【完結】フロム・ヘル//ファンタズマ〜黒髪凶暴系美少女なACPP主が無双するアフター的なやつ〜   作:その辺の残骸

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スミカ

 

 アリスが電源設備を破壊してから、研究所内は大混乱に陥っていた。差し向けたヴィクセンが撃破されたことも予想外のイレギュラーだったようだ。

 

「向こうも上手くやったみたいだな」

 

 デュラハンが傍受した無線に被験者が戦闘リグを奪い逃走中とあった。このリグに乗っているのが救出対象に指定されている要人だろう。これなら無駄足にならずに済みそうだ。

 

 ブーストダッシュで通路を突き進みながら、立ち塞がる敵をロックオン。前方に展開する複数の敵機をそれぞれ囲むターゲットコンテナが赤く光っている。

 

「ガードメカが群れてこようと!」

 

 アリスは意気揚々とトリガーを引いた。背部ミサイルランチャーのハッチが開く。射出された誘導弾を躱す運動性はガードメカに備わっていない。

 ミサイルが着弾したスコーピオンやファイアフライはあっさり弾け飛んだ。燃え上がる残骸を置き去りにして、黒青色のACは先を急いだ。

 

(対象は交戦中か。間に合うかな)

 

 予備電源作動中を示す赤色非常灯に照らされた廊下を駆け抜けながら、飛び込んできた無線に険しい顔を浮かべるアリスだった。

 脱出用の輸送機がある最上階格納庫に繋がるエレベーターへの通路で救助対象は追い詰められている。

 

 ニーハイブーツが締め付ける少女のしなやかな脚が、フットペダルを力強く踏み込む。アリスは愛機を駆り立てる。

 

 前方は突き当たりから左右に通路が伸びている。クイックブーストの瞬間加速から急減速。通路のど真ん中に立ち、後方のリグを銃撃から庇う。

 コクピットが揺れた。防御スクリーンへの軽微なダメージを報せる警告がモニターに躍っている。

 

『遅くなった。デュラハン、アリス・ジャバウォックだ』

『ナイスタイミング! 助かったわ!』

 

 ホバー推進式のハイテク装甲車、コンバット・リグから若い女の声がした。情熱的な雰囲気の美声。どんな素性の相手か分からないが、アリスは好印象を抱いた。

 

 通路の向こうからぞろぞろとやってくる追手。戦術COMが機種を分析してモニターに表示した。

 逃走中のリグの同型機が二機。その後方にナースホルン、スコーピオンなど蹴散らしてきたガードメカが続く。

 

 奥には四脚タイプ戦闘MTイーゲルを一機確認。他の雑魚と違って、コイツはACのパーツを流用した強力な機動兵器だ。火力があり、耐久力もある。

 

「グレネードを持ってきて正解だった」

 

 アリスは好戦的に笑う。

 デュラハンに片膝をつく砲撃姿勢を取らせ、展開した左背部の巨砲"WC-GN230"の砲身を肩に担ぐ。

 ACの象徴的武器とまで言われるグレネードランチャーだ。

 

 通路の真ん中でキャノンを構えたデュラハンには当然攻撃が集中するが――――

 

「当たらない」

 

 厳かな口調でアリスは予言し、その通りになった。

 無防備なはずのデュラハンを狙った銃撃は、命中しても有効打になる位置に着弾することはなかった。

 

 榴弾が薬室に送り込まれる。マニュアル照準に切り替え、アリスは敵を睨む。少女の白い指がトリガーを引く。ショルダーキャノンが咆哮した。

 

 黒鉄の砲身より放たれた大口径榴弾は衝撃波だけで軽量なガードメカを吹き飛ばし、イーゲルの胸部に着弾。

 閃光。過剰なほど巨大な爆炎がアリスの敵を殲滅した。爆風を黒青色の装甲に浴びながら、デュラハンは反転。

 

 通常電源に復帰したのか、照明が切り替わった。

 

『やることが派手ね。レイヴンらしいやり方で嫌いじゃないけど』

『そいつはどうも』

 

 言い回しからして、この女は同業な気がする。

 

『ゲートは開けておきました。この先のエレベーターを昇れば格納庫よ』

『助かる。前衛はオレが。あんたは後方の敵を警戒してくれ、来たらこっちで対処する』

『頼みます、アリス』

 

 

 戦闘リグを飛び越え、着地する。大量の物資を運搬できる大型貨物エレベーターを昇っていく。

 格納庫には大型輸送機が鎮座しており、発進準備も整っていた。

 

 アリスは近寄る前にレーダーと己の感覚で伏兵の気配を探った。問題なし。

 

『急いで。すぐに追手が来るわ』

 

 リグが先導し、輸送機の貨物庫を開いた。デュラハンは念のため、エレベーターの方向に機体を向けた。

 

『もうここに戻ってくる用事はないよな?』

『ええ』

『そうか、なら』

 

 もう一度、グレネードランチャーを構えてエレベーターに撃ち込む。オレンジ色の火球が瞬いた。

 

「これでよし」

 

 デュラハンを貨物庫に固定した時、アリスはリグから降り立つ人影を見た。ピンク色の髪が鮮烈な印象を与える、背の高い美女だ。身に付けているコスチュームもハイレグススーツ姿のアリスに負けず劣らず。

