Tiny Dungeon ~next to generation~ 作:いどさん
というわけで更新ですー
※ダミーシルエットの説明を追加、変更しました!
「まあ、ダミーシルエットっていうちょっとした魔法があってな。まだまだ未完成な上に、俺は儀式兵器を軸にしないと作れないから今の段階じゃほとんど実用的じゃないんだけど、今回は役に立ったな」
から
「あ、あの仙城君、お怪我は」
までが変更、追加分です。
夕刻はすぐに訪れた。
ノート姉さんたちに案内されて俺たちは丘に向かうとすでにバレッドは来ているようだった。
決闘の立ち合いはノート姉さん。
観客は先輩たちにエル、リノ、それ以外に食堂で話を聞いていたのか何人かの生徒が集まっている。
全員で20人弱ってところだろうか。
「来たか」
「あぁ、決闘を反故にしたりはしない」
「二人とも、準備はいいですか?」
ノート姉さんが最後の確認を行う。
「うん、大丈夫だ」
「問題ない」
「それでは」
ノート姉さ んの合図を俺たちは両者互いににらみながら待つ。
「はじめ!」
合図を皮切りに俺たちは同時に動き出した。
---
管理人さんの合図で戦闘が始まる。
私は不安だった。
正直、私は仙城君が女子寮に来ることになった理由にはだいたい想像がついていたのだ。
多分、仙城君が女子寮に来ることになったのは私のせい。
私がただの人族だったなら何も問題は無かっただろう。
けれど、私はリノ・ルイヴィス・A・ヴァーモント。
人族代表キンストン・ルイヴィス・A・ヴァーモントの娘なのである。
この事実は私が気にしなかったとしても周りはそうは見ない。
私のことは人族の代表の娘として見るだろう。
そしてそういう風に見た学園側の処置が、仙城君ということなんだろう。私のおもり役、というわけだ。
よくはわからないけど仙城君は学園長とも知り合いみたいだしまさしく適役だったのだろう。
だから、彼がここにいるのは私のせい。
そして彼が今戦っているのも私のせい。
申し訳ないという気持ちがこみ上げてくる。
そしてそれ以上に彼をこんな戦いに巻き込んで傷でも負ったらと、不安になる。
でも今の私じゃ何もできない。
何もできない私自信を変わるためにここに来たはずなのに。
何も変われてない。
それ以前に世話まで焼いてもらってしまっている。
「……っ」
だから私はギュッと目を閉じて祈った。
仙城君が無事でありましように、と。
今の私には祈ることしか、できないから。
「大丈夫ですよ」
私の表情から気持ちを察したのか管理人さんが私にやさしく囁く。
「青葉君は強いですから」
管理人さんの言葉にあっけにとられて私はまたなにも返せずにいる。
「お手並み、拝見させてもらおうやリノちゃん。青葉はそう簡単には負けへんと思うで」
あたふたしていると隣にいるエルちゃんからも声が飛んでくる。
そんな二人を見て、私も目をつぶらずにしっかりこの戦いを見ようと思った。
そうだ、さっき食堂で自分で言ったばかりじゃないか。
あの入学式の時の青葉君のような勇気を私も身につけなくちゃいけない。
それなのに、青葉君に目を向けずに閉じてるなんてダメだ。
私はあの人に助けられるためにこのトリニティに来たんじゃないのだから。
私はしっかりと目を開いて二人の戦闘を見始めた。
---
合図と同時に俺は走り出した。
走りながら魔法の詠唱を行う。
バレッドの武器は長槍のようだ。
悠然と構えており、こちらに向かってこない。
かすかに魔力光が光る。
バレッドも魔法の詠唱をしていたようだ。
「炎の矢!」
よく使われる戦闘魔法だ。
系統によって種類もある矢ないし槍系魔法だがある意味では基礎レベルの魔法だろう。
「こりゃまたたくさん撃ってきやがって!」
だが数が尋常じゃなかった。
