魔法少女桃神司   作:MOPX

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明かされる真実!! 魔法少女ってそもそも何!?

 

蒼乃と桃神は河川敷へと戻った。

結局、蒼乃が持ち帰った(・・・・・)のは落書き帳だった。

これ自体に特に思い入れがあったわけではない。

何かを手にしていなければバツが悪いと思っただけだ。

 

それよりも聞きたいことがあった。

銀髪ムチムチスーツのナイスバディ――そして、蝶のような羽根を生やした自称妖精に。

 

どうして今まで疑問に思わなかったのか、不思議なくらい根本的なことを。

 

 

 

 

「お、きたきた!!」

 

発光するテント前で柿原と苺谷が手を振る。

笑顔で桃神の横で蒼乃は辺りを見渡す。

 

どうやら今はいないみたいだった。

 

「あの自称妖精は?」

 

「ん? 何か用事があるってそこら辺に行ったぞ」

 

「それより何を持ってきたんだ?」と柿原。

……これは今、重要じゃない。

 

「ちょっと私、自称妖精を探しに行ってくる」

 

麻雀牌や変身ヒロイン(・・・・・・)のグッズを見せあう柿原と苺谷に伝える。

桃神には――。

 

「桃神さんもここにいて。ちょっと二人で話したいから」

 

「……。うん!! いいよ!!」

 

「理由、聞いたりしないんだ?」

 

「うん!! だって蒼乃さんがそうしたいって思ったってことは何か考えがあるんだよね!! だったらそれが大切だと思う!!」

 

「桃神さん……」

 

こうして信頼してくれることを改めて感謝をする。

何となくだが、これからする話は桃神には聞かせたくなかったのだ。

 

 

魔法少女はそもそも何か、なんて。

 

 

「じゃあ、行ってくる」

 

去り際、苺谷が持っている変身ヒロインのグッズが目に入る。

それは魔法少女ではなかった。

 

 

 

 

さあ、第四コーナーからバーニングホウオウが上がっていく!!

 

グランドユニコーンが内から応える!!

 

エアリアルペガサス!! エアリアルペガサス!!

 

グランドユニコーンとバーニングホウオウの叩き合いだ!!

 

「おらおら!! 行けやあああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!! グランドユニコォォォォォォォン!!」

 

外からセイントバハムート!! 外からセイントバハムート!!

 

「あ!? あ!?」

 

セイントバハムート!! 強い!! 全員まとめて一掃だ!!

 

「ああああ!? くるなああああぁぁぁぁ!?」

 

セイントバハムートだあああああ!! セイントバハムート!! 自らの引退に花を飾りました!!

2着はエアリアルペガサス、惜しくも連覇はなりませんでした。

3着はグランドユニコーン……でしょうか? G1レース219回目の挑戦でしたが、今回も悲願はなりませんでした。

 

 

「ああああ……。ま、わかってたんだけどね。妥当ではあるし……。外したけど」

 

「またレースですか?」

 

蒼乃は河原にいたその人物に話しかける。

銀髪ピチピチスーツのナイスバディ、そして背中から蝶のような羽根をのばした女性。

風景から浮いてるその人物は蒼乃の方を向き、穏やかな笑みを作る。

 

「いいわよレースは。あらゆるドラマを背負って、全員が勝ちを目指し、そして勝てるのは一人だけ……。あなた達の世界にも競馬ってあるでしょ。いいわよね。あらゆることに大金が動く世界なのに馬は何も知らないってのがいいわ」

 

「……そんなこと話されても困ります」

 

「馬券は二十歳(ハタチ)になってから!!」なんて補足していたが、大きなお世話である。

それよりも今、大切なことがある。

 

「自称妖精……魔法少女っていったい何なの?」

 

「あら? 魔法少女は魔法少女でしょ? いまさら何を言ってるの?」

 

「……答えになってません」

 

蒼乃が自分の玩具箱を漁って気づいた事実。

魔法少女と名前の付いた作品に蒼乃はこれまで触れてこなかった。

何となくあやふやなイメージを持った「魔法少女」というものが実際に存在した。

そんな風に今までは思っていた。

 

 

おかしい。

 

 

「魔法少女」は誰かが作り出した作品の名前だ。

最初がアニメなのか漫画なのか知らないが、そこは重要ではないだろう。

とにかく少女が変身する作品に、そういう名前を付けた。

 

 

ここで疑問が生まれる。

 

 

現実(・・)で「魔法少女」を名乗っている少女は「魔法少女」ではなく「魔法少女を名乗っている少女」であるはずなのだ。

だって、現実に魔法少女は存在しないのだから。

たまたま発現した能力(ちから)が、たまたまこの世界に既にある創作物と同じものだった――そんな確率は限りなくゼロに近いはずだった。

 

だとしたら、魔法少女――いや、桃神司はいったい何なのか。

 

 

「答えてよ、自称妖精。桃神さんに魔法少女を名乗らせたのはあなた? だとして、なんで桃神さんは魔法少女みたいな力を出せるの?」

 

「説明は面倒だし嫌われるのよ~。ちなみに説明しなかったらどうする?」

 

「……もう協力しません。桃神さんにもやっぱり自称妖精は信用できないって言いふらします!!」

 

