魔法少女桃神司   作:MOPX

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幻想通信

 

その日は両親とみっちり話し合うことになった。

 

学校で困ってることは何一つない。

友達を探していたと、正直に答えた。

以前の私なら「何となく散歩に出た」とか答えてお茶を濁していただろうけど。

 

……親子の仲は思っていたほど悪くなかったらしい。

さすがに納得はしていないようだったが、「今日は疲れてるだろうしまた話しましょう」とそういう結論になった。

 

 

……考えてもみれば柿原さんも「私達の仲だから」と言っていた。

どうもこれまで(・・・・)の戦いで繋がれた人間関係というのは、残っているようだった。

 

でも――。

 

「あの子がいないんじゃ……何も意味なんかないじゃない……」

 

部屋に戻ると、思わずそんな言葉がこぼれた。

桃神司は存在していなかった?

納得なんてできるはずがない。

 

事実がどうであっても、どんなに可能性がか細くても。

私は絶対に桃神さんが戻ってくる方法を探し出す。

 

スマートホンが震えていた。

 

「ん……」

 

何か連絡か。

……あの妖精が何か仕込んでいるかもしれないから警戒して手に取る。

 

ダイレクトメッセージは柿原さんからのものだった。

「ボイチャええか?」などと書いてある。

 

……どうやら私、柿原さん、苺谷さんでグループが作られていて、そこで話そうということらしい。

もしかしたら二人の記憶も戻っていて、桃神さんを探す手がかりになるかもしれない。

 

 

「もしもし……」

 

『あ!! 蒼乃てめえ!! もしもしじゃあねえんだよ!! 天然かよ!!』

『ごめんね蒼乃さん!! 恵がめちゃくちゃ心配してたから直接話そうって……!!』

 

『そういうことは言わなくていいんだよ!!』と柿原さんがワチャワチャしている。

とりあえず、二人には言っておくべきことがあるだろう。

 

 

「二人とも、心配かけてごめん」

 

含みのある沈黙。

ちょっとバツが悪そうな声が返ってきた。

 

『や、別にいいよ。さすがにちょっと責任感じたしな……私も』

 

『クラスの人から笑われて、それで蒼乃さんどっかに行ったんじゃって不安だったんです』

 

そういうことか。

確かに二人の視点だと、ちょっと口調が強めの会話の後に私が学校を抜け出したことになる。

私が思ったよりも元気そうで二人とも安心してる様子だった。

 

『いや、ほんと~に今、物騒なんだからな!! 私らくらいの子が一人でうろうろしてるなんてそれだけでアブねえよ……』

 

『クラスの人たちも情緒不安定って言ってましたけど……ああいう言葉でウケを取るの、良くないと思う。……困ったことがあったら何でも(・・・)相談してください。私達、友達じゃないですか』

 

――何でも。

――それなら。

 

 

「じゃあ、早速だけど……あなた達、何か思い出した? 桃神さんのこと」

 

再び沈黙。

今度は心なしか空気がひんやりとしている気がする。

 

『だぁかぁらぁ……。そのネタはもういいんだって。滑ったネタを繰り返しても寒いだけだぞ』

 

「ネタなんかじゃない!! 麻雀は四人で打つものでしょ!? 四人で打ったことだってある!! 私達が仲良くなれたのも桃神さんのおかげなのにどうして忘れちゃったのよ!!」

 

『麻雀は三人打ちのが面白れーし!! というかその桃神っての止めろって言ってるだろ!? お前は妄想の友達と現実の友達どっちが大切なんだよ!!』

 

「も、妄想の友達ぃ~!? 今のは完全にライン越えよ!! もういい!! 桃神さんもあなた達もどっちも大切だったけど、もういい!! 話はオシマイオシマイ!!」

 

『ああいいぜ!! また明日な蒼乃!!』

 

スマートホンを思いっきり振り上げる。

床に叩きつけてやろうと思った瞬間、苺谷さんの声が聞こえてきた。

 

『ま、待ってくださいーーーー!! 二人とも!! ちょっと落ち着いて!!』

 

腕を止める。

そうだ。

私はもともとクールな性格だった。

ここは苺谷さんの話を聞こう。

 

 

