【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜 作:その辺の残骸
エーアストとハスラーワンの名はバトルロワイヤルの参加者リストにはない。彼らはこの廃都市に突如姿を現したのだ。
恐らくエーアストはあの二機と交戦中に地下トンネルか何かを通ってここに逃げ込んだ。いや、むしろナインボール達を誘い出したのだ。
「お前は敵じゃないってことでいいんだな!?」
アリスが問い掛けながらデュラハンを疾走させる。肯定するかのようにアンファングはナインボールを銃撃した。
「よっしゃ、頼りにしてるぜアンファング!」
そのまま、黒青色のACと鋼色のACは交差して赤と黒で塗装された敵機に向かう。
「ナインボールの最新モデル、か?」
アリスが相対したナインボールは最新のパーツで構成されている。戦闘機の機首のようにコアが突き出しており、機動性に優れた機体であることが判る。
しかし、その速度は単に機動力が高いというレベルではない。深紅の残光を引きながら瞬間移動しているような速さだ。
リニアライフルが三連射される。ブースターを噴かしデュラハンは左右への小刻みなステップで砲撃を避けた。背部のミサイルポッドが開き、マイクロミサイルが襲い掛かる。迎撃機銃で防ぎつつ、こちらもミサイルの応射。爆発。
上昇した黒青色のACにマッハ6の速度で砲弾が迫った。背中のグレネードキャノンだ。ライフルで狙撃する。砲弾はその口径からはあり得ないほどの炸裂を起こす。旧世代の戦艦主砲さながらの爆発だった。続いて二発目のグレネード。
デュラハンはミサイルポッドを捨てて、身軽になって稼いだ推力で急加速する。
「そう簡単にぃっ!」
アリスは大きな身振りで操縦桿を倒し、急旋回しつつ空中でブレード光波を放つ。
青色の光刃が切り裂く寸前でナインボールは真紅の閃光となり掻き消える。
「くぅっ! やっぱりやるぅ!」
凄まじい戦闘能力にアリスは舌を巻いた。流石ナインボール、ハスラーワンだ。
地上戦に切り替えたデュラハンを右から飛来してきた小型敵機の機関砲が叩いた。
「しまったイクシードオービットか!? うわっ!」
ナインボールがコアから解き放った小型浮遊砲台に対して意識を向けたのは失敗だった。飛び退いた位置でリニアライフルを喰らってしまう。
大きな衝撃でコクピットが揺れ、内部に浸透した衝撃によってアクチュエーター複雑系が一瞬だけ麻痺する。
「こっこんにゃろめぇ!」
どうにか左腕を動かしてレーザーブレードを抜き、屈んだ姿勢で追撃を避けようとするアリス。
脅威的な加速で突っ込んでくるナインボールであったが、それを妨げたのは上空からの砲撃だ。
空中空母からの無差別な弾幕が進路を塞ぎ、赤と黒のACは飛び退いた。
その合間を縫って硬直から立ち直った愛機を鞭打ち、ジャンプからのレーザーキャノンを発射。弾幕の隙間を見事抜け、着弾した。
爆発に呑まれながら、ナインボールは殆ど無傷。装甲に傷がないことから偽コーラルスターのような強固な防御スクリーンを張っているようだ。
被弾で生じた僅かな隙を突き、アリスはビルの陰に隠れようとデュラハンを最大速で飛ばす。
その間もナインボールを注視しているが、軽量級のACどころではないスピードで動き回っていた。
再びガルムズの空中空母が対地攻撃を仕掛けてきた。さらに飛び出してきたハリアー三機がナインボールにレーザーを放つ。しかし、ナインボールはそれを躱すこともせずレーザーブレードで一閃。ガルムズの手勢を切り裂いていた。
ナインボールはガルムズが送り込んだ刺客ではなく、アリスにはむしろ敵対者に思えた。恐らく、ネストの残党は複数の分派に分かれているのだろう。
ちらりとアンファングの戦況を確かめると、あちらも苦戦中だった。