「あらあらそれは大変ね」とにっこりと笑みを浮かべる自称妖精。

……実際、蒼乃がやっているのは交渉の真似事、ごっこ遊びのようなものだ。

 

既に柿原と苺谷という協力者を得ているのだから、ここで蒼乃が離脱しても自称妖精には痛くも(かゆ)くもない。

そもそも桃神を自称妖精から引き離したとして、未成年である蒼乃に桃神の面倒を見ることなど不可能だ。

少し和解したとはいえ親だって許さない。

「唐突に現れたヒロインと一緒に暮らします」なんて、それこそ夢物語だろう。

 

蒼乃だってこれで自称妖精の本心を引き出せるとは思っていないが、これ以外は思いつかなかったのだ。

だからこれで上手くいかなくても仕方がないと思っていたのだけど――。

 

「いいわ、蒼乃さん。そこまで気づくことができたのなら教えてあげましょう。あなたに『魔法少女』が何なのかを、ね……」

 

自称妖精の瞳はどこまでも透き通っていた。

 

 

 

 

「魔法少女が何なのか……一言でいえば想いの力で戦う存在ね」

 

「だから!! そういうことを聞いてるんじゃなくて……!!」

 

「そういうことなのよ。蒼乃さん、あなたは想いの力って何だと思う?」

 

「だからそれは……!!」

 

ふと気づく。

そういえば何なんだろう。

 

答えあぐねる蒼乃に自称妖精は不敵な笑みを見せる。

さながら人間を困らせるためにイタズラをする妖精そのものだった。

 

「想いの力……それは『主観』の力であり、『認識』の力よ」

 

「主観……? 認識……? よくわからないですけど、そんなものが力になるんですか?」

 

「あなたの疑問ももっともね。あ、わからなかったら適当に聞き流してくれていいから」

 

そう言われると意地でも理解したくなる。

蒼乃実里は根っからの反抗者(レジスタンス)なのだった。

 

 

「発端は別の時空にモンスターが現れたことね。既存の物理法則を超越したその脅威まさに『モンスター』。対抗策はなし。そんな連中は星のある一点を目指していた。どういうわけか知らないけど、そこに達したモンスターは力を強めて、その宇宙ごと滅ぼした(・・・・)のよ」

 

 

断定形。

「どうして宇宙が滅びるとわかるのか?」という問いは、「実際にそうなったから」というわけだ。

 

蒼乃と桃神が初めて会った日、カフェで聞かされたことだが、改めて考えると身震いする。

 

 

「宇宙を滅ぼしたモンスター達はさらに別の宇宙に移動する。やつらの目的はわからないわ。もしかしたら全部の宇宙を滅ぼすつもりなのかも。でも、力が生まれればそれに対抗する力も生まれるのよ」

 

「それが……魔法少女?」

 

「いいえ、『認識』の力よ」

 

蒼乃自身、自分の問いが意味のないものだと気づく。

それを魔法少女だと定義したなら、最初の疑問に戻ってしまう。

『対抗する力』が『魔法少女』のようなものである必要はないからだ。

 

 

「認識の力は人によって取る形が違う……。桃神の場合は、それが『魔法少女』だったということよ」

 

「つまり……」

 

「桃神が戦う力として『魔法少女』をイメージしたから、桃神は『魔法少女っぽい力』で戦っている。そういう話よ。そして、その根源たる『認識の力』は『魔法力』……あなた達の考えるところの魔法とでも考えてもらったらいいわ」

 

なぜ桃神が魔法少女っぽい力で戦っているのか?

答えは桃神が『そういう姿』をイメージしたからだ。

 

だからきっと戦っている時のドレスもハンマーも力の本質ではない。

そういう姿を取っているだけなのだ。

 

 

「『魔法力』はモンスターに対抗する唯一の力だけど、使える者も限られていた。だから同じ『魔法力』から産まれた存在である私がナビ役として彼女をいろんな時空に連れて行ったのよ。納得?」

 

「……」

 

言いたいことはわかった。

桃神は別に騙されてるだとかではない。

 

この妖精は力の化身。

いわば星が産んだ抗体だ。

 

だからその行動原理に悪意はない。

純粋に世界(時空)を守るために最善の策を取っているだけだ。

 

でも、納得はできなかった。

 

 

「桃神さんは……もともと普通の女の子だったってことですか?」

 

「ええ、そうよ」

 

「だったら!! やっぱりそんな子を戦わせるなんて……!!」

 

自称妖精が首を振る。

 

 

「彼女自身が望んだことよ。というより、逆ね。『そういうことを望むような子でなければ、モンスターを倒すことはできない』 だって魔法力は認識の力だもの」

 

「でも……だからって……」

 

「安心して蒼乃さん、私はこの戦いが終わったら桃神を解放するつもりよ。それに決戦の時は近いわ」

 

「え……!? それってどういう……!?」

 

「究極変身よ」

 

 

――究極変身。

『魔法少女』も『モンスター』も表と裏、二つの意味合いがあった。

だから蒼乃は聞く。

究極変身とは何なのか? と。

 

 

「『究極変身』はモンスターの親玉と戦うための力……そのために私は準備を進めてきた」

 

銀色の髪が、風になびいた。

 

「完全に『浄化』するのよ。モンスターをこの『世界』から、ね」

 

 

 

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