【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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終決『バトルロワイヤル』

 

 地下複合都市アーダン・シティの防衛にあたるキルシュバウムの活躍はまさに獅子奮迅だった。

 

「シティには一歩も踏み入れさせません!」

 

 ライディングシートに跨った前傾姿勢のスミカはターゲットに食らいつくようにトリガーを引き、ガトリングレーザーキャノンによる弾幕で次々に敵を倒していく。

 

 空中空母から発進してきた戦力はACや戦闘用MTの混成でメーカーも異なっているが、次世代ACキルシュバウムの敵ではない。キルシュバウムとスミカの敵はただ一機。同じ次世代ACだ。防衛部隊を次々に撃破しながら、ゲートに迫ってきている。

 

「次世代機は私が迎撃します! 友軍機は離れていて!」

 

 通信で伝えてから、キルシュバウムはオーバードブーストをかけ、敵に直進する。その桜色の装甲を高出力なレーザーライフルが灼く。

 

「くっ!」

 

 激しい戦闘機動による加速度がスミカを苛むが、バトルスーツの性能に助けられながら耐えていた。連続でクイックブーストしながらガトリングレーザーを撃ち込み、左腕のレールガンで狙撃する。

 

 敵はキルシュバウムと同型の閃桜だ。スミカの猛攻を躱した灰色の次世代機は太陽を背にしながらパルスキャノンとミサイルを浴びせてきた。

 ミサイルが防御フィールドに当たり、爆風が視界を奪う。そこにパルスキャノンが貫通してキルシュバウムにダメージを与える。

 

 手強い相手だとスミカは実感した。ファンタズマ・チップとなったパイロットは常人よりも遥かに素早く思考し、反応する。そして重力加速度を気にすることなく戦うことができる。いかに超高速戦闘に長けたレイヴンであるスミカ・ユーティライネンでも不利な相手だった。

 

「だけど、こんなところで負けられないっ!」

 

 ナインボールの強化型と交戦中のアリスや廃都市でガルムズに応戦している人々を想い、スミカは強い意志で桜色のACを操った。荒れ果てた大地を蹴り、空に舞い上がるキルシュバウムを狙い、着地した灰色の次世代ACが攻撃する。

 

 あえてスミカは全力で回避機動をせず、装甲の硬い部分で敵のレーザーを受け止めた。閃桜はエネルギー防御を重視した装甲を有しているため、強固な部分であればかなりのダメージを受けきれる。

 キルシュバウムの桜色の装甲は傷付きながらもレーザーやパルスのエネルギーを拡散させていた。

 

 そうして絶好のポジションを取り、スミカは背部でフルチャージしていたハイレーザーキャノンを発射。青く眩い閃光が灰色の次世代ACに着弾し、装甲を穿った。墜落した敵機は右上半身の殆どを失い、機能停止しているようだった。

 

「はぁ――――っ!」

 

 コクピットが大きく揺れる。厳しい戦いで消耗したスミカは着地反動を軽減するブースト噴射さえできないほどだった。

 シートに寝そべるような姿勢で呼吸を整える。白銀色のアンダースーツを青と赤の装甲で覆ったスミカの全身には汗が滲む。

 

 次世代機がぎこちなく動くが、スミカの反応は遅れた。

 

「しまっ――――」

 

 灰色の次世代機が最後の力を振り絞って、キルシュバウムにレーザーライフルを向けてきた。クイックブーストを吹かす前にレーザーが放たれそうになる。しかし、側面から殺到したミサイルと砲撃がガルムズの次世代ACを吹き飛ばし、今度こそ完全に破壊した。

 

『無事か、レイヴン!?』

 

 スミカの危機を救ったのは都市防衛隊だった。残敵を掃討して援護に駆け付けてくれたのだ。

 

『ええ。助かったわ』

 

 コクピットを開き、スミカはせり出した装甲板を足場に外に出た。

 長身なピンク髪美女が搭乗できるぎりぎりの空間しかないコクピットに籠った熱気が同時に外に広がっていく。

 肢体にぴったりと張り付いたバトルスーツ姿で片手を腰に当てたポーズを取り、シティを救ったピンク髪のヴァルキリーはMT部隊に無事な姿を見せた。

 

