地に激突しクレーターを作るナイアーラトテップを一瞥し、明久は着地すると同時に泣きながら呆然とする少女、彩凛ちゃんへと歩み寄る。
「……大丈夫?」
「……あ、ははは……覚悟してたんだけどな……本当に母さんが死んだ理由が私だったなんて……」
「……」
明久はそう言い泣き止まない彩凛ちゃんを抱きしめなだめていた。
我が息子ながら別意味で女泣かせになったものだ。なにせ周りにいる子達はそれを羨ましそうに見ているのだから。
「そういや母さん。さっき明久の父さんが言ってたのってどういう意味だ?」
「あ~あのナイアーラトテップね亜樹奈を智久君の前で泣かせてね。それを見てキレた智久君に封印一歩手前まで一方的にボコられたのよ。
いや~流石息子さんだけあって似てるわね」
「……えぇ、女泣かせなとこも。栖々希から聞いてたけど本当とはね」
「母様!?」
何やら後ろでわいわいしてるが彩凛ちゃんは落ち着いたのか明久は抱きしめるのをやめていた。
「ごめんなさい……」
「いいよ。僕でよければいつでも貸してあげるよ」
明久はそう言うと真面目な表情になり、
「ごめんね、みんな。遅くなったけど……」
「いいわよ」
「そうそう、明久の遅刻は今更だもんね(笑)」
「妹紅……」
明久の言葉に少女達(実際は自分より上の子もいるらしいが)が笑って返していた。
明久、いい仲間たち……だね。
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「みんな、まだいけそう?」
僕がそう確認するとみんなは笑い、
「えぇ」
「本当不思議よね」
「確かに、明久を見ると……疲れが吹き飛んだや」
「妹紅の言う通りね」
「明久君だからね」
意味わからん。だけどそれなら大丈夫。不思議とそう思う自分がいた。
後ろから何かが崩れる音がし、そちらの方へと振り向いた。そこには異形たちに囲まれ、クレーターより這い出てきたナイアーラトテップが立っていた。
ゲベの外見は崩れ、体は次々と変化し顔には空虚を写していた。
「……吉井……ヨシイアキヒサ!!!!」
ナイアーラトテップの声に反応するように巨大な獣のような異形が噛み砕かんと突進してきた。
そして、
『グシャッ!!!!』
突如として僕の横から現れた人物のひと振りにより潰れ、吹き飛ばされた。
いや、ちょ~っと待つんだ。どこから来た?てか何故いるの?
「え~っとなんでいるのかな?ORT」
そこには銀の……いや水晶のように薄く碧味を帯びた銀の長髪を靡かせ、その赤い瞳を持つ美貌は絶世の美女と言ってもおかしくない女性。
ただ不可思議なのはそのドレスのような服の隙間から見える手足の鎖、そして首に付けられた首輪だろう。
彼女は何を隠そう僕と契約をしたORTであり、
「……明久、それはお前の趣味か?」
「イキナリ何抜かすこのバカ正人!!封印で仕方なくだよ!!!」
ORTはその存在自体が世界を侵食し、自分にあった世界に作り替える。
鎖はそのための封印であって他意はない。てか、首輪を所望したのはORTだ!!!
