僕の心の中に深く刺さったあの言葉。
「自己犠牲して得られるものってなんだと思う? 自己犠牲で他人が救われるならいくらでも犠牲にしろよ、だけどな。自己犠牲して他人が本当に救われるわけねえよ」
僕は今までの行動を省みていた。
「僕は…このままじゃ……でもどうすれば…」
僕っていつからこんなに臆病な人間になったんだっけ。
あの女の子に酷いこと言って……それから…
「そういえばあの子は今でも…僕と同じ……なのかな?」
名前はおろか、顔すらもぼんやりとしか覚えてない子だったけど、一つだけはっきりと覚えていた事があった。
その時僕は友達と戦いごっこで遊んでて、僕はヒーローの役をしてたんだ。
「ヒーローってな、悪いやつを倒すだけじゃなくて正しい方向へ導いてあげたり、助けが必要な人たちがいたら優しく手をさしのべられるやつがヒーローなんだよ!僕はそんなヒーローになるんだ!」
自分ながら何を綺麗事を、と思い出してふっと笑う。
そしてふと振り向いたらそこには周りの子供に囲まれて困っている女の子がいた。
「それ貸せよ、いいだろどうせ後で要らなくなったら返すんだから」
女の子はブルブルと体を震わせて泣き出しそうになりながらおもちゃをその子に貸そうとしていた。
僕は考えるより先に行動していた。
「おい! 何一人の女の子に寄って集っていじめてんだよ! お前らこんなことして恥ずかしくないのか!お前らがやってる事はただの卑怯者だ、恥ずかしいと思わないのか!」
「うるせぇ、お前が誰だか知らねえけどコイツは俺達に貸してくれるみたいだからいいだろ」
僕はサッと貸そうとしていたおもちゃを手に取り、
「これ僕が先に借りてるから。まだ返すつもりないからお前らには貸さない。とっとと帰れ」と言うと、何か言いたげな表情をしていたが大人しく帰っていった。
「あの…っ……ありがとう…」
と、彼女が声を震わせて言ったが、僕は何故か苛立ちでいっぱいだった。
「おいっ!」
彼女の身体がビクッと震える。
「君がこの先どんな選択をしようが別にどうでもいい。けど、自分の気持ちだけは殺すな。絶対に。自分の気持ちがわかるのは自分だけだぞ」
僕は後悔した。
彼女は落ち込み、泣き出してしまった。
違うんだ、泣かせたかったわけじゃないのに…
僕はヒーロー失格なのかな……
「……だよ」
はっと横を向くと彼女がいた。
「何考えてたの?」と聞かれたので、少し俯いた後に
「馬鹿だった子供の頃の事だよ」と答えると、彼女はくすりと笑い、
「お前にも馬鹿だった頃あるんだな!今は違う意味で大馬鹿者だけど」と言われ、ムスッとした。
「じ、じゃあそんな君は昔どうだったんだよ」
彼女は少し目を丸くしたあと僕の顔を背けながら、何かを言っていた。
「えっ?」と訊くと彼女は今度は僕の顔を見て笑顔で答えた。
「ん〜、ヒーローみたいな人??」
僕は笑顔で「じゃあ今と同じだ」と返す。
その時の彼女の笑顔が何故悲しそうだったのか、僕には分からなかった。