明久達の戦いが終結へと向かった頃、学園で戦っていた霊夢達にも影響は出ていた。
倒せど倒せど分裂するかのように増えていく異形。空より降り出した漆黒の雨。
突如として雨が止み、異形たちが音もなく崩れ、霞のように消え失せていった。
「!!!!!!」
「お、終わった?」
「……明久は勝ったようだね」
霊夢達も流石に啜れた服をはたき、空を見上げつぶやく。
智久は空を見上げたあと周りを見てため息をついた。
「……はぁ……流石に手一杯で守りきれなかったな……」
クレーターのできたグランド、崩れた柵、なんとか形は残っているが少し倒壊した学園。
「……でも思うに大半私たちが原因なのかしら?」
「やってしまった感はあるけど……治すしかないのかな……」
「やってしまったのはしょうがないだろう」
「というより大半の原因は貴女でしょ、ORT!!!」
「私は護衛は頼まれたがそこまでは……」
「少しは自重しなさい!!!!貴女が腕のひと振りのせいで本当の更地になりかけたのよ!!!!」
「ははは、本当に明久の周りってすごいな……」
「笑い話にならないよ、野園君」
「本当に未熟さを痛感します……」
「セレナ、貴女のおかげで原型止めれたんだから……」
ORTは少し肩を上げるようにして言い、咲夜達がそれにすかさずツッコミを入れる。
正人と栖々希は先程までの戦闘での光景がなかなか頭から離れず乾いた笑みを浮かべていた。
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そんなコントの様な事が行われていた時、
「……なぜだ……」
「『……何がだい?』」
何もない空間……いや二人の戦闘により空いてしまった空間の中心とも言える場所でナイアーラトテップはほとんどの部位を失い、漆黒の鎖により拘束されるように浮いていた。
「なぜ、また手を抜いた」
「『別に抜いてはいないさ』」
「……ふん……誰から借りたか知らんが、その力なら我を殺せたはずだろ?」
その空虚のような表情には出ていないが、その声には明らかに疑問の念がこもっていた。
あの時やつが放った技は明らかに自身を殺そうと思えば殺せるものだった。なのに何故?
「『なぜって……別段理由はないよ。
まぁ、強いて言うなら殺したくないと思ったからかな?君の場合は意識体とも言えるから殺しても意味ない……』」
「嘘を付け……」
「『まぁ……無理じゃないとしてもね……それと力は借りてないさ……』」
明久は手を見て、力強く握り締める。
「借りていない?」
「『力は借りるものじゃない。合わせるもの……たとえどんなに離れていても、たとえ違う場所にいても僕達は一緒に戦ってるんだよ』」
「合わせる……もの……それが貴様の言う力だというのか?」
「『それはわからない。唯すべてを掴むことなんてできない。でもみんなと力を合わせれば不可能を可能にできるかもしれない。
確かにあの時君が言った不可思議で見えも、実体もないものだけど……確かな物だと思ってる。
絆、愛、友情。君は否定したけど認めているんじゃないのかい?それは確かにあるものだって』」
「……わからん」
「『なら一緒に探してみるかい?君が求める答えを』」
「一緒にだと?」
「『一人じゃ見つからなくても、一緒になら見つかるかも知れないじゃないか。
……まぁ、流石に今回おイタが過ぎたから封印って形になるけどね』」
「貴様正気か?貴様達だろ?我らを邪なる者、『邪神』と呼んだのは」
「『別の僕からしたらどうでもいいかな』」
「……我は貴様の友人を傷つけたのだぞ」
「『……『友人』って言えるなら大丈夫なんじゃない?僕はもう気が済んだし。
まぁ後で謝ってはもらうけどね』」
「……貴様は馬鹿だ……」
「『ひどいな』」
「負けたのは事実、我にも誇りはある。いいだろう、お前に従ってやろう」
「『……』」
明久が腕を上げるとナイアーラトテップを囲むように魔法陣のような刻印が浮かび上がる。
「……別意味で言うなら貴様に興味がわいた。見届けてやろう貴様の中でな!!!」
「『……ナイアーラトテップ、封印だ!!!!!』」
刻印が輝くとともに空間が歪み、中心にいたナイアーラトテップの体はまるで闇のように薄れ、明久に飲み込まれた。
「『……うん。行こう、共に』」
明久は胸に手を当て、そう呟いた。
するとまるで何やらと気が動き出したように周りの空間も歪み始めていた。
「『え?何これ……』」
《……宇宙の始まり》
「『え?』」
《死に絶えた宇宙。でも何かしらのきっかけがあればその命はまた芽吹くの。
多分明久達の戦いで生まれたエネルギーを起点に宇宙がまた息吹を取り戻そうとしている》
刹那の言葉に明久はそんな大層なことをしてしまったのか、と思うもそれは違うと考える。
「『きっとこの宇宙は死んでなんかいなかったんだよ。ただ、ただ長い眠りについてただけ。
僕たちの戦いが目覚ましになっただけさ……さぁ、まだやることはある。帰ろう』」
明久は輝く三十六翼の翼を戻し、口元をまた仮面のように覆わせる。
そして光速を超える速さで新しく命をいぶき返そうとする宇宙を飛び去った。
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漆黒の雲に覆われた空。しかしそれを突き破り霊夢達の前に……明久はゆっくりと着地した。
「……おかえり」
「『ただいま、父さん』」
みんなを代表するかのように声をかけた智久に明久は返事をする。
仮面のように表情はわからなくともきっと笑っているのだろう。
「『さて、最後の仕上げだ』」
明久は手をまるで何かを持つかのように構える。そしてその手の上に光が集まり、一つの光球となった。それは百人の……取り込まれていた人たちの魂。
「『さぁ、あるべきところへ、待つ者の下へ帰ろう』」
光球は宙へと浮き停滞する。そして明久が右手を掲げるとそれも合わせるかのように周りから光が漏れ、明久の手へと集結していった。
「『……光ノ創造!!!!!』」
言葉がまるで現実になるかのように、その光は閃光のように強まる。
しかしまた暖かいと……極光でありながら目を閉じずみんなは見ていた。
そして光に導かれるように光球は分散し、空を覆う雲は霧散していく。崩れた建物、グランドは元の形へと戻っていった。
「……すごい……」
ポツリと誰がつぶやいたかもわからない。ただじっとその場にいたみんなはその光景を……自分たちも癒されていることにも気づかず見つめていた。
その中、霧散した光の一つがグランドへとまい、ひとつの形を作っていく。
「……お、俺は……」
ゲベは取り込まれ、消えたはずの体を見つめただ呆然としていた。
極光は徐々に収まっていき、そこには唯々青い晴天が広がっており、明久はまるで白銀と漆黒の光が散るかのように人の姿へともどる。
「……明久?」
呆然と皆が立つ中、彩凛はゆっくりと明久に近づき声をかけた。
明久は彩凛がいるであろうほうを向き、
「ただいま」
「……お帰りなさい」
笑って、まるで普通に出掛けていたかのように声をかけた。彩凛は少し泣きそうになりながらも返事をし、
明久はゆっくりと倒れた。
「!!!!!!明久??明久!!!!」
彩凛は倒れる明久に急いで近づき受け止める。そして反応のない明久に必死に声をかけるも、明久は唯ぐっすりと眠っていた。