アンファングが交戦しているのはネスト時代に近いフレームにKARASAWAとグレネードキャノンを二門装備したナインボールだ。
全体的に攻撃的なシルエットになり、頭部には曲刀を思わせるアンテナユニットが付いていた。
『こちらホワイトクィーン。聞こえていますか、アリス、エーアスト?』
『ああ』
デュラハンの背中をビル壁面にぴったりとつけて警戒態勢を取りつつ、アリスは応答。
回線が開いた直後にガルムズ迎撃チームと戦術データリンクしてあった。
『ガルムズ部隊の掃討は順調です。これより空中空母の撃墜に移行します』
ボディスーツを身に着けたホワイトクィーンが、おっとりとした笑みで戦況を告げた。
その間も彼女は新たな愛機チェックメイトⅣを駆り、次々と敵部隊を斬り伏せながら迎撃部隊を指揮している。
マルチタスク能力がこの優し気な丸眼鏡の女剣豪の強みであり、それは異能とも呼べるものであった。
『アリスはそのまま所属不明ACの撃破をお願いします。それと暫定的にアリスが交戦している機を"オニキス"、エーアストと交戦中の機は"マーウォルス"と呼称します』
『了解だ。空でデカい花火が上がる前にオニキスを片付けるぜ』
あの二機がナインボールであることは明白だが、ホワイトクィーンはあえてその名を口にしない。
暫定的なコードネームがレーダー上の敵機に追加された。ちょうど回り込んできたオニキスが真紅のレーザーブレードを振ってきた。
『とっとと撃破させてもらうぜ、オニキス!』
アリスはナインボール=オニキスに向かって咆え、シールドに内蔵したレーザーブレードで斬撃を迎え撃つ。と見せかけてブーストジャンプしたのは敵の斬撃の威力を察したからだ。
真紅のエネルギーが奔流となり、長く延伸されたレーザーの刃が横に薙がれる。ビルが真っ二つに裂けて倒れてくる。
ライフルを乱射して足止めしながらデュラハンを上空へ離脱させる。
次世代機用の大口径ライフルは大きな威力を発揮してオニキスを食い止めてくれた。
巻き上がった粉塵よりも高くデュラハンは跳んでいる。そこにグレネードキャノンが再び二発。
さらにリニアライフルの連射と死角を狙うEOが迫るがアリスはこれを切り抜けた。
付近ではナインボール=マーウォルスがKARASAWAから長大なレーザーを放って周囲を薙ぎ払いつつネストの破壊者を攻撃している。
しかし多数のビルを切断しながらも信じられないほどの速度で空を駆けるアンファングを墜とすことはできない。
反撃だ。切り返しからのロールを打ち、レーザーを飛び越したアンファングのグレネードキャノンがマーウォルスに命中していた。さらにミサイルを浴びせて翻弄する。
レーザーブレードを抜いて上空から突進するアンファング。爆発から抜け出したマーウォルスはグレネードキャノンを二門展開。仰角をつけて連射する。
苛烈な報復だが、しかしこれもまた幻のように掻き消えた鋼色のイレギュラーには当たらない。
ブレードによる近接攻撃の代わりに高く高度を取ったアンファングのマシンガンが真紅の装甲を叩いていた。
マーウォルスのグレネード弾は空中空母に着弾し、巨大な爆発の華が四つ咲いた。
それを合図に「攻撃開始!」というホワイトクィーンの号令が響き、廃都市の各地から膨大な数のミサイルが空中空母めがけて発射された。レイヴン達の空母撃沈作戦の第一段である。
周囲で敵への逆襲が始まると、アリスの闘志も高まった。
「エーアストは掴めてきたか。ならオレも!」
確かにナインボールの戦闘力は絶対的なものだ。奴はネスト崩壊後も進化を続けていた。しかし、動きを見切れないことはない。
アリスは得意の近接戦闘ではなく後退しながらの射撃戦に切り替えた。
大口径ライフルだけでナインボールの動きを妨害しつつ、ダメージを与えていく。
「楽しくなってきた」動きが読めるようになると、アリスはからからと笑う。
