転生巫女と呪いの部屋 作:空翔ける石ころ
そういえば、主人公ちゃんの名前は
自分でも「おとか」とか読んじゃうからルビふろーって思って忘れてました。
「音花〜!!!元気でね…!!手紙書くからね!!」
「あはは…ありがと、奈々美。私も書くよ」
うわ〜んという擬音が聞こえそうな勢いで抱きついてくる友人に、私は苦笑いを浮かべた。
今日は留学のためにイギリスに旅立つ日。この数ヶ月でしっかり準備を終えて、万全な状態だ。
そしてなんと、私は向こうで家を持つことになったのだ。ホグワーツの寮があるから必要ないと私は言ったのだが、母も祖母も万が一のためにも家はあると安心だと言って、なんでもイギリスで祖母に借りがあるという方にご親切にしていただけるらしい。実際のところ、私は自分だけの別荘を持てたような気分になりワクワクしている。
マグルの飛行機を利用するために空港に来ているのだが、家族や友人、マホウトコロの先生方まで見送りに来てくれていた。周りから浮かないようにマグルに合わせた格好をしている皆はなかなか新鮮だった。
「ほら、奈々美。あんまり引き留めてたら音花がヒコウキとやらに乗り遅れるぞ」
「うー…寂しいよ音花〜!!…ちゃんと休暇に帰ってきてよ?」
ずっと離れてくれない親友の奈々美を、同じく親友の圭人が見かねて引き剥がしてくれる。
二人とも私と同じく方位神四家の跡継ぎで、奈々美が未申の九条家、圭人が戌亥の諏訪家だ。最初はお互い親の勧めで友達になったのだが、思ったよりも息が合い親友としてよく一緒にいるようになったのだ。ちなみに辰巳の清水家だけは私たちと年齢が合っておらず、去年二十歳になった息子さんが跡を継いでいた。それなりに仲良くしてもらっているお兄さんなのだが、今日は仕事で来れなかったみたいだ。
ようやく離れた奈々美と彼女の肩をがっしり掴んでいる圭人に、私は微笑みかける。
「ちゃんと帰ってくるから。二人とも元気でね」
「ああ、頑張れよ。音花」
「…手紙もね?忘れないでね!?」
「わかったってば」
私たち三人のやりとりを家族と先生方が微笑ましそうに見つめている。
飛行機の搭乗時間が迫っているのを確認した私は、改めて全員に向き合うと姿勢を正した。
「それでは行ってまいります!」
「行ってらっしゃい、音花!」
「くれぐれも体には気をつけるのですよ」
「花山院には期待しているぞ」
皆から激励をもらい後ろ髪を引かれる思いをしながらも、私は搭乗口に向かう。
飛行機に乗る直前にチラと振り返ると、全員がまだこちらに手を振っていて、私はクスリと笑ってしまった。
***
「わあ…思ったより大きい…」
私はとある一軒家の前に立ち、感嘆の声をもらした。
ロンドンの空港からここまで案内してくれた男性が、私の隣で笑い声をあげる。
「はは、ここが今日からしばらく君の家だよ」
「こんな立派な場所、本当にお借りして良かったんですか?」
「なに、君のお祖母様には命を救ってもらったことがある。それに比べればこのくらい大したことないさ」
この男性が、私の祖母に借りがあるという人。なんでも、仕事で日本の魔法界に行った際にトラブルに巻き込まれ、その時に命を助けてもらったんだとか。
男性は私に鍵を差し出しながら、笑顔を浮かべた。
「この家にはしもべ妖精もいるんだ。もうすでに、君が在学中は君に仕えるよう命じといたから、何かあったら頼るといい」
「なにからなにまで…本当にありがとうございます」
私がペコリとお辞儀をすると、男性は物珍しそうな顔をして言った。
「君のその礼儀正しさ、君のお祖母様にそっくりだね」
ガチャ
「お邪魔しまーす…じゃないや。一応、私の家なんだった」
男性と別れて家に入った私は、早速家中を探索した。
男性の言う通り、普通の家にあるような家具は全て揃っており、2階や客間までしっかりある、11歳の子供には持て余す家だった。
「ひえ…こんないいところ、私なんかが使っていいのかな…。そもそも借りがあるって言ったって、私じゃなくてお祖母様じゃない…」
