【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜 作:その辺の残骸
貨物船に搭載されたナイトメアの艦内、狭苦しい更衣室。ウルスラはACの提供だけでなく、全面的な協力を申し出てくれたアルゼナ修道院の面々とともに着替えていた。金髪碧眼メガネのオペレーターはすっかり肌に馴染んだ白色のボディスーツを引っ張り上げ、体にフィットさせた。
完全に密着し、胸やお尻にかかる圧力が否応なしに気を引き締める。体のラインが裸同然にくっきりした。
(この戦いを乗り切れば、後は全部上手くいく。この戦いを乗り切れば――――!!)
自己暗示めいて繰り返しながら、緊張と不安を振り払うべくストレッチする。
「しばらくお世話になりますわ、ウルスラさん」
魅惑的な肢体に戦闘用のボディスーツを張り付けたクルシュカが言う。修道院の院長自ら前線に立つのだ。修道女達の装備は共通のデザインで、パイロットスーツとしても使える頑丈かつ極薄のスーツだ。黒を基調としており、修道女らしくヴェールを被っている。
「えっええ――――っとお世話になるのはこちらのほうよ。こんな危険なことに付き合ってもらって」
「ガルムズを排するのは、我々の利益にもなりますわ。ですから、どうか気負わないでください」
「はっはぃ――――」
美貌に和やかな笑みを浮かべるクルシュカ。妙齢な修道院長は威厳と優しさに溢れたカリスマであり、その荘厳な美にウルスラは一時放心して立ち尽くした。
「院長、全員の着替えが終わりました」
黒色の密着シスタースーツでしなやかな肢体を浮き彫りにした白髪の美少女、イータが無表情で報告した。
合図をするまでもなく、クルシュカに合わせて修道女達は目を瞑り、静かに祈り始める。
(どうしよ!? 私もやるべきかしら!?)
ウルスラは困惑し、自分もお祈りに加わるべきか、迷った。
そんな金髪メガネの美女を後目に、白銀のアンダースーツを青と赤の装甲で鎧ったバトルスーツを身に着け、入念なチェックを終えたスミカが祈りの輪に加わる。白銀色に覆われた豊満なバストの前に握り拳を置き、ピンク髪のヴァルキリーは祈りの姿勢とした。
ウルスラも同じ姿勢になり、更衣室内に静謐な時間が流れる。
「それじゃ、オレ達はハンガーで待機してるぜ」
祈りが終わると、帯刀したアケビが生身での戦闘に長けた修道女を数名連れ、真っ先に更衣室を出る。ぴっちりとしたスーツのお尻が揺れる扇情的な光景だが、その足運びは本物の戦士のそれであり、頼もしい。
「私達も行きましょう」
「はい、スミカ様」
スミカとイータはそれぞれACのコクピットで待機。残りのメンバーは艦橋に詰める。
「ブリッジに案内するわ。着いてきて」
スミカ達が退室してから、背筋をピンと伸ばし修道女らを先導するウルスラであった。彼女達の黒いボディスーツと対照の白いボディスーツでメインコクピットに跨る。
すぐにアリスから連絡が来た。「荷物の配達を開始」というごく短い暗号文。用意したACに乗り込み、出撃したのだ。
マッハ5プラス、極超音速の世界にアリスは身を置いている。死神少女は黒衣を纏っていた。冥府の主に相応しいドレスを。
アーダン・シティのバトルロワイヤルで得た賞金全額を突っ込み、愛機デュラハンは新生している。高エネルギー粒子により超高出力、音速機動を実現し、粒子装甲による圧倒的な防御力を備えた次世代ACとなったのだ。
パーツは一新されたが、機体の戦術コンピュータに蓄積されたデータが移植されており、アリスの操縦に忠実に応えている。
高レベルの強化人間による神経直結を必要とするのが次世代機の高性能故の欠点であったが、アリスは変わらず操縦桿とペダルでACを操っていた。
それは、大破壊以前の遺構から次世代ACの基となった兵器を発掘し、リバースエンジニアリングを成し遂げた技術陣からすれば信じがたいことであった。
従来型ACを圧倒する超高性能を誇る次世代ACとて、オーバードブースト機構によって、音速を超えるのがせいぜいだ。
デュラハンはアルゼナ修道院が用意した、秘蔵の一品たるアーマードコア用の
機体全長の二倍近くあるブースターユニットの推力によるものだ。
現在の速度はデュラハンとユニットをまとめて覆う、球形粒子フィールドの空気抵抗軽減作用によって成立している。
粒子整波装置がこの兵装ユニットに備わっているのは、本来修道院が切り札として所有している次世代ACバヨネットが装備するのを前提としていたからだ。
アリスは低空侵入によって強襲を仕掛け、ナイトメアに乗り込んだ別動隊の突入を支援する。
作戦エリア、マンハッタン島とその周辺には、旧アメリカ合衆国の統治下にあった頃の都市の面影はもはや残っていない。