 

 

 ホワイトクィーンの指揮で警備チームと参加者有志は統合されたガルムズ迎撃部隊となった。レイヴンを中心とした部隊はその戦闘力で廃都市に放たれた無人ACを首尾よく駆除すると、ミサイルの弾幕で空中空母を一斉攻撃した。

 

 目くらましのミサイルに対空砲火が放たれている間に本命のACが攻撃を行う作戦だった。

 古参兵のレイヴン、ヴォルフはホワイトクィーンの手配で突入してきたリグでアセンブルを変更。背部に大型レーザーキャノンを背負っている。

 

 護衛を受けながらヴォルフは地上に降り注ぐ弾幕のなかを突っ切った。

 

『こちらクライン、ターゲット排除完了』

 

『キングだ、雑魚は片付いた』

 

『シャルトリューズよ、全部消し飛ばしてやったわ!』

 

 ヴォルフのフェンリルを狙撃地点まで護衛したのは新進気鋭のレイヴン三名によるチームで、専属オペレーターによるサポートもあって、瞬く間に作戦を完了した。ヴォルフから見てもネストランカーと遜色のない腕前だった。特にクラインというレイヴンには目を見張るものがある。若年だが既にネストの最上位ランカーに匹敵する実力をヴォルフに感じさせた。

 

 

 ホバータンク型ACフェンリルが垂直上昇してビルの屋上に陣取る。メインエンジンを狙える絶妙なポイントで、古参兵ヴォルフは躊躇なく引き金を引く。超高出力のレーザー弾体は防御スクリーンを撃ち抜いてエンジンを爆裂させた。

 

 同時に、ネスト屈指の狙撃手ニック・カワサキの屠龍丙型を始めとした他の狙撃手達も目標に攻撃を命中させていた。空中空母の至る所で爆発が起き、みるみるうちに高度が下がっていく。我が物顔で空から攻撃していた巨大な艦はしかし、まだ砲火を放ち続けている。

 

 墜落地点を弾き出したヴォルフは最寄りのレイヴンに通信を入れた。

 

『ファルコン、リンクスミンクス。そのデカブツはお前達にくれてやる。きっちり仕留めろ』

 

 この戦いのトリを飾ることになった白と青の二色の二脚ACと濃緑色の四脚ACは両舷から不時着した空中空母を攻めた。ブースト飛行で反対側に跳び、もう一機と交差しながら手当たり次第砲塔とミサイル発射口を銃撃している。

 

『へぇ、腕は落ちてないのねファルコン坊や』

 

『最近は何かと物騒でね。文字通り、今の俺は自警団の真似事をしてんのさ』

 

 激しい空中機動で悪足掻きの攻撃を振り切りながらも、リンクスミンクスとファルコンには世間話をする余裕があった。プリティキトゥンを狙うミサイルランチャーをヴィジランティのレーザーライフルが射抜く。逆にヴィジランティに向いたグレネードキャノンを甲板に下りたプリティキトゥンが接射で破壊する。

 

『こんなデカブツを潰すの久しぶりだから興奮しちゃうわ』

 

 毒々しく艶やかな光沢ある紫色のボディスーツに身を包んだリンクスミンクスは加速に昂りながら飛び去っていく。容姿と同じくらいにACの動きも挑発的であえてギリギリで攻撃を避けている。

 

『全くどうしてあんな危ない真似ができんのか、理解に苦しむね』

 

 本能的に戦うリンクスミンクスに対して、ファルコンの動きは堅実かつ的確だった。脅威度の高い兵装から潰していく。

 

 こうして二人の活躍で空中空母はついに投降、アーダン・シティが乗員の身柄を預かることになった。

 

『戻ったぜウルスラ!』

 

『お帰りアリス!』

 

『いつもながら見事な戦いでした。彼らを倒すことは貴女とエーアストにしかできなかったでしょう』

 

 戦闘は完全に終了し、デュラハンはナイトメアの傍に降り立った。すぐにウルスラとホワイトクィーンが通信を入れてくれた。

 