ゆうに30本は放ってきてるレベルである。
もはや矢の雨だ。
魔族の血族の大量にある魔力を使った物量作戦。
バレッドは速攻で勝負を決めるつもりらしい。
というより、正直この一手はかなり予想外だった。
魔族に関して言えば魔力の総量は高いが魔力運用に関しては神族などに比べたらそれほどうまくはない。
なので力の強い魔族といえば力任せな大規模魔法を放つというイメージがかなり大きい。
デイル兄さんなんかはかなり魔力効率をうまく操るが、それは魔族の中では珍しい部類だろう。
そういうこのバレッドもいわゆるその例外に入る部類のようだ。
炎の矢自体はそれほどだが、あれだけの数を撃つとなるとかなりの魔力制御力が必要になる。
神族に並べるほど、魔族ではトップレベルといっても過言ではないほどの魔力制御力だ。
そんな力を持った奴が魔王の血族特有の莫大な魔力を持っている。
これはかなり厄介な相手かもしれん。
そう考えつつも、俺もそう簡単にやられてやるつもりはない。
一瞬で反撃の一手を組み上げ、実行に移す。
「水の槍!」
とっさに魔法を組み上げ水の槍を放った。
いくつかの炎の槍とぶつかり水が蒸発して霧を生む。
「ちっ!」
一瞬の目くらまし。
バレッドが舌打ちする姿が最後にちらっと見えた。
俺の放った水の槍は大体炎の槍が来る位置はわかっていたから計算通りの数を相殺できたようだ。
だがそれでも炎の槍は全部かわしきれないのでいくつかは被害を最小限にするため刀で逸らしながら次に準備していた魔法を発動する。
「韋駄天、発動!並びに風の回廊、展開!」
俺が掛けた魔法によって俺の速度は跳ね上がる。
そして空中に固定した空気を蹴り上げ、俺は残りの炎の矢を空中で回避する。
正直刀で逸らしたとはいえ炎であるがゆえに服が焦げ付いて少し傷を負ってい るがこの程度は何でもない。
「煉獄の爆風!!」
先ほどの水蒸気をバレッドは強力な風魔法で一気に跳ね飛ばした。
「!?どこだ!仙城青葉!」
完全に俺を見失っているバレッドは周囲にいない俺を必死で探している。
俺はバレッドの真上くらいの位置から自然落下し魔法を唱える。
「月華の氷槍!!」
「な!?」
ドォン!!と大きな音を鳴らして俺の魔法がバレッドに直撃する。
俺はかけておいたままの風の回廊を使って地面に着地し、同時に自分にかけていた風の回廊の魔法を解いた。
バレッドの方を向くと膝をついて苦しそうにしているのが見えた。
それなりに強力な魔法を打ち込んだんだ。
流石に反撃してこないだろうと高をくくっていた。
勝負は割と一瞬で着いたなと 俺が考えているとノート姉さんが宣言をする。
「バレッド・ジンス戦闘不」
「まだだ!!」
まさしくノート姉さんが戦闘不能と言いかけた瞬間、その言葉はバレッドによって遮られた。
バレッドはゆっくりと立ち上がりこちらをにらむ。
「私はまだ負けていない!」
するとバレッドが周囲を圧倒するほどの魔力を放出する。
みれば背には黒い、6枚の羽根が生えていた。
今のヴェル姉さんは10枚羽だ。
だがもともとは8枚羽だったと聞くし、トリアさんも8枚羽だ。
ヴェル姉さんが10枚羽になったのは儀式兵器の進化が理由だって聞いた。
だからヴェル姉さんの10枚は例外として、魔族の最高峰はおそらく8枚。
それには劣るにしても、さすがは魔王の血族。
ラーロン兄さ んと同じ6枚羽とは。
「これからが本番、ってわけか」
そうして俺たちの戦いは二戦目に突入した。
---
「なぁ、青葉の今の魔法って」
カミちゃんが驚きながら二人の戦いを見て皇女ちゃんたちに話を振っている。
「えぇ、あれは紅姫の」
それに対してニコちゃんはどこか誇らしげな顔をしている。
やはり未来から来たニコちゃんたちは青葉くんの戦闘スタイルを知っているようだ。