『蒼乃さんの話では私達はその桃神さんのことを忘れてるって話ですよね? これって物語とかによくあるやつじゃあ』

 

「桃神さんは物語の存在じゃない……!! 苺谷さん、あなたまでそんなことを言うの!?」

 

『は、話をよく聞いてください……。私いま、だいぶ歩み寄りましたよ……』

 

考えてもみれば苺谷さんは毎週日曜日にやっている朝の女児向けアニメを見ているんだった。

だからこうした話をちゃんと聞いてくれる人なんだ。

 

こうした事実を知っているのも桃神さんのおかげだ。

頭の片隅にこの記憶が残っていたからこそ、私は苺谷さんの声で手を止めることができた。

そうでなければ、今頃スマートホンは粉々に砕け散っていたかもしれない。

 

 

『……蒼乃さん、話を聞いてます?』

 

「え、あ。ごめん聞いてなかった……」

 

『あなたって人は……!! そんなんだから私達以外友達いないんですよ!!』

 

グサグサくる。

いや、今は桃神さんが大変だから気にしないんだけど。

 

 

『とにかく!! もしも本当に私達の記憶からその桃神さんって人のコトが消えてるんなら、それを確かめる方法はないんです!! だったら蒼乃さんの話を聞いても良い気がします!!』

 

「苺谷さん……!! あなた……!!」

 

『というかいきなり魔法少女が現れて友情を育むなんて蒼乃さんにはない発想ですよ。だからきっと実際に起こったことで……』

 

「おい!!」

 

それじゃあ私が野蛮な人間みたいじゃないか。

『じょ、冗談ですよ……』と弁解する声が裏返っているが、まあ流しておこう。

 

 

『……やっぱり寂しいじゃないですか。どこかに忘れ去られた女の子がいるなんて。もし本当にいるなら……手を差し伸べたいです』

 

「苺谷さん……!!」

 

『おいおいおいおい!! 何だこの流れ!! これじゃあ私が理解ない女みたいじゃん!!』

 

柿原さんの声が聞こえる。

そんなこと言われても現実にあったんだからしょうがない。

 

でも、柿原さんのような反応をするのが普通なのかもしれない。

だから――。

 

 

「柿原さん、あなたは降りてくれていいわ。私と苺谷さんは桃神さんを探し出すまで一生諦めないから」

 

『ええ……。何だその言い回し……。というか重すぎてマジで理解できなんだが……』

 

人からどう言われたっていい。

私が抱えているこの想いが、柿原さんに正しく伝わるなんて思えない。

 

それでも正直に、まっすぐに言うしかないんだ。

私にはこれくらいのことしかできないから。

 

『はあ~~~~。本当にしょうがないやつばっかだな……。わかったわかった』

 

「え……? じゃあ……!!」

 

『まあ彩と蒼乃でやってたら事故りそうだしな。信じるよ。……半分くらいだけど』

 

「半分なら十分!!」

 

信じてくれたらそれが何よりの力になる!!

……なんて考えて思わず笑みがこぼれてしまった。

 

まるで本当に魔法少女みたいだ。

少しだけ、希望が湧いてきたのを感じる。

 

これなら桃神さんを探し出すことだって――。

 

 

『で、どうすりゃいいんだ?』

 

「え?」

 

『え? じゃあないだろ……。その桃神さんを探すために私達はどうすればいいんだって聞いてるの!!』

 

「……」

 

脂汗が出るのを感じる。

そうか。

私はだいぶ根本的なことに気づいていなかった。

 

そもそも、何をすればいいのか。

 

それはもちろん――。

 

 

「これから考えるわ」

 

『あ、蒼乃さん……それは……』

 

『あーーーーはいはい!! そうだと思った!! 今日は解散!! 風呂だ風呂ーーーー!!』

 

会談は終わってしまった。

私はベッドに倒れ込む。

 

このまま何も思いつかなければ、ずっとそのまま?

何かしているというポーズだけ取って、その実、桃神さんには一歩も近づけない。

 

そんなのはイヤだ。

でも、どうしたら――。

 

「諦めない……私は絶対に……諦め……」

 

私の意識は闇へと落ちていく。

抗うように記憶を必死に掘り起こす。

 

やがて私は辿り着いた。

いつか見た夢――過去の記憶に。

 

 

 

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