 

 白銀色のボディスーツに青と赤の装甲を取り付けた、ヒロイックなデザインの戦闘装備だった。身に着けている女の美しさや、発散している力強く清廉なオーラがコスチュームとぴったりマッチして互いの魅力を引き立てていた。

 

 極薄のスーツが張り付いた女のお尻は豊満であり上向き。それは臀部の筋肉を鍛えていなければ為しえない、凛々しい尻の形だった。

 

『発進します』

 

 輸送機のコクピットに移ったピンク髪の女がアナウンスする。機体は最上部の短い滑走路でも事足りる推力で一気に飛び立ち、高高度に達した。

 

 アリスは今度こそ飛んで来るであろう対空砲火を警戒したが、一向にその気配はない。

 

『防空設備は無効化しておきました。安心して』

『手際がいいねえ』

 

 ミサイルが飛んでこないのは、そのせいらしい。この女は破壊工作のスキルも備えているようだ。

 

 デュラハンを降りてキャビンで改めて女と対面した。かなり趣味的かつ扇情的に見えるデザインのレオタードスーツ姿の黒髪美少女に驚いていたようだが、年端もいかない少女がレイヴンをしていることに衝撃を受けている様子はなかった。

 

「助けてくれてありがとう、私はスミカ・ユーティライネン。アンバークラウンでレイヴンをしているわ」

 

 スミカ。アリスはその綺麗な響きを心の中で反芻しながら素早く彼女を観察した。

 

 白い肌に色を塗ったような白銀色のスキンスーツから鍛え抜かれた筋肉が浮き彫りになっており、腹筋は綺麗に割れていた。アリスの薄い胸と対照的なロケット型の双丘。その先端はつんと突き出ていて、スミカがインナーを付けていないことやスキンスーツの薄さを示していた。

 

「やっぱ同業か。オレのことを知っているのか?」

「ええ。貴女の噂はアンバークラウンにも届いているのよ。もっとも、小さな女の子だって話が本当だとは思ってもみなかったけど」

 

 スミカは続ける。

 

「彼らの組織に捕まったのは三か月前。人体実験の被験者にされそうだったけど、幸いにも脱走して装備を取り戻すことができたの」

 

 装着しているバトルスーツ――――体に密着するスーツを基礎とした軽量な戦闘装甲服の他、ACもリグに積んであるのだという。

 

「そうして施設に潜伏しながらネストのネットワークに接続して、貴女に依頼したってわけ。偽装のために第三者を装わせてもらったけど、これまでの依頼も全て私が送ったものです」

 

 アリスは質問することにした。

 

「連中は何者なんだ。相当な金持ちのようだけど」

「彼らについてはウェンズデイ機関という名前と幾つかの企業をスポンサーに兵器開発を進めていること以外殆ど判らないの」

 

 スミカの面持ちがより真剣になる。アリスは真っ直ぐに目の前の女レイヴンを見据えた。

 

「けど、機関が目指しているものは掴んでいるわ。次世代型の強化人間技術の開発、それも人間と機械を融合させる極めて危険で非人道的なものよ。彼らはこれをファンタズマ計画と呼んでいます。私はこの計画を何としても阻止するわ。レイヴンとしてではなく一人の人間として」

 

 彼女の瞳に煌めく光にアリスは息を呑んだ。それは澄んだ正義の輝きだった。

 

「道中でスティンガーってレイヴンと戦ったんだが、奴のヴィクセンもその計画の産物か?」

「あの男と戦ったの!?」

 

 ピンク髪の美女は大いに驚愕していた。身動ぎで乳房が揺れてもいた。

 

「ああ。きっちり機体はスクラップにしておいた。中身は始末できなかったけど」

 

「倒した!?あの機体をAC一機で!?」スミカはさらに驚き、信じられないという顔をした。

 

「私のコーラルスターは彼にやられたの。『皇帝』エクレールやハスラー・ワンでも勝てるかどうか分からない奴なのに、それを倒すなんて――――ごめんなさい、質問に答えていなかったわ。その通り、あのヴィクセンはファンタズマ計画のテストベッドです」

 

 スミカは希望を抱いたようだ。エクレールとは、アンバークラウン・アリーナのトップに君臨し、自らを皇帝と称するレイヴンの名だった。

 

「オレも少しは成長したってことかね」

 

 アリスは綺麗な形の顎に人差し指を添えて、考えるような仕草をしながら言った。

 

 戦闘能力ではなく、任務での判断についての独り言だ。

 スミカの救出を優先して機能停止したヴィクセンを放置していた。

 アルゼナ修道院の世話になり、修道服に袖を通していた頃。アリスは商談の際に"仕事"を任されていたが、血に酔い過ぎるのをきつく注意されていた。

 

 

「何か?」

「いや、なんでもないよスミカ。それよりもこれからの話をしようぜ。ウェンズデイ機関をぶっ潰す作戦の話をさ」

 

 アリスはやる気満々だった。ウェンズデイ機関もスティンガーも楽しめそうな敵だ。何よりもスミカ・ユーティライネンという女レイヴンはアリス・ジャバウォックに新しい何かを与えてくれそうな予感がした。

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