【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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最終目標『アマデウス』

 

 反ガルムズ派企業連合が雇ったレイヴン達が無事に降下できるよう場を整える。本格的な対空砲火が始まるよりも早くアリスは動いた。

 黒青色の次世代AC、デュラハンが真紅のレーザーブレードを振るい、周りの重装甲MTを纏めて薙ぎ払う。まるで紙を切ってるような手応えだ。

 

 地上において時速300kmを超える、アーマードコアをさらに上回る速度でブーストダッシュ。被弾を抑えるべく、連続的な跳躍を行い、一気に飛び上がる。

 

『ちょっと待ってろよ。今降りられるようにしてやる』

『あら、それは助かるわ』

 

 通信に真っ先に応じたのは、紫色の妖艶なスーツに身を包んだリンクスミンクスだった。長い胴体でアーチを描く猫のエンブレム、プリティキトゥンはネスト時代のアセンブルから腕部が変更され、高出力レーザータイプの武器腕になっている。

 

 空中にデュラハンが踊り、砲撃直前に左サイドブースタからのクイックブーストで変位。こちらを狙っていたミサイルを振り切った。

 グレネードキャノンを二門同時発射。慣性によって、榴弾は横に滑るような弾道を描いて地上に着弾。瞬間的な真空を作り出すほどの爆発が起きる。

 

 確保された降下地点へと、競い合うように援軍が着地してきた。その中の一機が、アリスに呼びかけた。

 

『相変わらず派手にやるものだ。機体の損傷はどうだ? 残弾に不足はないか?戦闘続行が困難ならば後退しろ。我々の仕事が終わった後に踏み込む算段になっている艦隊が、後方で待機している』

 

 迷彩服を着込んだ古参兵が座標を送ってくる。

 

『まだいける。舐めてくれるなよ、ご老体』

 

 ヴォルフが心配してくれているのは分かっている。だが、スミカ達が地下に突入して奮闘しているのだ。自分だけ撤退するわけにはいかない。

 

 それに、何よりも――――アリスは己の最も昏い側面に意識を向ける。存分に死を振り撒きたいと渇望している。

 こんな性分なのだから、イータが嫌うのも無理はない。

 

『ふん、その調子ならば問題なさそうだな』

 

 ホバータンク型ACフェンリルは地に降り立つと、その名の如く鋼鉄の魔獣と化して全火力の投射を開始。

 ガルムズの主力はアリスの大暴れで壊滅しており、そこに腕利き揃いのレイヴンがやってくればたまったものではない。

 

『大人しくお縄につきな、悪党ども!』

 

 頭上を通過する標準的な中量二脚ACからの声。ヴィジランティのファルコン、ここにありという感じの勇ましさだ。アーダン・シティで再開した時からパーツが一新されている。

 

 結婚し、地元で機体名の通り自警団として活躍しているファルコンがこんな場所で戦死でするのは見たくない。

 アリスはファルコンを援護するように、デュラハンを駆り立てようとした。しかし、アリスが占めようとした位置に別のACがついた。

 それは明るい月のようなカラーリングの重二脚機だった。

 

『彼の援護は私に任せてください、レディ・アリス』

 

 気障な紳士と冷徹な傭兵の二面性を持つランカーレイヴン、三日月だった。

 即興のコンビネーションを組んだのはアリスへの配慮ではなく、ファルコンと連携したほうが効率が良い、というプロらしい判断からだろう。

 

『おう、頼む――――悪いけどレディって付けるのはやめてくれ、なんか恥ずかしい。オレはただのアリスで十分だぜ』

 

 そう言って、ネストのランカーだった二機と別れ、残り少なくなった獲物を探す。遠くでは、第二陣、第三陣のACが降下するのが見えた。

 

 ハイレーザーライフルで今一度敵機を射抜き、機体はターンをかけて方向転換。ブレードの回転斬りで特攻してきた汎用ACを叩き切り、デュラハンは建物の屋上に昇った。

 あちこちで黒煙が立ち上る戦場を俯瞰すれば、だいぶ静かになっていた。

 

 巨大な空母とも言うべきメガフロートの中枢は地下セクションにあり、ナイトメアは護衛を伴って突入している。

 ウルスラからの通信。音声のみ。ナイトメアから連絡しているわけではなさそうだ。

 

