「……い」
誰かの声がする。
「おい、七浦!何ぼーっとしてるんだ!」
先生に怒鳴られ、僕は慌てて前を向く。
昨日の事があまりに衝撃的で、帰ってからずっとこんな調子だ。
「今週は1班が教室の掃除担当だからな、分かったか?」と言われ、頷いた。
放課後に掃除をするのだが、まぁ誰1人真面目に掃除する人などいない。
おまけに、僕のいる1班はクラスのリーダー的存在の人達が何故か集まっており、僕だけハブられてるという状況である。
「おい七浦〜、俺たち忙しいからよ、掃除やっといてくんね?」
「あっ……」
僕にも用事はあるし、早く帰りたい。
けれどそれを言えるほど僕は強くないし、それに波風を立たせない方が良いに決まっている。
「う、うんっ。僕がやるよ」というと、「おっ、サンキュー。七浦は何でも言う事聞いてくれるから助かるわ〜」と残し、取り巻きの女子たちと一緒に教室を出ていってしまった。
「これ今週1週間やるのめんどいなぁ…でも、まぁ……」と呟きながら1人で掃除をしていると、廊下の方から目線を感じた。
ふと目線のするほうを見ると、昨日の彼女が苛立ちながら僕を見ていた。
そして、僕の方へ歩みを進めて立ち止まったかと思ったら急に黒板を思いっきり叩きながら
「お前、昨日私が言ったこと全然分かってねぇんだな」と怒鳴ってきた。
なんで彼女がここにいるのか、何故僕に怒鳴っているのか正直理解ができなかったが、それでも僕の何かがプチッと切れたかのように気がつけば僕は彼女に言い返していた。
「君に何がわかるっていうんだよ! こうすれば誰にも嫌われない、こうすれば誰も傷つかない、それでいいじゃないか!!」
「……んで」
彼女から出てきた言葉は、予想もしていないものだった。
「何で傷つかない人のうちに、テメェがはいってねぇんだよ。」
ハッとさせられた。
「いや、僕は別に傷ついてなんて……」
と言おうとしたが、その先の言葉を言うことが出来なかった。
「あともう一つ。私は今のお前は大っ嫌いだよ。本当に大嫌い」
「……え?」
「自分が耐えればいいとかみんなを傷つけたくないとか、結局お前はいいように使われてるだけだよ。お前の心はお前にしか守れないのにお前は簡単に手放して傷つけられて目を背けてるんだろ?」
何かを言い返したかったのに、何も言えなかった。
「自己犠牲して得られるものってなんだと思う? 自己犠牲で他人が救われるならいくらでも犠牲にしろよ、だけどな。自己犠牲して他人が本当に救われるわけねえよ。」
「……だったら」
僕は涙を流しながら彼女に気持ちをぶつけた
「だったらどうすればよかったんだよ! 本当は嫌われるとか傷つかないとかどうでもいい、怖いんだよ!僕の存在価値が無くなるんじゃないかって!誰にも必要とされなくなるんじゃないかって!」
彼女は顔色変えず僕の話を受け止めてくれた。
「ごめん……君の言ってる事は…全部本当だね、でも今はこれしか自分を守る術は無いから」というと、彼女はもう何も言い返さなかった。
彼女が教室を出ようとしたので、僕は思いきって彼女にこう言った。
「あっ…あのっ……ありがとう!」
彼女は振り返らずに手を振って教室を後にした。
「私には…君が必要だよ……まぁ、聞こえてないかもだけど。」
僕は涙を拭って掃除をするのだった。