空中から右膝を狙撃してバランスを崩したところを狙い、過剰充填したレーザーキャノンを発射。砲身がダメになるが、この一発で十分だ。
避け切れず、オニキスのコアに直撃する。物質化寸前まで圧縮されたエネルギーが解放され、熱と衝撃波がかつてのトップランカーを打ちのめす。
減衰した防御スクリーンが機体表面に流れる電光という形で現れている。
墜落しつつもオニキスは健在だ。機体を起こすとデュラハンに向けマイクロミサイルを発射してくる。デュラハンのジェネレーターのエネルギーは枯渇寸前だ。
身を捧げるようにアリスが空を墜ちていく。
ミサイルが爆ぜた。しかし、アリスは生きている。
青く輝くレーザーブレードを抜いたデュラハンがミサイルを切り捨て、オニキスに肉薄していた。
滑空でエネルギーが回復すると、オニキスが捉えられない速度まで加速して決着をつけるべく機動し始めたのだ。
本気の本気。トップスピードに達したアリスが駆るデュラハンの加速度は流星の如く。動くことはままならず、イクシードオービットで迎撃しようとするオニキスだが。
「それは、飛ばない!」
預言めいて黒髪の死神少女が口にすると、その通りになる。コア後部の浮遊砲台は漏電を起こし、機能を停止する。そうなるようにアリスが先ほどの攻撃で仕組んだのだから。
シールドから抜刀されているブレードの間合いにオニキスを捉えた。天から墜ちたデュラハンが繰り出すその剣技は失楽園の剣聖の絶技。
「必殺、メテオ斬りっ!」
地上に足止めした敵機に空中から襲い掛かり、最高速で切り捨てる斬撃は無数のACを葬った。オニキスといえど月光二基の斬撃を浴びれば一たまりもない。
縦一文字の斬撃でオニキスの左腕部を切断。ダメージを意に介さずオニキスはグレネードキャノンを担ぎ、地表に向かって放とうとした。自分を巻き添えにしてでもデュラハンを吹っ飛ばすつもりだ。
「ほら、やっぱりそうきた!」
会心の笑みをみせるアリス。膝蹴りでリニアライフルを弾いてから、シールドでオニキスのコアを殴りつけ、そのままレーザーブレードを解き放つ。
強固極まりない防御スクリーンであっても数秒間に渡って十万度を超える熱を浴びせられれば拡散し、装甲が融解する。コアの内側を焼き尽くされたオニキスを蹴り、デュラハンはライフルを構えた。
一発目でオニキスの膝がへし折れ、二発目で頭部が破壊される。そして三発目がコアに風穴を開けた。ジェネレーターからのエネルギーが溢れ、大爆発を起こしたが、その時にはデュラハンは離脱している。
切り飛ばしたオニキスの左腕が宙を舞うのが見えた。
「ナインボール討ち取ったり! ハハ、やってやったぜ」
アリスは高らかに勝利を謳い上げた。遠方でも巨大な爆発が起きていた。アンファングがマーウォルスを撃破したのだ。
スピードに翻弄されたもう一機のナインボールはキャノンをパージして接近戦を挑もうとした。それこそがアンファングの狙いで機動性が増したマーウォルスの動きに合わせて背後に回り込み、ジェネレーターをブレードで一突きして爆散させたのである。
この二機のナインボールはかつてのマスター・オブ・アリーナ。あるいは
大空ではレイヴンの勝利を告げる爆発も起こった。ガルムズの空中戦艦はミサイルの一斉攻撃から続く狙撃と砲撃でメインエンジンと多数の砲を破壊され、廃都市に墜落していく。
『今片付いたぜ。そっちは無事か?』
『まっまあなんとか。はあ、疲れたぁ~~!』
アリスはウルスラに通信を入れる。
ホワイトクィーンから迎撃部隊の管制を頼まれ、全員のオペレーターを担当した金髪メガネの美女はくたくたになりながら黒髪の少女に応答していた。
アーダン・シティに侵入しようとした部隊もスミカの奮闘で撃滅されたとのこと。
こうして、また一つの戦いが終わりを迎えようとしていた。