 応答する前に、アリスは己が発していたドス黒い殺気を抑えた。金髪メガネのオペ子がチビっては困るからだ。

 

『こっちは殆どカタがついた。そっちはどうだ?』

 

『中枢制御室に乗り込んだわ。ここまで本当に大変だったし、やっぱりガルムズって連中はとんでもない悪党ね! 道中に地下複合都市を攻撃するために設計された蹂躙型MTが待ち構えていたのよ。

 スミカとイータが倒してくれたんだけど、あんなものが実際に都市への攻撃に使われていたらと考えるとぞっとするわ』

 

 現物を見ていないアリスに詳細は分からないが、アーダン・シティへの襲撃に使われていても、厄介な相手になっただろう。

 

『今はワームを流し込んでいるところ。効果が出るにはもう少し時間がかかるけど、ここの設備の大半がダウンするわ』

 

 金髪碧眼メガネの才媛は断言した。ウルスラのハッカーとしての手腕は卓越しており、特にクラッキングの腕前は悪魔的だ。

 荒事嫌いの当人には不本意極まりないだろうが、作戦を成功させるためにも、現場に出てもらわねばならなかった。

 

『重畳! それで脱出の手筈はどうだ? 必要なら援護に向かうぜ』

 

 何より、それが心配だ。誰か一人でも欠けたら、寝覚めが悪い。

 

『ナイトメアも私もアルゼナの子達にしっかりガードしてもらってるから必要ないわ。制御室に入るまでに何度か戦闘があったけど、圧勝だったのよ』

『まっそれは当然だな』

 

 アルゼナ修道院の戦闘能力に感心している口振りのウルスラに、誇らしい気持ちになるアリスであった。

 ボディスーツに身を包んだ修道女達の多くは強化人間であり、次世代ACを操縦しているイータなどは特に高度な強化が施されている。

 

 流れはアリス達に完全に傾いている。

 

 しかし、嫌な予感がした。それはアリスの中で急激に高まり、やがて機体のセンサーが下方、地下から突き上げてくる超高熱源と振動を検知したことで確信に変わった。

 

「っっ!! そんな気はしていたが、楽には終われないか!!」

 

 バックのクイックブーストを吹かして距離を取る。致命的な気配を放つ、薄緑色の光柱がメガフロートの地下構造物を突き破った。

 モニターがホワイトアウトする。ほんの少し掠れば、粒子装甲が消し飛び、機体が消滅する熱量だ。咄嗟の判断で跳ばなければ、危なかった。

 

 通信回線が沸き立つ。百戦錬磨のレイヴンからしても、恐るべき光景であった。

 

『離れてろ!』

 

 デュラハンは着地して、姿勢を低く取る。鋭い声音で全員に一喝し、操縦桿を強く握るアリス。フットペダルはいつでも踏み込めるよう構える。

 

 瞬間移動めいた急上昇でそれは地下から姿を現した。

 透明なバイザーに覆われた球形の頭部。複雑かつ精巧な内部機構を覗かせた、折れそうなほど細い四肢。

 しかし全長はACの1.5倍ほどある。異星的なシルエットのヒト型がデュラハンを見下ろしながら宣告する。

 

『アリス・ジャバウォック、君の抵抗は無意味だ。そして、君だけではない。ここに集まったレイヴン、旧時代の遺物が生み出した誤ったモノ達、すべてが無意味だ』

 

 それは全帯域の通信及び外部スピーカーで電子的な、しかし酷く人間らしいエゴが滲んだ音声を発した。

 

「親玉のご登場か」

 

 アリスは目を細め、空中に静止するヒト型を睨んだ。その粒子装甲の濃度やジェネレーターの熱量は次世代型ACを凌駕している。

 

『いかにも、私はこのガルムズの最高意志であり設立者だ。しかし、スミカ・ユーティライネンが君に教えた存在、レイヴンズネストの黒幕であった機械知性群などではないよ。私は人類を進化に導く、ただ一人の人間だ』

 

 自らの言葉に陶酔する口ぶりだった。機体の方もそれに呼応して、両腕を広げる芝居がかった所作をする。

 