「えぇ、そうですよ。青葉君の使ってる魔法は紅ちゃんの魔法です」
僕はカミちゃんに種明かしをするようにそう答えた。
「一時期、僕たちが青葉君の訓練に付き合っていましたから。その時に紅ちゃんに教わったんだと思います。それに紅ちゃんの魔法はやっぱり人族に特化してあるところがありますから、青葉君も使い勝手がよかったみたいです。僕やヴェルちゃんも魔法をいくつか教えましたけど一番自分に合ってるのは紅ちゃんの魔法だって言ってましたから」
「なるほどね、でもすごいな青葉君。姫兄と青葉君が会ったのって確か一年前でしょ?その一年で紅さんの魔法を習得しちゃうなんて」
隣で一緒に話を聞いていた巫女ちゃんが関心したように言う。
「えぇ、青葉君はすごく吸収が早いんですよ。だから私たちもすごく教えがいがありました」
今の戦闘、僕が青葉君に訓練していたころよりも動きがよくなってる。
姫君も扉の事があったとはいえ、その成長速度はかなり早いですけどそれに負けず劣らず青葉君も十分すぎるほどに上達速度が速い。
自分の教え子の成長を見るとやはりうれしいものがある。
この決闘に関しては立会人であるため当然公平に二人を見てはいる。
だがそれでも笑みがこぼれてしまうノートだった。
---
ゆったりと顔をあげたバレッドはさっきよりも断然真剣な目で俺を見ていた。
正直に言うとさっきの俺の魔法が直撃したのは間違いなくバレッドの油断があったからだ。
人族なんかに後れを取るはずがない。
どうせこの一撃で終わるはず、なんていう慢心があったからこそ俺の空中からの一撃がきれいに決まった。
だがその考えを完全に捨てきったようだ。
「前哨戦はここまでだ。行くぞ、仙城青葉」
「あぁ、来い!」
そうして、決闘の第二幕が上がった。
今度は両方ともに走っていく。
ガギンッ!!
俺の刀とバレッドの槍がぶつかる。
「ふっ」
ぶつかった瞬間、バレッドが小さな笑みをこぼす。
その顔を見て俺が違和感を感じてすぐに後ろに引こうとしたが遅かった。
「業爆の魔弾!!」
バレッドは槍に添えていた左手を俺にかざして、至近距離でいきなり爆撃魔法を放ってきた。
「ぐふっ」
風の回廊はすでに解除していたが、韋駄天だけはまだ魔法をかけたままだ。
バックステップで辛うじて直撃だけは避けたが、それでもかなりダメージをもらってしまった。
「炎の矢!」
畳み掛けるように魔法を放ってくるバレッド。
今回は大量にではなく5連ほどの的を正確に把握した追撃だ。
「風の、回廊っ!」
何とか魔法を組み上げて必死に体捌きで避けるがわき腹に一撃もらってしまった。
一応ではあるものの軽い魔法障壁は体に掛けているのでこのレベルの魔法なら致命傷にはならない。
だがダメージとしてはかなりいいのをもらってしまった。
俺は必死になりながらバレッドから距離をとる。
が、バレッドはこちらに向かって走って追いかけてきていた。
休んでいる暇はない。
相手の次の一手を読むことに集中する。
俺は反撃に向うでもなくその場で魔法を詠唱し始める。
バレッドがすぐそばに迫った時、俺は魔法を発動した。
「瞬時加速術式、旋風!」
名の通り、瞬間的に動きを加速させる紅姉さん直伝魔法だ。
俺の後ろには魔方陣が展開され瞬間的に強い風が後ろから吹いてくる魔法だ。
それを利用しバレッドの横を一気にすり抜けた後、俺はバレッドの後ろに回り込んだ。
「なに!?」
「行くぞ!!」
その一瞬のすきをついて俺は刀を振りおろす。
ガキンッ!
当然のように槍で防がれる。
もともと俺も当たるとは 思っていない。
だが、バレッドはかなり無理な体制からの防御だったため体制が一気に崩れる。
むしろこれが俺の狙いだ。
一気にバレッドは勢いをなくし俺が畳み掛けるように攻撃を仕掛ける。
「はぁ!!」
ギン!!ガギン!!