「明久の視線の一部を共有しているからな。困っているようだから出てきたまでだ」
ORTはそう言うと振り払った手を舐め、
「……邪神の一部だというから少し期待したが……そこまででもないな」
「え、なに?食う気で来たの!?」
「違うわ」
そんな場に似合わないボケ合いをしていると殺気を感じそちらをむく。
「ワカラナイ、ワカラナイ!!!!キサマら人間は何故愛だの希望などそんな不可思議なものにすがる!!!!」
「さぁね。実際のとこそれは僕らにもわからないことだと思うよ。でも僕たちは、人間は、生きる者達は希望を愛を友情を知った時今よりずっと強くなれる。
守りたいものを見つけた時たとえどんな暗い未来も突き進む可能性を得ることが出来る!!!!」
「そんなもの認めない!!!!認めてなるものか!!!!!」
「いや、ナイアーラトテップ!!!!君は知っているだけで目をそらしているだけだ!!!!!奇跡を、何度も君の策略を打ち破ってきた生きる者たちの力を!!!!!だからこそ君は……」
「御託はいい!!!!!!」
歪み続けていたナイアーラトテップの姿が人型をとり始める。しかしその身に纏う気迫は先程とは桁違いの威圧を放っていた。
「ならばその希望も、未来もこの場で消し尽くしてやろう!!!!!」
「……ORT、みんな。この場は頼んだよ」
彼は邪神、神の名を冠する神性。だから僕は……
「……汝、明けに沈む」
『……汝、夜天に落つ』
まるで声が続くように放たれ、足元から現れた白銀と漆黒の龍が周りを包むように舞う。
「我、明星ヲ求メ走ル……」
『我、深淵ヲ携エ負ウ……』
二色の光は引き裂かれるように弾けた。
「我、内ナル希望ヲ持ッテ絶望ヲ振リ払イ共ニ行コウ」
『我、内ナル覇道ヲ持ッテ煉獄ヲ振リ払イ共ニ歩モウ』
「『汝、心理ノ真ヲ物ッテ
それは人型の龍というべきか。白銀に近い淡い姿。そのロングコートに見える外装は黒い鎖やベルトにより幾多にも拘束されている囚人のようにも見える。
後ろに伸びるような角。そして額から生えたプラチナを連想させるような一角。
その顔はまるで外殻の仮面のように覆われ、金色の眼光が光っている。
透き通るような水晶を連想させる六翼がなびく度に周りに散った光と闇がまるで羽を幻想させた。
「な……貴様は」
「『……』」
「ハ、ハハハそういうことか!!!所詮貴様も人の皮をかぶった……くっ!!!???」
「『ここじゃ周りに被害が行く。付いてきてもらうぞ!!!!!』」
僕はナイアーラトテップ顔の部分を掴むと上空へと舞い上がった。
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「行っちゃったね」
「そうね」
妹紅達は明久が飛び去ったのを見てつぶやく。
「さて、とりあえず私達にできることを行いまししょうか」
「微力ながら」
「同じくだな」
栖々希と正人はある意味場違いかなと思うも。
「大丈夫よ、人は多いほうがいいから」
「あら、霊夢。結界はいいの?」
「問題ない。紫が変わってくれたから」
霊夢はお払い棒で肩を叩きながらそう返し、数百と密閉された結界内で増えた異形を見る。
「……すごいわねあの子。霊力の底が見えないわ」
「とりあえずここを守りきりながらこいつらを倒せばいいってわけね」
夜のような闇に覆われた外を見る。
「……またこの闇に覆われた。でも……」
「あぁ、あの子ならやってくれるさ」
「……我は契約を果たすとしよう」
「じゃあ、行くぞ」
智久は刀を抜きそれに合わせるようにそれぞれが戦闘態勢に入った。
「殲滅だ!!!」
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ナイアーラトテップを引きずる明久は宇宙を越え、不可思議な空間へと飛び出す。
そこにはまるであわ粒のように不可思議な物体が無数に浮いていた。
「っく!!!離せ!!!」
ナイアーラトテップは腕を鉤爪状にして振るう。
明久はそれを片手でそらすと右手に漆黒の闇を纏わせた。
「『
「ぐっ!!!!????」
まるで銃で撃ち出すように放たれた漆黒の弾丸にナイアーラトテップはその泡の一つへと吹き飛ばされ、明久はそれを追うように泡へと飛び込む。
そして浮いていた小星にナイアーラトテップは叩きつけられ、明久は近くに着地すると翼は肩に飾りのように、そして腰元に二対が鎧のようにまとわりついた。
「っ!!!!まさかマルチバースを見ることになるとは……それにここは……死せし宇宙か……」
「『ここなら被害も出ない……さぁゲベを含め百人の魂も返してもらうよ!!!!』」
「調子に乗るな!!!!!」
神速を超えた速さでふたりは接近し、その打ち合わせた拳の衝撃に小星は消失した。
「『』」
というカッコは声が二重に聞こえる感じと考えてください。