《それでは【如月グランドパークウエディング】プレゼントクイズを始めます!》
俺と翔子の間に大きなボタンが1つ設置されている。
コレをおしてから解答するというオーソドックスなシステムのようだ。
正解したらプレゼント、ということは、間違え続けたら無効になるのだろう。
それなら俺が間違え続けるとするか・・・
《では、第一問!》
ボタンに手を伸ばす用意をし、問題を待つ。さて、どんな問題が来るんだ?
《坂本雄二さんと翔子さんの結婚記念日はいつでしょうかっ?》
・・・・・・おかしい。問題文の意味がわからない。
『ピンポーン!』
し、しまった。油断しているうちに翔子が勝手にボタンを!
だが、いくらコイツでも正解の存在しない問題に答えなんて・・・
《はいっ!答えをどうぞっ!》
「・・・・毎日が記念日」
「やめてくれ翔子!恥ずかしさのあまり死んでしまいそうだ!」
《お見事!正解です!》
しかも正解!?秀吉を睨みつける。
すると、秀吉は観客に見えない角度で、俺に向かって片目を瞑ってきた。
さては・・・・・出来レースかっ!
そこまでして俺たちにウエディング体験とやらをさせたいのか!?
それ以前に風見!!笑うな!!
いいだろう。それならば俺は間違えて見せよう!
《第二問!お二人の結婚式はどちらで挙げられるでしょうか?》
『ピンポーン!』
ボタンを押し、マイクに口を寄せる。
不正解を出すなんて、造作もない!
《はい!答えをどうぞ!》
「鯖の味噌煮!」
《正解です!》
「なにぃっ!?」
場所を聞かれたのに鯖の味噌煮が正解なのか!?
《お2人の挙式は当園にある如月グランドホテル・鳳凰の間、別名【鯖の味噌煮】で行われる予定です!》
「待ていっ!絶対その別名はこの場で命名しただろ!強引にも程があるぞ!」
《第三問!お2人の出会いはどこでしょうかっ?》
ダメだ、聞いてねぇ・・・・・!だが、向こうのやり口はわかった。今度は確実に間違えてみせる。翔子が動くより早くボタンを押し、間違った解答を・・・
「・・・・・させない」
『ガチャッ』
「待て!その手錠どこから出した!?」
『ピンポーン!』
《はい、解答をどうぞ!》
「・・・・小学校」
《正解です!お2人は小学校からの長い付き合いで今日の結婚までに至るという、なんとも仲睦まじい幼なじみなのです!》
くそ!!手が動かせねぇ!!
問題を聞いてから動き出すようでは遅すぎるようだ。
翔子の妨害が間に合わないタイミングで解答する必要がある。
《第四問に参ります!》
『ピンポーン!』
問題文が読み上げられるよりも先にボタンを押し、妨害が入る前に解答を済ませる!どんな問題が来るかはわからんが、【わかりません】と解答したら100%間違いになるはず!
俺は顎でボタンを押し・・・
「わかりま・・・」
《正解です!それでは最終問題です!》
うぉっ!?俺の解答を無視したぞ!?問題を無視した仕返しか!?
もはや間違えることは不可能だ、と諦めそうになったその時、
『ちょっとおかしくな~い?アタシらも結婚する予定なのに、どうしてそんなコーコーセーだけがトクベツ扱いなワケ~?』
不愉快な口調の救いの神が現れた。その場の全員が声の主を探る。
すると、彼らは呼ばれてもいないのにステージのすぐ近くまで歩み寄ってきていた。
『あの、お客様。イベントの最中ですので、どうか――――』
『あぁっ!?グダグダとうるせーんだよ!オレたちはオキャクサマだぞコルァ!』
どこかで見た連中だと思ったら、入場口で似非野郎に絡んでいたチンピラどもか。
『アタシらもウエディング体験ってヤツ、やってみたいんだけど~?』
『で、ですが・・・』
『ゴチャゴチャ抜かすなってんだコルァ!オレたちもクイズに参加してやるって言ってんだボケがっ!』
『うんうんっ!じゃあ、こうしよーよ!アタシらがあの二人に問題出すから、答えられたらあの二人の勝ち、間違えたらアタシらの勝ちってコトで!』
慌てるスタッフたちをよそに、そのカップルはズカズカと壇上に上がり、設置してあるマイクの一つをひったくる。これはチャンスだ。
この連中が相手なら間違えられることができる。
あとは翔子の妨害を邪魔しておけば・・・・!
「・・・・・・ゆ、雄二・・・・・・?」
解答者席の陰で翔子の手を握る。これでボタンは押せない。
あとは向こうの問題に間違えるだけだ!