俺は相手に反撃されないように何度も剣戟を打ち込む。
無理な体制からの防御だったため俺の攻撃を次第にバレッドは崩れていき、足を踏み外す最後の一手で俺は今までよりも重い一撃を打ち込んだ。
「ぐあっ、……まだだ!」
これも槍で受け止めるだろうと俺は思っていたが、バレッドは体半分をほぼ倒れながら避けた。
いや、実際には直撃を避けたという意味で俺の攻撃はバレッドの肩に当たっている。
だがそれすらも意に介さず、バレッドは半ば倒れながら勢いよく自分の槍を地面にたたきつけた。
ドッガァァァン!!!
「がはっ!」
「ぐぅ!」
槍を地面にたたきつけた瞬間、そこで爆発が起こった。
バレッドが自分の魔力を槍に込めてそのまま叩き付けたのだ。
自分がまきこまれるのも承知で玉砕覚悟の引きはがし。
今ので俺もバレッドもかなりのダメージを負った。
人族の儀式兵器は異常なほどの強度がある。
バレッドもおそらくそのことを知っていたのだろう。
いくら槍に魔力を込めたところで儀式兵器を壊せない。
いくら槍に魔力を込めても身体強化とは違うので儀式兵器を介してでは魔力を込めていようとこめてなかろうと関係がないのだ。
もちろん地面を爆破させたように魔力を放出することはできるだろうが、それを刀と槍がぶつかった時に行えば自分への被害も尋常じゃない。
場合によっては自爆にすらなりうる。
だからこそのこの一手なのだろうがそれにしたっていささか無茶が過ぎる。
下からの爆破だったため、俺は上に吹き飛ばされる。
「風よ、俺を導け!」
なんとか体制を立ちなおしながら魔法を使って地面に着地する。
ノート姉さんに教わった風系魔法だ。
こういう着地時の緊急回避の場合はこういう神族がよく使う身体強化系、体にまとう系の魔法の方が都合がいい。
風の回廊は空気を圧縮して足場を作る魔法のためこういう落下時からの立て直しにはそんなに向いていない。
逆に空中へ駆け上がることに特化している魔法だといっていい。
そして俺は着地と同時に魔法を放つ。
「駆けろ !隼!!」
隼は攻撃が当たればそこで風が起こる魔法だ。
攻撃力はそれほど高くないが立て直しの時間が取れる。
だが一瞬遅かった。
「炎の障壁!」
「ちいっ!」
俺の方が爆発を意識していなかった分着地から反撃の時間が長かったようだ。
バレッドはすでに防御系の魔法を唱えていた。
俺は防がれたことに構わず、そのまま突進する。
「ッ!!くっそ!」
バレッドの防御壁の後ろからかすかに魔力光が見えたのだ。
それ以前にかなりの魔力がバレッドに収束しているのが肌でわかる。
あれを食らってしまえば俺は終わる。
このレベルの魔法を防御できるだけの魔法障壁をはれる自信は正直俺にはない。
だからこそ、俺はバレッドに突っ込んでいった。
だが、爆発のせいで地味に距離が開いてしまっている。
ぎりぎり間に合わない!
「食らうがいい、今現在私の持つ最強の魔法だ!ダーインスレイヴ!!」
バレッドからその一撃が放たれた。
異常なほどの魔力量。
赤く黒い光をばらまきながらレーザー砲のような魔法が一直線に俺へと向かってくる。
「いけない!」
外野にいたノート姉さんが切羽詰った表情でこちらに向けて走ってきているのがちらっと視界の隅に写った。
だがそれでも俺は気にも留めずバレッドの攻撃に向かて走る。
「……未完成版、発動」
そういって俺は儀式兵器である自分の刀を地面に突き刺した。
ドオォォォォン!!!!!