温暖化によって上昇した海面に灰色が塗り固められている。水没した都市の上に浮かぶメガフロートだ。
操縦桿を起こし、機首を上げる。急上昇。過剰な重武装のせいで機体が重い。複合兵装ユニットの左右に取り付けたミサイルポッドが開かれる。対地攻撃モードに設定し、アリスは最初のターゲット群を指定する。
今度は機首を下に向ける。弾道軌道だ。
「征け」
開戦の号砲となる数百発の弾頭が空に解き放たれ、一心不乱に獲物に向かう。対空砲火に迎え撃たれ、空中で爆散していくなか無事な弾頭が着弾すると、驚くべき威力を発揮した。
極超音速の速度に弾頭自体の加速と質量が加わった運動エネルギーミサイルが地上設備やミサイルシステム、対空砲などを粉砕する。
上々のスタートだ。空になったミサイルポッドをパージし、アリスは次の武装をコールする。
弾道突入軌道は機銃掃射にも都合が良い。兵装ユニットのアームで保持したガトリングガン、スラッグガン、レーザーキャノン、その他搭載できる限り施した火砲を異なる目標に向けながら急降下。
「いいね、またとない戦場だ」
アリスは無数の敵性反応に残酷に笑いかける。ロックオン警告が鳴り響き、敵弾が殺到する。サイドブースターを爆裂させ、巨大な機体が右へ左へ弾かれる。歯を食いしばり、荷重に耐えながらトリガーを引く。上空で解放された暴力は、火線上にあった全てを焼き尽くした。
この攻撃だけでガルムズの中核戦力であるファンタズマタイプの大型リグ二機、次世代AC一機を撃破している。斜めに急降下したデュラハンは地表スレスレで逆噴射をかけ、すぐさまクイックブーストで猛加速を再開。
建造物の間を駆け抜け、ソニックブームで不運な戦闘ヘリを吹き飛ばす。
こちらの進路を予想して配置されたACの小隊、それを囮として身を潜めた、直線的な装甲に覆われた武骨な重装型次世代AC。
「こっちにゃバリアがあるんだよ!」
デュラハンはAC小隊の銃撃を粒子装甲で受け止める。ミサイルの爆炎から飛び出し、ACのうち一機を轢殺しながら通過。
バズーカやグレネードなどの実弾兵器でデュラハンを圧倒しようとした次世代ACの動きを潰すべく、残しておいたコンテナミサイル二基をリリース。蜘蛛糸のような白煙を曳いて放出された自律型弾頭が捉えた敵に殺到していく。
クイックブーストによって重厚な外観から想像もできない高速の回避運動を取る次世代ACであったが、頭上を取ったデュラハンの追撃で頭を抑えられ、被弾する。
それでも粒子装甲を失い、一次装甲を損傷しただけだ。
アリスは愛機の両背中にマウントしたグレネードキャノンを展開、両肩に担いだ砲身から徹甲榴弾を目標に叩きこむ。広域殲滅向けの弾頭のため、巨大な火球が咲き乱れる。
両肩合わせて四発を直撃させており、次世代ACはその中心で徹底的に破壊されていた。
アリスの戦術は単純明快であった。機動と火力によって、敵を攪乱しつつ撃滅する。この少女の戦闘能力とデュラハンのスペックならば、それが可能だった。
死をもたらすバンシーの叫び声めいたブースト音を轟かせ、巨大なブースターと多数の兵器を背負ったデュラハンは休むことなく飛び続けていた。
交戦開始から十五分。粒子装甲の減衰こそあり、残弾も大きく減ったがACと兵装ユニットに損傷はない。
(これなら持ちこたえられるな)
攻撃を避け、激しい報復の嵐を巻き起こしながら機体の状態をチェックするアリス。この戦場は死神少女の支配下にあり、死の大鎌を振るうがごとく、ガルムズの軍勢を刈っていた。
不意に友軍の接近を知らせる警報音が鳴る。
「やっとご到着か」
ちらりとレーダーに目をやり、キャリアーリグ・ナイトメアの反応を確かめる。緑色の輝点は猛烈な速度で水上を滑り、メガフロートに向かっていた。ガルムズ側の企業が有する貨物船に偽装して接近、デュラハンが要塞を蹂躙するのを合図に出撃したのだ。
流石のアリスでも、沖から接近しているナイトメアは援護しきれない。しかし、迎撃機や艦船を示す赤色の輝点は次々に消失していた。目まぐるしい空中機動の間に、アリスはその原因となった爆発を見た。
爆発的な推力のブースターによって、横にスライドすることで、反撃を躱す桜色のACと純白のAC。スミカのキルシュバウムとイータのバヨネットがリグを護衛している。
ガトリングレーザーをはじめ、強力なエネルギー兵器を撃ちまくり、幻影のように駆けるキルシュバウム。標準的な中量二脚タイプの武装、ライフル、レーザーブレード、ミサイル、グレネードキャノンを的確に使うバヨネット。
次世代AC同士の連携は強力な突破力になっている。
