正直者な君と臆病な僕   作:雪夏(せつか)

4 / 13
ep.4 こうなるんだろ

少しづつではあるが、僕は彼女と話す機会が増えてきた。

そういえばこれだけ沢山話してるのに、僕は彼女の名前を知らないし彼女もまた、僕の名前は知らない。

「あっ、今日名前聞こうかな……」と、廊下を歩いていると後ろで先輩たちが

ヒソヒソと誰かの悪口を言っているのが聞こえた。

 

「……ってさぁ、正義感強いって言うの? あぁ言うやつマジで嫌いなんだよね」

 

「そうそう、本当に癪に障るし……放課後体育館の裏でも呼び出して痛めつけよう」

 

昔の僕だったら年上だろうとなんだろうと止めていただろう。だけど今はどうしてもその勇気が出ない。

僕は聞かなかったことにして教室の中へ入る。

 

放課後になり、僕は変わらず1人で掃除をしていた。

いつもなら彼女がここに来て嫌味を言ってくる、が。

「今日遅いなぁ…いや、嫌味言われるのは嫌だけどさ。」

何故かさっき廊下でのあの会話を思い出す。

僕はまたあのときと同じ、考えるより先に走り出していた。

 

「西浜さーん、アンタって本当に不愉快なんだよね」

「正直者は馬鹿を見るって言うけど、本当に馬鹿だよねぇ。」

 

僕が体育館の裏に行くと、数人の男女に囲まれて暴言を吐かれている人がいた。だけどここからじゃ顔は見えない。

 

僕は目を瞑って拳を握りしめた。

今行ったら僕は間違いなくいじめの標的になるだろう。

だけど、今行かなかったら?

それは本当に正しいのか??

僕は小さい頃に言った言葉を思い出していた。

 

「ヒーローってな、悪いやつを倒すだけじゃなくて正しい方向へ導いてあげたり、助けが必要な人たちがいたら優しく手をさしのべられるやつがヒーローなんだよ!僕はそんなヒーローになるんだ!」

 

「ぼく…は……」

ヒーローにしてはあまりにもかっこ悪い。

だけど僕はなりたかったんだ。

こんな僕でも、ヒーローにはなれるんだ。

 

「おい!寄って集って何一人の子に手出してるんだ!」

僕は走り出し、その子を守った。

 

そして気づいた。

「えっ……なん…で?」

彼女は色んな所を殴られ、涙をこぼしながら俯いてた。

 

「……おい。」

僕は今までに感じたことの無い怒りでいっぱいだった。

「殴るならよ……俺を殴れよ、この子には二度と手出すんじゃねぇ」

 

そう言うと、俺はボッコボコに殴られた。

ハハッ、なんて情けない。

威勢は口だけで僕は喧嘩なんてからっきしだし、普通に痛いし…

 

満足したのか、男女らは最後に俺を突き飛ばしてその場を後にした。

 

「なんだよ…君らしくない、いつまで…泣いてるのさ」

彼女は泣きながら僕の事を叩いてきた。

「馬鹿!本当にお前って、大馬鹿者だよ!!」

 

僕は対照的に笑いながら

「いやぁ…ヒーローになれると思ったんだけどなぁ……こんなにみっともないヒーローいないよなぁ」と言った。

 

「本当に君は…」

 

「ん? ごめん…よく聞こえなかった! でも見ろ、自己犠牲で君が救えたぞ!!」

 

「本当に大馬鹿者だよ…!」

 

彼女は涙を拭って微笑んだ。

 

「そういえばまだ…君の名前知らなくて、今日はそれ聞こうとしたんだよね」

 

「今更だね」

と、彼女は笑い

「西浜由奈だよ、クラスは2年2組」

と名前とクラスを教えてくれた…が。

西浜さんが2年生であることに衝撃を隠せなかった。

「えっ!?!?にっ、2年生!?」

 

西浜さんは呆れた顔でこっちを見て

「どこのクラスにも私居なかったでしょ、気づきなよ」

と笑った。

 

「僕も自己紹介してなかったね、僕は七浦凌。1年3組です」

と優しく微笑む。

 

「ん、よろしくな七浦!」

 

「あっ、こちらこそよろしくお願いします、西浜先輩」

 

「先輩は付けなくていいよ、西浜さんって呼んで?」

 

「あっ、はいっ!」

 

僕達はボロボロになりながらも笑顔で帰路につくのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。