そして周囲にはこの戦い始まって一番の爆音が鳴り響いた。
「終わったな」
バレッドは小さくつぶやく。
完全に自分の魔法を食らう仙城青葉の姿が見えたからだ。
魔法を撃った場所は爆発のせいで土煙が上がっておりどうなったのかは一切わからない。
だが、あれを食らってまともに動けるものなどまずいないだろうとバレッドは確信していた。
そう、まさしく気を許したその瞬間だった。
「氷の鎖!!」
上から声が響いたのだ。
驚いてバレッドは顔を上に上げるとその瞬間に俺が放った拘束魔法がバレッドの体に直撃した。
「な!!?」
自分が拘束魔法にかかったことよりも、俺が健在であることによほど驚いているようだ。
「集え!集え!集え!右腕に集え雷光!!」
まっさかさまに落ちながら俺は魔法を声に出して詠唱する。
落ちる先はもちろんバレッドだ。
そして俺は言う。
「この程度で終わると思うなよ、バレッド!」
「くっ!」
「食らえぇ!!デイル兄さん直伝、零距離雷撃魔法!ライトニングバンカー!!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
爆裂音とともにバレッドの悲鳴が響き渡る。
「がふっ!」
自分で撃った魔法だが真上からの空中で発動なんていう無茶を行ったため俺も少し巻き込まれて爆風に投げ出された。
俺はかろうじて立ち上がり地面に突き刺した自分の刀をとってバレッドの方へ歩く。
この魔法は威力だけは高いが、零距離で打たないと意味がない上に魔力消費が半端ない。
本当に決められるときにしか使えない一撃だ。
「はぁはぁ」
肩で息をしながら歩く。
俺の方もほとんど余力は残っていない。
全く、バレッドのことを無茶だと一切言えない。
俺も相当無茶な戦い方をしたものだ、と内心で苦笑しながらバレッドのすぐ近くまでにたどりついた。
バレッドは当然のごとく倒れている。
もはや起き上がる気力もないようだ。
「ふぅ」
溜息を吐いて、目を閉じる。
いったん落ち着いてからそうして俺は自分の刀を鞘に収めようとする。
その時、バレッドの方で槍を引きずる音が聞こえた。
「はぁ!!!」
音が聞こえた瞬間、もう一度バレッドの方を向くと槍は寸前まで迫っていた。
バレッドの余力を振り絞った最後の一撃。
その攻撃に俺は無意識に反応していた。
師匠に教えてもらって、何度も何度も練習して繰り返して習得した技だ。
「っがあああ!!!!」
槍に沿うように刀が滑り俺に当たるはずの槍の 方向がずれていく。
相手の攻撃を受け流しながらその勢いで相手に攻撃する、切り札。
師匠直伝の、カウンターだ。
俺はぎりぎり、バレッドの喉元で刀を止める。
一瞬硬直する二人。
そのすぐ後にバレッドは倒れこんだ。
本当にすべてを振り絞った一撃だったのだろう。
俺は今度こそ、刀を鞘にしまった。
外野は全員唖然としてこの戦いの最後を見守っていたが、俺が刀を鞘に入れた瞬間、ノート姉さんが高らかに宣言した。
「バレッド・ジンス戦闘不能!よってこの勝負仙城青葉の勝ちとします!」
うおぉぉぉぉ!!!!
その言葉により集まった20人弱の観客の生徒たちから歓声が上がった。
「人族が、他種族の歓声を浴びることになるなんてな」
と自虐的に笑いながら俺は その場に座り込んだ。
流石に少しの間休憩したい。
かなりハードな戦いだった。
「青葉君!」
ノート姉さんたちが走って駆け寄ってくる。
「バレッドに早く回復魔法をかけてやって。気を失ってるようだから。俺はまだ大丈夫だし」
「はい、わかりました」
そういっててきぱきとバレッドに回復魔法をかける。
「ふむ、じゃあ私が青葉に回復魔法をかけてやろう」
そういって一緒に駆け寄ってきたカミシア先輩が回復魔法をかけてくれる。
「あんまりかけすぎるとリバウンドが来るからな、さすがに全回復とはいかないが」
「いや十分ですよ。ありがとうございます」
回復魔法をかけてだいぶましにはなった。
そりゃ疲れが全部取れてるというわけではないがまあ掛けてもらわな いのと比べれば雲泥の差である。
そうしているうちにギャラリーの生徒たちは帰って行ったようだ。
ただ、ギャラリーだったうちの三人くらいがこちらに近づいてきて、
