俺の頭の中は今までずっと西浜さんの事でいっぱいだった。
いつか会いたい、会ったら気持ちを伝えるんだと思っていた。
だが、いつまで経っても北見さんのあの笑顔が頭から離れないのである。
「こんな気持ちのままでいいのか……?」
俺は相反するふたつの感情の中で答えを見つけられずにいた。
次の日の朝、俺はまたあの満員列車に乗る。
今日は北見さん居ないみたいだ。
会社に着くと、俺達新人たちが呼び出される。
「昨日居なくて紹介できなかったが、この人はこの会社のリーダーをやってる。自己紹介頼むよ」
俺がその人を見た途端、俺は固まった。
「西浜由奈です。よろしくお願いいたします。」
なんで……なんで同じ会社に西浜さんがいるんだろう。
西浜さんも俺のことに気付いたようで、俺の顔を見て口を抑えていた。
昼休みになり、俺は西浜さんを呼び出す。
「あのっ…西浜さん……ですよね?」
「……嘘、だよね?なんで七浦くんが同じ会社に……」
「偶然ですかね…とりあえずご飯一緒に食べませんか?」
俺達は近くのファミレスに入る。
「いっぱいお話したいことはあるんですけど…あの……お元気でしたか?」
最初に聞く質問がそれかと我ながら悲しくなってくる。
「うん、元気だったよ。あれから北海道に行って……高校生までそこにいたかな、それで大学は東京の大学に行ったから戻ってきたって感じかな」
「そうなんですね!俺は普通に高校に行って、普通に大学いって…」
「普通って……w」
西浜さんは屈託の無い笑みを浮かべる。
「そういえば西浜さん物凄く大人っぽくなったというか…」
「それを言うなら七浦くんもだよ、びっくりしたもん」
俺は1番聞きたかった質問を西浜さんに投げようとした。
だが、それは思わぬ形で聞く前に分かってしまったのである。
「あっ、指輪……」
「そうなの、ついこの間婚約して……来年には結婚する予定だよ」
俺は上手く笑えてたかな、この後の記憶は無いに等しいが
ドリンクバーで注いだブラックコーヒーをゆっくりと飲み干す
「おめでとうございます…!お相手さんはどちらで知り合ったんですか?」
西浜さんはちょっと苦笑いを浮かべ答える。
「まぁ…あの……そうだね、あんまり聞かないでくれると…」
まぁ聞かれたくない事情があるなら仕方ない。
「そうなんですね…!お幸せにです……!!」
「ありがとう」
お会計を済ませ、俺らは会社に戻る。
その後、何とか表面だけは取り繕って仕事を済ませ、会社を後にする。
「あーあ…砕ける前に……砕かれて……」
泣きそうなのを何とかこらえ、電車の手すりに捕まる。
「七浦さんっ?」
「えっ?」
なんと偶然北見さんが同じ電車に乗ったのである。
「あ、あっ…北見さん…こんばんは」
「どうしたんですか……? なんか嫌なことでもありましたか?」
ダメだ、この子を俺の事情に付き合わせる訳にはいかない
「大丈夫だよ、平気だから」
「嘘…ですよね?」
「…………本当に…大丈夫だから」
「そう…ですか……」
「ごめんね…ありがとう」
北見さんは最寄りの駅で降り、1人になった。
自宅に着くと、勝手に涙がこぼれ落ちていた。
「俺ってやっぱりなんも変わってない…………」
俺は涙が枯れるまで泣きづづけた。
曇らせだーいしゅき