 周囲にはキルシュバウムを始め多くのACの姿がある。

 

『大したやつだぜあんた! ネストのランカーだったんだってな!』

 

『《レイヴン》というのは貴女のような力を持った傭兵を呼ぶのでしょうね。ふふ興味深い』

 

『良かったらウチのチームに来ないか? お嬢ちゃんならもっと上を目指せるはずだ』

 

『馬鹿言え、手前らみたいな弱小チームに《レイヴン》は勿体ねえよ!』

 

 

 赤と黒の超高性能ACを退けたアリスを口々に讃え、勧誘してくる傭兵達。大方の者はオニキスとマーウォルスをナインボールを模した機体と解釈している。

 《レイヴン》。AC乗り達は時にその名を際立って強い力を持つ傭兵を呼ぶために用いる。ナインボールやランカー達が築き上げた戦場の伝説のためだ。

 

『ははは、えーとその、お誘いありがとうございます皆さん』

 

 軍服風なブレザー制服の、可憐な美少女のガワで応対するアリスをかつてのネストのランカー達を微笑ましく見守っていた。ナインボール=マーウォルスを撃破した後、アンファングは幻のように姿を消しており、賞賛はアリス一人に過剰に集中していた。

 

 

 アリスを離れた場所から見つめるACが三機。

 

『お前にもそう名乗る資格があるはずだクライン。《レイヴン》を背負えるほどにお前は強い』

 

『買い被り過ぎだよキング』

 

『お前にその気がないのなら仕方がないな。だが、お前の次には《レイヴン》を名乗ってもらうぞ。ブランチが戴くものにとしてこれ以上に相応しい名はないのだからな』

 

 最年少である自らをチームのリーダーに推したキングに対してクラインは静かに答えた。クラインの興味はレイヴンやイレギュラーではなく、むしろ赤と黒のACにあった。

 秩序の究極の執行者ナインボール。それが若き戦士の目指すところだ。クラインの思惑に気付いた者は仲間達を含め誰もいない。

 

『二人とも、輸送機の手配ができたわ。さっ帰りましょう、私達ブランチのホームに。あーそれとシャワーは帰ったらすぐに私が使うからね』

 

 オペレーターとの交信を終え、シャルトリューズが仲間達に告げた。彼女は褐色肌の女レイヴンだった。戦闘後の解放感から、派手で露出の多いハイレグスーツの前を開いて涼んでいる。

 ちょっとばかりではないくらい意識の高いキングが時々苦手な彼女であった。今は一心不乱にACを駆り、自分の力を試して闘争の喜びに浸っていたい。

 

 遥か未来まで止まり木を護り続ける彼らは、この時まだひたむきに戦う若きレイヴンであった。

 

 

 バトルロワイヤルの翌日に、アリス達は出発した。

 

 

「アイザック・シティへのルートに入ります。それでいいのよねアリス?」

 

「ああ。行ってくれスミカ。アルゼナにはオレの方から連絡してある」

 

 今日のナイトメアはシートをライディングモードにしたスミカが操縦している。リグのパイロットとしてもすっかり上達してきた金髪メガネの才媛は管制担当だ。

 

 スミカは相変わらず大胆だ。ジーンズを脱いでハイレグカットのボディスーツだけの恰好でお尻を突き出している。

 

 この恰好のほうが操縦しやすいとのことだ。ウルスラとしては彼女の巨大でありながら、筋肉で引き締まったお尻の魅力に惹き付けられてしまう。

 

「一時はどうなることかと思ったけど、お金が振り込まれて本当に良かったわ」

 

 ウルスラは最大の心配が解消されて一安心であった。

 今年のバトルロワイヤルは中止となったが、報酬は支払われていた。シティ防衛に参加した者達には別途礼金まで送られている。

 

 兵器ブローカーでもあるアルゼナ修道院で必要な兵器を調達することになっている。三年前に目覚めたアリスが一時期世話になった場所だ。

 アイザック・シティの下層スラムにある武装修道院ならば、アリスが望む兵器をすぐに都合してくれるだろう。

 

Part2・完

 

Next Part『アリス//ザ・ファンタズムマーダー』

 

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