「すごかったぜ!人族ってこんな強いんだな!」
「あ、あのかっこよかったです!」
「なかなか面白いものを見せてもらいました。人族という種族の認識を改めますわ」
そんなような感想を言い残して帰って行った。
やはり、この戦い。
受けた意味は大きかったな。
「お疲れ様やな青葉!ほんますごかったで!こんな激戦初めて見たわ」
エルとリノが二人で俺に近寄ってきた。
エルの言葉にリノもうんうんと大きくうなずいている。
「必死だったけどな。さすがは魔王の血族様だよ、さすがに最後のあれはやばか った」
「いや、けど見てる方は焦ったで。あんなどでかい魔法ぶっ放すんやもん、顔面蒼白なったで。あれどうやって避けたんよ?」
「まあ、ダミーシルエットっていうちょっとした魔法があってな。まだまだ未完成な上に、俺は儀式兵器を軸にしないと作れないから今の段階じゃほとんど実用的じゃないんだけど、今回は役に立ったな」
そう、俺がバレッドの放ったあの魔法をよけれた理由はダミーシルエットだ。
かつてミリオさんが開発し、ノート姉さんに、そして俺に受け継がれた神族の魔法。
ちょっとした、なんて言い方をしたがあれはかなり高度な魔法だ。
魔力運用のレベルも半端ない上にかなり精密な魔力制御が必要になる。
だから俺に受け継がれたとは言ったものの俺はほとんど術式を知っているだけにすぎない。
実際はまともに発動できないし、できるようになるのに何年かかるかわかったものではない。
ただまあ裏ワザというか、なんというか。
俺達人族には儀式兵器がある。
あれは魔力を持っていない人族が魔法をつかうために開発した魂を基にして作られる魔力収集装置だ。
その儀式兵器を軸にして発動したのが今回の自動型ダミーシルエット。
儀式兵器にダミーシルエットの魔法術式を付与し、儀式兵器が収集する魔力によって動くダミーシルエット、というわけだ。
いちいち指示を出さなくていい半自動型の幻術魔法。
もちろんそれ用に術式も少しいじっている。
アミアさん協力のもとだ。
だがまあ正直に言うと俺はこの自動型すら満足に発動できない。
術式もだが、その他もろもろ、未完成なのだ。
現に、この魔法は欠点が多すぎる。
まず何より儀式兵器を軸にしないと成り立たない。
この魔法を使った時点で俺は武器を手放さなければならないわけだ。
そして何より、儀式兵器に込められる魔力量が少ない。
つまり魔法の発動時間がかなり短いということ。
魔力収集装置とはいえ、魔力タンクではないのだ。
儀式兵器の魔力収集速度とダミーシルエットの使用魔力が明らかに釣り合わない。
すぐに許容値を超えてしまうのだ。
まあその辺は別で魔力を付与しておくとか対処はできるのだが、いかんせん俺の魔法レベルはそこまで達していない。
修行不足というわけだ。
ぶっちゃけ今はまだ10秒くらいしかもたない。
だから今は本当に最後の緊急回避手段としてしか使えないのが現状。
だがその魔法に今回は助けられたな。
そんな説明を軽くしてやると、なるほどなぁといやに真剣な表情でエルはつぶやいた。
そんな中、おずおずとリノが近づいてきた。
「あ、あの仙城君、お怪我は」
「あぁ、大丈夫だ。カミシア先輩にもう回復魔法は掛けてもらったし。特に問題ない」
「そう……よかった」
ほっとした様子でリノは安心した顔になる。
「うぅむ」
そんな時、気を失っていたバレッドが目を覚ました。
そばでノート姉さんが様子を見ているが俺は立ち上がってバレッドのそばに行った。
「おいバレッド、大丈夫か?」
「う、ん?貴様は……」
「俺が誰だかわかるか?」
「仙城青葉、だな。……あぁそうか私は負けたのだな」
寝転びながら腕を目の上に載せる。
少ししたら起き上がろうとしたので、俺は手を貸すと、
「すまない」
なんて言って俺の手をつかみながら起き上った。
そしてそのまま立ち上がろうとする。
「あ、まだ立ち上がらない方が」
「大丈夫だ」
ノート姉さんの声も制してバレッドは立ち上がった。
そして俺の方へ向き直る。
「すまなかった」
そうして放ったのは謝罪の言葉だった。
律儀に頭も下げながらである。
「何が? 」
俺は素直に驚きながらそう聞き返す。