『じゃあ、問題だ』
チンピラがわざわざ巻き舌の聞き取りにくい発音で言う。
『ヨーロッパの首都はどこだか答えろっ!』
「・・・・・・・・・・・・・・」
『オラ、答えろよ。わかんねぇのか?』
会場が静まりかえった。
確かにわからないと言えばわからない。俺の記憶では、ヨーロッパは国というカテゴリーに属していたことは一度もないのだから。
その首都を答えるなんて不可能だ。
《・・・・・・坂本雄二さん、翔子さん。おめでとうございます。
【如月グランドパークウエディング体験】をプレゼントいたします》
『おい待てよ!こいつら答えられなかっただろ!?オレたちの勝ちじゃねぇかコルァ!』
『マジありえなくない!?この司会バカなんじゃないの!?』
バカップルがぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる中、ステージの幕が下りてくる。
Fクラス以上のバカがいるとは世界って広いもんだな・・・・。
キングクリムゾン!!
《それではいよいよ本日のメインイベント、ウエディング体験です!皆様、まずは新郎の入場を拍手でお迎えください!》
「坂本雄二さん、お願いします」
舞台袖でスタッフが耳打ちしてきた。
コイツをブチのめして逃げてやろうか。
「抵抗したら、海栗とタワシの活け作りを雄二の実家に送るぞ」
くっ。そんな物を送られたら、
あの母親はきっと全部海栗だと勘違いしてタワシにも手を出してしまう……!
「やれやれ・・・・・・。まぁ、あくまでもただの体験だしな。適当に付き合ってさっさと終わらせるか・・・・・・」
油断を誘うため、スタッフに聞こえるようにつぶやく。
「さァ、どうぞ」
「あいよ」
小さな階段を昇る。そのままステージに上がると、その光景に一瞬眩暈がした。
「おいおい・・・・・・。なんだよこのセット・・・・・・」
数え切れないスポットライトにライブステージのような観客席。
スモークの設備はおろかバルーンや花火の用意までしてあるように見える。
向こうにある電飾なんていくらかかってるか見当もつかん。
《それでは新郎のプロフィールの紹介を――――――》
ん?俺のプロフィール紹介か。まるで本物の結婚式だな。
目的のシーン以外の部分もきちんとしているようだ。さっきのクイズもそうだが、
どうやって調べたんだ?(答:幽香が翔子に聞きました by作者
《めんどくさいので省略します》
風見・・・てめぇ・・・
《――――それでは、いよいよ新婦のご登場です!》
脱出はもう少し待つとしよう。折角来たんだ。
翔子のドレス姿くらい見ておくのも一興だ。
そんなことを考えながら待っていると、目が暗がりになれるよりも早く、スポットライトが点された。
《本イベントの主役、霧島翔子さんです!》
言葉を失った・・・あれは・・・・・誰だ?
「・・・・・・・・綺麗・・・」
静まり返った会場から溜息と共に洩れ出た、誰のものともわからない台詞。
「・・・雄二」
「翔子、か?」
「・・・うん」
翔子はいつもの・・・いや、ほんの少し頬を染め、
「・・・どう・・・?私、お嫁さんに見える?」
「す、少なくとも花婿には見えないな・・・」
動揺して変なこと言ってしまった・・・
「・・・・・嬉しい・・・・・」
「え・・・?」
「・・・ずっと夢だったから。・・・小さな頃からずっと・・・夢だったから・・・・
私と雄二、2人で結婚式を挙げること・・・・・。私が雄二のお嫁さんになること・・・・
私1人だけじゃ、絶対に叶わない、小さな頃からの私の夢・・・・・」
幼い頃のある出来事がきっかけで抱かれた、コイツの俺への想い。
それは罪悪感と責任感からくる勘違いなはずなのに。
「・・・・・だから・・・・・本当に嬉しい・・・・・。他の誰でもなく、雄二と一緒にこうしていられることが・・・・」
でも・・・俺は・・・
『あーあ、つまんなーい!』
何かを言いかけたところで、観客から大きな声があがる。
『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、早く演出とか見せてくれな~い?』
『だよな~。お前らのことなんてどうでもいいっての』
空気読まないバカどもだな・・・
『ってか、お嫁さんが夢です、って。オマエいくつだよ?なに?キャラ作り?ここのスタッフの脚本?バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!』
『純愛ごっこでもやってんの?そんなもん観るために貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~。
あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない?ギャグにしか思えないんだケドぉ』
『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんてい「黙りなさい・・・」なんだと?!てめぇ!!』
「黙れって言ってるのよ屑が・・・」
そこにはいつもの笑顔はない・・・無表情の風見が立っていた・・・