ごめん、カッコ悪い私見せちゃって。
私、頑張るから。
どんなに苦しくても頑張るから。
だから君は幸せになって……
「今日は西浜さんに気持ちちゃんと伝えられてよかったです。振られちゃったけど…だけど俺、ずっとずっと西浜さんの事大好きですから!」
「ありがとう……私も…七浦くんが大好きだったよ。気持ち、伝えてくれて嬉しかった。」
別れ際、西浜さんがトン…と僕の背中を押す。
「私に見せてくれた七浦くんの心、その人にもちゃんと伝えてらっしゃい」
僕は何から何まで西浜さんに支えられて……
「……はい!頑張ります!」
俺は電車に乗る。
そして、いつもの駅に着き、顔を上げるとそこには北見さんがいた。
「七浦さん……」
「北見さん!」
彼女はこの間のことを気にしているようだった。
「ごめんなさい、先日は…あんなつもりじゃなかったのに……」
「気にしなくていいんです。俺が悪いので…」
「いや…私がどうしようもないくらい弱いから…七浦さんの幸せを素直に応援したかったのに……」
少しの沈黙が流れ、俺が口を開く。
「あ…あの……俺の家…来ませんか?」
「へっ?」
彼女が素っ頓狂な声を上げる。
「あっ…嫌だったらいいんです……急なお誘いですし」
「いいん…ですか?」
彼女の顔は紅潮している。
「俺、北見さんにどうしても伝えたいことがあるんです。」
彼女は黙って首を縦に振った。
「狭い家でごめんなさい、あんまり綺麗じゃないけど上がって」
「全然そんなことないですよ……!お邪魔します。」
この家に女性どころか他の人を上げたことが1度もなかったので、俺も緊張していた。
玄関の鍵を締め、冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぐ。
「ゆっくりしていいからね。はい、これ麦茶。」
俺はゆっくりと口を開く。
「いや〜……俺振られちゃったよ…」
「あ……」
「でも、俺が伝えたかった事は全部伝えられた。それもこれも北見さんのおかげだよ」
彼女は俯く。
「ごめんなさい……私あんな偉そうなこと言って。私なんか言える立場じゃなかったのに……」
「そんな事ない。北見さんはとっても優しくて、とっても強い子だよ。」
すると彼女が何かを思った後、顔を上げて話し始めた。
「私には父親が居ないんです。」
「え……?」
「私が小さい頃は本当に幸せだった。父親も母親も優しくて暖かくて…私が勉強が好きだって言ったら、喜んで色んなことをやらせてくれました。私はそんな両親が本当に大好きだった。けど……」
北見さんは言葉を続けた。
「父親が働いてた会社が倒産してから、私たちの生活は180度変わりました。父親はどんどんお酒に溺れて、最後は自分で……」
「えっ……」
彼女はまた俯く。
「母親は残された私に出来るだけいい会社に入って、安定した生活をして欲しかったんでしょうね……それから私は、寝る時間を削って勉強させられました。好きだった勉強が、ただの苦しい時間になって……私はいつしか自分の気持ちを伝える事を諦めてました。」
彼女は涙をこぼし、顔を上げる。
「だから、自分がどんなに嫌な事があっても声をあげず耐えてました。」
そして、彼女は微笑む。
「あの日、七浦さんが助けてくれるまでは。」
「あっ……」
「私にとって七浦さんは、私の心を救ってくれた恩人で、憧れで……」
「大好きな…人です……」
「北見…さん……」
「私、七浦さんが好き。大好きなんです……だから七浦さんが幸せならそれでいいって思ってた。だけど…勝手に涙が出てきて……止まらなくて…おかしいですよね……」
俺は優しく北見さんの手を握る。
「ここで…北見さんの気持ちに応えちゃったら、俺が妥協してるって思われちゃうかもしれないけど……けどさ、俺も北見さんが好きだよ。誰よりも他人の気持ちを考える事が出来て、底無しに優しい北見さんが好きだ。俺と付き合ってくれませんか……?」
「私なんかで……いいんですか?」
「北見さんがいいです……」
彼女は大粒の涙を流し、笑顔で答える。
「はいっ…よろしくお願いします」
Happy end……?