魔法少女桃神司   作:MOPX

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少女たち

 

私と司ちゃんが元の世界に戻ると、恵と彩が泣いて喜んでくれた。

どうやらずっと待っていてくれたらしい。

外は陽が上って来たのか薄明りに包まれている。

 

空のヒビは痕跡を探すのさえ難しい。

まるでそんなものは最初からなかったと言わんばかりに。

 

まずは司ちゃんがどうすればいいかという話になった。

私含む三人はそれぞれ家に帰ればいいけど司ちゃんは――なんてみんなでうんうん唸っていたら、司ちゃんが意外なことを言い出した。

 

「自分の家がどこにあるか、思い出せたかも」と。

 

四人で行ってみれば、家の前には『桃川』の表札。

呼び鈴で出てきた司ちゃんの母親は泣き崩れるように司ちゃんに抱き付いた。

今までずっと探していたのに気付くことができなかったのは、自称妖精がした悪さのひとつだったのだろう。

 

当事者である私達はことの顛末(てんまつ)とかをいろんなところで説明することになったのだけど……愉快な話ではないので省略。

 

世界を守った戦いは、私達四人だけの秘密となった。

 

あれ以来、私と司ちゃんは変身することがそもそもできなくなったし、モンスターも少なくとも私達の気付く範囲(・・・・・・・・)では現れることはなかった。

妖精も私達が元の世界に戻った時を最後に姿を現わさなくなった。

 

でも、あの日々が夢でも幻でもないことは確かだ。

隣にいる司ちゃんと手を繋ぐ度にそれを実感するのだ。

 

あわただしい日常の中で月日は流れていく。

 

某月某日。

 

某県某市にも春が訪れた。

 

 

 

 

「おはよー!! 実里ちゃん!!」「おはよう、司ちゃん」

 

朝一番から元気な声。

学校に復帰した司ちゃんとはこうして毎朝いっしょに登校している。

 

「……」

 

「どうしたの? 実里ちゃん?」

 

「いや、セーラー服やっぱり似合ってるなって」

 

「ふふ、ありがと!! 実里ちゃんもだよ!!」

 

そう言って私の手を取る。

毎朝こんな感じである。

 

司ちゃんが幸せそうならそれが何よりだ。

だから、普段クールな私がふにゃけた笑顔になってしまうのも無理もない話なわけで…。

 

「なーにベタベタしてんだお前ら」

 

……。

 

恵がすごいジト目で割り込んできた。

横で彩が「おはようございます」とペコリと頭を下げている。

 

私達四人は今、同じクラスだ。

こうしていっしょに登校している。

 

「あーはいはい。邪魔して悪うございましたねえ!! いいもん!! 私は彩とイチャイチャするし!!」

 

「ちょ、ちょっと恵!! 公道で抱き付かないで!! 恥ずかしい!! 実里と司も見てないで止めて!!」

 

べちーんと引き剥がされる恵を見て私と司ちゃんから笑みが漏れる。

何のことはないやり取り。

でも、私達はこれがどんなに尊いことか知っている。

 

ちなみに恵と彩も私達のことを「実里」「司」と呼ぶようになった。

「ミノリン」でも別によかったのだが「お前もうそんなキャラじゃないだろ!!」とのこと。

なぜだ。

 

 

そうしていつものように通学路を歩いていると、恵が真剣な顔つきになった。

恵はけっこう根が真面目であるらしく、司ちゃんのことを「妄想の友達」呼ばわりしたのをずっと謝っていた。

本人に直接言ったわけではないが、この気さくな麻雀好きの中ではずっと引っ掛かっているらしい。

 

だから、今回も重要な話であることは察せられた。

 

「結局、モンスターってやつはもう現れねえのかな。モンスターの親玉の親玉ってやつは倒したんだろ? でも親玉の親玉の親玉とか出てきたらどうすんだ……?」

 

司ちゃんの顔がわずかに曇る。

きっとそれは責任感の大きさからだ。

 

今までずっと世界を守ってきたから、自分が何とかするべきじゃないかと思っているのだ。

……そんなことする義務、もうないのに。

 

私が何かを言おうと思ったら先に声が上がった。

彩だった。

 

「大丈夫ですよ。次に何か現れたら私と恵が魔法少女に変身して戦いますから!!」

 

「わ、私もお!?」

 

ワチャワチャしだす恵と彩。

でも決して冗談ではないだろう。

 

司ちゃんの肩に手を乗せる。

 

「良い友達を持ったよね、私達」

 

「うん……!!」

 

「コラッ!! そこイチャイチャするなって!!」

 

「まあいいんじゃいんですか? 司はこれまでずっと大変だったんですし」

 

よし、と私は声を上げた。

 

「司ちゃん。やりたいことある? これから四人でさちょっとずつでもやっていこうよ」

 

「やりたいこと? うーんと……」

 

 

 

「麻雀もやりたいしとカフェも行きたいし、温泉、山登り……。DIYにも興味あるし、吹奏楽なんかもいいよね!! ロケットを飛ばすのも楽しそうだし~あとはキャンプとライブと……」

 

「多いね!! いいことだけど!!」

 

「あ、あと!! これは私が頑張りたいことだけど……!!」

 

「何?」と私達が耳を傾ける。

注目を集める少女は少し照れくさそうに答えるのだった。

 

 

「絵を描いてみたいの。私が見えてるものを、みんなとも見てみたいって思うから!!」

 

「うん……!! 応援する……!!」

 

「実里ちゃんは?」

 

「え? 私? 私かあ……。うん、司ちゃんがやるなら私も挑戦しよっかな」

 

短めの黒髪。

そこからちょびっと伸びるくせ毛を揺らして、私の友達は笑顔を見せた。

 

 

 

あの時の戦いで持ち帰った想い出の品。

私達を代表して司ちゃんが大切に持っているそれらに、私がのものであった落書き帳もある。

 

やっと思い出せたこと。

私は司ちゃんの絵を破いてしまった後に、絵を描いていたのだ。

白いページに、桃色の色鉛筆を走らせて。

 

そうしていたら司ちゃんが帰ってきてくれるんじゃないかと思って。

見てもらえたら仲直りできるんじゃないかと思って。

司ちゃんが喜んでくれるんじゃないかと思って。

 

そこには桃色の魔法少女が描かれていた。

きっと、私が初めて誰かのために描いた絵だった。

 

 

 

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