どんな言葉が飛び出してくるかと思えば、まさか謝られるとは。
「私はお前のことを、人族のことを馬鹿にしていた。いくら何と言おうと私よりは所詮下の存在だと思っていた。だが、お前は私に勝った。私よりも強かった。それは私の認識が間違っていたということだ。今ならヴェル様に言われたこともわかる気がする。食堂で言った数々の非礼は謝罪する。改めて、すまなかった」
バレッドの放った言葉にこの場に残っていた全員が驚いた。
自分の非を理解してなおかつそれを認められるというのは本当に難しいことだ。
人には誰しも建前やプライドというものがある。
だが目の前にいるバレッドという少女はいとも簡単にそれを脱ぎ去って見せた。
魔王の血族という魔族の中では貴族に値するほどのものが、素直に自らの非を認めているのだ。
バレッドの物言いは手のひらを返すような発言だったが、それでも存外手のひらを返すという行為は難しいものなのだ。
俺はずいぶんと素直な子なんだなと、そう思った。
「構わんよ、別に。そもそもそんなこと気にもしていない」
「だが、今回の件は私が全面的に悪い。ほぼすべての非が私にあるといってもいい。ここで謝らなければ私の主義に反する」
「ならその謝罪は受け取ろう。そんで許そう。今後別にこの件でバレッドが気にすることはない」
「……わかった。ありがとう」
バレッドはそういって申し訳なさそうに顔を俯かせた。
「管理人殿もお手を煩わせてしまった。申し訳な い」
そういって今度はノート姉さんに謝罪をしだした。
「いえいえ、僕は大丈夫ですよ」
「本当にすまなかった。それと人族に対して今後は一切態度を改めるとする」
「バレッドがそういってくれるなら俺はこの決闘を受けたかいがある」
「それと仙城青葉、あなたにも力あるものとして敬意を表す。あなたは本当に強かった」
「魔王の血族にそういわれると素直にうれしいな」
俺は軽く笑いながら冗談めかして言う。
正直同世代の、それも実力ある者にここまで素直に褒められたのがちょっと恥ずかしかったのもあった。
「今まで私は負けというものを全く経験したことがなかったのだ。だから負ける自分という姿が想像もできなかったし負けることなんて微塵にも思っていなかった 。でもそんな私にあなたは勝った。私は純粋にあなたの実力に敬意を払う。できたら今後もよろしく頼む」
「あぁ、こちらこそな」
そういって俺たちは握手を交わした。
初めはこんな結末になるとは思っていなかった。
一度負かしておけばとりあえずはおとなしくなるだろうくらいにしか考えていなかったうえに魔王の血族が黙ったおかげでほかの魔族もそれほど騒がないようになってくれたらうれしいなとそれくらいの残念な考えしか俺は浮かべていなかったからだ。
もちろん決闘を受けた理由はそれだけではない。
魔王の血族に勝つことで魔王の血族を黙らせられるのも一つだが、何より魔王の血族に勝ったという事実が周りを黙らせてくれるだろうという考えがあったからこそこの決闘を受けたのだ。
そう言うと俺が勝つのが当たり前のような物言いになってしまうが、別に自分の実力を過信してるわけでもバレッドを侮っていたわけでもない。
俺は師匠たちとの修行で魔王の血族との決闘は慣れている。
さまざまな魔法を使う神族と違って、魔族というのは戦い方がある程度似てくるのだ。
それにまあ、一応奥の手だってあるにはある。
ゆえに自分の実力でも十分相手になれると判断したからこそ、この勝負を受けたのだ。
まあ単純に戦ってみたいって気持ちもあったけど、一番は風評を受けるため。
主にそれだけの戦いだった。
だがまさかその魔王の血族がこんな子だったとは。
力に対する順列に素直な魔王の血族、か。
まあそれはそれで魔族らしいといえばらしいし、それ なりに自分の筋は通しているみたいだ。
悪い子ではなさそうだな。
「さて、私たちも帰りましょうか」
「そうですね、見ごたえのある戦闘も見れましたし」
「青葉さん相変わらずいろんな人の魔法を使ってましたねー!なんだか私たちとは違う意味でサラブレッドですよね」
「おいおい、自分で自分のことをサラブレッドとか言ってどうするんだ、リンセ」
