正直者な君と臆病な僕   作:雪夏(せつか)

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ep.9 揺らめく思いと再会

俺の頭の中は今までずっと西浜さんの事でいっぱいだった。

いつか会いたい、会ったら気持ちを伝えるんだと思っていた。

だが、いつまで経っても北見さんのあの笑顔が頭から離れないのである。

「こんな気持ちのままでいいのか……?」

俺は相反するふたつの感情の中で答えを見つけられずにいた。

 

次の日の朝、俺はまたあの満員列車に乗る。

今日は北見さん居ないみたいだ。

会社に着くと、俺達新人たちが呼び出される。

 

「昨日居なくて紹介できなかったが、この人はこの会社のリーダーをやってる。自己紹介頼むよ」

俺がその人を見た途端、俺は固まった。

「西浜由奈です。よろしくお願いいたします。」

なんで……なんで同じ会社に西浜さんがいるんだろう。

西浜さんも俺のことに気付いたようで、俺の顔を見て口を抑えていた。

 

昼休みになり、俺は西浜さんを呼び出す。

「あのっ…西浜さん……ですよね?」

「……嘘、だよね?なんで七浦くんが同じ会社に……」

「偶然ですかね…とりあえずご飯一緒に食べませんか?」

俺達は近くのファミレスに入る。

 

「いっぱいお話したいことはあるんですけど…あの……お元気でしたか?」

最初に聞く質問がそれかと我ながら悲しくなってくる。

「うん、元気だったよ。あれから北海道に行って……高校生までそこにいたかな、それで大学は東京の大学に行ったから戻ってきたって感じかな」

「そうなんですね!俺は普通に高校に行って、普通に大学いって…」

「普通って……w」

西浜さんは屈託の無い笑みを浮かべる。

「そういえば西浜さん物凄く大人っぽくなったというか…」

「それを言うなら七浦くんもだよ、びっくりしたもん」

俺は1番聞きたかった質問を西浜さんに投げようとした。

だが、それは思わぬ形で聞く前に分かってしまったのである。

「あっ、指輪……」

「そうなの、ついこの間婚約して……来年には結婚する予定だよ」

俺は上手く笑えてたかな、この後の記憶は無いに等しいが

ドリンクバーで注いだブラックコーヒーをゆっくりと飲み干す

「おめでとうございます…!お相手さんはどちらで知り合ったんですか?」

西浜さんはちょっと苦笑いを浮かべ答える。

「まぁ…あの……そうだね、あんまり聞かないでくれると…」

まぁ聞かれたくない事情があるなら仕方ない。

「そうなんですね…!お幸せにです……!!」

「ありがとう」

お会計を済ませ、俺らは会社に戻る。

その後、何とか表面だけは取り繕って仕事を済ませ、会社を後にする。

「あーあ…砕ける前に……砕かれて……」

泣きそうなのを何とかこらえ、電車の手すりに捕まる。

 

「七浦さんっ?」

「えっ?」

なんと偶然北見さんが同じ電車に乗ったのである。

「あ、あっ…北見さん…こんばんは」

「どうしたんですか……? なんか嫌なことでもありましたか?」

ダメだ、この子を俺の事情に付き合わせる訳にはいかない

「大丈夫だよ、平気だから」

「嘘…ですよね?」

「…………本当に…大丈夫だから」

「そう…ですか……」

「ごめんね…ありがとう」

北見さんは最寄りの駅で降り、1人になった。

自宅に着くと、勝手に涙がこぼれ落ちていた。

「俺ってやっぱりなんも変わってない…………」

俺は涙が枯れるまで泣きづづけた。




曇らせだーいしゅき
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