ナイトメア自体も修道院の厚意で増設した兵装でハリネズミのように身を固めていた。
『大丈夫、アリス!?』
通信回線が開くと、スミカは身を乗り出す勢いで無事を確かめた。
『心配すんな。パーティーは楽しめてるぜ』
ロケットの掃射で地上のMTやAC、対空兵器を焼き尽くし、悠然と飛び去りながらアリスは言った。呑気な物言いにイータは溜息一つ。
『悪いけどウルスラを頼むぜ院長』
『任せてください。必ずやり遂げ、無事に生還してみせますわ』
自らも戦装束となる修道衣風のボディスーツを身に着け、官能的な肉体を露わにしたクルシュカは余裕ある態度で応えた。
火器管制シートに腰掛け、ナイトメアの兵装を巧みに使いこなしている。主砲プラズマキャノンを発射して、防壁を粉砕。ナイトメアは残骸や放置された車両を跳ね飛ばしながら、メガフロートに上陸した。
本来のオペレーターであるウルスラはナイトメアの操縦に精一杯で、会話に加わる余裕がない。ACのオペレートは同乗したアルゼナの修道女が替わって担当している。
人生最大の苛酷な戦闘に金髪の才媛は叫びだしそうになるのを堪え、奮闘中だった。潜入用の装備を兼ねた白いボディスーツの下で、豊満な裸体は既に汗びっしょりだ。
この大規模な戦闘が作戦の第一段階でしかないというのだから、泣けてくる。
「うおっ!」と通信画面のアリスが顔を顰めると、当人以上にウルスラが狼狽えた。
『ちょっと!? 本当に大丈夫なの! アリス、貴女に死なれちゃったら私、困るんだけど!』
『アームドユニットの空になった弾薬倉に食らっただけだ。粒子装甲は貫通したが、ダメージはどうってことない。けど、そろそろ潮時だな』
機体を立て直しつつ、アリスは狙撃手を睨んだ。スナイパータイプの次世代ACが四つのアイカメラで兵装ユニットから黒煙を吹くACを冷たく見つめていた。
スナイパーキャノンを構えながら、高速で移動している。下手に意識を向ければ別動隊から集中砲火を浴びる。
ブースター部分に狙撃されるのも危険だ。アリスは空中で機体を滑らせつつ、機体と兵装ユニットの連結を解除。
オーバードブーストの点火を開始。必殺の確信を伴って放たれた狙撃を避け、急速発進。
続くライフルによる射撃を切り抜け、チャージしていたハイレーザーライフルの銃口を狙撃型次世代機に向けた。
蒼い巨光が空を裂き、一閃。
ファントムを名乗るACから鹵獲したKARASAWAの発展型は、期待通りの威力を発揮して、厄介な敵機もろとも有象無象を薙ぎ払った。一方、騎手を失った兵装ユニットは墜落し、残った推進剤と弾薬が大爆発を起こし、紅蓮の炎が周囲を飲み込む。
「しゃあ! どんなもんだ!」
それをバックに快哉を叫ぶ死神少女。死とは時に陽気なものだ。
新たな姿となったデュラハンの脚部は軽装の二脚に見えるが、積載量は細身の外見に見合わぬ重武装が行えるほどだ。曲線的なパーツでアセンブルされていて、頭部には全翼機の主翼のようなアンテナが広がっている。
凄まじい速度と火力をもたらす追加装備を失い、次世代機とはいえただ一機のACとなったはずだが、黒青色のACから放たれる圧力はガルムズのパイロット達を慄かせる。
ファンタズマ・チップとなり機体に組み込まれた者たちでさえ、恐怖の感情を取り戻し、硬直している。
閃光を放つ巨銃を構え、オニキスのコードネームで呼称していたナインボールから回収した真紅のレーザーブレードを抜き放つ。頭部センサーが妖しく輝く。
航空機のように忙しなく飛び回り、砲とミサイルで圧殺する戦い方はアリスが本来得意とするものではない。アーマードコアによる戦闘こそが本分だ。
「命が惜しけりゃ逃げるがいい! 今なら特別に見逃してやるぜ!」
フットペダルを踏み込み、一気に距離を詰める。アリスは次世代ACの性能をカタログスペック以上に引き出し、瞬く間に敵機を切り捨てていく。
「アハハハハハハハッ!」
狂気をもたらす哄笑をオープン回線で響かせながら、デュラハンを駆り立てる。心理作戦でも何でも、使えるものは全部使うのだ。
メガフロート地下中枢区画への侵入を試みるナイトメアそっちのけで、戦力を総動員してアリスを仕留めようとするガルムズに凶報が舞い込む。
急速に接近してくる十数の反応。それはとびきり頼もしい、アリスの援軍であった。反ガルムズ派に雇われ、待機していたレイヴン達に出撃のゴーサインが出たのだ。
旧二大企業の崩壊後に躍進したバージュ社を中心とする企業連合は、事態を静観する態度を取りつつ、アリス達に乗じる準備を整えていたのだ。
緊急展開用ブースターで殺到するアーマードコアの最前衛。左肩に誇らしく描かれたエンブレムはかつてレイヴンズネストで鳴らした猛者達のものであった。