「私とニコは4人の母様たちから生まれた文字通りサラブレットですもん!お父様と、お母様たちの愛の結晶です!」
先輩たちはがやがやと雑談しながら歩いていく。
「あかん、この人らが何を言ってるのか、うちにはさっぱりわからへん」
エルは先輩たちの話を聞きながらハテナを浮かべてるが、まあ気にしなくていいだろう。
「 ほら、リノも行こう」
俺の言葉にリノはうなづいてとてとてと歩いて近寄ってくる。
「バレッドさん、大丈夫ですか?まだ辛いようなら」
「大丈夫だ、管理人殿。歩ける程度にはもう回復した」
ノート姉さんはバレッドの心配をしながら声をかけているがバレッドの足取りはしっかりしている。
本人の言っている通り特に心配はなさそうだ。
「あぁ、そうだ」
そういってバレッドが思い出したかのように立ち止まった。
「あ、あの仙城青葉」
「ん?どした?」
「あなたのことを、その……青葉と呼んでいいだろうか」
うん?と俺はハテナを浮かべる。
いちいちそんなこと聞かなくてもいくらでも好きなように呼んだらいいと俺は思うのだが。
というかそもそも俺自身がバレッドのことをそのまま名前で呼んでるわけだし。
「まあそれは全然構わないが」
「そうか!」
そういってバレッドは無邪気な笑顔を浮かべた。
薄く頬を染めて無邪気に笑うその顔はまぶしいくらいの笑顔だった。
こんな顔もできるのか、と俺は一瞬驚いて固まってしまった。
「何してるんですかー!早く帰りますよー!」
リンセ先輩らが少し離れたところでそう呼びかけるいる。
「行こうか」
固まっていた俺はその声ではっと気が付き、リノとエル、ノート姉さんとバレッドに向かってそういった。
先輩たちが待つ方に向かって歩いているときにふとエルが俺に質問してきた。
「なあ、青葉。あんた魔族王女の学園長と知り合いやったり、神族王女の管理人と知り合いやったり、しかも人族で異常に強いって何者なん?」
まあ何も知らなければそれは疑問に思うことだろう。
これだけの著名人とかかわりがあるなんて普通ではありえない。
だが俺にはそれがある。
何故かと、それは簡単な一言で表せられるのだ。
俺はエルの方に向きなおして言った。
「俺は白鷺姫の、現勇者の弟子だよ」
こうして俺たちのこの学園に来てからの長い一日はやっと終わりを告げたのだった。
だがしかし、この苦難の一日はまだ終わりではなかった。
みんなで夕食を食べ部屋に帰ってから、俺は自分の部屋の荷解きが一切できてないことに気が付いた。
明日の準備や寝間着なんかも一切段ボールの中でありこの中にあるものを少なくとも明日をしのげるくらいには整理しなければならない。
徐々に出てきた疲労感、じんわりと押し寄せてくる眠気。
落ちるのは目に見えていた。
だから落ちる前に風呂に入って目を覚まそうとしたときに気付いたのだ。
「ここ男子風呂なくね?」
とりあえずノート姉さんのいる管理人室に行って話を聞くことにした。
話を聞けば女子の時間が終わった後に入れる、らしい。
時計を確認すると、風呂が空く時間まであと1時間半。
俺の風呂までの絶望の1時間半がここから始まるのだった。
やっと入学式の一日が終わった!!
そしてストックが尽きた!!←wwwwwwwwww
というわけで、第一章終了です。
次からは第二章に入ります。
いやー
戦闘シーンって書くの楽しいですねw
難しかったですけど
もしゲームだとここの終わりでOPムービーが流れますね←w
今回バレッドの使った魔法「ダーインスレイブ」
名前はレーヴァテインやらトールハンマーなんかと一緒で北欧神話からとってます。
まあこれたしか剣の名前なんですけどね;
それと青葉くんが使ったダミーシルエット未完成版。
これにもいろいろ設定があります。
がちょっと書いてみたら長くなったのでちゃんと書いて後で挿入します←w
そんなわけで
4万文字使ってやっと一日終わりました←wwwwwwwwwwwwwww
この調子で行くとやばいほどの文字数になりそう;
まあでも出来るだけ頑張って書いて行くのでこれからもどうぞよろしくお願いします!
次回予告!
竜族歓喜!ついにウルルちゃんが登場!(ついでにアミアもwあとオペラさんもw)
の予定です←w