居間に突っ立ってそんなことをブツブツと呟いていると、不意に声をかけられた。
「これはこれはお嬢様。もういらっしゃっていたのですね」
「ひょえ」
驚いて振り返ると、可愛らしい顔をしたしもべ妖精がこちらを見上げていた。
…変な声出しちゃった。ていうか、独り言聞かれてたかな…。
「も、申し訳ありません。急にお声がけしてしまい…」
「あ、大丈夫!大丈夫だよ、えーっと…」
「
「ジュリーって言うんだ…いい名前だね。こちらこそよろしくね、ジュリー」
ペコリとお辞儀をするジュリーに、私も思わずお辞儀し返してしまった。
それを見たジュリーが、なぜか感動したように目をうるわせ始めた。
「ああ…日本のお方はとても礼儀正しいお方が多いと主様より伺っておりました。ですが、私めにまで頭を下げてくださるなんて…お嬢様にお仕えできる私はとても幸せ者でございます」
「あはは…大袈裟だよ」
私は苦笑しながら、ジュリーを観察する。日本の魔法界にもハウスエルフは存在することはするらしいのだが、メジャーではないのか見たことはない。やはり実際に見るとなかなか個性的な見た目をしているが、ジュリーは私の知っているドビーやクリーチャーよりも目や耳が小さい気がした。名前的にも女の子なんだろうか。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。お嬢様のご到着に合わせてお食事を用意しようと、少々買い物に出掛けておりまして…」
「そっか、こっちじゃちょうどお昼時だね」
日本を出発したのは朝だったので、時差も含めてロンドンだとちょうど12時。飛行機の中でお昼ご飯を食べたのになんだか変な気分だ。飛行機の中をほとんど寝て過ごしたおかげで、あまり時差ボケはしていなかった。とはいえ、お腹は空いているので、食事はお願いすることにした。
「それじゃあ、私は荷物の整理をしてるから、ご飯ができたら呼んでくれると嬉しいな」
「承知いたしました。このジュリー、お嬢様のために腕を振るわせていただきます」
ジュリーはまた恭しくお辞儀をすると、キッチンの方へ歩いて行った。
私は早速友達(?)が出来たことにホクホクしながら、自室にした2階の部屋へ上がるのだった。
「んむ…!お、美味しい〜!」
「ああ、なんという光栄でございましょう…そんなに美味しそうに食べてくださるなんて…」
ジュリーが作ってくれた食事はほっぺたがおちるほど美味しかった。しかも、私の好みに気を遣ってくれたのか、めちゃくちゃ和風なメニューだった。こんなものを作れるなんて…ハウスエルフってすごい。
ジュリーがまた目をうるわせてこちらをじっと見てきているが、そんなことが気にならないくらい夢中で食べた。
「あ〜美味しかった!ジュリー、ありがとう!ご馳走様でした」
「お口にあったようで何よりでございます!」
大満足した私は手を合わせてジュリーに感謝を述べる。ジュリーがニコニコしながら食器を片付け始めたのを横目に席を立つと、ふと居間の壁に飾ってあるカレンダーが目に止まった。
「ねえジュリー、このカレンダーって自由に使ってもいい?」
「勿論でございます。この家にあるものは全てお嬢様の自由でございます」
「ありがとう!」
ジュリーに許可をもらった私はペンを取り出し、カレンダーに直近の予定を書き込んだ。これは私の前世からの癖で、この日は手術、この日はリハビリ、なんて書くようにしていたら習慣づいてしまったものだ。
今日はホグワーツ入学の三日前。入学の日に丸をつけたあと、学用品を買いに行く日にもメモを書き込む。
「…これでよし、と」
ああ、入学の日が楽しみだな。
私はニンマリと笑顔を浮かべながら、カレンダーを見つめた。
─────1984年8月と書かれたカレンダーを。
音花ちゃんは気づかない
プロローグ二話くらいでおさめるつもりだったのに無駄に長くなりました。
私が続きを書けば続きます()