『確かに拾われてしばらくはネストで彼らに尽くすフリをしていたがね。彼らは古臭く愚かではあったが、技術は素晴らしかったよ。欲していた物が手に入ったので、世界を統べるに相応しい姿へと転生したというわけだ』

『なるほど、快適な体みたいだな』

 

 アリスは不遜な態度で応じた。間接的には、目の前の怪物は死神少女が生み出してしまったものだ。

 

『ああ。ウェンズデイ機関を滅ぼしてくれた、君とスミカ・ユーティライネンのおかげだ。どうだね、今から私に平伏するのであれば、これまでの不敬は赦そう。私としては、そちらのほうが生産的だと思うが?』

 

 さらに、アリスが口を挟む間もなく、ヒト型は言葉を続けた。 

 

『この"神に愛されし者"(アマデウス)は大破壊以前のロストテクノロジーを集約し、ファンタズマの成果を融合させた究極の機体であり、私自身でもある。君のお仲間は確かに基地の中枢にワームを送り込んで破壊した。全く恐ろしいものを使う。ガルムズはここで終わることになる、それは認めよう。

 しかし、この私が在る限り、いくらでもガルムズのような組織は創り上げることができるのだよ。君のようなイレギュラーが刻の流れに朽ちようともな。君たちの蛮勇は全く無意味な行いでしかな――――』

 

 言い終わる前に蒼い雷撃が機械仕掛けの神人を打った。デュラハンが放ったハイレーザーはしかし、分厚過ぎる粒子装甲により霧散していた。

 

『貴様っ!!』

 

 己の演説に陶酔していたアマデウスの中身は、アリスの妨害に露骨な怒りを露わにした。脳みそをチップに置き換えているというのに、感心するほど人間性が残っている。

 

 片腕をデュラハンに向けたアマデウスの粒子装甲から閃光が放たれ、地表を切り裂いた。

 その追尾を振り切るために、オーバードブーストとクイックブーストを組み合わせ、ブースターにあらん限りの炎を噴かせる。

 

 ハイレーザーライフルで攻撃を繰り返すが、攻撃は敵の粒子装甲に弾かれるばかりで、減衰も貫通もしていない。

 

『結構固いな、片付けるのに手間取りそうだ』

『戯言を。これを見ても戦意を保っていられるかな?』

 

 アマデウスが数百メートルの距離を瞬時に移動した。恐らくはクイックブーストによるものだ。

 間髪を入れず粒子装甲の全周から無数の光弾を放ってきた。地上施設や味方諸共消し飛ばしている。

 

 遠方にいるレイヴンたちのACも何機か消し飛んでいたが、その中にネスト時代のランカーはいなかった。皆、素早く射程外に退避したのだ。

 

「ちっ食らった!」

 

 流石のデュラハンでも完全回避は無理だ。二発目で粒子装甲が破れ、右半身の装甲が融けた。最大出力のクイックブーストで、位置をズラす。

 見た目上の損傷は酷いが、戦闘に支障はない。

 

『ねえちょっとアリス! これは本当にヤバいんじゃないの!?』

 

 大急ぎでナイトメアに戻ったらしい、ウルスラの悲痛な声がコクピットに木霊する。

 

 対するアリスの返答は艶然とした笑みとともに。

 

『なんの、面白くなってきたところだ。ウルスラはナイトメアで先に脱出してろ。メガフロートからできるだけ距離を取ってな』

『私もナイトメアで援護を――――』

『いいから! クルシュカ達も乗ってるんだからな! とにかく無事でいてくれ』

 

 最後は突き放すように言い、アリスは強引に通信を切った。意図を察したクルシュカやアケビがうまく説得してれるだろう。

 その間も黒青色のACは主の操縦に従い、アマデウスなる機体の攻撃を避け、時に反撃している。

 

 片手間でアリスはスミカとイータに短い暗号通信を送る。

 双方ともに了解してくれた。

 

「負ける気はないよな、相棒(デュラハン)

 

 アリスは愛機に呼びかけ、真紅のレーザーブレードを抜く。

 出力を増し、機体全長に匹敵する光刃を解き放っている。オーバードブースト、光り輝くアマデウスへ一気に肉薄する。

 

 

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