
『ヒュゥゥゥゥ!!!!!!!』
「え……」
次の瞬間一矢が生物を貫き、生物は泡のように飛び散った。
「その子を守ってくれるのは嬉しいけど、貴女も明久君の大事な人なのよ?」
セレナが振り返ると弓を構える永琳が微笑んだ。
「そうそう、アンタに死なれでもしたら明久が悲しむ」
「そうだな」
そしていつの間に来ていたのか、妹紅達がセレナ達を守るようにしていた。
「ほう……だがその疲れでどう戦うのだ?まともに戦えそうなのはそこの銀髪くらいのようだしな」
「あら、それはどうでしょうね?やってみる?」
「ふん……あれを期待しても無駄だ。別の空間、いや別の世界に飛んだのだから」
幽香は挑発するように言うも自身で理解していた。
自分たちはそこまで体力は回復しておらず、自身も無理な開放で疲れが来ている。
いくら永琳が万全に近くとも守りながらは難しい。
「何よりそこの人形を置いた状態でな」
其の者の足元から次々と分裂するように泥が分かれていき、形をとり始める。
「失礼ですね。癇に障る方です」
咲夜はナイフを、妹紅は手に火を灯す。
「そうそうこんな美人さんに失礼だぜ」
「え?」
セレナは聞いたことのない声に少し驚いた声を上げ、
「……貴方達ね……」
「いや~さすがに外で待っとくってのは合わなくて」
正人が棍を持ち、
「……すみません。明久君の気配が消えたものでじっと出来なくて」
狼の耳と尻尾。そして金色に輝く目を携えた栖々希が頭を下げた。
「……弱いものがいくら集まろうと変わらんのに」
其の者はまるでしらけたような表情をし、次々と形をもったものは数十……いやなお増え続け、その中には幽香達と戦ったもの達もいた。
「一体ですら苦労していたのに勝とうとは本当わけわからないな」
その声が終えるのが合図のごとく3体が動き、幽香達は構える。しかしそれは……
「それは君がその理由を認めたくないからだろ?」
周りの音を無視するように響いた声に中断された。
一体は白い数体の鳥のようなものに貫かれ、もう一体は銀光のように疾走する者に引き裂かれた。
それを見た正人と栖々希は唖然とし、
「こらこら、我が息子ながらみっともない顔ね」
「そうでもないでしょ?うちの娘はだいぶ変わったようだけど」
大きな鳥のような生物に乗ってきた礼服を着た女性、その銀光の正体である銀髪の女性に、
「か、母さん!!??」
「母様??」
驚いたように声を上げる。
残り一体は上空より飛び掛るように飛来した人物の刀により両断された。
「あ、貴方は……」
「……え……」
慧音が少し驚いたように上げた声の中に、呆然としていたはずの彩凛の、少し驚いたような唖然としたような声が響く。
「……!!!き、貴様は……っ!!!!!!」
先ほどまであざ笑うような、それこそバカにするような表情しかしていなかった其の者は、憎悪……
そう、その言葉が合うような初めて感情を見せたかのような怒りの表情を見せる。
「やぁ久しぶりかな、三十年くらい?」
「また貴様か!!!吉井智久!!!!!」
「また僕です、ナイアーラトテップ」
肩に刀を沿えながら怒りの表情を染める其の者、ナイアーラトテップに吉井智久は挨拶するように手を振った。
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